「俺、シグナム先生と結婚する!」   作:Vitaかわいきつら

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最近ディアーチェが可愛すぎてやる夫系スレ読みあさってます。マテ娘sは可愛いなぁ。

それでは第6話、どうぞ。


第6話

「やだ……」

 

あれからの事。「みんなで一緒に強くなろう」の言葉により、健は新人4人に混ざり訓練をすることにした。もちろん4人のフォーメーション、コンビネーションの邪魔になるようなものには参加せず、個人技術や基礎トレーニングにだ。指導員も数が限られており満足のいく練習はそう出来るものではなく、代わりに4人の練習内容を見て盗むことにした。

特に注目したのはスバル・ナカジマ。敵からの重い攻撃を受けても飛ばされない足の踏み方、防御魔法の使い方。これは健にとってかなり必要な技術だ。

シグナムの一撃は、重い。躱せるものではないし、受けとめるたびあちこちに飛ばされるようでは話にならない。

その他にも同じ接近型の魔導師として見習うことが、多々あるために注目した。

 

けっして、彼女の胸目当てではない。

 

 

「行っちゃやだ…………」

 

 

 

そんな訓練漬けの日々の中、新人4人は丸一日、とはいかないまでも1日近い休みを貰い町に出かけて、そこで大きな争いが起きた。

集団による、レリック強奪。

レリックというのは現在六課が追い求めるロストロギア。以前よりガジェットと呼ばれる機械によりレリックが狙われていたが、今回出てきたのは人型。それが機械であるかは今の状態では断定出来ないが、一連のガジェットによる襲撃と同一犯による可能性が高いのではないか、とされる。

 

仲間を失いかねない戦いもあったのだが、それすらも健の耳には入って来ていない。あくまで保護観察者だからだ。

もっとも、聞かれれば答えるだろうし、話したところでなんらかの罰があるわけではない。ただ報告の義務がない。それだけだ。

 

 

「いっちゃやだぁぁあああ!!」

 

さて、先ほどから駄々をこねる少女の叫び声がこだましているが、発信源である少女はその事件の最中で保護した人物だ。

治療と診断を行い、健と同じく保護という形で六課へ迎えた。

なのはとシグナムが少女の様子を伺いに訪れたところ、えらくなのはに懐いてしまいこうして六課へ連れてきたというのが本来の姿である。

 

少女が泣き叫ぶ理由は、懐いたなのはが仕事で六課を離れねばならず少女と一旦離れ離れになることを伝えたところ、こうなってしまった。

新人4人もなのはのヘルプへ向かったのだが、敢えなく撃沈。さぁどうしよう、というのが現状だ。

 

「だからね、すぐ帰ってくるから。ちょっと我慢してて欲しいな?

 

「やだ!」

 

なのはの説得は全く通じず、繰り返すだけで進歩はない。懐いてくれたことには安心したものの、ここまでになるとは、なのはには予想がつかなかった。

困り果てたところに、一度部屋を訪れ、またどこかへ出ていった健が帰ってきた。手には輪状の糸が。

 

(っと、健くん? それは?)

 

(ちょっと……。上手くいくかわかりませんけど。まぁやってみるだけです)

 

少女の前に座り、糸を見せ付けるように手を伸ばす。糸を両手で器用に組み、指で糸を引っ張ったり、離したり。

目まぐるしく変化する糸の形状に、少女は少なからず興味を示す。

何度形を変えたかわからなくなったころ、ようやく指の動きが止まる。指で支えられ、器用に編み込まれた三角状の糸。

 

「じゃーん、東京タワー」

 

健が作ったのは、「あやとり」での東京タワー。「東京タワー」の意味は少女にはわからなかったものの、少女の気を紛らわす一品には成れたようで。少女の目に未だ涙は溜まっているものの、声を荒げることはなく、ジッと魅入っている。

 

「少しの間、俺と遊ばない? なのはさんがお仕事から帰ってくるまで、これ、教えるから。で、帰ってきたらキミがなのはさんにこれ、教えてあげよう。どうかな?」

 

話す間も、一度崩した糸を再度組み立て、あっという間に次の作品を作る。

 

「じゃーん、亀ー」

 

亀は理解出来たから、なのか。なのはを掴んでいた手を、片手だけ離し糸に向かって手を伸ばしてきた。

 

「どうかな?」

 

伸ばした手を、引っ込める。興味はあるものの、やはりなのはとは離れたくないようだ。そこでなのはは追い討ちをかけた。

 

「ね、ヴィヴィオ。私が帰ってくるまで教えてもらって? 帰ってきたら、私がヴィヴィオから教えてもらうから。どう?」

なのはの提案に、うん、と小さく頷きようやく手を離した。

 

「驚いたなぁ。健くん、子供あやすの上手やねぇ」

 

「うん。私もビックリしたよ」

 

いつの間にか部屋にはフェイトとはやてが増えていた。セリフから察するに、早い段階で部屋に入っていたのだろう。健の様子を見て、邪魔すまいと黙っていたようで、突然背後から聞こえた上司の声に新人4人は大層驚いていた。

フェイトとはやては少女に近寄り挨拶を交わす。なのはが2人を少女に紹介したところで健は口を開いた。

 

「やっぱり女の子ってあやとりとか好きなんですね。試してみて正解でした」

 

「私も小さい時ようやったわ。健くん、よくやり方覚えてたなぁ。私はもう全然覚えとらんよ」

 

「今でも時々やりますからね。道場で小さい子と遊んだりしましたから」

 

健の場合あやとりは最近になって覚えた、が正しい。シグナムに会う前は剣道と球技に夢中で、会ってからはそれどころではなかった。

道場では健のメディアでの宣伝効果からか門下生が多く、小さい子供も多数いる。そういう子とも繋がりはあるし、その為に覚えた遊びの一つだ。

 

「あやとりかぁ……知ってはいるけど、見たことなかったよ」

 

「聖祥でやってた子、いなかったからね。私も小さい時お母さんに教わって、それっきりだなぁ」

 

「へぇー、これなのはさん達の世界の文化なんですか? 面白いですね!」

 

なのは達が思い出を語り、スバルは少女と同等の反応を見せる。

 

(あの、お仕事は……?)

 

唯一冷静だったティアナに念話を送られ、そそくさとなのは達は退室した。

少女がなのはがいなくなり寂しそうにしているのを見て、自分のやるべきことを思い出した。

 

「俺は、健。キミのお名前は?」

 

床に落ちているウサギのぬいぐるみを手渡すと恐る恐る受け取り、しばらく硬直。

健の目を見て、ようやく

 

「ヴィヴィオ……」

 

自分の名を、口にした。

 

子供というのは一度心を許した相手とはとことん仲良くなれるもので、ヴィヴィオは健によく懐いた。

仕事があるにもかかわらず健とヴィヴィオを見守ることにしたエリオとキャロの分のあやとりの糸を用意し、4人で遊ぶこととなった。

ちなみにスバルとティアナはエリオ達の分の仕事を引き受けた為、退出している。

 

ヴィヴィオは賢い子供であるようで、すんなりあやとりの基礎知識を身につけ、1時間程度で「東京タワー」を作りだすことに成功した。といっても健が一手順ずつ教えながらだが。

「出来た!」と健に嬉しそうに見せるヴィヴィオの横で、同じくらい嬉しそうなキャロ。幼くして管理局に勤めているとはいえ、彼女はまだ10歳。地球で暮らす子供に比べれば断然大人びているものの、少女の粋を出ない彼女には、無理もない姿であろう。

 

「東京タワー」を教えた後は複数人でのあやとりのやり方を教えた。一人がまず簡単な型を作り、別の者が両手でいくつか糸を取り、相手の手から外して、自分の手の中で型を張ってみせる、という遊びだ。

型が崩れたりほどけてしまうと負け、という勝負でもあるのだが、それを伝えることはしなかった。協力して長く続けられたほうが、地球の子供には人気があったからだ。

やり方をある程度伝えるとすぐに理解したようで、今ではヴィヴィオとキャロの2人で夢中で遊んでいて、健達はそれを微笑ましく見つめる。

一段落ついたところで、ようやく健の疑問を解消することになった。

 

(ところで、この子はいったいなんなの? なのはさんのご家族かな?)

 

(いえ、実は……)

 

と、エリオによってヴィヴィオが六課に来るまでの経緯を説明された。

 

(それで、母親を探しているみたいんですが……)

 

(ふぅん。お母さんは無事でいるのかな。無事だといいけど……)

 

(どうでしょう……そもそも、母親がいるかどうかすら……この子は、人造魔導師と聞いてますから)

 

人造魔導師というのは、読んで字の如く、人の手で“造”られた人間のこと。地球同様、人間を造ることはこの世界においても禁忌とされているが、悲しいことにこういった違法研究は後を絶たない。

エリオの説明を受け、健はわずかに顔を歪ませる。

 

(親無き子、かぁ。こういうことって、この世界ではよくあること?)

 

(よくあるという程ではないですが、けして珍しいというわけでもありません。現に……)

 

 

――僕自身が“そう”ですから。

 

(現に……?)

 

(いえ、なんでもありません)

 

それを最後に念話は途切れた。健が自分を気遣うだろうと考えたエリオと、なにやら事情があるエリオに対して気遣った、2人なりの配慮だろう。

いまだに続く、あやとりの行く先を見つめるのみだった。

 

 

 

 

あやとりの後、紙をいくつか持ってきて紙ヒコーキを作り飛ばして遊んでいると、なのはとフェイトが帰ってきた。ヴィヴィオはすぐさまなのはに走り寄り、健に小さな嫉妬心を生ませた。ヴィヴィオが置いていったぬいぐるみを渡そうと近寄ると、自己紹介中だったフェイトがそれを使っての巧みな話術で少女の心を掴んだ。

それを見てようやくお役御免になったと判断し、別れを告げて外へ出た。

 

剣を振りながら今日1日のことを思い出す。人造魔導師だという、ヴィヴィオのこと。

親は、おそらくいないだろうとされる。幸せか不幸せかと言うのは本人の決めるところではあるが、親を求めている少女にとっては不幸せなのだろうと思う。

里親を探す方向で動くつもりらしいが、どうなることやら。

こうなったら、いっそ――。

 

 

「剣が弱いぞ、進藤」

 

考え事をしていると背後から声がかかる。稽古に集中出来ていないことを見抜いた人物は、シグナムだった。

 

「考え事か?」

 

「えぇ先生。あの子、ヴィヴィオのことなんですけど……」

 

「ヴィヴィオ? あれがどうかしたか?」

 

はい、と返し、もう一度少女のことを思い出す。

親がいないのならば――。

 

 

 

 

 

 

 

「シグナム先生。あの子の親になってもらえませんか?」

 

 

 

 

「……は?」

 

 

人ならざる者である身のシグナム。シグナムは子を宿すことが出来ない。それは確定であり、今後変わることはおそらくないだろう。

子が必要とは健は思っていないが、シグナムはどうであろう。もしかしたら子が欲しいのではないか。

ならば、親がいないヴィヴィオと、子が出来ない健達との関係はWin―Winではないか?

加えてシグナムが子供を引き取れば危険から少しだけでも遠ざかるようになるだろう、とも。「子供を育てる」ということを些か甘く見ている節があるものの、3人の幸せへ繋がるだろう。

 

健はそう考えた。

 

健が「自分が引き取る」と言わないのは、彼が現段階では「ニート」であるためだ。

 

「何を言っているんだお前は……」

 

「いい案だと思うんですけど……」

 

「私との結婚が決まったわけではないだろう。それに私は……親には向かん」

 

「誰だって最初は親には向いてないと思いますよ。まぁ、先生が今は駄目でしたらはやてさんに預かってもらうとかはどうでしょう?」

 

「……一応、話してみよう」

 

そう残して去っていった。

シグナムが実際にはやてに話したかどうかは、健には分からなかった。

 

 

それからしばらくの時が流れた。

いつの間にかヴィヴィオはなのはとフェイトを「ママ」と呼び、健の目論見はあえなく撃沈。

それでもヴィヴィオが健に懐いていることには変わりなく、なのは達が訓練や仕事で忙しい時はザフィーラと共に面倒をみている。

最近では屋内ではなく外で遊ぶことも増えたため、空いた時間で魔法の練習もすることが出来た。

健がいつも通りデバイスを振るっていると、ヴィヴィオはジッとその様子を見つめている。

 

「それ、たのしいの?」

 

同じ動作を繰り返す健に、そう尋ねた。ヴィヴィオの中では健は「好きなことをずっとやっている人」という立ち位置であるため、こういった鍛練も楽しいものなのかと考えた。

 

「楽しいか……はどうかは分からないけど、好きだからね。こうするのが。ヴィヴィオもやってみる?」

 

少し迷った後、うん、と頷いた。

デバイスをそのまま渡すわけにもいかない為、一旦部屋に戻り地球から持ってきた竹刀を渡しすと嬉しそうに竹刀を持つが……

 

「おもい……」

 

この竹刀は大人用のもので、重さは少女に自由に扱えるようなものではない。子供用の竹刀を用意しようかと思うが、ここは地球でないことを思い出して断念する。

 

「ヴィヴィオには、まだ早いかな?」

 

「むー……」

 

ムキになり竹刀を振り回し、御しきれず転んでしまい、泣き出しそうになるのをあやす健。

 

 

六課には、そんな微笑ましい光景があった。

 

 

 

 

 

そしてその光景は、これからわずか1週間後に壊されることとなる。




ヴィヴィオ「なのはママ、フェイトママ、それからパパ」
健「HAHAHA」

nice boat.

日本人なので「V」の発音が上手くいかず「ビビオ?」「ヴィヴィオ!」「ビビオ?」「ヴィヴィオ!」というやりとりを考えましたがその前にヴィータちゃんがいたことを忘れてました。

さて、次回は六課襲撃戦です。vsディードおっぱい。
本来ルーテシアとガリューが乗り込んでくるところですが……そこはザフィーラの旦那に頑張ってもらいましょう。
早ければあと2話で完結です。ヴァイスとのおっぱい談義をやればよかったなぁといまさら後悔。

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