戦女神~転生せし凶腕の魔神   作:暁の魔

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—三神戦争での死合・前編—

 

 

 

「ふ〜ん、そんなにやばかったの?」

 

「ああ、本当に死ぬかと思った。助けてくれてありがとう」

 

「いいのいいの! 気にしないでよ、こっちも用事があって呼んだんだしさ!」

 

「そっか……なんか喋り方がかなりフレンドリーになってないか?」

 

「だって、敬語って面倒くさくない?」

 

「ん、理解した」

 

光の攻撃を受けそうになった俺は、すんでのところで死神・シェーラに呼ばれ、運よく助かった。あと一瞬でも遅ければ、俺は冥き途に招待されていただろう。

 

「ところで、何で突然呼んだわけ? 助かったから礼は言うけど」

 

「それなんだけどね、少し君の『手』と『腕』を見せてくれない? なんか、知らない内に能力が付いているみたいなんだよね」

 

「え、そうなの?」

 

知らない間に能力が付いたと言われても、正直パッと来ない。なので素直に見せる。

 

「えーっと……うわ、『触れたモノの因果律を変えられる能力』だってさ」

 

何それ怖い。

 

「まあ大丈夫だよ。向こうには呪術とか禁術とかまであるんだから。何をした、とか聞かれても簡単に誤魔化せるよ」

 

「……何か釈然としないけど、いっか。じゃあさ、話を変えるけど、突然呼んだってことはあの戦場から俺は消えたってことだろ? あの世界に帰ってたら、俺は死んだことになってるのか?」

 

「いいや、時間も止まってるから、君を呼んだ時と同じ時間に帰ることになる。つまり、神罰とかいう攻撃を受ける直前だね」

 

「あ〜そうか、つまりまずはあの攻撃を受けて生き残ることが最初の試練か」

 

「そういうことだね。さてさて、これでホントにお終い! 貴方が死んでしまったときにまたお会いするでしょう! それ以外では多分会いまっせん! つまりこれ以降は特典などはありませんので期待しないでください。それでは〜〜〜ガンバッ!!」

 

最後の最後までテンションの高い死神・シェーラが、拳を力強く空へ穿つ。すると俺の視界が変化していき……

 

頭上に巨大な光の柱が迫ってきていた。

だが俺は慌てることなく、黒い腕 ・恐腕(今命名)と、新しく貰った白い腕・狂腕(同じく今命名)の形状を変化させ、俺自身を包み込むような球状にした。これは因果律を変えられるため、どんな形にでも自由自在に変化させられるようになったからできることだ。

 

——ちなみにこの二つの腕の名前は、”凶腕”と同じ読み繋がりで名づけた。“恐”の方は適当だが、”狂“は生前によくやっていたゲーム、『大○闘ス○ッシュ○ラザー○X』の、ある条件を満たすことで戦えるボス、『クレイ○ーハ○ド』から。二つ合わせての名前は双腕、もしくは双手。普通の腕や手の場合は両手か両腕と、区別して呼んでいる——

 

直後この身に降り注がれる衝撃。異常なほど光の魔力と神力が籠ったその一撃は、しかし直接俺にダメージを与えるには至らなかった。これも因果を変えたからだ。

神罰は、殺傷性が非常に高い。それこそ遊星以上の威力がある。だがその分、長時間継続しない。それに命中したものを見境なく滅ぼすために、長い間攻撃し続ける意味がないからだ。

 

攻撃が止み、周囲からは歓声が上がっていた。現神に匹敵する魔神を倒したと、喜びの声を上げている。それが俺にまで聞こえてきた。

 

ここにいる現神は、マーズテリア以外の全員が一級神だ。だがそのマーズテリアも、一級神と同等の力を持っている。そんな神が六柱もいて負けるわけがない。そう思っているのだろう。その本人達も含めて。

 

その中のトップ、アークリオンが微笑んでいる。配下である者達に向かって。

だがその微笑は、横目で捉えた攻撃した場所にある灰色の球体、すなわち俺を見て、驚愕の色に染まっていった。

一級神とそれに並ぶ神の六柱分の神罰を受けて尚、形を保っているその物体は、彼らにとっては信じ難いものであることが理解できる。

アークリオン以外の神々が俺に気が付いた頃に、俺は姿を表に晒した。

 

「ふ〜ん。流石に凄いな、お前らの力。七つの大罪の魔王達の合体技よりも強い」

 

—魔王達は七柱でお前らは六柱なのに、それでもお前らの方が強いとは吃驚だよ—

 

俺がそう付け加えて言った途端に、驚愕の顔から恐怖の顔に変わる。天空からの巨大な光の柱は、真下にある内海を裂き、内海の面積を大きく広げるほどの威力を持っていた。アークリオンといえども、そんなものに当たっては消滅してしまう程の力。にも拘わらず、俺は生きていた。それも、ほぼ無傷に近い体で。

意外なことに、最初に覚醒したのはバリハルトだ。

 

「貴様……どのようにして生き延びたのだ? 我らの神罰をまともに受けて、無事でいられるなどありえぬ」

 

「あり得るから俺はこうして生きてる。とは言っても、この双腕のおかげだがな」

 

双腕の先端を、鋭利な刃物状から手の形へと形状を変化させる。

双手の手の平には魔力の塊を。両手には愛用の双剣を。

もうすでに、敵側から攻撃は放たれている。俺はそれを剣で斬り、もしくは腕で払って無効化していった。

 

「こっちは俺一人で相手は……いち、にー、さん、よん……無数にいるから数えられねえな。めんどくさ」

 

現神の六柱だけならなんとなるかもしれないが、天使や神格者がいるせいで戦いにくい。そいつらは光露系の神聖魔術を主体に攻めてきている。避けなくともあまり問題ないが、余分に体力を消耗したくないので避けたりしている。だがそれでもウザったいのは変わらない。

 

と、ここで名案と呼べるかわからないが、ちょっとした案を思いついた。自分の魔力を用いて分身のようなものを創り、それを雑魚に相手取らせればいいのだ。

 

「よし。出でよ、我が眷属よ!」

 

その言葉と共に、二体……いや、二柱の魔神が出現する。それぞれ白色と黒色だ。

その姿は俺と非常に酷似している。ただし黒い方は獣のように四つ這いで動いて剣を持ってないし、白い方は二つの剣を浮かしているので、何も持っていない。

 

「あいつらの方は任せた!」

 

「はっ!」

 

「グルル、ガウッ!」

 

どっちがどう返事したのかは考えるまでもないだろう。

高速で飛んで行った二柱は、弾幕のように繰り出される魔術を器用に回避しながら反撃していく。白い方は浮かばせている二振りの剣で。黒い方は拳や足による打撃で次々と撃墜させ、神聖魔術や暗黒魔術も使って効率よく戦っている。

そして俺は今現在、先程神罰をぶっ放してくれた光の神々と対峙している。

 

「さて、これでやっとお前らとまともに()り合えるな?」

 

「たった一人にここまで戦局を覆されるとは……まさに最強の魔神だな……それだけの力を持つそなたに、手加減など無用! 全力でいかせてもらうぞ!」

 

アークリオンが叫び、魔力で作られた光弾を撃ってくる。俺は難なくそれを空中にはじいた。その後それは爆発し、まるで花火のように咲き誇った。

 

「開戦の、いや違うな。再戦の狼煙にしては豪華だな。そら、お返しだ!」

 

双腕からそれぞれ魔力を練り合わして一つにする、この俺、ゼアノス専用の純粋魔術。

大隕石召喚の上位版。

 

「明暗の星群!」

 

放った魔力弾が現神らの上に飛び、そこでぶつかり合う。

 

「ふん、一体どこを狙って……」

 

バリハルトが莫迦にしたように告げてくるが、その途中で気が付いたアーファ・ネイが周囲に結界を張った。これはかなり硬度が高い。即席でこんなに凄い結界を作れるとは、流石は神だ。仲間だったらいいサポーターになるが、敵ならとてつもなく厄介だ。

 

「アーファ・ネイ様!? 何を!?」

 

「皆に告ぎます! 衝撃に備えてください!!」

 

結界に気が付いたマーズテリアが質問するが、余裕のないアーファ・ネイは答えずにそう言った。その態度に何か感じたのか、全員が守りの型に構える。

 

直後、結界に俺の魔術が直撃した。

 

俺の放った魔術【明暗の星群】は、ぶつかり合うと混ざり合いながら爆散し、爆散したことで魔力の欠片が最初に降り注ぐ。今降っているのがそれだ。

そして次に、混ざって一つと化した巨大な魔力が落ちてくる。というものだ。

FFDD出演のウボァー皇帝の『いんせき』だと考えてくれればいい。

 

ん? これの威力? さっき俺が受けた神罰×6と同じくらいだと思うよ? 理由はわからないんだけど、凶腕の能力が発言した際に全体的にステータスが上がったらしくて、さらに強くなっちまったんだよ。ただでさえチートだったのに。

 

と、俺はここで耳を塞ぐ。もちろん両手ではなく双手でだ。これ、自由に動くんでめっちゃ便利です。重宝します。

 

そして巨大魔力の塊が結界に衝突、そして鳴り響く爆音。その余波で暴風が起き、事前に構えていない者は吹き飛ばされそうになっていた。

煙が舞っている場所に目を凝らしてよく見てみると、ボロボロor血塗れになっている六柱の神がいた。

 

……ボロボロと血塗れって同じか?

 

おっと、どうでもいいことは置いといて、どうやらあの結界では守りきれなかった様子。俺としても、即席で作ったもので守られても困るんだけどね。

何か喋ってるが、殺し合いの最中に話し合いなんて余裕だな、おい。

その隙を見逃さずに、俺は一直線に飛ぶ。目標は……大地の女神、アーファ・ネイ!

 

 

 

Side・マーズテリア

 

 

 

我はアーファ・ネイ様の言に従い、理由は不明であったが衝撃に耐えられるよう構えた。そしてそれはすぐに、嫌でも理解することとなった。

先の神罰の意趣返しのつもりなのか、それは天から落ちてきた。あれはおそらく、先程あの魔神が放った魔力の塊だろう。

 

衝撃はしばらく続き、アーファ・ネイ様が発生させし結界も限界が近づいてきた。それを知り、我らは少しでも足しになるよう魔力を張り巡らせた。

なんとか耐えきり、内心ホッとしていた。それは我以外のお方も同様であった。しかしそれすらも、甘い幻想に過ぎなかった。純粋魔術の中でも高威力を誇る大隕石召喚、それをも凌駕する大きさの魔力の塊。そんなものが迫ってきていた。すぐ頭上に。

 

幸運だったことに、結界はまだ維持できていたので、持ち得る魔力と神力を用いて結界を強化した。その後、今までの比ではないほどの衝撃がこの身を襲った。結界も少しは耐えたが破壊され、我らに命中してしまった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……皆、大丈夫ですか?」

 

アーファ・ネイ様が生死の確認のために声を掛けてくださった。返事をしなければ。

 

「わ……我は大丈夫でございます」

 

「我もだ……くっ! 油断した!」

 

バリハルト様もご無事だったようで、体制を整えておられた。直後に他の方々も立ち上がり、ご無事であったことが確認できた。

 

「何者なのだ……あの魔神は……我ら第一級神全員と、それと同等の力量のマーズテリア。しめて最高戦力の六柱とその神格者と信徒がおるのに、それ以上の力を持ち得ているとは」

 

「兄上の言う通りだ。一体、あの魔神はどこまで強いというのだ…」

 

アークパリス様とパリス・ネイ様が、全身を傷だらけにしていた。御二方だけでなく、我やバリハルト様、アーファ・ネイ様とアークリオン様ですら傷を負っていた。

 

「ふぅ、イーリュン程ではありませんが……」

 

そんな中、アーファ・ネイ様が皆に治癒魔術を掛けようとしておられる。その時だった。

 

目に見えぬような速さで、何かがアーファ・ネイ様の場所に飛んで来たのは。

 

気が付けば、アーファ・ネイ様は先の場所におられなかった。目の前で消えたことに動揺するが、冷静になってふと横を見た。するとそこには……

 

「まずは、一柱」

 

魔神ゼアノスの異形な二つの『手』に掴まれているお姿があった。

ゼアノスはその二つの『手』でアーファ・ネイ様を包んだ。そして『手』を離した時には、もうそこにアーファ・ネイ様のお姿はなかった。

 

 

 

Side out

 

 

 

 


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