IS~転~   作:パスタン

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第二話あたります。
皆様が楽しんでいただければ幸いです。
ではどうぞ


お祝いの食事会with束さん

「……姉さん、不器用だね~」

 

「う、仕方ないだろう。初めてなんだから……」

 

 どうも、最近うちの料理が手作りになってきた織斑一夏でございます。今は、餃子を製作中なのだが…、この姉は何か餃子に恨みでもあるのだろうか?本日破った餃子の皮これで6枚目である。

 

 さて、あのあと入学式も滞りなく終わった。結論から言えば箒ちゃんを見ることは出来たが、会話をするような雰囲気ではなかった。それもそうだろう。いきなり初対面の女子に声を掛けるなんてこの年齢の視点で考えれば勇者も良いところである。というか、空気読めない人間ではないだろうか?そんな大人な思考が出たが、まぁクラスは同じだし焦らずにゆっくりと友好関係を築いていこう。

 

 目下の悩みといえば…今日は、食事にありつけるのか?ということだろう。

 

「今度こそ~、ぬぉ!また破けた、なぜだ、何がいけないのだ!?」

 

「だから中身の餡を詰めすぎなんだってば、その半分でいいの。姉さんは本当に不器用だね家事限定で。」

 

 どう考えても包めないであろう大量の餡に悪戦苦闘する我が姉の織斑千冬。何でもこなせそうな千冬姉さんであるが、家事は苦手な部類に入るのだ。特に料理に関してはダメダメであった。

 

 最初の頃は本当にひどかった…包丁を持たすと食材と一緒にまな板が真っ二つ、フランぺなどしていないのにフライパンの中で炎が燃え盛る。…やべ、ちょっと涙出てきた。しかしこうやって姉弟で過ごす内に分かったことがある。姉は割と暖かい性格をしているのだ。剣道をやっている分どこかしらで好戦的あるいは冷徹な部分は出るのだろうが家ではそう感じない。割かし笑顔を見ることが多いのだ。オンオフの切り替えが上手なのだろうか。

 

 とにかく原作も当てにはならない、やはりアニメはアニメなのだろう。そんなことを考え少し溜息をつきながら餃子を作る手は休めない。こりゃまた家事スキルがアップするな。

 

「そうなんだよ、ちーちゃんって意外と不器用だから~、君も大変だね~」

 

「まぁーそれでも大切な姉さんですからね。良いと思いますよ。これで」

 

「おお!!余裕な発言だね。束さん感心したよ~」

 

 いやいや、それほどで…あれ?何故会話が成立するのだろうか?しかも左側から声が聞こえてきた。ここで現在の状況を確認しよう。場所は織斑家1階のリビングの大きな机の前、位置関係は俺が中央に座り千冬姉さんは右側に座っている。お分かりいただけるだろうか…左側から声が聞こえるなどあってはならないのだ。幽霊という雰囲気ではない…しかも前世でこの声はよく聞いたことがある。俺は恐る恐る左側を振り向くと、そこにいたのは一人の女性である。

 

 具体的に述べると、背中ぐらいまである淡い紫色の髪、目元が少し垂れているが十分に美人で通る顔立ち、肌は少し白めで服装は不思議の国のアリスのような所謂ドレスである。最後にトレードマークであるメカニカルなウサ耳。覚えがある。

 

 この人こそ未来のIS開発者であり稀代の天才(天災)篠ノ之束(しのののたばね)その人なのだ。しかもなぜかメッチャ綺麗に餃子を作っている。すげーなこの人、作る速さもだが本当に形が綺麗だ…店で売れるレベルだぞ。

 

 そんな若干ズレたことを考えながら彼女を見ていると突然俺の頭の上を手が矢のように駆けていき束さんの顔を掴んだのだ。

 

 これがアイアンクローなのか…一瞬何が起きたのか分からなかった。

 

「束…。貴様なぜここにいるのだ?」

 

「いや~箒ちゃんの入学祝いも終わったから愛しのちーちゃんの弟君を見に来てみましたよって、いたたたた!!ちーちゃんやめてー。束さんの頭が『パン』って破裂しちゃうよ!!全人類の宝が今まさに破裂しちゃいそうなんだよ!?」

 

「やかましいわ!!このさい『パン』でも『ボン』でもなってしまえ、この腐れウサギがーー!!!!」

 

「にゃぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

~~しばらくお待ちください~~

 

 

 

 

 とりあえず収拾がついたが大変だった。悪鬼へと変貌した千冬姉さんを止めるのに10分、ようやく怒りの炎が鎮火しかけたところに「うぷぷぷぷ~、やっぱりちーちゃんは弟君に弱いね~」と某ぬいぐるみ学園長ばりの笑い声で超高校級の頭脳から飛び出たダイナマイト級の挑発を鎮火しかけた火種に投下しようとする束さんを止めること10分である…。

 

 そして現在、3人で仲良く餃子作り励んでいる中で千冬姉さんが口を開いた。

 

 

「はぁ~…いきなり取り乱してすまなかったな一夏。紹介しよう、こいつは同級生の篠ノ之束だ。ほら束、自己紹介くらいしろ」

 

 もはや姉の中には、彼女を追い出すという選択肢はないのだろう。というか不可能なんだろう。

 

「オーケーちーちゃん。ハロハロ弟君。私が天才科学者の篠ノ之束さんだよ。ブイブイ~」

 

 分かってはいたが随分と個性的な挨拶だ。チラッと姉を見るが溜息をついて首を振るばかりである。「これ以上は期待するな」ということが言外に伝わってきた。

 

「初めまして織斑一夏です。ん?そういえば篠ノ之って…」

 

「そうだ束は、お前と同じクラスの篠ノ之箒の姉だ」

 

「イエース!そういえばいっくんはキュートでビューティフォ―な我が妹である箒ちゃんと同じクラスなんだよね?」

 

「はい。まだ話したことはないけど…というかいっくんって?」

 

「一夏じゃ長いじゃんよ。てな訳でいっくんなわけよOK?」

 

 良い笑顔でサムズアップしながら答える束さん

 

「…こいつは、気に入った人間をあだ名で呼ぶ癖があるんだ。それ以外の奴は、人間とも思わんからな」

 

 言葉少なめに補足を入れてくれる姉さん。さっきの会話の中で俺のどこを気に入ったのだろうか…?

 

「あと私のことは束姉さんと呼ぶように、てか今すぐ呼んでみ?ハリハリー!」

 

 …何を言っているんだこのウサ耳は?このカオスな雰囲気で呼べってか!?何の罰ゲームだよ!!未だに自分の姉ですら「姉さん」と呼ぶことに気恥ずかさを感じているというのに…

 

 ここら辺は原作通りの性格なんだな~。破天荒というか天真爛漫というか…。

 

 いや落ち着け俺、こんな時はクールになるんだ。チラッと右にいる姉を見た。

 

「そうだ千冬姉さんなら何かこの状況を打開できる解決策があるのではないか」という淡い期待を込めて…すぐに首を戻した。

 

 …見なければよかった。どこを見ているか分からない目は瞳孔が開き、まばたきもしていない。左側を見る。相変わらず期待を込めた笑顔の束さん…だが薄く開いたその目からは底なしの闇が見えたような気がした。

 

 今の状況を例えるなら「前門のハーデス後門のポセイドン」である。ちなみに俺の装備はダンボールの聖衣だ。圧倒的な絶望感…そんな中で俺は決断した。何を迷っている織斑一夏!危ない橋一本渡れない男がこの世界で生きていけるのか?否!!断じて否である!!どうせ死ぬなら…強く言って死んでやる!!

 

「……………た、た、束姉さん」

 

 蚊の鳴くような声だが確かに言った。誰も何の言わない…。永遠とも思える時間が過ぎていきそれに比例するかのように自分の顔が真っ赤になっていくのが分かる。

 

 …そして時は動き出す。

 

「うぉーーーいっくんの恥ずかしがったカオーー!!!イヤッホーーー最高だぜーー!!」

 

 そう叫んだと同時に彼女は俺の頭を豊な母性で抱きしめるという行動にでた。他者から見れば何とも羨まケシカラン状況だがこっちはそれどころじゃない!ちょっま、息が出来ない!肩を叩いてやめるように促すが、効果なし。だ、誰か、助け、て…

 

「何をしとるかーーーーー」

 

 突如襲った怒声と衝撃は、俺の拘束を解くには十分であった。

 

 息を整えつつ最初に目に映ったのは文字通り「鬼」になった千冬姉さんだ。

 

「た・ば・ねぇ~、貴様何をしてくれてるのだ?」

 

「えっ、えへへ、やってやったゼ☆」

 

「コ・ロ・ス」

 

 もはや語るまい。このあと訪れるであろう未来予想図など誰から見ても明らかである。

 

 俺は出来あがった餃子のトレーを手に持ちキッチンに向かい料理を開始する…束姉さんの断末魔をBGMにしながらである。

 




色々とネタを入れてみましたがいかがだったでしょうか?
ではまた次回

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