【凍結中】その一握の気の迷いが、邪なものを生んだ(旧版)   作:矢柄

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アゼリア湾とテティス海を隔てる半島と島嶼群。ツァイスから南西に向かって伸びるこの地域は王国の主要な街道から大きく外れ、小さな農村や漁村が転々として存在するだけの辺境地域でしかなかった。

 

しかしながら、そういった立地。王国の南端であり、人の目につきにくいこの土地に利用価値を見出す者もいる。

 

私がそうだ。この辺境の、リベール王国の果てに軍とZCFによる最先端の秘密研究所が存在することを知る王国市民はほとんどいない。

 

諸外国でも帝国軍情報局がもしかしたら何らかの情報を得ている可能性はあったが、強固なセキュリティーによりその全貌を知られることは無かった。

 

ここでは表向きはロケットの研究がなされている。立派なロケット発射施設はよく目立ち、たびたびここから白い煙を上げて、柱のような巨大な物体が天空に向けて飛翔していくのが見えるかもしれない。

 

王立航空宇宙研究所というのがその名前だった。ジェットエンジンやロケットエンジンの燃焼試験、新型航空機の飛行実験、またはロケットの打ち上げ等を行うための研究施設である。

 

だがもう一つ、この地には秘密研究所が存在する。それは航空宇宙研究所から少し離れた島に建設されており、時折大きな船と飛空艇がその場所に訪れていた。

 

こここそが、後に世界を震撼させる新型導力爆弾と名付けられた兵器を製造する研究所、表向きの名は王立航空燃料研究所とされていた。

 

 

「しばらく顔を見せられないですみませんでした」

 

「いえ、博士に全て任せきりでは我々の立場がありませんので。良い経験になりました」

 

「原子炉の状態は?」

 

「臨界を越えてからも安定しています」

 

「なるほど、成功とみて良いようですね」

 

「はい、これでようやく前進できます」

 

「作業員の放射線被曝については?」

 

「博士の考案された対放射線防護服により規定値を下回っています。ですが、どの程度の数値で危険水準なのかわかっていない部分が多いですので」

 

「分かりました。これからも被曝には注意してください。あと、排水にも注意を」

 

「分かっております。しかし、研究員一同、この研究のために命を賭しています」

 

「だからと言って、優秀な人材を消耗していいという話にはなりません」

 

「お気遣い、痛み入ります」

 

 

秘密研究所においては原子力に関する研究がなされており、プロトニウム生産炉が建設されていた。ウランからプルトニウム239を生産し、爆縮式の原子爆弾を製造する。

 

それがこの施設の存在意義だ。原子爆弾の次は水素爆弾であり、重水の生成も行われている。

 

建造したのは黒鉛炉に分類される。減速材に黒鉛を使用するもので、冷却材には純水を利用する。天然ウランを使用し、副産物としてプルトニウム239が発生する。

 

ウラニウムの鉱石はカルバード共和国や東方などから輸入したもので、様々な理由をつけてそれらがこの場所に運ばれてきている。

 

また、海水中からのウラン等の元素を回収する技術についても研究させている。まあ、こちらはモノになるかは分からないが、導力技術の応用次第ではもしかしたらという感じだ。

 

モリブデンやニッケル、ストロンチウム、マグネシウム、銅、鉄、チタン、マンガン、コバルトなども回収できれば資源の自立につながるかもしれない。

 

まあ、国土が狭く、戦略資源が限られるリベール王国にとって海洋資源の開発は視野に入れてもいい選択肢だと思う。特にウランの輸入量は押さえたい。

 

トリウムといった元素と一緒に輸入しているが、これは原子爆弾の原料を知られたくはないからだ。

 

また、この世界では導力技術による空間操作に関する手法が確立されており、放射線の遮断がより効率的に行えるという利点がある。

 

このため、十分に気を付けた設計を行った防護服や施設を使えば、ガンマ線や中性子線すら99.99%以上の遮断が可能だった。これがなければ作業はもっと非効率的になっていただろう。

 

核物理学についてはXも専門外で、詳細な<知識>も存在せず手間取ったが、基本的な理論は提供してくれたので、研究は大幅な短縮が可能になった。

 

少なくとも、どんな元素を使えばいいのか、どういう構造なのか、どうすれば効率よく核燃料を作れるのかが分かっていたのは大きい。

 

放射能や放射線からの防護も困難だったが優秀な研究員がいてくれたのでそれなりの速度で研究は進展している。

 

黒鉛炉も最初は不安定だったが今では安定的に核反応を制御できるようになりつつあった。あるいは近いうちに実用的な原子爆弾の起爆実験を行うことは可能だと考えられた。

 

この施設については情報部による厳選された人員によって運営され、機密は十分に守られ、ごく一部の信用できる将校や女王陛下を除いて知るものはいない。

 

この兵器が原子力を利用した兵器であることをあまり多くの人間には知られたくないのだ。あくまでも大規模導力兵器として誤魔化し切る。

 

爆弾そのものが完成した暁にはレイストン要塞で製造された新型導力爆弾として、軍内部向けに通達されることとなるだろう。

 

これは導力爆弾であることを主張することで、原子力から注目をそらすと同時に、技術的ミスリードを誘う戦略でもあった。

 

 

 

 

七耀歴1195年、私はZCFにおける一つのプロジェクトに関わっていた。高速導力演算器『カペル』の開発である。

 

王国の産業や軍事にかかる技術は大きく飛躍したが、これ以上の発展には高度なコンピューターの存在が不可欠だった。それに、コンピューターというものにも強く興味が惹かれた。

 

カペルの開発にはエリカさんが深くかかわっていて私は最近ツァイスに頻繁に訪れている。ちなみにティータちゃんは5歳になり、良く喋って可愛い。

 

ダンさんに似ておしとやかな少女だが、ラッセル家の血は争えないのか好奇心が旺盛で、可愛くて、素直で、可愛くて、しかも頭も良くて、そして可愛い。カワイイは正義。

 

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、見てください、見てください。できましたよっ」

 

「良く出来ましたねティータ」

 

 

ティータが小さな手で導力駆動の玩具を持ってくる。分解したものを組み立てたのだ。色々と教えてあげると、スポンジみたいに知識を吸収してくれる。

 

まだまだ手先の器用さは足りないが、それでも導力車の模型を見事に作り上げていた。あかん、お姉ちゃんとか呼ばれたら、攫いたくなる。

 

 

「ふふ、エステルちゃんデレデレね。頬が緩みまくっているわ。ええ、でも分かる。理解できる。この子は可愛い。ティータは可愛い。世界一可愛い。ダン、私はこの子を産んで良かった」

 

「ティータは可愛いなあ。ほっぺプニプニで可愛いなあ」

 

「お姉ちゃんくすぐったいです」

 

「エリカさん、この子、お持ち帰りしていいですか?」

 

「ダメよ。この子は私の子だから。むしろ貴女が来なさい。ウチの子になりなさい」

 

 

エリカさん譲りの綺麗な金色の髪と空色の虹彩、くりくりとした大粒の瞳にころころと表情の変わる丸みを帯びた顔。

 

それでいて、エリカさんから受け継いだ整った顔は、将来の美人を約束する超絶的な美少女。可愛い。この子は可愛い。お姉ちゃんとか私を呼んで、とことこと追いかけてくるのが可愛い。究極可愛い。

 

 

「でもすばらしいわ。可愛い幼女が二人戯れるこの光景。まるでここは天国。ヘヴン。アルバート・ラッセル!! カメラを! 導力カメラを持ってきなさい!!」

 

「なんじゃ、まったく…」

 

 

エステル・ブライト8歳。やはり彼女も幼女で、そして最近は女の子らしい服装や仕草を身に着けており、エリカ・ラッセルの大好物の一つになっていた。

 

そんなエステルとティータが戯れる姿は、一部の大きなお友達にとってのエルドラド、桃源郷、アルカディアに等しかったのだ!!

 

 

「ぐふふ、エステルちゃん、ティータ、こっち向いて。お写真とりましょうねー」

 

「ティータ、写真ですよ」

 

「はい、チーズ」

 

「お姉ちゃん、導力カメラ、分解してみたいです」

 

「ふむ、カメラといえば、今度、映画館をつくる予定ですよ」

 

「映画ですか?」

 

「人間の動体視力には限界があるので、写真を高速で入れ替えると、まるで動いて見えるようになるんです。そうですね、ちょっと待ってください」

 

 

そうして私は不要になった紙の束を集めて、その角の部分にパラパラ漫画を描く。そうしてティータにそれを見せた。

 

 

「わ、動いて見えます」

 

「こうやって、写真でも同じように動いた画像を作れるんです。薄いフィルムに写真を写して、光で投影してやれば、大きなスクリーンでたくさんのヒトが一度に動く写真を見ることが出来ます。動いている画像に合わせて音楽や音声を流してやれば、臨場感の溢れる映画の出来上がりです」

 

「ツァイスとグランセルにシアターを作るのじゃったな」

 

「手始めですが。やはり、娯楽は必要不可欠ですので。映画の撮影には軍が協力してくれるそうです」

 

「プロパガンダじゃろう」

 

「ですね。『実録・一年戦役』だとか。アニメ映画も作りたいんですが」

 

「アニメ?」

 

「写真じゃなくて、絵を動かすんです。子供向けの可愛らしいキャラクターを動かして、ファンタジックな作品が作れると思います」

 

 

後のルーアンにおいて多数の映画スタジオが生まれ、そしてゼムリア大陸を一世風靡する映画文化が生まれるのはまた別の話だ。

 

 

「カペルの開発はかなり順調ですね」

 

「ええ、予定よりも早く完成できそうだわ。レーザー加工の実用化が大きいわね」

 

 

レーザーに関する研究により、炭酸ガスレーザーや導力レーザーといったものを生み出すことに成功した。

 

もとは測距儀などの光学観測機器を作るために開発したのだが、そしたらラッセル博士が飛びついて、よく分からない精度で加工できるレーザー加工機が出来上がった。

 

21世紀の地球の工作機械と変わらない精度とか、本当にあの人はどうかしていると思う。

 

 

「カペルについてはすごく勉強になります」

 

「エステルちゃんの飲み込みも早いし、いいアイデアくれるからむしろ歓迎よ。来年には完成するんじゃないかしら」

 

 

高速導力演算器カペルはスーパーコンピューターの一種であるが、その基部の大きさは両手の平に収まる程度の驚くべき小ささだ。

 

高性能な航空機にはデジタル・フライ・バイ・ワイヤを取り入れるべきなので、カペルにはすごく興味がある。ロケットの軌道計算もより速く、より高い精度になるだろう。

 

 

「レーザーもすごいけど、色々と発明してるみたいじゃない。チタンについては助かるけど、炭素繊維強化プラスチックと炭素繊維強化炭素複合材料だったかしら?」

 

「ああ、はい。チタンと炭素関連で。飛行機の構造材を作りたかっただけなんですが」

 

 

クロール法によるチタンの精製と加工技術。炭素繊維、炭素繊維強化プラスチックなどの炭素に関連する素材の研究を行った。

 

超音速飛行機の材料としてチタンは必要不可欠だし、炭素繊維強化プラスチックもまた有用な材料だ。他にもジェットエンジンに用いるタービンブレードのためのニッケル系超合金を開発している。

 

まあ、ニッケル超合金はセレクタを使用して単結晶になるように工夫し、組成はRene' N6の重量組成で形成するが、それでも1050℃を超えると強度が落ちてしまう。

 

(Rene' N6:クロム4.2、コバルト12.5、モリブデン1.4、タングステン6.0、タンタル7.2、レニウム5.4、アルミニウム5.75、ハフニウム0.15)

 

これに対しては炭化ケイ素のレーザーブレーションによる遮熱コーティング、中空構造と導力器による冷却システムの採用によって対応し、1500℃で1000時間の耐用を実現できるはずだ。

 

これでもターボファンジェットエンジンに対応できる程度で、スクラムジェットには少し足りない。

 

炭素繊維強化炭素複合材料C/Cコンポジットは耐熱性が2500℃までその強靭性が低くならないという特徴があり強度も最高であるが、高熱下で酸化に弱いという欠点がある。

 

Xの世界ではコーティング技術の確立ができていなかったために、エンジンの材料としては使用できなかったが、七耀石や導力技術の活用でもしかしたらこの辺りを改善できるかもしれない。

 

 

「でもまあ、今は割とそれどころじゃない状況に追い込まれているんですが」

 

「どうしたの?」

 

「ユン先生に課題を押し付けられまして」

 

「課題?」

 

「はい」

 

「今度グランセルで行われる武術大会で優勝しろと」

 

「は?」

 

 

エリカさんの目が点になる。まあその時、私も一瞬自分の耳を疑った。その次に、この爺さんとうとう耄碌したかと思った。

 

何故ならば吾輩は幼女である。8歳である。お子様である。身長だってまだ136リジュだ。ぅゎょぅι゛ょっょぃというのはアニメやゲームの中の話で、現実に適用されるものではないのだ。

 

 

「そ、それは大丈夫なの?」

 

「わかりません。ラファイエットさんに相談したら、がんばれば優勝できるのではないかと」

 

「ああ、あの元王国親衛隊の。というか、エステルちゃんがんばれば優勝できちゃうんだ…」

 

「はっきり言って自信が無いというか、メイユイさんに聞いてもモルガン将軍に気を付けろとか、そんな事しか言ってくれなくて」

 

「エステルちゃんって、どのぐらい強いの? 昔から剣の練習はしていたみたいだけれど」

 

「分からないです。最近はユン先生に連れられて魔獣なんかを相手にしていますが」

 

「魔獣退治!? 大丈夫なのソレっ?」

 

「そんなに強くなかったですよ。レグナートは別格でしたけど」

 

「レグナート?」

 

「ドラゴンです。ほら、この前のリベール通信で写真が掲載されてましたよね。彼に会ったんですよ」

 

「ド、ドラゴン…、動物学研究部門が騒いでたのは知っているけど」

 

「羽の生えたおっきなトカゲぐらいに思ってたんですけど、喋るんですねドラゴンって。背中に乗せてもらったんですけど、すごく楽しかったですよ」

 

「エステルちゃん、貴女が何を言っているのか私には分からない」

 

 

なんというか、リベール各地の色々な場所に連れていかれて、色々な魔獣をかたっぱしからやっつけているが、それがどの程度の敵なのかさっぱりである。

 

カルデア隧道の鍾乳洞の地底湖は綺麗だったな。変なでっかい派手なペンギンがいなければもっと良かったのに。

 

霧降り峡谷では雪男とか氷の塊みたいなのと戦った。まあ、そいつらは特に問題は無かったが、ドラゴンのレグナートがいたのにはびっくりした。

 

友達になって、背中に乗せて一緒に空を飛んだのは一生の思い出だ。ちなみに、父も彼と友達だったらしい。世界とは狭いものだ。

 

ユン先生からは、とりあえずリベール王国で行けない場所は無くなっただろうとお墨付きをいただいたが、それはすごいことなんだろうか?

 

魔獣は強いものもいて、実戦で学ぶことはとても多かった。多かったが、やっぱり不安である。なにしろ、ユン先生には勝てたことが無いのだから。

 

 

「誘拐犯っぽい人たちとは戦ったことがあるんですけどね」

 

「ゆ、誘拐犯!? 大丈夫だったの?」

 

「あ、はい。ユン先生と一緒だったので」

 

「ああ、それなら安心ね」

 

「はい。好きなように戦えと背中を押してもらえました」

 

「あ、貴女の先生が守ってくれなかったの?」

 

「えっと、無理っぽかったら後始末はしてくれると」

 

「……」

 

 

あれは今思い出してもあまりいい思い出ではない。初めて自分の手で人を殺した。それは必要な通過点だったが、ショックは大きかった。

 

それでも、彼らは私の糧になった。情報部によればエレボニア帝国に雇われた猟兵だろうとのことで、現在は外交的な手段での非難が行われる予定だ。

 

 

「銃を持っている相手と剣で戦うとは思いませんでした…」

 

「そうなんだ…」

 

「まあ、切り札もなんとか形になっているので、そうそう無様な試合はしません」

 

「切り札?」

 

「はい。結構、がんばりました」

 

 

 

 

 

 

『これより第53回女王生誕祭を開始いたします。それではアリシア2世女王陛下よりお言葉を…』

 

 

リベール王国初のラジオ放送が開始される。女王陛下のスピーチから始まったラジオ放送は、祝辞を述べた後に、周波数による番組の案内を始める。

 

ラジオではニュース番組やオーケストラや歌劇のコンサート、競馬や武術大会などの中継が行われる予定だ。

 

ZCFとリベール通信の威信をかけた初のラジオ放送のため、スタッフたちはミスをしないように励んでいるらしい。一方私は武術大会に参加していた。まあ、最年少というか、史上最年少というか、出場すら危ぶまれたのだが、軍からなんとかお墨付きを貰って参加することが出来た。

 

実力を証明するために軍の一個小隊を相手にして、正面から50人を倒すのはとても大変だった。でもまあ、相手を殺さず、後遺症も残さずに倒す技術を磨くことが出来て有意義な戦いだった。そうして、なんとか選手として登録出来て一安心といったところだ。

 

この日のために研究よりも鍛錬を重視して、それなりに腕は上がったと思う。父曰く、そこいらの遊撃士よりは遥かに腕が立つと言われたが、果たしてどの程度通用するのやら。まあ、予選の相手は一般的な兵士だったので普通に倒せた。特に苦労した感じはしない。

 

一応、切り札を用意していている。ユン先生には完全な初見殺しと言われ、凶手にでもなるのかと聞かれた。まあ、私もそういう類の技術だと理解しているが、本当の所、暗殺者と言うのはこういう技を使うのだろうか。

 

 

「エステル、頑張って」

 

「応援してるわよ」

 

「はい、なんとか無様な試合だけはしないように頑張ります」

 

「一回戦は遊撃士のヒトらしいね」

 

「確かグラッツさんという方です」

 

 

武術大会は王都グランセルの競技場、グランアリーナにおいて行われる。<記憶>に存在する大規模な競技場に比べれば慎ましやかだが、建物自体は石造りの重厚なものだ。芝の植えられた長方形の競技場。両端には鉄格子の門があり、左右に階段状の観客席がある。

 

そうして、私の順番がやってくる。一回戦第12試合。私は係員の人に呼ばれて競技場へと歩み出た。私が競技場に出ると、観客席がざわめき出す。まあ、普通そうなるでしょう。身の丈の2/3ほどの太刀を持った10にも満たない子供が出てきたのだから戸惑うのも仕方がない。

 

そうして、相手側も出てくる。赤い髪の精悍な青年。若手ながら有能な遊撃士であると聞いている。両手剣を獲物としているようだ。直接打ち合うと刀が壊れそうなので気を付けよう。

 

 

「は…? 子供?」

 

「あ、すみません」

 

 

グラッツさんは目を丸くしている。まあ、本当に本当に仕方がないのだけれど。私でも目を疑うはずだ。グラッツさんも力を出しにくいだろう。

 

 

「えっと、悪いが適当に終わらせてもらうぜ、お嬢ちゃん」

 

「遊撃士のお兄さん、油断は禁物かもしれないですよ」

 

 

まあ、とりあえず初手から全力で。相手は百戦錬磨の遊撃士だ。勝つか負けるかは別としても、良い経験にはなるだろう。私はそうして鞘に納められた刀の柄を握る。八葉一刀流・五の型「残月」。それに師匠から教えてもらったアレンジを加えた一撃。

 

 

「それでは一回戦第12試合を開始します。両者、開始位置についてください。…双方構え。……始め!」

 

 

開始が告げられた。相手は油断していて、隙だらけ。だから、とりあえず私は一気に間合いを詰めて踏み込む。遊撃士は全く反応が間に合っていない。驚いたような表情をよそに、私は一気に抜刀を行う。完璧なタイミング、氣の同調は完全に上手くいった。そして、

 

 

 

 

武術大会、俺は腕試しのためにと参加した。この大会にはクルツさんや他の遊撃士、モルガン将軍などの実力者が揃っているらしく、腕が鳴るというモノだった。そうして迎えた一回戦、その相手は驚いたことに年端もいかない子供。名前はエステル・ブライト。あの有名な英雄の少女だった。

 

英雄とは言っても、彼女の本業は研究者。彼女は飛行機という新時代の兵器を開発し、それによってリベールを勝利に導いた、いわば『智』の英雄だった。だから、何故こんな大会に彼女が出場するのか理解できない。とりあえず、怪我をさせたら大ヒンシュクを買いそうなので、剣を払い落として勝ちをもらおう。

 

そうして試合の号令がかかった瞬間、彼女は驚くべきことに俺の目の前にいた。それはあまりにも速い踏み込み。油断していた俺には、いや、万全の態勢をとっていたとしても対応できたかどうかは分からない。とにかくそれはあまりにも速すぎた。そして彼女の太刀が振るわれる。

 

 

「なっ!?」

 

 

目視することが出来ない程の抜刀術。そういえば、彼女は確か『剣聖』カシウス・ブライトの娘だったはず。まさか、その剣を受け継いでいるというのか。だがそれ以上に俺を困惑させたのは、弾き飛ばされた俺の剣だった。いや、弾き飛ばされたのではない。柄はまだある。無くなったのは、柄から数リジュほど先の刀身全て。

 

 

「遅い」

 

「ごふっ」

 

 

俺の大剣が断ち切られた。その事に唖然とした俺は体を硬直させてしまう。そして次の瞬間、喉元に衝撃が走った。少女は刀を振り抜いた次の瞬間、左手に持った鞘の先端を振り返りざまに俺の喉元に打ち付けたのだ。呼吸が止まり、俺はよろけて後ろに下がる。そして、

 

 

「勝負ありです」

 

 

彼女の刀の刃が、尻餅をついた俺の首にそえられていた。それは秒殺。あっという間の出来事。会場はシンと静まり、そして俺はただ「参った」と言うしかなかった。あまりにも鮮やかであっけない勝負。まるで狐にでも化かされたような気分で俺は両手を挙げた。次の瞬間、観客席が湧いた。

 

控室に戻ると、カルナとクルツさんが待っていた。剣を振るうことさえ出来ずに俺の大会は終わり、そしてあんな負け方では、合わす顔などなかったが、二人は笑顔で迎えてくれる。

 

 

「散々だったね、グラッツ」

 

「ああ、カッコ悪いッたらありゃしない」

 

「油断したなグラッツ」

 

「ああ、だがあの子は…」

 

「強いな。速さが尋常ではない。あれは八葉一刀流だろう」

 

「知っているのか?」

 

「ああ、東方では名の知れた流派だ。あの歳であそこまで使いこなせる者は一握りもいないだろうが」

 

「私ならかなり不利だろうね。あの速度で間合いに入られて、剣まで切り落とすっていうんなら、私の銃なんて一撃だろう。というか、剣を切り落とすなんて出来るものなのかい?」

 

「斬鉄という技が東方に伝わっているそうだ。達人の技だというが…」

 

 

世界最高峰の頭脳にして、達人級の剣の使い手。馬鹿げているというか、途方もない話と言うか、現実感すらない話だ。あの速さは今の俺では対処できないだろう。歯牙にもかけない、鎧袖一触。クルツさんも達人であるが、彼なら彼女と戦えるだろうか?

 

 

「アンタならどう戦う?」

 

「接近戦は不利だな。あの身体の小ささに、あの速さと技の切れ。距離を置いて、法術で対応するしか考えが及ばない」

 

「まあ、次からの参考にさせてもらうさ。負けるなよ、クルツの旦那」

 

 

 

 

一回戦を勝利して、私はエリッサたちがいる観客席へと向かう。すると、エリッサが満面の笑みで抱き付いて来て、少し照れくさい。ティオなどはまたかという呆れた表情で生暖かい視線を送ってくる。まあ、勝ったには勝ったが、相手の実力を出させる前にやっつけたという感じで、あまり戦ったという感じはしない。

 

 

「おめでとうエステル」

 

「圧勝だねっ、エステル」

 

「ありがとうございます、エリッサ、シェラさん」

 

 

「相手が油断していたがな。一回戦を見たところ、お主の敵になりそうなのはモルガン将軍と遊撃士のクルツという男、あとはジョバンニか。しかし、ふむ…」

 

「ユン先生?」

 

 

ユン先生が少し考え込む。最後の方の言葉は上手く聞き取れなかったが、何か気になることでもあったのだろうか。まあ、とにかく注目すべき選手は3人。武神と謳われた勇士モルガン将軍とベテラン遊撃士のクルツさん、そして共和国から参加したというジョバンニという少年だ。

 

モルガン将軍は歳にも関わらずハルバードを豪快に振り回して、出場していた王国の士官らしき人を吹き飛ばしていた。クルツさんという遊撃士はアーツとは異なる法術と呼ばれる魔法のような力を使うみたいだ。槍の使い手としても強そうで、先ほどのようにいかないだろう。しかし、

 

 

「でもなんか複雑だわ。あたしより年下のエステルがこんなに強いだなんて」

 

「あー、まあ、シェラさんもお父さんに師事してるんですから強くなりますよ。ねえ、お父さん」

 

「ん、そうだな。シェラザードはなかなか見込みがあるぞ」

 

 

シェラさんが強くなっているのは本当らしい。鞭を使う戦い方を学んでいるようで、導力魔法と組み合わせた戦い方を念頭に置いているらしい。それに、強い信念を感じると父は評価する。ただし、協調性に欠けていて、遊撃士としての対人交渉能力を鍛える必要ありらしい。

 

 

「このまま順当に勝ち進めば、ジョバンニさんという方と当たるようですね」

 

「ジョバンニには注意せよ。奴は幻術の使い手じゃ」

 

「幻術ですか?」

 

「うむ、見たところはな。あやつは攻性幻術に長けておるようじゃ」

 

 

法術に幻術。なんというか、この世界は思った以上にファンタジーらしい。しかしあのジョバンニという少年、私より年上ではあるが、それでも十分に年若いように見える。共和国から来たと紹介されていたが、得体のしれない感じがする。特に第1試合の時、私をじっと見ていたような。

 

 

「しかし、お前がここまで強くなっているとは思わんかったよ」

 

「最近はお父さんと手合せもしていませんから」

 

 

苦笑いする父。最近はユン先生ばかりに見てもらっているが、たまには父にも鍛錬を見てもらいたい。この人はユン先生と同様に、人間として格というものが違うような気がしてならない。私も父のような境地に立てるのだろうか?

 

しばらくすると、二回戦の試合が始まっていく。王国軍人や遊撃士、外国からの参加者などたくさんのヒトが参加しているが、見たところあまり実力があるとは思えない。まあ、ユン先生や父を基準にしていてはハードルが高すぎるのだろう。それでも、色々な工夫した戦い方を観戦するのは勉強になる。

 

 

「次はモルガン将軍ですね」

 

「相手はクルツという男か。エステル、どちらが勝つと思う?」

 

「そうですね、クルツさんもすばらしい戦士だとは思いますが、モルガン将軍のパワーの前では一対一の戦いは不利だと思います」

 

 

クルツさんはどちらかといえば、法術を使った後衛タイプと言えるだろう。もっと広い、山岳地帯などのフィールドならやりようはあるだろうが、狭い競技場では近接戦闘の強さがモノを言う。クルツさんも奥の手を持っていそうだが、どうなるだろうか。

 

そうして試合が始まった。

 

 

 

 

「………」

 

「モルガン将軍…、武神と称された実力、おそるべき気迫だ。よろしくお願いいたします」

 

 

競技場に二人の男が現れる。一人は軍服を着た初老ながらがっしりとした体格をした男性。彼は巨大なハルバードを軽々と片手で持ち、静かな威圧感を放って現れた。もう一人は痩せ形の体系であるが、隙の無い鋭い気迫を持つ若草色の長髪の青年。彼は精悍な顔つきで前に出た。

 

 

「ぬぬぬぬぬ…」

 

「モ、モルガン将軍?」

 

「この…」

 

「?」

 

「この木端遊撃士風情がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ビリビリと震えるアリーナ。モルガン将軍の恐るべき声量を伴った怒声が会場を揺らしたのだ。父はものすごく苦笑いしている。あ、やっぱり遊撃士嫌いなんですね。お父さんのせいですね、分かります。手紙でも遊撃士には絶対なるなと書いてあったので、嫌いなんだなと思ってたけど、やっぱり大嫌いなんですね。

 

周囲では「流石英雄モルガン将軍だ」とか、「迫力があるな、彼が王国を守っているのなら安心だ」とか肯定的な声がひそひそと話されている。いえ、その、あの人は遊撃士が嫌いなだけなんです。父を盗られて、ものすごい不機嫌なんです。まあその、圧倒的な威圧の前に、クルツさんも少し飲まれ気味だ。

 

 

「なるほど、あれがリベール王国周辺諸国に名をとどろかせる武神か。流石の氣の滾りじゃの」

 

「いえ、だからあの人は…」

 

「ふむ、試合が始まるぞ」

 

 

試合が始まった。

 

 

 

 

「ぬんっ!」

 

「ふっ」

 

 

最初に仕掛けたのはやはりモルガン将軍。いっきに間合いを詰めて、巨大なハルバードを振り回す。クルツはそれを避けるが、あれだけの重量であるハルバードを軽々と振り回す将軍の膂力に感嘆する。大振りでありながら、すぐさま獲物を引き戻し、致命的な隙を生み出すことは無い。

 

だが、クルツも負けてはいない。カシウス・ブライトという天才が遊撃士のトップに君臨したが、しかし彼はそれでもリベール王国の遊撃士のトップの一人だ。ハルバードを避けながら、槍による鋭い突きで反撃を行う。激しい攻防。レベルの高い戦いは観客たちを惹きつける。

 

 

「やはり接近戦では分が悪い」

 

「逃げるか小童っ」

 

 

クルツがバックステップにより後退する。モルガン将軍が追いかけるが、その前にクルツは左手を胸の前にして印を結ぶ。これこそが彼の切り札、法術である。東方を起源とし、七耀教会にも取り入れられているこの神秘の技術は、導力器なしで魔法の如き現象を引き起こすことが出来る。

 

 

「法術・儚きこと夢幻の如し」

 

「ぬっ?」

 

 

突然中空に幻想の槍が生み出される。それは真っ直ぐに切っ先をモルガン将軍に向けると、一気に急降下して彼を串刺しにせんとする。モルガン将軍は間一髪で急所への命中を避けるが、それはモルガン将軍の脇腹を刺し貫いた。夢幻の槍には実体は無く、モルガン将軍に外傷はない。しかし、幻影の痛みが彼の脇腹を貫いた。

 

 

「貰った!」

 

 

動きが止まった将軍に対してクルツは突進を仕掛ける。幻影の痛みは恐ろしい。その威力は急所に当たれば相手をショック死させるほどにだ。激痛は将軍の動きを止めて、大きな隙を生み出した。クルツの手には槍。速攻は突風の如し。無双の技にて武神を討ち取る…はずだった。

 

 

「甘いわ若造!!」

 

「なっ!?」

 

 

しかし、敵は百戦錬磨の武神。数多の戦場を槍斧一本で渡り歩き、無数の傷を負いながらも、容赦なく千の敵兵を駆逐した大英雄。この程度の激痛など彼を止める手段にはなりえなかったのだ。暴風にも似たハルバードの横一線が片手一閃振るわれる。クルツは槍でそれを受け止めるものの、圧倒的な膂力の差に弾き飛ばされた。

 

 

「くっ、強い」

 

 

手が痺れる。なんという腕力。なんという重量。その一撃はグラッツの大剣の比ではなく、まるで巨大な魔獣の突進をその身で受けたような。だが、将軍の攻勢は止まることはない。体勢を整えた瞬間見たものは、将軍から放たれる恐るべき闘気だった。

 

 

「ぬううぅん」

 

「くっ、あれは不味い。法術・貫けぬこと鋼の如し」

 

 

クルツの周囲を白い光の薄い膜が覆う。法術による防御術式。彼の命を何度も救ってきた技だ。そして次の瞬間、将軍がまるで獣の如き俊敏さで飛びかかってきた。恐るべき威力を秘めるだろう上段からの一撃。クルツはそれをなんとか避けようと横に一歩飛ぶが、

 

 

「なぁっ!?」

 

 

大地を穿った上段の一撃。それは強烈な衝撃を生み出してクルツを襲った。なんという理不尽。将軍の一撃は直撃していないにもかかわらず、その衝撃だけでクルツの足を縫い留めてしまったのだ。

 

 

「ぜいやぁ!!」

 

「あがっ!?」

 

 

横一線。間髪入れずに将軍のハルバードが振るわれる。強烈な横薙ぎの連続。それを防ぐ槍が軋みをあげ、両手は痺れ、足がたたらを踏む。

 

 

「むん!」

 

「ごふっ」

 

 

そして次の瞬間、将軍の姿がクルツの視界から消えた。彼には何が起こったのか分からなかったが、それは事前の横薙ぎによって集中力が乱された結果だった。将軍は高速の踏み込みでクルツの死角に入ったのだ。そして連続する強烈な突撃攻撃がクルツを襲った。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…、ヒトが浮いてます」

 

 

最初はなかなか良い勝負だと思ったが、モルガン将軍の怒涛の攻めが始まってから情勢は一方的に将軍に傾いた。高速の連続チャージ攻撃によりダンプカーにでも跳ね飛ばされたかのように、クルツさんがポンポンとリフティングされるサッカーボールのように宙をはねている。凄惨な光景だった。永久コンボ、ハメ技だった。

 

 

「ああああっ!!」

 

 

将軍の咆哮が響き渡る。クルツさんは満身創痍で、なんとか空中コンボから抜け出したものの、膝はガクガクと震え、目は虚ろで、槍を杖代わりに何とか立ち上がろうとしている状態だった。だがここに将軍による最後の一撃が加わろうとしている。将軍は天高く飛び上がり、そして上段からハルバードを思い切り打ち付けたのだ。

 

 

「あべしっ!?」

 

 

爆発が起こった。いや、比喩ではなく、本当に爆発が起こった。どうやら将軍は父と同じ系統の人種らしい。でっかい斧を地面に叩き付けるだけで爆発が起きて、しかもクレーターが出来るというのはどういう了見なのか。哀れクルツさんは吹き飛ばされ、そのまま競技場の壁に叩き付けられて気絶してしまった。

 

 

「しょ、勝負あり!!」

 

 

やはり、この世界の住人は人間をやめている。

 

 





遊撃士さんの活躍があまりありませんね。

実力派なんだぜ的な登場してあっさり倒される、相手の強さを引き立てるための噛ませ犬的な役割を押し付けられる哀れな人。

でもまあ、彼はNice boat.なので。流れること船の如し。泥船事件はこのSSでも再現したいですね。

というか、将軍の強さが異常です。気絶対策なしなら瞬殺ですよね。決め技は<檄獣乱舞>。Sクラフトでした。歳考えろジジイ。ちなみにまだ最愛の孫娘は生まれていません。


12話でした。


エステルさんの新技
<刃合わせ剣断ち(ハアワセツルギダチ)>
攻撃クラフト、CP20、単体、威力120、基本ディレイ値2500、DEF無視の攻撃・遅延・STR-50%
対象と同調する特別な気を刀身にはわせ、敵の武装ごといかなる硬度の物質をも切り裂く斬鉄の技。

いきなり武器をぶっ壊されたら、誰だって戸惑って動けなくなる。そんな遅延効果。五の型「残月」の派生技ということで。



今回は七耀石のエネルギー、導力について。

導力は不思議なエネルギーです。まず、魔法のような不思議な現象を起こすということ。これはRPGにおける魔力に似ていますが、科学的に考察するにはあまりにも理不尽な存在なわけで。

さらにもう一つの特徴が、七耀石から導力を取り出しても、時間と共に回復してしまうという特徴です。この二番目の特徴、考え方によっては恐るべき性質と言えます。

何しろこれはつまり熱力学第二法則、エネルギー保存の法則をどれも無視しているという、すなわち無から有を生み出す、永久機関を実現しかねない存在なわけです。

まあ、これも魔力にはありがちな特性なわけですが。しかし、そういうものです、仕様ですで納得してしまうといろいろ困るわけで。

この導力の自動回復現象のカラクリに何か適当なこじつけでもいいので原理を考察してみようというのが今回の後書きの趣向というわけです。

まず一つ目に考えられるのは、SFの大本命である『真空のエネルギー』でしょう。あるいはダークエネルギーでも構いません。

真空に満ちるエネルギーあるいは宇宙を拡張させるエネルギー。全宇宙の70%を占めるエネルギーを利用するなら、この不可思議な現象も少しは納得できるかもしれません。

欠点は体積当たりのエネルギー密度が低い事。ダークエネルギーと考えればそれは顕著になります。ダークマターの質量をエネルギーに変えていると考えれば良いのでしょうか?

真空のエネルギーなら量子的なスケールでの特殊な原理でエネルギーを取り出しているというのもアリかと。スタートレックですね分かります。

次に考え付くのが地熱エネルギーです。この原作世界では大深度地下に七耀脈という大規模な七耀石の鉱脈が横たわっており、これが地殻変動などに大きく影響しているとの描写があります。

なら、本来のプレートテクトニクスの原因である地熱はどこに行ったという話になるわけで。

ならこう考えましょう。天然放射性元素の崩壊によって生じる莫大な地熱を七耀脈が導力に変換しているのだ…と。

そして七耀脈にて飽和した導力はなんらかのこの世界独特の物理的相互作用でエネルギー準位の低い七耀石に供給される。

第二の考察に基づくのがこのSSにおける導力と運動エネルギーを相互変換するシステムです。

紅耀石と蒼耀石の組み合わせを使えばゼーベック効果による熱電対のようなものを作れるかもみたいな。回路において紅耀石を加熱し、蒼耀石を冷却することで導力圧が発生するとか。

第三の考察が太陽エネルギーや宇宙線です。

これは第二の考察に比較的良く似ている訳ですが、七耀石の塵が大気上層に大量に存在し、一種の層を作っている。これらに高エネルギーの太陽光線や宇宙線がぶつかって、これを導力に変換している。

あるいは太陽そのものにも大量の七耀石が含まれているとして、そこで生み出される莫大な核融合エネルギーを一部導力に変換している。

これがこの世界独特の物理的相互作用でエネルギー準位の低い七耀石に供給される。こんなところでしょうか。

さて、最後の第四の考察です。

つまり、全ては空の女神の奇跡なんだよ!! な、なんだってー!?


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