窮天に輝くウルトラの星 【Ultraman×IS×The"C"】   作:朽葉周

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13 IS学園

 

 

IS学園の上層部って、実は頭が悪いんじゃないだろうかと思う。というのも、この学園のクラス割り当て。先ずコレが如何考えても可笑しい。

俺が所属する事となった1年1組。なんとこのクラス、見付かったという男性IS操縦者4人が全員纏めて割り振られているのだ。

コレだけで既にバランス最悪だというのに、今年のIS学園正規ルートでの入学者の中で、専用機持ち二人のうち一人までが一組に入っているのだ。

いや、もう一人のほうが未完成であるというところを見るに、代表候補生で唯一専用機を持っている人間、という事に成る。

で、振り返って現在の1組に存在するのが、男性操縦者四人、専用機持ち3人というとんでもない割り振り、と言う点だ。

しかもこの後、織斑一夏には束さんが手を加えた白式が届く事になっているはずなので、更に専用機持ちが増えるという計算になっている。

ISに関する法知識は齧った程度でしかないが、如何考えても専用機持ちを一つのクラスに集めてしまうのは効率が悪いだろうJK。

現在このIS学園には、一学年に8つのクラスが三学年存在している。一組当りの人数が25~30人。一学年当り220人が三学年で660人ほどの生徒がこのIS学園に在籍している事となる。

その150分の1の男子を、よりにもよって全員同じクラスに集めるとか。いや、管理面を考えれば此方の方が纏めて扱えて楽は楽なのだろうけれども……。

「はい、織斑一夏です。趣味はゲーム、特技は家事全般、ISに関してはほぼ素人同然なので、良ければ相談など乗ってください」

拙いながらも普通に自己紹介を終えた織斑一夏を観察しながら考える。

原作では駄目駄目だったはずの自己紹介。その最中に織斑千冬が復帰する、という流れだった筈だ。が、どうやら織斑千冬は未だ遅れているらしく、教壇に立つ麻耶ちゃんが続けて自己紹介を進めていく。

「ふぅ、さんきゅーデイブ」

「どういたしまして、イチカ」

なるほど、男性IS操縦者のデイビッド・コナーが口を挟んだのか。

「それじゃ、次は……まs……木原くん、どうぞ」

今真幸くんって呼びかけたな……。

「はい。木原真幸だ。趣味は読書とゲーム、ついでに魔改造。コレといって特技は無い。顔のコレはちょっとしたビョーキのせいでつけてるHMDだ。女子の中に男子が混ざって迷惑をかけるかもしれないけど、一年間よろしく頼む」

言いつつ小さく頭を下げる。まぁ、可も無く不可もなく、といったところだろうか。

いや、一つ派手に自己紹介というのでも良かったのかもしれないが、さすがに15~6の少女達の前で実年齢4つ年上、精神年齢は倍ドンな俺がテンション高く自己紹介と言うのも何かこう……。

「デイビッド・コナー。オーストラリア出身の国家所属操縦者です。趣味はインターネットとサバイバル、特技は……サバイバルかな?」

そんな事を考えている内にもどんどん話は進んでいく。

サラッと自己紹介を済ませたデイビッド・コナー。第二の男性IS操縦者。国家所属操縦者とはまた聞かない名前だが。

代表候補とかではなく、文字通りオーストラリア所属のIS操縦者、とだけ覚えておけば良いのだろうか。

「ギル・モーゼスだ。IAMI(イスラエル・アドバンスド・ミリタリー・インダストリアル)所属。射撃とかが特技で、趣味は体を動かすことだ」

そしてもう一人。ギル・モーゼス。第三の男性IS操縦者。

いかにもな感じの細目美形。細身ではあるが筋力は有りそうに見える。何よりも偏見だが、細目の人間は警戒するべきだ。

しかもだ。こう、立ち上る雰囲気と言うか気配と言うか王気(オーラ)と言うか。デイビッド・コナーの方は割りと一般人と言うか、寧ろ白い気配を感じるのだが、ギル・モーゼスのそれは寧ろ黒に近い。横島な、いや邪な気配を感じるのだ。

気配だけで全てを判断する心算は無いが、判断基準のひとつとしてみる為、警戒するには値する。

「すまない、会議が長引いて少し遅れた。諸君、私がクラスの担任をすることになった織斑千冬だ」

プシュッと言う圧搾空気の開放音と共に開かれた教室の扉。其処から現れたのは、我等が担任となる織斑千冬。本当に会議で遅れたのか、それともこのIS学園で迷ったのか。

そんな事を考えながら耳に手を当てる。勿論原作知識を利用した防音対策なのだが……ふむ。

俺の視線の先。扉側一番後ろの席を宛がわれている俺なのだが、この位置からだと教室の中が良く見える。で、そんな俺の視界には、俺と同じく耳を両手で塞ぐギル・モーゼスとデイビッド・コナーの姿が映っていた。

――原作知識で予想した、と見るなら……こりゃ確定だな。

「キャーーーーーーー!!! 千冬様! 本物の千冬様よッッ!!!」

「ずっと、ずっとファンでした――ッッ!!!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に着たんです! 北九州から!!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんてッッ!! 感 激 で す !!!」

「私、お姉様のためなら死ねます!!!」

因みに俺が耳を塞いでいる間に叫ばれたのはそんな内容の絶叫だ。正直完全に無視したいのだが、耳をふさいだ程度では完全に音を防ぐ事はできない。俺の身体スペック的な意味で。それこそ真空のバリアでも作らない限りは。

まぁ然し、世界最強の名を持つブリュンヒルデというのはそれほどに人気が有るのだろう。バルキリーって、一種の死神なんだけどなぁ。

「……毎年よくもコレだけバカ者が集まるものだ」

軍隊風なお叱りの言葉を投げ付ける織斑千冬に、更にボルテージの上っていく教室の空気。マジで住み辛い。

「さぁSHRは終わりだ。諸君等にはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。そして実習だが、基本動作は半月で身体に焼き付けろ。いいか、良いなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ!」

「「「「はい、千冬お姉様!!」」」

「織斑先生と呼べ――ッッ!!!」

なんだこのノリ。

 

 

 

 

 

そうして一時間目の授業。ISの基礎理論云々なのだが、この当り俺は特に問題なくこなす事ができる。

というか俺は束さんのオリジナル超理論を一般人にもわかりやすく汎用化するために色々と手を出しているのだ。寧ろ俺の知らない理論と言うと束さんが現行で開発している最新技術くらいか。

さすがに最近になってくると俺のほうの独自開発で手一杯な為、束さんの技術をチェックするという時間も中々取れない。

因みに俺と束さんの技術特性の方向性なのだが、俺のほうが『ぶっ飛んで入るけれども入門には丁度良い』で、束さんのが『謎のオーバーテクノロジー』と言う感じ。

天才な束さんの独自理論は毒が強すぎて、一般人に広めるには多少の希釈、わかりやすく砕いた説明を入れる必要があるのだ。あー、なんだろう。まるで魔導書の忌まわしき知識みたいな扱いだな、束さんの発明。

頭の中でそんな事を考えていると、休憩時間のチャイムが響いた。その合図と共に一度教室から撤退していく教師陣を見送り、改めて視線を織斑一夏に戻す。

本来の『原作』に沿うのであれば、この後織斑一夏に篠ノ之箒が接触するのだが……。俺の任務の性質上、織斑一夏と早期に接触を取っておく必要がある。ここは一つ、いきなり原作ブレイクをかましてみるかな。

「よう、少年。顔色が悪いが大丈夫か?」

「ん、お、おお。ちょっと授業についていけなくてな。……えっと」

「あぁ、木原真幸だ。真幸でいいぞ」

「俺は織斑一夏。なら俺も一夏って呼んでくれ」

言いつつ握手を交わす。何か教室の外から黄色い悲鳴が響いた気がする。いきなり掛け算が飛び交っているような気もするが無視だ、無視。

「んで、解らないって言ってたけど、具体的には何が解らんのさ」

「あー、いや、このアクティブなんちゃらとか、広域うんたらとか。意味がさっぱり解らないんだよな」

お前は判るか? と言う問いに、一応とクビを縦に振る。

「すげぇな。でもあれ? 真幸って確かニュースを見た限りは一般人だったよな?」

「応、そういう事に成ってる」

「ならなんでISの基礎知識なんて?」

「そりゃ、入学前に参考書を読んだしな。第一、語感で解らないか? アクティブセンサーだとか、広域レーダーとか」

「いや、そもそも何がなにやら……俺は参考書、電話帳と間違って捨てちゃったから……」

頭を抱える織斑。その様は本当に理解の範疇に無いという事を示しているようで。

ふむ。普通、一般人でも多少なりミリタリな知識は持っているはず。そんなミリタリ知識と照らし合わせるなりすれば、ある程度の事は理解できると思うんだけれども……。

「参考書は俺のをやるよ。一通りは目を通したし」

「ま、マジか!? いや、でもお前は良いのかよ?」

「俺は問題ないよ。……で、だ。一夏、ゲームとかするなら、多少のミリタリ用語はわかるだろ?」

例えばセンサーだとか、アクティブ、パッシブ。その程度の英単語くらいはわかるだろう、と言う問いに一夏は首を縦に振った。

「なら、後は単語をつなげれば、アクティブなセンサー、能動的探査装置……って日本語訳すると余計解り辛いな。自動的じゃないセンサーってことに成るわけだけど」

「あ、成程……」

「……もしかしてさ、一夏って未だパニックになってるんじゃないか? 男女比率が1:9を越えてる環境にいきなり投げ出されて」

「あぁ、案外ソレはあるかも。さっきも頭回ってなかったよね」

と、そんな事を話していると、不意に割ってはいる声。

「や、デイビッド・コナーだ。デイブでいいよ。一夏にはさっき挨拶したんだけど、宜しく」

「ああ、木原真幸だ。んじゃ俺も真幸で」

言いつつ握手を交わす。んー、悪い気配はしないし、まぁ安全な奴なのではないだろうか。

何となくその目の奥に言いたい事、もしくは聞きたい事が有る気配を感じながら、とりあえずは話を進めることに。

「んで、一夏の話なんだが」

「ああ、うん。多分一夏って無意識に緊張しちゃってるんだと思うんだ」

――考えてもみなよ。今参考書を間違って捨てたって言うけど、そもそも自分が新しく入る学校の参考書だよ? 教科書に類するものなんだ。余程の間抜けでもそうそう無いことだよ。

まぁ、確かに。幾らなんでも自分がこれから入学する学校の参考書を、古い電話帳と間違って捨てるなんてありえない。

然し実際にやってしまった以上、何等かの要素があったはず。そして今回の場合なんて、語るまでも無くその因子は明らか。

「ま、今のIS学園には幸いにも四人も男子が居るんだ。緊張するにしてもいざとなれば誰かに助けを求めれば良い」

「だね。ボクも真幸も、それにあっちのモーゼスだって居るんだ。女子生徒だらけの中に男子一人、何て状況よりははるかにマシだろ」

だからとりあえず、一つ深呼吸して落ち着け、と。何よりここには、お前の姉さんだって居るんだろう、と。

そういう俺とデイブの言葉に、何処か少し落ち着いたような位置かは、小さく頷いて見せた。

「で、だ。一夏、参考書と、ついでにノートも貸してやるから、とりあえず目を通しておけ。

言いつつ、席に戻り取り出したノートと参考書。実はコレ事前に用意した小道具で、参考書には要点の書き込みが、ノートには素人にでもわかりやすく纏めた要点が記載されている。

因みにどちらも俺のお手製だったりする。

「おぉ、さんきゅー真幸」

「如何いたしまして。ま、席としては俺よりもデイブのが近いし、授業中はデイブを頼りにするべし、だ」

「ああ、本当、そのときは頼むよデイブ」

「ん、その程度ならお安い御用さ」

そういって微笑むデイブに、再び周囲から湧き上がる黄色い悲鳴。うん、無視無視。

「……と、そろそろ次の授業だね」

「ん、もうそんな時間か?」

「いけね、早く席に戻っておかないと、千冬姉ぇの出席簿でまた脳細胞が死んじまう」

そりゃいけないと笑いながら、また後で話そうと別れて其々の席に戻って、改めて教科書を用意したあたりで時限の鐘が鳴り響いた。

如何でも良いけど、教室のドアまで空気圧搾式のSFっぽい仕様なのに、チャイムの鐘は日本昔ながらのソレなんだな、と。そんな事を考えながら、次の授業の用意に取り掛かった。

 

 

 

 

 

「ちょっとよr「フンッ、こんな男が俺と同じ男性IS操縦者とはな。情けの無い男だ」……」

で、二時間目が終わって次の休み時間。机の上でグダっている織斑一夏に話しかけたのは、予想外にもギル・モーゼス。

「ちょっ、アナタ今ワタクシが「既に効いているとは思うが、俺の名はギル・モーゼス。イスラエルのIAMI所属の専属操縦者だ」!!」

「あ、ああ。俺は織斑一夏。一夏で良いぜ、よろしく」

「ふん、……然し貴様、見たところ本当に学業についていけてないみたいだが、それでよくこのIS学園に来る気に成ったな」

「あ、いや……俺は別に来たくてこのIS学園に来たわけじゃ……」

「ふん。貴様、ソレは二度と口に出すんじゃない」

「えっ?」

首を傾げる一夏に、フンと鼻を鳴らすギル・モーゼス。

……あれぇ? コイツ原作知ってる成り代わりオリ主かと思ってたんだけど、何か違う?? もしかしてこの邪な気配と感じたコレって……。

「あー、一夏、彼が言ってるのはさ、このIS学園って入りたくても入れない子も結構居るんだってことだよ」

「そんな中、言い方は悪いがコネで入ったお前が悪びれる事も無く「入りたくなかった」なんていってると、下手すりゃ女権主義者に刺されるぞ、って話だ」

「げっ」

そういって顔を青く染める一夏。自分の失言がどの程度のものであったのか理解したのだろう。

今現在SBF(スペース・バトル・ファイター)やSMS(スペース・マザー・シップ)級が世界各国で就航している中、怪獣対策は決してISだけの特権ではない。

確かにISは優れた兵器ではあるが、ソレ単体では限度がある。故のSBFやSMSなのだが、これらが存在している事で、一世代前の女尊男卑の風潮は大分弱くなっている。とはいえそれでも勘違いした人間と言うのは何処にでもいるのだ。

「貴様等は……デイビッド・コナーと木原真幸か」

「ああ、宜しく。デイブでいいよ」

「俺も真幸でいい」

「ふん。デイビッドはともかく、木原真幸ねぇ?……まぁいい。なら俺もギルと呼べ」

胡散臭げにそう呟いたギル・モーゼス。名前に反応したという事は、そういう事なのだろう。

「それについてはまた後ほど会話の時間を取る。デイブもな」

「あ、ああ?」

「なんだ、何の話だ?」

「一夏にゃあんまり関係ないことだよ。お前は先ず基礎を確り勉強しろ」

「うへぇ」

そういって再びノートに視線を落とした一夏を尻目に、再び視線をギル・モーゼスに向けなおす。

「で、ギル。君何か一夏に用事が有ったんじゃないのか?」

「大したことではない。数少ない同じ男性IS操縦者の顔を拝んでおこうかと思っただけだ……ついでに言えば、俺はIS操縦に関しては一日の長がある。似た境遇の誼として、少し教えるのもやぶさかではない」

「ああ、なるほど」

確かこのギルは、実は一夏よりも先にISに触れていたのだという情報がある。

秘匿されていたとはいえ、早期からISに触れて情報収集をしていた彼は、その分一夏よりも累計登場時間が長く、その分確かに優れているといえるのだろう。

「貴様もだ。頭を下げるのであれば、俺が教えてやらんでもない」

「あー、それじゃ、そのときは頼むよ」

これは、好意なのかそれとも悪意なのか。やっぱりコミュニケーション経験値が足りないのか判別が付かない。

「ちょっといい加減ワタクシのはなs――」

と、そんなところで休憩時間が終わるチャイムが鳴り響いた。

何か背後から聞こえてきた声に視線を向けると、其処には金髪巻き髪と、いかにもなお嬢様スタイルの少女が一人、口をあけてその場に仁王立ちしていて。

「……あれ? 君は……」

「確かイギリス代表候補のウォルコット、だったか」

「そりゃBFFだ。……オルコットさん、何か用事かって、もうチャイム鳴っちゃったけど」

思わず突っ込みを入れてから、改めて問い掛ける。然し肝心のセシリア・オルコット嬢はなにやら肩をプルプルと震わせていて。

「ッッッ!!!! ま、また後で来ますわっ!! お、覚えてらっしゃい!!」

と、声を上げるとそのまま肩を怒らせて自分の机へと戻っていったのだった。

「何だというのだ、アレは」

「さぁ?」

「と言うか、そろそろ俺達も席に戻ろう。織斑先生の一撃は受けたくない」

言って二人に席へ戻る事を促し、自分も自らの席へと戻る。と、丁度そのタイミングでプシュッっという音と共に扉が開き、織斑千冬がその姿を現した。

 

 

 

「それでは、この時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する……っと、あぁ、その前に再来週行なわれるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

教卓に立つのは、前の時間とは皮って織斑教諭。麻耶ちゃんはその脇でノートとペンを手に目をキラキラさせている。相変わらずの織斑千冬ファンだ。

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス委員長だな」

……と言う割に、原作においてそれに選ばれた一夏は、夏休みが終わるまで生徒会長の顔も覚えてなかった様だけど。

「因みにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差は無いが、競争は向上心を産む。一度決まると一年間変更はいないからそのつもりで」

今の時点で……代表候補1、国家所属1、企業所属1、更に俺と言う存在まで居るのだ。結構差はあると思うのだが……まぁ、織斑千冬クラスから見れば大した差ではないのかもしれないが。

織斑教諭の言葉にざわめく教室。視線を一夏に向ければ、正に他人事といった様子でポケーっと織斑教諭を眺めていた。多分「なるやつはご苦労様だ」とか思ってるんだろうな。

「はいっ! 織斑君を推薦しますっ!!」

「私も織斑君を推薦します!」

「いえ、私はデイビッド君を推すわッッ!!」

「赤毛の美男子イイッ!!」

「ばっかアンタ、そんなのギル様に決まってるでしょっ!」

「フィールドを蹂躙する俺俺なギル様……ジュルリッ」

「其処で私はあえて真幸くんを推薦してみるわっ!!」

「敢てってなんだ敢えてって。……いや、まぁそのラインナップの中じゃ俺は地味だけどさ」

実際俺と言う存在はかなり地味に報道されている。織斑一夏のようにセンセーションに報道されたわけでもなく、デイブやギルのように専用機を持ち実績があるというわけでもない。

いわば一夏の二番煎じ。それ故に目立たず、然しだからこそそんな俺こそを狙う人間と言うのも現れる。

「では候補者は織斑、木原、コナー、モーゼスの四人……他には居ないか? 自薦推薦は問わんぞ?」

「ちょ、ちょっと待った! 俺はんな事やら無いぞ!!」

「自薦他薦は問わんと言った。然し、となると……」

――バンッ!!

「納得いきませんわっ!!」

と、織斑教諭が声を漏らす中、そう高く声を上げた少女が一人。金髪ロールの目立つお嬢様キャラ、セシリア・オルコットであった。

「そのような選出は認められません! 大体男がクラス代表だ何て良い恥さらしですわっ! 私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!!」

「なら何故立候補しなかったのだか」

「ぬっ――じっ、実力から行けば私がクラス代表になるのは必然! それをものめずらしいからと言う理由で選ばれては困りますわっ!」

「実力で言えば、ギルやデイブでも十分いけると思うんだが……」

「ぐぅっ――よ、宜しいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき! そしてッ!! それはこのワタクシ、セシリア・オルコットに違いありませんわ――ッッ!!」

途中のギルや俺の突っ込みにうめきつつも、それでも最後まで台詞を言い切ったオルコット。だったのだが……。

「なぁデイブ、代表候補ってのは……」

「読んで字の通り、ISの国家代表搭乗者、その候補生だね」

「つまり代表よりは下と……なら国家代表候補と企業代表、もしくは国家所属ってどっちが上なんだ?」

「…………あ、あはは。まぁ、そういうのは実際やってみないとね?」

因みに常識的な判断で言うならば、代表候補生はエリートではあっても、基本的に専用機を与えられるまではあくまでも候補生でしかない。まぁその点を鑑みれば、セシリア・オルコットは成程専用機も与えられたエリート様なのだろう。

対して企業所属はその高い技術力を求められて企業に所属する事が多く、また多くの実験をこなす為に下手なIS操縦者よりは余程登場時間が多くなりやすい傾向にある。

で、国家所属。言ってしまえば軍属のような物だが、その命令権は政府が保有し、所属は軍とは別、と言う扱いらしい。然し訓練は秘匿されていた――つまり軍と共同で行なわれていたと言うわけで、矢張り下手な代表候補などはるかに上回っているだろう。

実際この三者がどの程度の実力か、と言うのは全くの未知数。本等にやってみなければ解らない、のだ。

と、其処まで考えたところで再び机がバンッ! と叩かれた。

「さっきから人が話してる最中にグチグチグチグチと雄猿どもッッ!!このセシリア・オルコット、話の最中に茶々を入れられること、最高に腹が立ちますわッッ!!」

――あ、キレた。

「先ほどの休み時間もそうですわ! 折角私が話しかけて差し上げようとしたというのにこの私の言葉を無視して自分達だけ延々喋って!! 本当我慢の限界です!!」

そう言いながらバンバンババンとい机を叩きまくるセシリア・オルコット。その姿を見ていた周囲の視線は、険しい物から次第に可哀想な物を見る目になっていって。……いやぁ、なんだろうこの空気マジで。

「大体文化としても後進的な国で暮らさなければ成らないという事自体、私にとっては耐えがたい屈辱で――」

「ふん! そもそも文化的先進国とは何時の時代の話だ」

「因みに、発展具合で言えば、イギリスは先進国の中では中くらいのほうだ。近隣国ならドイツが最先端。イギリスは下手に文化を主張するから発展が遅れてる。IS技術だけは世界的にも上のほうなんだが、SBFやSMSが登場した時点で本等に『それだけ』に成っちまったし」

「ISの技術に関しても、何だかんだで裏でこっちの企業と技術提携してるしねぇ」

「文化的後進国って、少なくとも食べ物の味であの国に劣る所は無いぞ。あ、ローストビーフは美味いけど」

と、叫び続けるオルコットの言葉の最中。何時も通りにギル、俺、デイブ、トドメに一夏と来て、オルコットのその形相がすさまじいことに成っていた。

「け、けけ、けけけけけっ!!!」

「なんだ、壊れたか女」

「けっ、決っ闘! 決闘ですわぁあああああああ!!!!!!!」

と、ついに絶叫したセシリア・オルコット。……だったが、その瞬間まるで瞬間移動したかのように音も無く移動した織斑教諭の鋼の帳簿を頭部に喰らい、そのまま机の上に沈黙してしまった。

あれって歩法の縮地だよな? ツッコミ程度に何高等技術使ってるんだあの人……。

「……あ、マジで壊れたっぽい」

「ふん、軟弱な。口程にも無いでわないか」

「いやいやいや、三人ともオルコットさん弄りすぎだから」

「えっ、俺もか!?」

「一夏のは天然だと思うがなぁ……」

「貴様等もその口を閉じろ。オルコットと同じく沈みたくなければな」

その言葉に、即座に全員が黙り込んだ。いや言葉ではない。彼女の放つ圧倒的な迫力と言う名の凄味ッッ! それが四人を、いやその教室に居た全員を黙らせたっ!!

「ふむ。然し候補者がオルコット含めて五人と言うのは多すぎるな。決闘というのは良いアイディアかも知れん。よし、では総当たり戦……は、回数が多いか。此方で適当にリーグを組んでおく。勝負は来週月曜日、放課後第三アリーナで行なう。各自其々準備を整えておくように」

「「「「イエスマム!!」」」」

「宜しい。……オルコットォ! 貴様何時まで寝ている心算だ!!」

そうして響くゴバッっという、絶対に頭を叩く音ではない轟音が響き渡り、甲高い少女の悲鳴が教室に響いたのだった。

 





■織斑一夏
原作と大体同じ。
■デイビッド・コナー
オーストラリア出身の国家所属操縦者。代表ではない。愛称はデイブ。笑顔の貴公子。書いてたら何時の間にかそんなキャラに。
■ギル・モーゼス
IAMI(イスラエル・アドバンスド・ミリタリー・インダストリアル)所属のテストパイロット。野心家。
■ちょろこっとさん
ちょろい。あと苛めると面白い。
■ジョジョ成分
侵食されるよね。本作も侵食多目。


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