最後の主要オリキャラです。モブ以外のオリキャラは、これ以上は出ません。
今までの主要オリキャラは、
ゼアノス・ノワール・ブランシェです。
誤字脱字がありましたら、教えてください。感想も待ってます。
寝る直前に投稿したので、前回の分の感想の返事が少し遅れます。前回(五十五話)のタイトルもその時に変えます。すみません。
それではどうぞ。
ドサリと、大広間に集っていた者達が倒れた。
セリカ、ハイシェラ、エクリア、イリーナ、シルフィア、リウイ。
誰もが魔神と同等どころか、一部は並みの魔神を超越している力を持つ者達だ。それ以下の実力者はしょうがないとしても、彼らまでもが一人残らず倒れてしまうのは、考えられない事であった。
「……神殺しまで眠ったか。どうやら成功した模様です、主様」
唯一倒れていないブランシェが、虚空へ報告する。返事はなかったが、どこか満足げな表情になり、眠っている面々を見下ろした。
セリカ達は、倒れはしたが死んだわけではない。ただ眠っているだけだ。
その魔法陣を作動させた人物が選定した者以外を強制的に一定時間眠らせる。あれはそういう罠だったのだ。これのどこが、パイモンが恐れるほどの罠なのか。そう疑問に思う者もいるだろうが、これは非常に凶悪だ。
迷宮などで見かける罠と言えば、体力や魔力を多大に消耗させられたり吸収されたりするものが有名だ。他には魔物や守護者が出てくることもある。中には迷宮の外部へ転移させるものも存在する。
だがこれらの罠では、場合によっては不利になる事もある。
転移ならば不利にはならないが、問題を先延ばしにしただけだ。いずれ攻略されるのを待つだけになる。このベルゼビュート宮殿のような場所なら空中に転移させて侵入者を排除するのに最適かもしれないが、相手が空を飛べたら意味が無い。
体力や魔力を減らすにしても、『猫を噛む窮鼠』になられたら、不利になるだろう。
だがその効果が、『強制的に一定時間眠らせる』ならばどうだろうか。
魔術的要素で眠らせたのならば、目が覚めやすい者でも起きる事はない。そうなれば、あとはどうにでもなる。殺すことも、人質にすることもできる。眠り過ぎれば死ぬだろうが、そこは大きな問題ではない。
ただひとつの不安要素が魔神以上の存在に通用するかどうかだったが、セリカに効いたので問題はなかったのだろう。
「申し訳ありませ~ん! 遅くなりました~!」
セリカ達を見下ろしていたブランシェの耳にそんな声と、羽ばたいている音が届いた。視線を向ければ、四人の翼を持つ女性が飛来していた。声を出したのは、先頭にいる白い髪と翼を持つ少女だ。
「いや、遅くはない。むしろ良いタイミングだ」
「ほら、だからもう少し遅くても問題ないって言ったのに……」
「ええと、もう少し遅ければそれこそ遅刻していたと思うのですよ……?」
「……」
ブランシェの言葉に誰よりも早く反応したのは、その四人の中で最も無気力な顔をしている少女だった。紫色の髪(ツインテール)に黒い翼をしている。その次は薄い紫色の短髪とコウモリのような翼の少女。始終沈黙しているのは、金色の長髪と美しい黄色の翼を持つ女性。
この四人は、全員がどこからともなくゼアノスがヴィーンゴールヴ宮殿に連れてきた、特別な力を持つ天使である。
「ゼアノスが言っていたが……メイド天使、だったな?」
ゼアノスが自信満々に説明している姿を思い出しながら、ブランシェは彼女らに質問する。彼女らに向けるその視線には、しかし棘がある。ゼアノスが説明にとはいえあそこまで夢中になるのは滅多にないので、自覚は無いが嫉妬しているのだ。
ちなみにゼアノスが夢中になったもうひとつはセリカである。
「はい、その通りです。凶腕様、もといゼアノス様をご主人様として仕えています」
「っ!?」
先程は神殺し一行を驚かせていたブランシェだが、今度は本人が驚く番だった。ゼアノスが凶腕だと知っているのは、ディストピアでも極めて少ない。
ブランシェとノワールは当たり前として、他に知っているのは魔神ラテンニールや古神、そしてゼアノスがなぜか心を許している一部の天使だけ。
外部では第一級の現神を除けば、水の巫女しかいない。
「知っているのか……?」
「はい。ご主人様から教えて頂きました。ですからブランシェ様も、ご主人様のことを無理して呼び捨てにしなくても大丈夫ですよ?」
「そうか。そういえばお前は……白エウ娘、だったか?」
ゼアノスの説明を再度思い出し、名前を尋ねる。当たりだったらしく、白エウ娘と呼ばれたメイド天使は頷いた。
「ご主人様から頂いたニックネームですが、今ではそう名乗っています。それでもご主人様は『白エウ』と、更に省略してお呼びになられますけど」
「まったく、何のためのニックネームなのでしょうね。略称を更に省略するなんて。ご主人様の考えは分からないわ……」
どことなくゼアノスを馬鹿にしているような発言をしているのは、黒エウ娘もしくは黒エウと呼ばれているメイド天使である。
他にもメイド天使見習いのアナスタシアと、メイド天使長のエウクレイアさんがいる。
アナスタシアは『あわあわ』とオロオロしているし、エウクレイアさんは極度の恥ずかしがり屋なため、声が非常に小さいので何を言っているのか分かりにくい。
ちなみに。
エウクレイアさんは、【『エウクレイア』さん】ではなく【エウクレイアさん】が本名なので、そこを間違えてはいけない。
黒エウの発言に青筋を出しかけたブランシェだが、極めて冷静に努めて、メイド天使達に本題を語った。
「遠回りをしすぎたが……ここで眠っている彼らを、ある場所へと連れて行ってほしいのだ。私がやっても良いのだが、私だけでは文字通り手が足りないので君らに頼みたい。雑用のような仕事で申し訳ないが、主が完全に信用している者でなければ頼めないのでな」
転移魔法で運ぶという選択肢は無い。なぜなら今から行くのは、扉から以外では入れない、外部から完全に遮断された、異空間と化している部屋だからだ。
「おお、それが私達の初仕事なのですね! 頑張っちゃいますよ~!」
「どんな仕事でも、全力でやってやるです~!」
「……」
張り切る白エウとアナスタシア。それを慈愛の微笑みで見つめるエウクレイアさん。そして
「何でそんな仕事をしないといけないのよ……?」
無気力方向に全力思考の黒エウ。ブランシェは思わずスティルヴァーレで斬り掛かりそうになったが、そこでゼアノスから教えてもらった魔法の言葉を紡いだ。
「一つの仕事が終わる度に、報酬として『カップメン』を10個贈呈しよう」
「さて、どこへ運べばいいのかしら? ぐずぐずしてないで早く行くわよ」
魔法の言葉を言い終える直前には、この世の誰よりもやる気に満ちた表情でセリカとルナ=クリア、エクリアとハイシェラを担ぐ黒エウがいた。
黒エウは何よりもカップメンが大好きで、カップメンのためなら世界が滅んでも構わないと豪語しているほどだ。それをゼアノスは知っていたので魔法の言葉としてブランシェに伝えたが、そんな表情を見た事が無いメイド天使とブランシェは戦慄した。
ディル=リフィーナには、カップ麺など存在しないのだ。次元や世界の狭間で稀に見つかる程度で、見つける事が出来ればそれは幸運だろう。だがゼアノスには関係ないので、こんな取引が出来るのだ。
そして、ブランシェは思う。
黒エウの働かせ方が分かった、と。
―――――――――――――□
「く、なん、だ? ここは……?」
最初に眠りから目覚めたのは、セリカだった。寝起きのために一瞬だけ隙だらけな姿になったが、気を失って(眠って)いたことを理解してすぐさま態勢を整え、周囲を見渡す。
「俺だけではないのか……」
セリカの視界には、今まで一緒に戦っていた面々が、先程の自分と同じように床で眠っている姿が見えている。しかしここは敵地だと思い直し、皆を起こす前に周囲がどうなっているのか、何故寝てしまったのかと考えを巡らせようとしたところ……
「ああ、起きたのか」
「―――っ!?」
今まで感じた事の無い、暴力的で破滅的な威圧感に襲われた。
この宮殿で、セリカは過去最大の敵と戦ってきたと言っても過言ではない。かつてこことはまた違った宮殿にて邪神アンリ・マユと戦ったが、セリカにとってはゼアノスとの戦いの方が苦しかった。精神的にも、肉体的にも。
ブランシェとはそもそも戦いにこそならなかったが、その存在はゼアノスを越えていた。
世界でも指折りの強者が存在したベルゼビュート宮殿。ここでセリカは、三度目の正直を迎える事となる。
寝ていたその場所から、階段が伸びていた。その階段をセリカの視線は上っていき、視界に入ってようやく『ソレら』を認識できた。
王が座るには飾り気がなく無骨とも言えるが、大きく、堅牢に見える玉座。
玉座の前方・左方・右方にいる、強大な存在である三者。
ひと際高い位置にある玉座に座る、顔の見えない四つの腕を生やした魔の神。
凶腕と、その側近だ。
「お前、が……凶腕、だな」
それは質問ではなく、確認だった。一目見ただけで、凶腕だと判断できたのだ。
この広い世の中には、馬鹿とも阿呆とも言える者が少なからず存在する。単に腕が四つある魔神が凶腕を自称し、セリカと戦った事もある。良くも悪くも魔神である事に変わりはないので中々強く、実力を隠しているのかもという考えも浮かぶので、本物かどうかは戦うまで分からないのだ。
だが今回は一瞬で理解した。
なるほど、比べる事すらおこがましい存在感だ。と、セリカは思う。
玉座に座っている凶腕以外にも、その場には今のセリカを越えている力を持つ強者がいる。
向かって左側に、先までセリカ達と相対していた熾天使、ブランシェ。
反対である右側には、黒いフードで隠しているために顔が見えない、重そうな鎧を着ている存在。
最後に凶腕の正面であり、高い位置にある玉座よりも低い場所に佇んでいる……角や翼、尻尾などが生えている女性。
ブランシェは言うまでもなく、フードを被った鎧はノワールだ。セリカ達に顔を見られないようにしているため、そんなフードを被っている。任務中だったが、何かお面白そうな事が起きてそうだと第六感が働き、仕事を放って来たのだ。凶腕は呆れたが、結局は認めている。
そして最後の女性は、
名は、リアン。
『絆』、『繋がり』を意味する名前を持つ、竜族の姿をした戦士である。前にセリカの仲間になった『空の勇士』を、より大人らしく、妖艶にしたらこうなるのでは、という姿をしている。
そんな三者だが、セリカの目にしっかりと映っているのは凶腕のみ。
それなりに大きな星でも、太陽の近くにあるのでは見ることはできない。太陽の輝きで他の星の光を覆ってしまうからだ。
「確かに、我は凶腕と呼ばれている。して、神殺しよ。この宮殿に何用だ?」
凶腕の顔はノワールと同じく、色こそ違うもののフードによって覆われ、どんな顔なのかが分からない。しかし声は透き通っており、言葉の一つ一つをセリカは慎重に聞き取る。
凶腕の質問に対してセリカは、出来る限り答えた。非常に珍しい事だが、長々と語った。
この宮殿が突然出現した事で、深稜の楔魔の脅威を考えたマーズテリア神殿に頼まれて協力していること。メンフィル王国については先程出会ったばかりだから詳しい事情は知らないが、似たような事情であるはずだということ。ゆえに、凶腕と敵対するつもりはないということ。
セリカは、保身のために一気に語った訳ではない。必要な事を全て話す必要性を感じ、そのために言い終わるまでが長くなっただけである。
「なるほど……我と争うつもりはない、か」
そして凶腕はセリカの話を、最後まで聞き入れる。『侵入された、なら殺そう』などという短絡的な考えは持っていないのだから。
だがそこで、二人の会話に横槍が入る。ブランシェだ。両膝と右手を床につけて左手を右胸に当てるという、騎士として最上の礼を見せている。
「主様。水を差してしまい申し訳ありませんが、どうか一つ、許可していただきたい事がございます」
「我は別段気にしないのだが……」
「……私は気にします。これは、貴方様への無礼です。私は主様の忠臣を自負しているが故、見過ごすことは出来ません」
許可を貰いたいと言いながらも引き下がらないブランシェに、またしても横槍を入れる存在がいた。ディストピアの中でも新参者でありながら、大幹部の一人であるリアンだ。
「……忠臣、ね。それは自分で言うことではなく、
「何だと?」
「何か?」
立ち上がって凶腕の隣から見下ろして睨めつけるブランシェと、下段からだが無表情で見上げるリアン。そのことに、凶腕を含めた三者は少し驚く。普段のリアンはもっと物静かで、セリカ並みに無口で無表情な女だからだ。
そしてリアンは今、凶腕のことを『そいつ』と呼称した。
それは、凶腕に忠誠を誓っていないから……という訳ではない。戦闘力でも、ブランシェやノワールと同格だ。
だがその特性上、実は唯一凶腕を倒せる可能性を持つ存在であり、心苦しさを感じた凶腕が対等に話し合えるように創ったのである。
ブランシェもそれを分かっているために、凶腕を『そいつ』呼ばわりした事をとやかく言うつもりはない。だが、己の忠誠を馬鹿にしたようなその言葉だけは許せなかったらしい。
「いいだろう。そこで狸寝入りしている劣等共より、まずお前を血祭りにしてやる」
「私を舐めるな」
進言していたはずなのに主の目の前で喧嘩に発展した部下二人を見て溜息を吐きそうになる凶腕の事などいざ知らず、それぞれが武器を取り出した。
ブランシェは雷撃の双剣を。リアンは拳に鉤爪型の武器を。
瞬間、武器同士が交じり、激突した音が響き合った。
「……」
「……」
そして、蚊帳の外になってしまった凶腕と神殺しは、互いを見て沈黙してしまう。
片方は何をどう言えばいいのか考えてしまい、もう片方は話が再開されるのを待っていたからだ。
ちなみに前者が凶腕で後者が神殺しである。
「取り敢えず、起きたらどうだ?」
沈黙を破ったのは、以外にもセリカだった。それはもちろん仲間達に向けてのものだ。
ブランシェが『狸寝入りしている劣等共』と言ったことから、全員かどうかは分からないが、何人かは眠りから覚めていると判断したのだ。
「ああ、そうするとしよう」
その判断は正しく、半ば予想通りだったのだが、リウイの言葉と共に全員が起き上った。
彼らはセリカよりも遅れたが、意識がはっきりとしたと同時に何人かは立ち上がろうとした。だがセリカと誰かの話し声が聞こえ、相手が凶腕だと分かったので敢えて横になっていたのだ。下手に刺激を与えてはまずいと、誰もが分かっていたから。
戦闘が大好きなハイシェラも、その例に漏れない。彼女は勝ち目が薄くとも最後まで諦めないが、絶対に敵わないと分かる敵に突っ込む馬鹿でもない。
ブランシェが言葉を発した際には誰もが冷や汗をかくか、かきそうになった。
仲間割れでもしたのか、言い合いをしてから戦闘に発展したため、少しは気持ち的に楽にはなった。
まあその分、顔を上げればブランシェに匹敵するのが最低でもあと二人(ノワールとリアン)。その三人を確実に超えている超越者(凶腕)がいるため、安心できる要素は皆無であったが。
「さて、ではどうしようか……」
全員が立ち上がったのを見計らい、凶腕は話し出す。
「神殺しの話によれば、お前達はどうやら我の所有物と知らずにここへ来たらしいな。しかもその理由は、ブレアード迷宮に魔力を供給していたからだと言う。ふむ。それならば自国の危機がありえるのだから、来るのはむしろ当然か。深稜の楔魔と争いが起こったのも、どこぞの神殿が動くのも必然か」
淡々と語る凶腕に、リウイとルナ=クリアは何度目かの安堵の息を漏らしそうになる。魔神とは傲慢だ。雑魚の魔族よりも理性的で理知的だが、その多くは破壊や蹂躙などを楽しむためのものであり、敵対している可能性のある者の声に耳を傾ける者は稀だ。力があればある程に、その傾向は強い。
だが凶腕は世界最強と言われているにも関わらず、相手の都合すら考えた。
これならば最善は望めなくても、次善の結果は残せるかもしれない。この宮殿の支配権やその他諸々を神殿かメンフィル国が得るのが最善で、ブレアード迷宮への一切の干渉を止めてもらう上でお咎めなし、という次善だ。
ベルゼビュート宮殿からブレアード迷宮に魔力を供給しなくても、今ならば問題無い。迷宮内の魔物や魔族を倒せば勝手に供給されるし、そうでなくても魔術師に頼めば必要最低限の魔力は得られるのだから。
なぜブレアード迷宮に魔力を供給していたのか、等の疑問は残るが、ここで下手に聞いて、機嫌を損ねてしまうのは避けたいので、聞けない。ゼアノスが深稜の楔魔にいた理由も聞けない。
聞かないではなく、聞けない。
それでも安堵の表情を隠しているつもりだろうが、偶然にも凶腕からは見えてしまった。
そして発されるその言葉は……
「だがこちらも、ゼアノスを失っている。これはどうするかな……?」
「~~~~~っ!?」
絶望しかけるのには充分な威力を持っていた。
「し、しかし! 魔神ゼアノスはろくな説明もなく―――」
「―――この時代、侵入者に対して丁寧に説明する馬鹿がいるのなら見てみたいものだな。そもそも、説明を求めたか?」
「それは……」
リウイの言葉を遮った凶腕の発言に、一同は黙るしかない。聞こえてくるのはブランシェとリアンの、剣と拳が幾度となくぶつかり合う音だけ。
侵入者は問答無用で処刑されてもしょうがないし、彼らは説明を求めてもいない。ルナ=クリアが質問をしていたが、あれは宮殿に関係する質問ではなかった。
そもそも国王や教皇に次ぐ地位にある聖女ならば、『ゼアノスはディストピアの魔神』との情報を得ていたのだから、ドラゴン形態の時はともかく、ゼアノス本人だと分かった時点で気が付くべきだった。もしくは、察するべきだった。この宮殿が、ディストピアの関係している場所であることを。
「故にだ、選択肢を与えよう。ブレアード迷宮の全てを我に譲るか……もしくは、この中から誰か一人、贄として我に差し出すか。どちらか選べ」
当たり前だが、どちらを選ぼうとも凶腕側にしかメリットがない選択である。
しかもそのうち片方は神殿ではなく、メンフィル国に対しての被害が大きすぎるのだ。
「ふざけるな」
リウイにとっては、悪夢でしかない。
前者は国と国民を、後者は大切な仲間を奪われるのだから。
贄になるのは神殿の人間かもしれないし、セリカの仲間かもしれない。
だがそんな簡易な事すら、今までの事柄で限界を超え、激昂しているリウイの頭では思いつく事が出来なかった。
「貴様に、貴様なんかに俺の大切な国を、民を、仲間を奪わせたりなぞするものかッ!!」
よりにもよって
「我とした事が、こんな若造に気付かされるとは……今も未熟だということかの」
「そうかもしれないな。俺も、お前も」
「諦めたら、そこで何もかも終わってしまう。可能性の芽を摘むってしまうのは、私としても本意ではありません」
ハイシェラが、セリカが、エクリアが、武器をその手に持ち、リウイに倣って武器を向ける。それを見たカーリアンを初めとしたメンフィルの精鋭も、笑みを浮かべて武器を向ける。
だが唯一、ルナ=クリアだけはそれができない。だが彼女を責めるのは酷だろう。
現神と凶腕の『約束』が彼女を縛る。今回の戦闘で聖女たる彼女が動けば、それだけで戦争が起きてしまう可能性があるのだ。戦争となれば、闇の現神の全てが凶腕に味方するだろう。そう考えると、とても動けなかったのだ。
「聖女殿、貴女は動かなくても良い。これは俺達の都合であり、俺としてもそちらの立場は分かっているつもりだ」
「ルナ=クリア、俺も理解している。だから、お前はお前に出来る事をしてくれ」
「私に、できること……。分かりました、ご武運を」
リウイとセリカに言われ、ルナ=クリアは思考し、この玉座の間の扉へと駆けだした。
ここに連れてこられていない、メンフィル国の兵士や神殿の騎士を助けるために。
「それで良い……」
セリカはポツリと呟き、今までの会話でも一度も目を離さなかった存在を、凶腕の動作に警戒する。だが予想に反して、凶腕は動く気配も見せない。
「随分と優しいのだな」
「我としても戦争は避けたい、ただそれだけのことだ。光側ならともかく、闇側とはそんな『約束』はしていないうえ、奴らは光側以上に我と争いたくはないだろうからな」
それは言外に、闇の現神の神官であるペテレーネですら殺す事が出来るという宣言だった。
闇の神は光の神よりも、凶腕と戦う事を恐れているのだから。
「さて、我と争う道を選ぶか。ならば我はこう言おう。これはブランシェが言っていたことだと思うが、その真意を教えてやろう。真の恐怖を知れ」
合計四つの掌に、魔法陣が一つずつ展開される。
あの罠の本当の恐怖は、眠らされることではない。
眠ってしまえば、凶腕との直面が待っている。それこそがあの罠の本質だったのだ。
>猫を噛む窮鼠
間違えたわけじゃありません。わざとです。
一応、正しくは『窮鼠猫を噛む』です。
>メイド天使とメイド天使見習い
なろう時代のアンケート結果がやっと出せました。出すタイミングが難しくて……。
これからは準レギュラーだと思います。悪魔族の幹部は歪魔で、天使族の幹部が彼女たちの予定です。
>メイド天使見習いのアナスタシア
見習いです。メイド天使ではありません。
あとこれを一発で変換したら、『冥土天使見習いの亜那須多死亜』と出ました。
いや、どうでもいいんですけど、吹いてしまったので一応書きました。
>ブランシェ
>ノワール
>リアン
リアンについては結構前から決めていました。本編にもある通り、いつ書いたのかは忘れてしまいましたが、ゼアノスがほのめかしています。探してみてください。
あと、名前が5文字、4文字、3文字になったのは偶然です。
最後に彼女等の能力&性格は、バラバラですがとある【大隊長】を参考にしています。あくまで参考なので多少は違っていますが。
誰が誰の能力で、誰が誰の性格を参考にしているのか……まあ知っている人にとっては分かりやすいと思います。知らなくても問題ないので、これからもお願いします。
Q:結局、あの時ゼアノスは死んだの?
A:死にました。
Q:じゃあ何で凶腕がいるわけ?
A:感想で答えを出している方が何人かいましたが、本編のどこかでその原因が書かれています。リアンの事と同じく、こちらも探してみてください。
Q:黄金や水銀、他の黒円卓は?
A:その他は一切出ません。ネタとしてちょいと(一行か二行程度)使うかもしれませんが。タグに書いた方が良いかな? と思ったら書き足します。
あのゲームの設定やキャラは知っていますが、詳しくは知らないんです。いつか前書きに書いたとおり、プレイした事は無いので。
……それなら書くなと言われるかもしれませんが、これだけなので許してください。