グレイトな人に転生した   作:puni56

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初の1万字超え。戦闘よりも会話パート方が話が進む謎。

ツッコミ所があるのはいつも通りです。修正は活動報告にてします。


読者の皆さんに感謝を。


7話:暴走親父

とあるレストランにて夜景を見ながら食事を楽しむ男女。

ショートヘアの女性の表情は明るくしかしオールバックの男性の方は緊張しているのか表情がぎこちない。

 

「聞いてる?ディアッカ‥」

 

『…』

 

女性の問いかけに無反応な男。

 

「ねえ、ディアッカってば!」

 

『お、おう。もちろん聞いてるゼ!』

 

「本当に?」

 

女性はジト目で男性を見る。すると男は‥ディアッカは観念したのか

 

「いや、すまん。聞いてなかったゼ」

 

と白状した。

 

「へ~私とのデートがそんなにツマラナイわけ?」

 

「そんなわけないって!ちょっと考え事してただけだゼ」

 

『ちょっとって何?』

 

「いや、あの、それは~」

 

言葉を濁すディアッカ。

 

「…そう、わかった。今日はもう帰るわね」

 

席を立つ女性。

 

『おい、待てよ!』

 

焦りながら女性の右腕を掴むディアッカ。

 

「離して!」

 

『いいや、離さない、ゼ!』

 

言いながら女性を引き寄せ女性を抱きしめるディアッカ。

 

「話を聞いてくれよ」

 

『…私の話は聞いてなかったのに?』

 

「スマン」

 

『謝れば済む問題ではないわ』

 

ツーンとソッポを向く女性。2人の関係は他人から見ればどう映るだろうか。

夫婦か恋人か、それとも親子か?

 

「本当にごめん。この後の事で頭がいっぱいだったんだ」

 

「この後?」

 

首を傾げる女性。

 

「いや、あーっと‥」

 

えーとかあーとか1人で苦悩するディアッカ。

 

「‥ヨシッ!!」

 

言う覚悟が決まったのか両手で頬を叩き気合を入れ、女性を見つめるディアッカ。

 

「‥」

 

『…』

 

ディアッカの雰囲気を感じ取ったのか見つめ返す女性。

 

「コホンッ。えーと、俺達ってさ、知り合って長いじゃないか?

喧嘩したりとかもあったけど楽しいこともそれ以上にあって‥かつて赤だった俺も今や白だ。

だから2人でやっていく分の収入はあるし、世界は平和だから家に帰れる日も多いし‥

だから、あ~…つまり何が言いたいかというと‥‥‥俺と結婚して下さい!!!!」

 

頭を下げるディアッカ。

 

『…』

 

事態が呑み込めないのか女性は固まっている。周囲の客も固唾を飲んで見守っている。

まるで時が止まったかのように静寂に包まれる店内。

 

『…本当に、私でいいの?』

 

女性がディアッカに返事をする。

 

「もちろんだゼ!貴女だから俺は結婚したいんだ!!」

 

力説するディアッカ。

 

『でも、周りが許さないわ‥』

 

「フッ俺達の周りにはそんな無粋な人間はいないゼ!そうだろう?みんな!!」

 

「「「「もちろんだ!!!!」」」」

 

周囲の客が某泥棒のように一斉に服を脱ぐとそこには‥

アスランにキラ、カガリ、ラクスイザーク、バルトフェルド、ダットの姿が。

 

『あ、貴方達、一体いつから!?』

 

「初めからおりましたよ?」

 

ラクスが代表して答える。

 

「ディアッカにプロポーズするからセッティングを手伝えと言われて‥」

 

アスランが答え、

 

「愚息がどうしても、というのでなお節介とは思ったがやらせてもらったが。フハハハハ、なかなかいいものだな!」

 

ディアッカ父はハイテンションで。

 

「こんな、みんなを巻き込んで‥」

 

『私が頼んだのです。今までの恩返しをしたいと』

 

『イザーク‥』

 

「私だって最初は反対しました。

 が、この通りふざけた奴ですが誰よりも貴女の事をを思っています。

 それは、あなたが一番ご存知でしょう?」

 

『でも、私は‥』

 

「もう、いいではありませんか!私は既に結婚し家を継ぎました。

 だから、今度は貴女が幸せにならなくては!!」

 

『…』

 

女性は俯き考え込んでいるようだ。

 

「‥ディアッカ」

 

『なんだ?』

 

「私で、いいの?」

 

『ああ、何回だって言ってやる。エザリア、俺はお前が欲しいぃ!!結婚してくれ!!!!』

 

再び結婚を申し込むディアッカに対しエザリアは…

 

「はい、喜んで」

 

満面の笑顔でそう、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ」

 

ふとディアッカの目が覚める。何だかとても良い夢を見た気がする。

で、どこだここは?視線を落とせば左腕に点滴が刺さっている。

何事?身体を起こそうとすると‥

 

「アーウチッ!」

 

全身に痛みが走る。ベットに背中から倒れこむ。

 

「ど、どうしてこなった‥」

 

混乱していると扉が開く音がして数人分の足音が聞こえる。

 

『どうやら元気そうだな』

 

某師匠の声がした方を首を動かし見るディアッカ。そこにいたのは‥

 

「親父‥」

 

そう、ディアッカの父親ダット・エルスマンの姿だった。あと秘書2人。

 

「『‥‥』」

 

無言で睨み合う親子。(俺は正直言って親父が苦手だ。何故なら‥)

 

『ふははははは!

 二度と意識が戻らないと医者に言われて見に来てみれば元気ではないか!

 流石は儂の息子だ!!』

 

(‥そう、テンションやら性格が東方不敗なのだ。暑苦しいったらありゃしないぜ。)

 

「どうした?黙ってないで何か言わんかぁ!」

 

右頬を殴られる。

 

「イテッ!何しやがるこのクソ親父!!」

 

反撃したいが全身が痛いので断念するディアッカ。

 

『ふははははは!うむ、うむ!それでこそ我が息子だ!!』

 

相変わらずのハイテンションで付いて行けないディアッカ。

 

「委員、そろそろお時間が‥」

 

秘書が予定を気にして会話に割り込むが‥

 

『なぁにぃ!?この大馬鹿者めが!!親子の語らいを邪魔するでないわー!!』

 

「も、申し訳ございません!!」

 

『お前達は出て行け、いいな?』

 

「「は、はい!!」」

 

理不尽な理由で秘書2人を強制退出させるダット・エルスマン。

 

(ひでぇ‥)

 

心の中で秘書に同情する。

 

「で?ここはどこで、親父は何しにきたんだ?」

 

まず状況を把握するために親父に尋ねるが

 

『うむ!お前が自爆して意識不明の重体になったお前を見舞いに来た。以上である!!』

 

「は?」

 

『何だ?理解できなかったか?まったく‥なっちゃいない、なっちゃいないぞ、ディアッカ!!』

 

(馬鹿にしながら溜息をつく親父にイラっとしたがここは我慢する。)

 

『仕方が無い。二度は言わんぞ?』

 

親父の説明によると俺がストライクに組み付き自爆。

砂浜に犬神家誕生。

俺、全身打撲&意識不明。

クストーでは本格的な治療ができない。

本国に送還だぁ!俺、目が覚める。←今ここ。

そんなとこらしい。

そうだ、思い出した。あの時俺は――――

 

「くそ、またもやストーカーヤローに目を付けられてしまったぜ」

 

ボヤきつつも戦闘機からの回避足つきに攻撃を加えるディアッカ。

 

(厄介な奴らだよまったく)

 

距離をとれば足つきが、接近しようとすれば戦闘機が入れ替わり攻撃をしてくる。

 

(まずはうっとおしい戦闘機からだ)

 

「堕ちろー!!」

 

220mm径6連装ミサイルポッドで牽制し350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルを連射する。

 

「グゥレイト!」

 

今回は命中しスカイグラスパーは黒煙を上げながら高度を下げ足つきに緊急着艦していく。

 

「よし、チャンスだ。ハッチから侵入し内部から破壊してやるぜ!!」

 

と意気込んでいたら視界の隅に追い詰められているイージスの姿が。

 

「何やってんだよ、あいつは!」

 

流石に見過ごせないのでアスランの援護に向かう。

バスターの射程圏内に入り、ストライクを攻撃しようとしたところで視界の端にブリッツが映った。

 

「っヤバイ!!」

 

足止め具のロックを解除し、グウルをストライクに向け操作するディアッカ。

 

(間に合うか!?)

 

エネルギー残量を無視したスピードでグウルが降下していく中ストライクに94mm高エネルギー収束火線ライフルを向けるバスター。

ブリッツが斬られると思われた次の瞬間、グウルがブリッツに激突しブリッツが吹き飛ぶ。

ストライクが空振りした空振りしバランスを崩す。

その隙突いていつのビームでソードを破壊するバスター。

ストライクはソードが破壊され爆発したことで数歩後退した。

 

「グゥレイト!」

 

ストライクの前に着地するディアッカ。

 

(セーフ、何とかなったぜ‥)

 

内心焦りながらもストライクと対峙するディアッカ。

そう、ディアッカの考えではグウルをストライクに激突させてその隙に撃破するはずだったのだ。

だが実際は無理なスピードを出したからなのかグウルはブリッツに激突してしまい、ビームも狙いが逸れて武器破壊に留まった。

結果オーライだが少しでもタイミングが外れていたら‥と考えると焦らずにはいられない。

アスランとニコルに撤退するよう指示を出しているとストライクが左肩からビーム兵器を外しこちらに突っ込んで来る。

 

(チッ、まだこっちの準備が出来てないってのに)

 

「やらせはせん、やらせはせんぞー!!」

 

叫びながらバスターの左手でストライクの武器を持っている右手首を、右手で左肩を抑え、動きを止める。拮抗するストライクとバスター。

 

(同じGだからパワーに大差があるとは思いたくないが‥)

 

レバーを握る手にもいつも以上の力が入る。

近接武器を搭載しているストライクとは異なりバスターは搭載していない為、攻撃手段がない。

つまりディアッカは手詰まり状態なのだ。

 

(以前のように不意を突けば倒せる可能性もあるがこのパイロットに二度目が通用するとは思えな  い。ならば俺がやる事は一つだ)

 

「急げ!長くはもたないゼ!!」

 

ディアッカがアスランとニコルに撤退を急がせるも、指示を頑なに拒否するニコル。

 

(おいいぃ!?ニコル、ワガママ言ってないで早くしてくれ!

 機体が先程から軋む音がしているし、警報が鳴りっぱなしなんだからよ!!)

 

そしてついに拮抗は崩れた。

バスターの左肘がショートし拘束が弱まるとストライクは即座に左腕を肩から斬り落とす。

バランスを崩したところに続けざまに頭部を破壊されるバスター。

メインモニターが使用不能になり、サブモニターで外を確認するディアッカであったが次の瞬間、

胸部にビームが刺さる。

 

(ちょっ危ねえ、コクピットギリギリじゃないか!?)

 

そう、バスターの右胸部に刺さったビームは辛うじてコクピットを外れていたのだ。

しかし火花が飛び散りフェイズシフトダウンし武器も使用不能になりコクピット内は火花が出て

警報も出っ放しのバスター。だがディアッカは諦めない。

 

「まだだ、まだ終わらんよ!!」

 

なんとか生きている背部スラスターを全開にし体当たりするようにストライクに組み付いた。

すぐにコクピットシート腰付近にあるコンソールに自爆コードを入力しハッチを開放し脱出する。

 

(任務、了解)

 

心の中で某主人公をパクった罰なのか予定よりも早くバスターが爆発してしまった。

そこで俺の意識は途切れた。

 

――――

 

「なるほど、ね‥」

 

(しかしよく無事だったな、俺。これもコーディネーターだから助かったのか?)

 

「で?親父が居る理由にはならないと思うが」

 

『親が子を心配するのがそんなに不思議か?』

 

「‥‥」

 

押し黙る俺。俺が聞きたいのはそういうことじゃないのだが‥

しかしなるほど、それで親父が代表を務めるフェブラリウス市に運ばれたわけだ。

このコロニーは基礎医学・臨床医学専門のコロニーだしな。

 

『それに、だ‥』

 

言葉を切りディアッカを見詰めるダット。

 

「それに、なんだよ?」

 

『女子(おなご)を庇うとは天晴れだ!よくぞやった!!』

 

「うん?」

 

両手を胸の前で組み親父は言う。

 

『お前はブリッツという機体を庇ったのであろう?

 聞けばそれに搭乗していたのはアマルフィの奴めの一人娘だというではないか。

 いや、まさかお前がそんな行動をするとは思わなかったのでな‥』

 

(ああ~なるほどね。

 親父は昔から女性は人類の宝だ!とかいうぐらい女性を大事にしていたもんな。)

 

「別に特別ニコルだから助けたってわけじゃない。咄嗟に身体が動いただけだゼ」

 

『何と!?無意識下においても女子を守るとは、流石だなディアッカ!』

 

(親父に褒められるなんて何のフラグだ?)

 

『だが‥』

 

「うん?」

 

『自爆して負傷するとは情けない!気合が足りんぞ!!』

 

「無茶言うなよ!?」

 

『未熟!未熟!!未熟!!!それだからお前は馬鹿なのだぁ!!』

 

(駄目だコイツ、早く何とかしないと‥)

 

自爆しても無事ってどこかのヒイロじゃないんだから無理だろ。

こんなやり取りをしているとノックする音が聞こえ‥

 

「失礼する」

 

男性が1人入室した。そうして入ってきたのは‥

 

「誰?」

 

俺にはまったく見覚えが無い。

 

『おお!アマルフィの、よくぞ来たな!』

 

「アマルフィ?」

 

(ニコルのファミリーネーム、だよな?)

 

『ユーリ・アマルフィだ。君の同僚のニコルは私の娘だよ』

 

「はあ‥」

 

『気の抜けた返事をするでないわぁ!!』

 

今度は左頬を殴られる。痛い。

 

『何故私が?という顔をしているね。もちろん私が訪れたのには理由がある』

 

『娘を助けてくれてありがとう、ディアッカ君!!』

 

そう言うとユーリはディアッカの正面(ベット右側)に立ち頭を下げた。

 

(ええええ!?)

 

「いや、えーと。とりあえず頭を上げて下さい」

 

大人に頭を下げられるのは苦手だ。

 

『娘を助けてくれた恩人に対してこれだけではこちらの気が済まないのだが‥』

 

「いえ、もう結構です」

 

キッパリと断る。

 

「ニコルが無事だった。ならそれでいいじゃないですか」

 

(あの後どうなったか気になっていたがニコルは無事だった‥こんなに嬉しいことはない)

 

チラッとニコル父を見ると

 

『…』

 

無言で体をプルプルと震わせている。何か失礼があったかとディアッカは内心焦るが

 

『‥す』

 

(す?お酢か?)

 

『素晴らしい!!』

 

「うお!?」

 

(顔を上げたと思ったらガシッと両肩を掴まれる。痛えー!!)

 

『なんと素晴らしいんだ君は!!』

 

「ちょ、落ちつ、痛‥」

 

体を前後に揺すられるディアッカ。

 

(ギャー、体がー!!)

 

「自らの身を犠牲にして娘を守ったばかりか、自らの体より娘の安否を気遣うとは!!

 君は、最高だー!!」

 

ユーリさんにハグされる。

 

(勘弁してくれ!もうやめて!ディアッカのライフはゼロよ!!)

 

           

 

  ~しばらくお待ちください~

 

 

 

数分後。ベットで痙攣するディッカ。反応が無い、ただのディアッカの様だ。

 

「いや、すまないね。嬉しくてつい」

 

(つい、じゃねーよ。)

 

「コホン、だがディアッカ君。それほど君に感謝しているということは覚えておいてくれ」

 

「ええ、それはまあ‥」

 

(あれだけハイテンションじゃあな)

 

「今日対面して、短時間ながら君の人となりがわかったよディアッカ君。娘が入れ込むわけだ」

 

真面目な顔をしてそんなことを言うので俺の顔も引き締まる。

 

「ディアッカ君。いや、ディアッカ・エルスマン。君を男として見込んだ。

 君ならば‥いや、君しかいない!娘をどうかよろしく頼む!!」

 

立ち上がりお辞儀をするユーリ。

 

(助けたぐらいで大げさな人だぜ。だがまあ‥)

 

「お任せ下さい!!」

 

頼まれた以上、ニコルのフォローはするぜ。同じ隊に所属できるかわからないが。

 

「そうか、引き受けてくれるか!いや、言ってみるものだな。

 こういうのは本人から言った方がいいのだろうが今は戦時中だし妻も気にしていてね。

 親の私がお膳立てした事を知ればニコルは文句を言うかもしれないが、そのうち分かってくれる

 だろう。ありがとう、ディアッカ君!!」

 

先程の真面目さは吹き飛びハイテンションで喜ぶユーリ。

 

「で、いつ挙げるかね?」

 

「は?」

 

「式だよ、式!まさか君は式を挙げない派かね?」

 

「いや、えっと‥え?式?」

 

『儂は娘っ子がプラントに戻ってきた時点が良いと思うぞ』

 

「ほう、気が合いますなエルスマン議員」

 

『ダットと呼んで下され。今後は家族になるのですからな』

 

「では私の事はユーリと」

 

『うむ、よろしく頼むぞ、ユーリ!』

 

「こちらこそ、ダット!」

 

急に意気投合し握手する二人。気のせいか後光が見える。

 

「あの、式とは何のことですか?」

 

「何を言っているのかね、もちろん、ニコルと君の結婚式の事だよ!!」

 

‥‥‥

 

「な、何だって~!!?」

 

痛みを忘れ体を起こす俺。

 

「ど、どういうことですか!?」

 

「君の事は娘から聞いていると言ったろう?話の中で娘は大層君の事を気に入っていてね。

 親としては複雑だが状況が状況だ、お互いにいつどうなるかはわからない。

 ならば、できるうちにやった方が良いと思ってね。

 君も任せろと言ったではないか、あれは嘘だったのかね?」

 

殺気を感じるほど睨まれるディアッカ。

 

(いや、そういう意味で言ったんじゃないから!どうすればいいんだ俺は‥)

 

「いえ、嘘というわけではなくてですね‥」

 

(考えろ、考えるんだ!!)

 

『男らしく腹を決めんかあ!!』

 

(黙れクソ親父)

 

「それとも娘に不満があるのかね?

 親バカと思われるかもしれないが娘は容姿端麗で家事万能、性格も良しの3拍子揃っている。

 これ以上に何を望む?」

 

「それはわかっていますが‥」

 

ニコルが美少女なのはディアッカにも異論もないが。

 

「他に好きな女性でもいるのかね?」

 

「いません!」

 

ユーリの問いに即答する。

 

(まあ、エザリアさんは好きだけどな!高値の花というか憧れというか何というか。

 この場で言ったら殺されそうだが。さて、ここまで引き延ばしてきたが年貢の納め時らしい。

 誤魔化すわけにはいかないか)

 

出会ってから今日までのニコルとの思い出を振り返るディアッカ。

 

「ふうっ」

 

と一息つき覚悟を決めユーリに言う。

 

「仰る通り確かにニコルは素晴らしい女の子です。自分にはもったいないぐらいに。

 正直言って私もニコルに対して少なからず好意を持っています。

 またニコルからそういう態度を感じたこともあります。『ならば‥』ですが!

 結婚したいかと問われればNOと言わざるを得ません。

 私たちは出会って1年も経たないですし、何より今は戦時中です。

 ニコルも私も10代の若造。吊り橋効果や仲間意識の延長線上の感情である可能性を否定できま

 せん。お互いに面と向かって言葉で気持ちを伝えたこともありません。

 そんな曖昧な感情で結婚すればニコルにとってもマイナスにしかなりません。

 申し訳ないですが今すぐ結婚というわけには‥」

 

まあ、そういうことだ。ニコルは魅力的な少女であるが俺には勿体ないのだ。

怒ったか?とニコル父の様子を窺うと

 

「‥‥」

 

無言で涙を流していた。

 

「そんなに‥そんなにニコルのことを思っていたとは。感動した!!やはり、君しかいない!!」

 

そう言ってディアッカに詰め寄るユーリ。

 

(おい、話聞いてたか?)

 

「わかった、君の意思を尊重し式は延期だ」

 

ホッとしていると

 

「まずは婚約だな!」

 

「え?」

 

「そして終戦後結婚する。うむ、いい感じだ!!」

 

「ちょっと待て~!!何でそうなるんですか!?」

 

『うむ、仕方あるまいな』

 

「親父お前は黙ってろー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、看護師が駆けつけて来てその場はお開きになったのだが‥

 

「MSのテスト、ですか?」

 

『うん』

 

あれから数日経ち俺はユーリさんに呼ばれザフトがGのデータを基に作り上げた新型MSが保管されているコロニーに来ている。

 

「でも何で私に?」

 

『君は連合の最後の1機ストライクと互角の勝負を繰り広げたそうじゃないか。

 しかも砲撃戦用機体にもかかわらずね」

 

「確かにそうですけど‥」

 

「それに今はスピットブレイクの直前ということもあって優秀なパイロットにも限りがある。

 その点、君は復帰しているとはいえ一般的には療養扱いになっているからね。

 こちらの都合も良いのだよ」

 

「なるほど‥」

 

(歩きながら考える。赤服の人間もプラントに残ってはいるがプラント防衛とかで手が離せない。

 しかし新型は従来のMSの何倍も扱いが難しい為、通常のテストパイロットには務まらない。

 誰かいないかー!ここにいるぜー!!つまりこういうことだな。

 仕方がない、所詮俺は評議会の狗。やあーってやるぜ!!)

 

「任務、了解」

 

今回は声に出して言ってみた。

 

「おお!ありがとう。さすがは息子だ!!」

 

「…」

 

(いや、まだ結婚するとは言ってないぜ!だが口には出すまい。)

 

会話しながら歩いていると格納庫前に着いた。

さすが秘密裏に開発された新型機の格納庫だけあって警備も厳重だ。

ユーリさんに連れられて格納庫内に入るディアッカ。

 

「完成している物もあるが一応、一通り紹介しておくと左から

 ZGMF-X09A ジャスティス。 近~中距離戦用機だ。

 これはアスラン・ザラが搭乗予定だ」

 

(アスランかよ!?新型機が貰えるなんて羨ましい。)

 

「その右横にあるのがZGMF-X10Aフリーダム。

 中~遠距離戦用機だ。こちらはイザーク・ジュールが登場予定だ」

 

(今度はイザークかよ!?どんだけ~)

 

「地球軍のMSの技術を取り込みザラ新議長閣下の指示のもと極秘裏に造られた機体だ。

 この2機にはニュートロンジャマーキャンセラーを搭載している」

 

ニュートロンジャマーキャンセラー、つまり核エンジンか。

そりゃ~通常のバッテリー搭載機よりは高性能だよな。

常に発電するからバッテリー切れにならないし。

 

「この2機はテストも終了しあとは最終調整のみとなっている。

 まあ、参考程度に覚えておいてくれ」

 

「はい」

 

「君にテストしてもらいたい機体は別保管なんだ。着いてきてくれ」

 

ユーリの後をはぐれないよう着いていくディアッカ。

侵入防止の為か迷路のようになっているからだ。

 

(しかし核エンジンとはね。Iフィールドとか作られないかな?)

 

「ここだ」

 

着いた先はこれまた厳重な警備だった。だがディアッカには気になる点があった。

警備している者の1人が

 

「あ、あなたが噂の!?」

 

とか口走っていたのだ。

 

「で、これなんだが‥」

 

ライトに照らされ姿を現すMS。

 

「こ、これは!?」

 

「驚いたかね?君には馴染み深いとは思うが」

 

「ええ、それはもちろん‥」

 

そう、ディアッカが見間違えるはずがない。

起動していないので機体全体が灰色で頭部にアンテナ、ツインアイがあるこの機体は‥

 

「型式番号のYMFが示す通りザフト初のGタイプのMSでね。

 最初の1機は諸事情でここには無いがコイツは2号機でね。

 1号機で得られたデータを基にニュートロンジャマーキャンセラーの有効範囲と核エンジン出力

 の調整の為に造られた機体だ。しかし重大な欠点があってね‥」

 

「欠点、ですか?」

 

俺が眺めているとユーリさんによる機体説明が始まる。

 

「実は‥」

 

 

 

 

 

―――結局あのMSのテストは後日することになった。

 

 

なんでもフリーダムの最終調整が前倒しになってしまい、技術陣はそちらに掛かりっきりなってしまうそうだ。ユーリさんが申し訳なさそうにしていたが仕方あるまい。それよりもパイロットがいないのにフリーダムの最終調整を前倒しにした理由の方がディアッカには気になった。

 

『準備はいいかい?』

 

「はい」

 

『いつでも始めて構わないよ』

 

考え込んでいるディアッカに通信室より連絡が入る。

 

「OK.ディアッカ・エルスマン、ゲイツ発進する!!」

 

エアロックが解除されそのまま一気に機体を上昇させるディアッカ。

そのまま宇宙空間に飛び出すゲイツ。

 

「グレイト!これはすごいゼ!!」

 

そう、ジンなんて目じゃないほど凄いのだ。何故ディアッカがゲイツに搭乗しているのかというと

 

――――――

 

「ゲイツに?」

 

『ああ、先程ロールアウトしたばかりでね。

 アレの代わりと言ってはなんだがこちらは完成しているから動かすのに人もアレ程必要ではない

 しね』

 

「私は構いませんよ。量産機とはいわば誰でも乗れる専用機ですから。

 それに私はジン・シグーのファンでして、その系譜の機体であればなおの事

 乗ってみたいと思います」

 

『そうか、すまないね。

 赤服である君の操縦によってもしかしたら不具合を見つけ出せるかもしれないね』

 

「それは買被りかと‥」

 

『そうかな?まあいい、さっそく乗ってもらおう』

 

「了解しました!!」

 

というやり取りがあったのだ。

 

「うーむ」

 

(バスターとは随分違うな。あたり前っちゃあ、あたり前だが。

 ジンの系統だから機器類の配置も似通っている。しかし流石は新型。

 パワーはバスターと同等もしくはそれ以上ある。

 武器はMA-M21Gビームライフルにシールド、シールドと一体型のMA-MV03

 2連装ビームクローか。まあ、標準的だな。

 エクステンショナルアレスターEEQ7Rという変な武器も腰部に付いているが。

 さて、やるか!)

 

イヤッホーと縦横無尽に数分間コロニー周辺で機体を動かしていると突如警報がなる。

 

「何だ!?」

 

モニターを確認するとスクランブル表示になっている。

 

『ディアッカ君!!』

 

ユーリさんから通信が入る。

 

『フリーダムが何者かに奪取された!』

 

「何だってー!!?」

 

(冗談じゃないぜ)

 

『すでにジン部隊が撃退されてしまった。君の位置から近いはずだ。

 至急フリーダムを止めてくれ!!』

 

そんな無茶な、と思ったが警報が鳴りセンサーがフリーダムを捉えたことを知らせる。

 

「フリーダム、止まれ!!」

 

警告するが無視され突っ込んでくる。

 

「ええい!仕方がない!!」

 

前方から高速で向かってくるフリーダムにビームライフルでビームを撃つが躱されてしまう。

 

「チィッ、こんのー!誰なんだ、貴様!!」

 

さらにビームを連射するが先読みされているかのように全て回避されてしまう。

 

「くそっザフトの新型は化物か!?」

 

なおもフリーダムは接近してくる。

 

(ゲイツだって量産機とはいえ新型だぞ!それにも関わらずこの差‥誰が乗っているんだ?)

 

「射撃が回避される。なら!」

 

左腕に装備した2連装ビームクローを展開する。

フリーダムも腰にマウントされているビームサーベルを抜き接近してくる。

ゲイツは左腕、フリーダムは右手に装備している。こちらはシールド一体型だから防御は出来ない。

 

(先手必勝だぁ!)

 

「うおおおお!!!!」

 

フリーダムの右腕を破壊すべく左斜め上から斬りつける!!

‥‥がしかしフリーダムは回避することもなく、

ディアッカの想定以上のスピードでゲイツの左腕を肘から先を切断した。

 

 

「まだ!」

 

瞬時に両腰に装備している2つのエクステンショナルアレスターを放つゲイツ。

この装備、射程は短いが先端からビームも出せるし不意打ちにはもってこいの装備なのだが‥

フリーダムの胴体を捉えると思われたそれはしかし、またしてもこちらの予想を裏切りフリーダムはその機体を捻り回避してしまったのだった。

しかもその一連の動作の中でエクステンショナルアレスターも破壊されてしまった。

 

「は?」

 

こちらのゲイツに攻撃手段は残っておらず一方フリーダムは無傷。一体どうしろと?

フリーダムは俺の事なんか眼中にないようでそのまま戦闘中域から離脱してしまった。

 

(‥見逃された?」)

 

そう、フリーダムがやる気であったならば瞬殺されていただろう。

だがフリーダムは武器を破壊しただけ。

 

(ザフト本体の追撃を恐れて離脱を急いだ?

 いや、あの強さだ。守備隊なら簡単に全滅させられていただろう。ならば何故?

 急がなければならない理由はなんだ?そもそも何処へ向かった?)

 

『‥君!‥君!ディアッカ君!!』

 

「ハ、ハイ!!」

 

『無事かね?』

 

「ハ、武器は破壊されましたが問題有りません」

 

『そうか。すぐに帰投してくれ』

 

「了解しました」

 

(イカンイカン現実逃避していた)

 

「ディアッカ・エルスマン、これより帰投します」

 

――新型のテストがとんでもない事になってしまった。格納庫にて。

 

『ディアッカ君』

 

「ユーリさん‥」

 

「申し訳ありません、フリーダムを止められず‥」

 

『いや、君はよくやってくれた。相手はフリーダムだしね。

 少なくともジンでは敵わなかったがゲイツではやりようによっては戦えることも証明できた

 しね』

 

「そう言って頂けるのはありがたいですが‥」

 

『なに、そんなに気にする必要はない。

 悪いのはフリーダムを奪取した人物とそれを手引きした者だからね』

 

「我らザフトに裏切り者がいると?」

 

『そう考えるのが妥当だ。君も見たようにフリーダムは厳重な警備のもと保管されていた。

 にもかかわらず、その警備を掻い潜り、エアロックを開放し奪取した。

 これは間違いなく裏切り者がいる証拠だろう』

 

「確かに‥」

 

警備している者が負傷したという情報はない。

ということは犯人は堂々と格納庫に入ってきた可能性がある。

つまり、警備が通さざるを得ない人物、ということになる。そうなると‥

 

「何にせよ、防犯カメラの解析結果が少しすれば出る。

 追跡は専門部隊に任せ我々はこれ以上の奪取を防がねばならない」

 

(そりゃそうだ。これでジャスティスやアレまで奪われたらシャレにならないぜ)

 

「フリーダムの行先はわかったのですか?」

 

『うむ。先ほどカーペンタリアからのシャトルがすれ違ったとの報告を受けている。

 地球で間違いないだろう』

 

「地球‥連合だと思いますか?」

 

『そうは思いたくないけどね』

 

「『…』」

 

2人して沈黙する。

 

『‥さて』

 

先に沈黙を破ったのはユーリさんだった。

 

『今日はもう帰って休みなさい。病み上がりに付き合わせて悪かったね』

 

「いえ、ですが」

 

『休みなさい、そして回復した暁にはニコルを頼む』

 

頭を下げるユーリ。

 

「もちろんです、連合から奪還してみせますよ!!」

 

自らを鼓舞しそう宣言するディアッカ。

実は今回のMSのテストは表向きの理由で本当の目的はディアッカが新型機の慣熟訓練を行い、

それが終了次第、アークエンジェルの捕虜になったニコルを奪還する事だった。

 

『すまない。親バカと言われようが私達にはニコルが‥

 だからそのためにザラ議長へ特務隊転進を推薦したし、新型MSのテストパイロット扱いにもし

 たのだから。無論、君を信頼しているからこそだ』

 

「わかっています、お義父さん。ニコルは必ず俺が助けます」

 

『ありがとう』

 

 

 

――――こうしてディアッカは特務隊所属になりアークエンジェルを追うことになったのだが果たしてディアッカとニコルにどのような再開が待っているのか。

 

 

 

 

 

 




原作ではニコルの死をきっかけにNJC搭載を決めるユーリですが本作では捕虜になったことで搭載を決意します。原作よりも理由が軽いですがそれはアレです。

ご都合主義です。または話の都合上ともいう。

この作品はそんなノリですから仕方ないですよね。

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