ではどうぞ・・・
「見てあの子よ。世界で最初の男性IS操縦者」
「しかも千冬様の弟なんだってさ」
「私、声かけてみようかな〜」
「あ、抜け駆け禁止だよ!」
どうも、織斑一夏です。
現在SHRと1時間目の授業が終わり休憩時間に入っているが、正直全然休めていない…。廊下は人の山ができている。勿論目当ては俺だろう。チラッと視線を廊下にやると皆して明後日の方向を見てるし…。
はぁー…お願いです。誰か私をここから連れ出してください。
そんな俺の願いが通じたのかポニーテールをした一人の女子が心配そうな表情で近づいてきた。
「大丈夫か一夏?」
勿論その正体は箒だ。
「いや〜、かなりきつい…」
苦笑いを浮かべながら答える
「外の空気でも吸いに行こう。多少なりとも気も紛れるだろう」
「そうだな。じゃあ行こうか」
俺たちが廊下に出ると人の山が分かれ「道」ができ、そんなんで屋上までは楽に行くことができた。
〜屋上〜
「いやー、助かったよ箒」
はぁ~、海風が気持ちー。
「ふふ、気にするな。しかし…本当に大変な事になったな」
「うん…。色々大変な事もあるだろうけど、大丈夫さ」
箒の方を見ながら笑みを浮かべる
「え?」
「俺は…、夢が出来たから」
そう言いながら海の方を向く
「夢?」
「…」
そうだ。ここはスタートライン。原作一夏と違ってがむしゃらに自分を鍛えた。それでもまだまだ足りない…。心も体も鍛えて俺は…俺は「夢」を叶えなければならない。
決意を新たに、俺は自分の胸の前で拳を作る。
「俺は…、夢が出来たから」
「夢?」
私の問いに答えず一夏は、海を見ながら黙って拳を胸の前に持ってきた。とても真剣な目だった…。
一夏…、お前は何も変わっていない。私がいない間も、きっと自分を鍛えていたんだな。 女尊男卑という世界になり、私は行く先々で男は女の下という風潮が蔓延している光景を目にしてきた。酷い時は男を奴隷として扱う女も多かった。でもお前は…こんな状況にもかかわらず、希望を持って前に進もうとしている。
嬉しい、そして叶うなら全ての人間に伝えたい。私が愛した人はこんなにも誇り高く、勇気を持った人だと自慢したい。
彼の隣を歩みたい。
でも今の自分じゃ一夏には到底釣り合わない。強くならなければ…、そして私も自分の「夢」を見つけよう。ただ一夏の傍にいるだけじゃダメだ。そんなんじゃ一夏に相応しい人にはなれない。この学園生活で見つけよう…。私自身が命を燃やせる夢を、そして姉さんから貰ったこの「力」に恥じない様な自分にならなければ…。
「箒、そろそろ戻ろうか。予鈴がなる時間だよ」
そこには、いつもの優しい顔を浮かべた一夏がいた。
「あ、ああ。そうだな…行こう一夏」
私の決意を後押しするように右手首にある「鈴」が小さな音を出した。
「このように、ISの基本的な運用に関しては現時点で国家の認証が必要となります。協定内のIS運用から逸脱した場合は、刑法によって罰せられるので注意しなければなりません」
淀みのないペースで教科書を進めていく山田先生。よしよし2ヵ月間の成果が出てるぞ~。篝火先生、そして簪、本当にありがとう。
「織斑君、何か分からない所はありますか?」
「え?」
気を使ってくれてるのだろうか?山田先生が訊いてきた。
「分からない所があったら何でも訊いてくださいね。なんたって私は『先生』なんですから!」
うーむ、今のとこは大丈夫なんだが折角だし何か質問しないと山田先生の立場がな~…。
「はい、先生」
「はい、織斑!」
俺が元気に手を挙げると、先生も元気に答えてくれた。山田先生の快活な性格は好感が持てるな~、あと巨乳だし(笑)。
「ISの運用に関して質問なんですが、『例外的に国家の承認がなくISの使用が可能な場合がある』と記載されていますが、具体的な例等はありますか?」
この辺が無難なとこだろうか?俺がそう考えていると、待ってましたと言わんばかりに笑顔になる山田先生。
「織斑君、良い質問ですね!!最も基本的な例を挙げるならば『偶発的に操縦者の身に危険が起きた場合』が通例となっています。皆さんもここはチェックしておいてくださいね」
ふむ、どうやら山田先生に恥をかかせずにすんだらしい。あ、姉さんが少し苦笑い気味だ。どうやら俺の意図がバレていたようだ。そんな感じで授業は進んでいった。
「ちょっと、よろしいかしら?」
「ん?」
2時間目の休み時間、次の授業を準備している中で誰からか声をかけられた。振り返って声の主を確認して見ると、そこにいたのは一人の白人女子だった。ありゃ、セシリアさんじゃん。
セシリア・オルコット
この物語の3番目のヒロインだ。長い金髪を縦ロールにし、透き通った碧眼を持つ。胸は白人女性としては幾分小さめらしいが、それでも一般的な日本の女性に比べればデカイ。イギリスの名門貴族のお嬢様で、過去に両親を列車の事故で亡くし、勉強を重ねて周囲の大人達から両親の遺産を守ってきた努力家だ。男尊女卑の時代だったころから実家発展に尽力した母親のことは尊敬していたが、婿養子という立場の弱さから母親に対し卑屈になる父親に対して憤りを覚えていたらしい。
当初は原作一夏に対しても高圧的で蔑視した態度だったが、クラス代表を決めるIS戦の中で、自分が考える「理想の男」の姿を見せた一夏に好意を抱くようになった。以降は、一夏への態度は180度変わり、代表候補生として培ってきた知識や経験を活かしてISの操縦技術向上の手助けをするという建前で一夏にアタックしている。
プライドが高く、上品な口調と物腰から大人びて見えるが、根拠の無い自信家ぶりを見せたり、何事にもポーズから入る節があったりと、自分を印象づけたいがために無理な背伸びをするなど年相応に子供っぽい面も見せた。俺からすると微笑ましい限りである。あと意外にも友達が多い…主にいじられキャラになっているが。
また、本人に自覚はないが料理の腕は壊滅的だ。視覚的な部分のみを頼りとしており味見もしないため、作る料理は見た目だけは完璧だが味のほうはすさまじいものとなっている。
……………………………………胃薬は十分に用意せねば。
「訊いています?お返事は?」
おっと、少し考えが長かったかな
「聞いているよ。えーと、セシリア・オルコットさん?」
そういうとオルコットさんは笑みを浮かべて口を開いた
「あら、自己紹介はちゃんと聞いていらっしゃったようですわね。そう、イギリスの代表候補生にして、入試主席のセシリア・オルコットですわ。以後よろしくお願いしますわね」
よろしくと口では言っているが、その眼からは明らかな敵意と侮蔑等の暗い感情が見て取れた。どうやら原作通り彼女にとって俺は、お気に召さない存在らしい。
まぁ俺からしたら気に入らない相手に必死に食ってかかる小さな少女の様なものだ。見ていて逆に微笑ましすら覚える。俺はいつもの笑みを浮かべてオルコットさんに語りかける。
「ほぉ、それはすごいな。頑張って努力した結果が今の君なんだな?」
「……え?」
まるで鳩が豆鉄砲でも食らったような表情をするオルコットさん。俺は何か変な事でも言ったかな?まぁ良いや続けよう。
「友人に日本の代表候補生がいるんだが、その子も必死に努力してその地位を獲得したものだから。君もそうじゃないのかと思ったんだが?」
そう、簪は俺へのレクチャーが終わった後に自分の訓練を夜遅くまでやっていた。何かに向かって頑張っている姿は本当に感銘を受けた。そして俺自身も更にトレーニングの量を増やしたのだ。
「えっと、その、あの…」
急にどもり出してしまったオルコットさん。本当に大丈夫だろうか?心配で声をかけようとすると予鈴が鳴ってしまった。
「っ……!ま、またあとで来ますわ。逃げないでくださいまし!!い、良いですわね!?」
顔を真っ赤にしながら捲し立てるオルコットさんに、俺はにこやかに頷いた。やっぱり微笑ましい。
「さてこの時間は、実践において使用する各種装備の特性について説明する。かなり大事な部分だからしっかりとノートを取るように」
説明を始めようとした姉さんが、ふと思い出したように別の言葉を紡いだ。
「すまない、その前に再来週行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めなければいけなかった」
ああ、やっぱりこれだよな。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。代表者になったものは、対抗戦や生徒会が開く会議、委員会への出席等を行ってもらう。まぁ平たく言えばクラス長だな。ちなみに対抗戦は、入学時点での各クラスの実力を測るものだ。加えると1度決まると1年間変更はないからそのつもりでいなさい。自薦他薦は問わないので、意見があるものは挙手するように」
まぁこの後の展開はお決まりだよな~。
「はい。織斑君を推薦します」
「私もそれが良いと思います」
はい、テンプレですよね。
「候補者は織斑一夏。他にはいないか?」
このままスムーズに行けば万々歳なんだが、そうもいかない。
「待ってください!納得がいきません!!」
オルコットさんが机をた叩いて立ちあがった。
「そのような選出は納得できません。大体男がクラス代表なんて恥さらしも良い所です!このセシリア・オルコットにそんな屈辱を1年間味わえと仰るのですか!?」
やれやれ、まるで駄々っ子だな…。代表候補生として自覚ある発言をしなければいけないのに…怒りで回りが見えていないな。
「実力から行けばわたくしが代表になるのは必然ですわ。それを、物珍しさで極東の猿にされては困ります!わたくしがこんな島国まで来たのはISの技術を学ぶためでサーカスをする気は毛頭ありません」
マジでヤバイ…。姉さんは表情には出していないが静かに怒っているようだし、箒に至っては鬼の形相になっている。事はそれだけじゃない。うちのクラスは日本人が多いから周りも良い顔をしていない。しょうがない、少々お灸を据えなければ。
「大体ですね…」
俺は座りながら彼女の発言に割って入った。
「そこまでにしておけ、『三流候補生』」
クラスが凍った。雰囲気で分かる。俺はそれに構わず静かに立ちあがりオルコットさんを見据える。彼女は何を言われたか分からない表情をしていた。
「い、今何と仰ったのでしょか?」
オルコットさんは怒りのあまり体が震えているようだった。だが俺も言ったからには引けない
「聞こえないのならもう一度いってやろう。そこまでにしておけ、この三流候補生め」
それを聞いた途端、彼女の白い顔は怒りのあまり真っ赤になってしまった。
「君は恥かしくないのか?」
「?」
眉をひそめる彼女。どうやら分からないようだ
「国の代表候補生でありながら、他国を平気で侮辱し虚仮にしている自分を恥かしくはないのかと聞いているんだ!!」
思わず大きな声が出てしまった。周囲の女子が少しびくっとした。…後で謝ります。
「代表候補生は、その国をいずれは背負って立つかもしれない重要で名誉なものであり、そして極めて大きな責任がある立場だ。…君の言葉一つで国の信用問題に発展することだってあり得る」
「!?」
「それを君は自覚も無く、自分の思い通りにいかなくなった駄々っ子のように騒ぎ立てる。見るに堪えない、恥を知れ!!」
オルコットさんを見ると言っている事の正しさは理解できているようだが納得はしていない表情だった。それも仕方がないことだろう…。いきなり素人に代表候補生の在り方について説教されても受け入れられるもんじゃないしな。
「け、決闘ですわ!!」
ま、こうなるよな。
「いいだろう俺は一向に構わないが、いかがでしょか?織斑先生」
俺たちで決めても本筋の決定権は先生にあるから指示を仰ぐのも必然だろう。
「ふむ…、こうなってしまっては仕方がない。互いに話し合いでは解決できない状況だろうからな。では勝負は一週間後の月曜日、放課後の第3アリーナで行う。両名はそれぞれ出来うる限りの準備をしなさい。それでは授業を再開する」
さて、色々とがんばりますかね。
いかがだったでしょうか?
感想並びに評価を頂ければ幸いです
ではまた次回