「俺、シグナム先生と結婚する!」   作:Vitaかわいきつら

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若干はやてがポンコツ仕様。
ご都合主義だよ!

今回の投稿で多分ユニークアクセスが1万超えます。有難うございます。
感謝の18禁話、あるで!(嘘です)


第2話

世界は「管理されている」。

 

 

 

管理といってもそんな仰々しいものでなく謂わば平和の為の監視だ。

 

魔法、科学の文化の発展は人々の生活向上に繋がるが、絶対にプラス面に直結するというわけではない。

事実、成長しすぎた文明は滅びた。

 

その文明の負の遺産、通称「ロストロギア」。

 

ロストロギアは必ずしも人々に悪影響を及ぼすわけではないが、大抵のものは人の手には余るものだ。

 

そういったものの監視、管理や人間や魔法生物の凶悪犯罪を防ぐことを目的とする存在。

 

 

 

時空管理局。

 

 

裁判所と警察を合わせたような組織であり強大な権力を持つが、認識としては「世界のお巡りさん」

程度で構わないだろう。

実際にはそんな可愛らしいものではないが。

前述の通り基本的にやることは、人々の平和のため。

災害の防止や、救助にも力を入れている。

 

 

ただし、管理局法に触れた場合は文化であろうとなんであろうと刑罰を処すのは、いささか傲慢と言えるかも知れない。

 

 

 

時空管理局では強い力を持った魔法使い、魔導士を広く募っている。

あまりに広大な世界を管理するため、常時人手不足なのだ。

そのために、たとえ犯罪者であろうと更正した人物であればスカウトする。

それほど、足りないのだ。

 

シグナムも、かつては犯罪者であった。

 

前に記した通り、彼女は人間ではない。

 

ロストロギアである「闇の書」、それに内包されるプログラム体。それが彼女だ。

 

闇の書は魔力の源、リンカーコアを喰い、全666ページを埋めることで完成する。完成すれば絶大な力を得るとされていた。

 

その魔力を蒐集するために、シグナム達が存在した。

ヴォルケンリッターと呼ばれる、闇の書の守護騎士である。

 

 

闇の書の主に命を受け、彼女達は数多の人から魔力を蒐集した。殺した。

そこに彼女達の意思は関係なく、ただそういう存在であった。

 

いったい幾千の年月を経ただろうか。

新たな闇の書の主となったのが、八神はやてであった。

 

当時、9歳の幼子。

 

八神はやては孤独だった。

幼くして両親を無くし、不幸にも足が悪く友人もいなかった。

そんな彼女の元へ現れたのが、闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッター。

シグナムだけでなく、湖の騎士シャマル、鉄槌の騎士ヴィータ、盾の守護獣ザフィーラの計4人。

 

彼女達は八神はやてに闇の書の存在意義を話した。完成すれば力を得る。不自由な足も、きっと動くと。

 

だが八神はやては蒐集の許可を断った。

代わりに望んだことは、共にいること。

 

彼女は優しかった。優しすぎた。孤独であることを嘆いてもそれを誰にぶつけるでもなく。ただただ受け入れていた。

「他者を傷つけることは許さない」と。

 

 

 

八神はやてと、守護騎士達の生活が始まった。

 

今までの主とあまりにも違いすぎて戸惑うことはあったものの、守護騎士達は新しい主を愛した。

平穏に生きることを許してくれた主を。

 

 

 

健とシグナムが出会ったのは、その平穏な日々の中。

 

日の出と共に起床し、時々主を病院や図書館に送り迎えをし、剣術道場に通い、賃金をもらいお土産を持って帰宅する。

そんな平穏を、彼女達は愛した。

 

 

しかし世界は彼女達に平穏を許さず。

 

八神はやてが闇の書の影響により、命の危機にさらされてしまった。

彼女達は八神はやてとの誓いを破り、蒐集を決意した。

 

シグナムが一時期道場に顔を出さなかったのはこの一件で、健を襲った魔導士は盾の守護獣、ザフィーラ。

 

 

この一件、通称「闇の書事件」は高町なのは、その親友フェイト・テスタロッサや時空管理局の協力もあり解決し、八神はやての命の危機を脱し、同時に不自由だった足にも快復の兆しがたった。

 

時空管理局への奉仕を義務づけられたものの、八神はやてと守護騎士達の新たな人生が始まった。

しかし自分の意思ではなくとも、多くの人々を殺めたシグナム達に実刑判決ではなく、奉仕義務という形で罪を償わせるあたり管理局の人材不足がよくわかる。

 

 

 

 

 

そして現在。

 

 

 

普段は地球から遠く離れたミッドチルダで生活している八神家も地球に来ている。

 

地球でロストロギアが見つかり、それの封印、回収を目的とした仕事だ。

高町なのは等、現在八神はやての率いる部隊、機動6課の前線部隊全員集合している。

地球での協力者であるバニングス、月村と、彼女達と初対面である前線部隊メンバーとの紹介を終え。

ロストロギア捜索の為のセンサー散布等も完了したところで八神はやてが全員を集め、バニングス等の運転する車に乗り込むように命じる。

 

ちなみに、バニングス達は生粋のお嬢様であり普段自分で運転することはほとんどないが、今回は魔法の存在を知る現地人だけでの協力の為に、彼女達自身で運転している。

 

 

十数分車に揺られ、降りたところは。

 

「……ここは?」

 

高町なのはの直属の部下、ティアナ・ランスターが問う。

何も知らされず、「着いたらわかる」の一点張りだったが着いてもランスターにはさっぱり分からなかった。

辺りの民家よりはかなり大きい建物だ。

地球ではない別の世界出身の前線部隊の者にはこれがいったいどういう建築物なのか想像もつかない。

 

「これ、道場?」

 

ランスターの隣にいる高町なのはが呟く。生粋の地球人……というより日本人である彼女には理解出来ているようだ。

 

「あー、アイツか」

 

「何か知ってるの? ヴィータちゃん」

 

高町なのはの部下、ランスターの上司。副隊長の座につく「赤毛の少女」、ヴィータの呟きに高町が反応する。

 

 

 

ご想像の通り、ヴィータはかつてこの道場にシグナムと共に顔を出していた赤毛の少女と同一人物だ。

 

小学生にも満たぬような外見をしていて、10年前から全く変わっていない。

それも彼女が闇の書の一部たる所以だ。

「まー、いろいろあってな。はやて、アイツって魔法文化のこと知ってるの?」

 

「いや、知識はあらへんはずや。せやから皆、魔法のことは内緒な?」

 

ここまで連れてきてやっと開示した情報が「これから会う人物は魔法文化について知らない」ということだけ、という事態に守護騎士達を除く全員が不満に思う。

そもそも、魔法の機密の為にもう少し早く知らせて欲しかった。そう思う前線部隊。

 

 

 

良い笑顔を浮かべる八神はやてと、苦笑いの前線部隊を尻目にシグナムは神妙な面持ちで建物の戸を開く。

 

 

 

風を切るような音が止み、中にいた大柄な男性が振り返る。

手には竹刀、体には防具を身につけている。

面を外せば整った顔立ちの黒髪黒目の青年。

 

進藤 健。

 

「お久しぶりです。シグナム先生」

 

「やはり進藤か……」

 

ここに連れてこられ、この展開は予想出来ていた。

主である八神はやてがここに連れて来た理由も、彼女は何となく理解する。

 

「成長したな、進藤」

 

「『男子3日会わずは刮目せよ』、でしたっけ。そんな言葉があるくらいですから」

 

正確には「男子3日会わざれば刮目して見よ」である。

日本の慣用句であり、元となった中国の三國志演義の原文では「士別れて3日なれば刮目して相待すべし」。

日々鍛練する者がいれば、その人は3日で見違えるほど成長している、という意味である。

 

シグナムが健に言ったのは身長のことであり、ややずれた返答をしたように思える。

 

「はやて、こちらの方は?」

 

「前にちょっと話したやろ? ほら、シグナムに”お熱”の人や」

 

「あぁ……あの……」

 

談話する2人をよそに高町、テスタロッサは八神を含めた3人で疑問を解決する。

その会話が聞こえたのか健はそちらを見やり、声をかける。

 

「皆さん、はじめまして。進藤 健です。シグナム先生の元教え子でよくお世話になっていました」

 

綺麗なお辞儀をする健に対し、その場の全員(バニングスと月村は除く)が自己紹介。

その中で健は2人の少女に注目した。

 

 

1人目はヴィータ。

彼女には見覚えがあった。

それも、今現在の姿そのまま。小学1年生ほどの姿を。

確か、アイスが好きでよくシグナムに着いてきてた子だ、と。

名前までは覚えていない。あの時はシグナムが世界の全てであり、周りのことをあまり記憶していないから。

 

「えっと、ヴィータ、ちゃん?」

 

「ん、なんだよ?」

 

ヴィータは主はやての友人には敬語を使う。バニングスや月村に対する時など。

健は主ではなくシグナムの友人に近いものであり、敬語は使わなかった。

それに彼女自身、健と会話したことも幾度かある。

健はそれを覚えていないが。

 

さて、ヴィータだけでなくそこにいる全員が、健の発言により焦ることとなる。

 

「お姉さんは元気?」

 

「は? 姉?」

 

ヴィータ達は思考を巡らすものの、彼の言葉の意味を理解出来ない。

 

姉、というのは誰を指してのことだろうか。

シグナムが連れてきたのは八神はやて、ヴィータ、シャマルの3人で、全員この場にいる。

では一体誰の事を?

 

「もしかしてはやてのことか? はやてだったらそこにいるぞ」

 

視線で八神の居場所を知らせるも、健は違う違うと首を横に振る。

そして

 

「ヴィータちゃんにそっくりな子だよ。今はたぶん俺と同い歳くらいの」

 

と。

 

健は成長していないヴィータの姿を、かつての赤毛の少女の妹、または娘と考えたわけだ。

赤毛を2つに纏めた姿は印象的であったし、こうしてシグナムと共にいるならばかつての少女と血縁関係はあるだろうと。

 

 

コレにはどう切り返せばいいか全員で悩む。テレパシーのような魔法、「念話」でのやりとりを含め。

この状況を作り出した八神はやてさえも焦った。

まさか「この子は人間じゃないので成長しません」とは言えないだろう。

本来、八神はやては頭の回転力には定評があり、こういった自体に陥るようなミスは冒さない。

だが今回はシグナムのことを想い、気が抜けていたのかもしれない。

 

少しの間沈黙が続き、健も何かを感付く。

 

そんな時、ヴィータが口を開く。

 

「いや、あたしに姉はいねーよ」

と思ったままのことを。

ヴィータが黙っていたのはどう誤魔化すか、ではなく真剣に自分そっくりの女性のことを考えていた、思い出そうとしていたからだ。

結果、正直に答えた。

 

しかし意外にもこの解答が良い方向へと流れを導いた。

 

 

「そっか、俺の勘違いみたいだ。ごめんね、ヴィータちゃん」

 

「あぁ」

 

 

健があっさりと引き下がった。

八神達にはその理由は分からなかったが、とにかくホッと胸を撫で下ろした。

 

ちなみに健の中では。

「あの赤毛の少女はすでに亡くなり、新たに生まれたヴィータはその姉の存在を知らされておらず、周りの一同はそれを隠している」

ということになっている。

沈黙の間は、ヴィータが姉の存在を感知するのを恐れた為に、と考えていた。

 

 

次に健が目を向けたのは、部隊最年少のうちの一人、キャロ・ル・ルシエ。

注目したのは髪の色。

 

単に、シグナムの髪と似たような色をしている為、妹か、あるいは娘か、と考えた。

 

見た目上、とても親子に見える年齢ではないが……シグナムは10年前ですでに20歳前後の容姿だった。

つまり、今は30歳ほどのはずだ。ならば10歳ほどの子供がいてもおかしくない、と。

実際にはシグナムの年齢は30歳どころか老人ですら太刀打ち出来ないほどなのだが。

 

とにかく、キャロがシグナムの娘であるなら健自身の初恋は泡と散りゆく。

チラリとシグナムの指を見ても、指輪はない。

未婚ではあるようだ。

 

「えー、キャロちゃん?」

 

「はい! キャロ・ル・ルシエです!」

 

勇気を出して踏み込む。

元気の良い返事に心が少し、晴れ渡る。

 

「シグナム先生の娘さん……だったりする?」

 

彼女のおかげで少しばかり落ち着けたものの、未だに激しく動く心臓を抑えつけ、問う。

 

「いえ……違いますが……?」

 

「そ、そう。良かった」

 

あからさまに表情を明るくする健。

近くではヴィータが笑いを堪え切れず、吹き出している。

シグナムが親、というのが可笑しく思えたようだ。

 

 

 

 

テスタロッサがキャロ・ル・ルシエと、もう一人の最年少、エリオ・モンディアルの親であることも紹介し、それを終えたところで再び健はシグナムに向き合う。

 

「シグナム先生、約束はまだ有効ですよね?」

 

「まだ諦めないか……。お前では私に勝つことは出来ん」

 

「そんなことはありませんよ。今日の為にずっと、強くなってきたんですから」

 

健は最後の戦いからの3年以上、ひたすらに腕を磨いてきた。

いつかこの輝く月を掴む為に。

 

「まぁいい。ではやるとしようか」

 

彼らの言う約束とは、もちろん。

 

 

 

「えぇ。今日こそ勝って、結婚してもらいますから!」

 

 

 

 

 

道場内に叫び声がこだまする。

その光景も、2人にはなんだか懐かしく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナムも防具を付け、健と対峙している。

 

開始してから5秒ほど膠着状態が続く。

 

先に動いたのはシグナム。

竹刀を僅かに振り上げ面に目がけて打ち込むが、健はそれを竹刀で軌跡を変え、同時に小手打ち。シグナムは素早く竹刀を返し、それを防ぐ。

 

たった1秒にも満たないやり取りであったが、八神家一同と高町なのは以外が驚く。

 

管理世界ではそれほどのスピードではない。

だがここは管理外世界であり、彼は非魔導士だ。魔力での身体強化をしていない、生身の体のみでの力だ。

魔法無しでここまで動けるのか、と感心する。

 

 

八神はやてが前線部隊……というより、新人4人をここに連れてきたのは、シグナムと健の試合を見せる事が目的だった。

魔法の才能抜きでも、努力でコレほどの力を得られるのだと、そう感じて欲しかった。

もっとも健には知らないだけで魔力を持ち、武芸の才能もある。はやて自身、新人一同にも確かな才を感じている。

 

だがこの試合はその才を開花させるきっかけになるだろう、と。

用は、いい刺激になるだろうと考えたわけだ。

 

 

ちなみに高町なのはが驚かなかったのは、彼女の家族が魔力無しで人とは思えない動きをするからだ。

今の健の速度の何倍ものスピード。管理局のエースオブエースと呼ばれる彼女ですら、密閉空間では勝てるか分からない。

そういう人物も、世間に隠れてこっそりと暮らしている。

 

 

 

視点を戻そう。

健が打ち込み、シグナムが防ぐ。

そんなやり取りをすでに10は繰り返している。

シグナムは健の確かな成長を感じていた。3年前であれば最初の1撃で沈んでいたはずだ。

防ぐだけでなく、反撃もしてきた。

 

――強くなったな。

 

声には出さないが、ひたすらにまっすぐな青年に賛美を送る。

 

健も、自身の力に手応えを感じていた。

戦えてる。今までだったら手も足も出なかった。

だが今はどうだ。防ぐだけではなく、しっかりと打ち合えている。

 

 

月に、指先がかかったような気がした。

 

 

 

 

4分は経過しただろうか。

1瞬だけでなく、常時集中しなければならない試合の疲労は凄まじいものだ。

健は疲れを感じているが、シグナムからは疲労の色は見えない。

 

――そろそろ決めないとマズい。

 

健は竹刀を振り上げ、固定。上段の構えだ。

 

以前話した通り、上段の構えは格上の相手には通用しづらい。

シグナムは健より遥かに格上であるが、それも承知の上だ。

彼には策があった。

それは、彼女の手をこちらで選択させること。

 

 

 

足を踏み出し、竹刀を振り下ろす。

凄まじい剣速であるが、これで彼女から一本をとることは難しいだろう。

 

シグナムは、僅かに屈んで健から見て左側に避けた。

そして彼女は竹刀を「彼女の右側」に上げ。

 

 

――来た。

 

健の脳裏に焼き付いた、何十、何百と見続けた彼女の必殺剣。

 

「逆胴」。

 

彼の策は、この逆胴を出させること。

来る手がわかっていれば、対応はそう難しくない。

 

受け止め、そのまま小手に打ち込む。それで決まりだ。

 

 

――俺の勝ちだ!

 

 

必死に手を伸ばし、月に手が届く。後は掴むだけだ。

 

 

だが。

 

 

彼が左側で受け止めるはずの剣は、何故か彼の胴の右側に当たった。

 

確かに逆胴を放っていたはずだ。なのに、どうして。

 

 

健には分からなかったが、シグナムは受け止められると見るや、単純に刀を返しただけだ。

 

その速度があまりにも早く、健には認知出来なかった。ただそれだけの話。

 

 

 

彼が追い求めた彼女の必殺剣は

彼女にとってはただの一振りにすぎず。

 

 

必死に手を伸ばし届いたはずの月は、水面に映る幻影。

 

 

健の10年は、水面を切り裂いただけに終わった。




主人公の人生全否定系SS。


よくわかるとうじょうじんぶつせつめい。

進藤 健
・主人公、イケメン。OPI戦士。

ザフィーラ
・イケメン。

シグナム
・ヒロイン。OPI魔人。おっぱい担当。

フェイト
・尻、ふともも担当。

なのは
・かわいい。

ヴィータ
・世界一かわいい。俺の嫁。

その他
・大勢いる。



真面目な話、ヴィータが地球に帰るのはいろいろと危険が。ゲボ仲間のじいちゃんばあちゃんにあったら大変そうですよね。
それと健はたまたまロリ2人に注目してますが紳士ではありません。彼は潜在的OPI戦士なので。

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