IS~転~   作:パスタン

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皆様が楽しんでいただければ幸いです

ではどうぞ・・・


それからの出来事

 どうも鈴ちゃんから顔パンを喰らった織斑一夏です。あー、まだヒリヒリする…。

 

 あの後、鈴ちゃんの悲鳴を聞いて先生方がやってきた。こうなってくると俺と鈴ちゃんは真実を語るしかなかった。状況証拠に加え、鈴ちゃんが必死に弁護してくれたが前科持ちであるため保護者の呼び出し、つまり千冬姉さんが来ることになった。

 

 忙しい身の上に加え、この騒ぎだ…。俺は、ぶん殴られることを覚悟した。

 

 ところが…鈴ちゃんが千冬姉さんに抱きついたのだ。そして

 

「一夏のお姉さん!!一夏を怒らないでください!一夏を巻き込んだのは私なんです。私を助けただけなんです!!私が騒ぎを起こさなければこんな事にはならなかったんです!!…お願いします!どうか、お願いします!」

 

 そう震えながらも必死に懇願するのだ。 これには、俺も千冬姉さんも呆気にとられてしまった。

 

 姉さんは鈴ちゃんの頭をポンポンと撫でて、俺を見据えてこう言った。

 

「一夏・・・一つだけ聞きたい。お前は、「力」を振るったことを後悔しているか?」

 

 嘘は許さない。そう言外に伝わってきた。俺は真っ直ぐに姉さんの目を見て答えた。

 

「・・・してないよ」

 

 きっぱりと断言する。そしてこう続けた。

 

「俺は誰かれ構わず「力」を振るったりはしない。それは、ただの「暴力」だって思うんだ。・・・でも、自分の守りたいものの為なら幾らでも「力」を使うよ。「力」があるのに何もできない人間には成りたくないんだ。それが・・・俺の答えであり、「覚悟」です」

 

 嘘偽りはない。これは混じりっ気のない本音だ。全てを守る正義の味方になろうだなんて思ったことはない。身の程は弁えている。ただ、手の届く範囲だけで良い・・・その為なら俺は今ある「力」を幾らでも使う。もう「奪われる」だけなのは御免だからだ。

 

 しばらく無言の時間が続いた。そして徐(おもむろ)に姉さんの右手が伸びてきた。俺は目を瞑ってその時を待った。

 

 ピン

 

「あ、イタ」

 

 額に軽い衝撃を感じ、目を開けた。

 

 そこには、所謂「デコピン」の形をとり静かに笑みを浮かべる千冬姉さんの姿があった。

 

「ガキのくせに、生意気にも「覚悟」と来たか・・・いいだろう、この子とお前の覚悟に免じて、今日はこれ位にしといてやるさ」

 

 姉さんは、いつの間にか離れた鈴ちゃんの頭を撫でながら静かに告げ、後ろを向き少し歩いた所で立ち止まった。

 

「成長したな一夏。それでこそ私の弟だ」

 

そう言って、今度こそ歩き去ってしまった。

 

・・・誉められた?

 

・・・・・・・つーか、格好良すぎるよ姉さん!!

 

そんな我が姉の立ち振る舞いに戦慄を覚える俺がいた。

 

 

 

 

 

 一夏が学校で騒ぎを起こしたと聞いた時は、我が耳を疑った。ISの訓練を中断して小学校に言ってみると、そこには痛々しく鼻を赤く腫らした一夏と少女の姿があった。以前聞いた一夏の話から推測するに、この子が凰鈴音で間違いないだろう。

 

 先生方から事情を聞くと虐められていた鈴音を守るために一夏は4人の男子を叩きのめしたということだ。

 

 「力」の使い方は間違ってないが、だからと言って許されるわけでもない。げんこつの一発でもくれてやろうと思ったが、いきなり鈴音に抱きつかれてしまった。戸惑っている私に彼女はこう告げるのだ。

 

「一夏のお姉さん!!一夏を怒らないでください!一夏を巻き込んだのは私なんです。私を助けただけなんです!!私が騒ぎを起こさなければこんな事にはならなかったんです!!・・・お願いします!どうか、お願いします!!」

 

 これには、さすがの私も呆気にとられてしまった。友達とは言え他人の為に、ここまで必死になる彼女の姿を見て私の考えは少し変わった。

 

「一夏…一つだけ聞きたい。お前は、「力」を振るったことを後悔しているか?」

 

 もし一夏が後悔をしているのであればゲンコツ決定だ。それは、その場の雰囲気に流されて「力」を振るう所謂「暴力」と変わりないからだ。だが一夏はキッパリと私に断言した。

 

「…してないよ」

 

 そして、こう言ったのだ。

 

 誰かれ構わず振るう力は暴力であり、自分は守る者の為にだけ力を使う。それが自分の覚悟だと。

 

 …まったく、こいつには驚かされてばかりだ。「力」についての本質を見極め、守るものの為なら「力」を行使することを躊躇わない。この年齢でもうその事を理解しているのだ。

 

 私は未だに抱きついている鈴音を優しく引き離し、一夏に右手を近づける。鈴音が不安な顔をしたので、笑顔を浮かべて「静かに」とジェスチャーで伝えた。

 

 一夏は目を瞑っている。恐らく殴られると思ったのだろう。バカ者め…そう思いながら一夏の額に軽くデコピンをお見舞いした。

 

 慌てて眼を開いた一夏の姿がなんだか可笑しかった。私は笑みをこぼしながら一夏に告げた。

 

「ガキのくせに、生意気にも「覚悟」と来たか・・・いいだろう、この子とお前の覚悟に免じて、今日はこれ位にしといてやるさ」

 

 そう言って、私は一夏に背を向けた。不覚にもこれ以上は嬉しさを抑えられそうになかったからだ。

 

ああ、そうだ一つ言い忘れたことがあった。私はそのままの格好で一夏に告げた。

 

「成長したな一夏。それでこそ私の弟だ」

 

 それだけ言って私は今度こそ、その場を立ち去った。

 

 訓練施設に戻ったら山田君に自慢してやろう。そんな思いを胸に私は歩きだした。

 

 

 

 

 

 俺は今、鈴ちゃんと一緒に帰り道にいる。

 

 いやーあの時の姉さんはマジに格好良かったわ。ありゃー原作で「千冬様」と言われても仕方ないだろう。誰だって惚れるさ~。

 

 所謂「おっぱいのついたイケメン」とは姉さんのことで間違いないだろう。そんなふざけた思考に浸っていると突然鈴ちゃんが声をかけてきた。

 

「……一夏。」

 

「どうしたの鈴?」

 

 ヤベー!!ふざけた思考がばれたか?ゴミを見るような眼をされてたらどうしよう・・・ちょっと興奮しちゃうかも。いやいや!!そうじゃないから!?落ち着け俺!!

 

「えっとね……えっと」

 

 そう言いながら鈴ちゃんは、顔を俯かせ胸のところで人差し指同士をつんつんしだした。

 

……え、何その仕草?古典的だけど鈴ちゃんがやるとすげーカワイイ、なんですか?俺を萌え殺す気ですか!?しばらくそんな状態が続き、やがて意を決したのか真っ赤になった顔をあげてこう言った。

 

「さっきは、本当にごめんね。それから助けてくれてありがとう」

 

・・・・・ユニバーーーーーーーーーーーーーーーーース!!!!!!デレ鈴ちゃんキターーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

 

 そんな思考を御くびにも出さず。

 

「全然。どういたしまして」

 

と俺は言った。

 

「それでね。こんな私でよければ…これからもよろしくね。」

 

 そう言って、鈴ちゃんは右手を差し出してきた。

 

 俺はにっこり笑って。

 

「うん!こちらこそよろしく」

 

と言って、その手を握り返した。

 

その時の鈴ちゃんの笑顔は、ヒマワリのような優しさで満ち溢れていた。

 




千冬さんは格好良い!!異論は認めません

感想並びに評価をお待ちしております。


それではまた次回

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