年末年始はネットに繋がらないどころか、パソコンがない場所にいましたので、帰ってきてすぐにかきましたがちょい遅くなりました。
週一更新を目指したいでものす。毎日更新とか尊敬します。
気付いた方もいると思いますが、VERITA編ではちょくちょく視点や場面が変わります。特に第三者視点が多くなります。
不快感を持つかもしれませんが、原作ではセリカとリウイの2人が主人公で、活躍する場所が一部を除いて全く別の場所なので、自然とこうなってしまいます。ご了承ください。
……というか、ZERO編よりもこの書き方のほうが書きやすいです。
あと、活動報告にアンケートを書きました。答えてくれると嬉しいです。
「ふぅ……」
メンフィルの王都、ミルス。その王宮の部屋で疲れ気味に思わず息を漏らしたのは、国王たる男、リウイ・マーシルン。その原因は、つい先日前触れなく襲撃していきた魔神、ゼフィラ。そして同じく魔神である、ディアーネだ。
ディアーネから『深淩の楔魔』のことを聞いてから数日後、ゼフィラと名乗る魔神が突如現れて、王宮内で暴れまわったのだ。『この国の王か王妃を出せ!』と怒鳴りながら。
だが不幸中の幸いと言うべきか、当時は偶然にもディアーネ曰く『嫌な匂い』の元であるマーズテリア神殿の使節団が来訪しており、大きな被害が出ないで済んだのだ。
しかも来ていた理由が『深稜の楔魔について』であり、光の神殿側は闇夜の眷属が王をしているメンフィルが、深淩の楔魔と繋がっていないかの確認と忠告を兼ねていた。
そこへゼフィラが強襲しに来て、丁寧にも『深稜の楔魔、ゼフィラ』と名乗り上げた。これにより神殿側は良くも悪くもメンフィルとの協力体制を提案し、リウイはそれに賛成した。
元々、彼らの願いは『人と魔の共存』だ。深稜の楔魔が何を考えているかは不明だが、ディアーネやゼフィラの言葉を信じるのであれば、光に歩み寄る可能性は低い。それでいて介入してくるのならば、敵対するしか道はない。
故にこの事柄は僥倖だった……のだが、何も嬉しい事ばかりではない。
現在、メンフィルと敵対している勢力は2つある。エクリアが負けたことで敗戦国となった、西部地域でのカルッシャの残党。そして東部地域に集まった、複数の悪魔族。
カルッシャの残党は『モナルカの滝』という、天使モナルカが住まう土地。その天使はかつてカルッシャと盟約を結んでいたため、それに従って残党を纏め上げている。片や悪魔族はブレアード迷宮、『海雪の間』に集っている。
天使モナルカについては、特に問題ない。訪れたマーズテリアの使節団の中には聖女ルナ=クリアもおり、モナルカを縛る盟約を終了させる証を受け取っていたからだ。
しかしそれは、リウイでなくても可能なこと。例えば『モナルカの滝』の指揮を任せている天魔族、ファーミシルスでも無問題。王が直接動けば誠意を認めてもらえるかもしれないが、逆に不信がられるかもしれない。
そして『海雪の間』は、魔導鎧などの重武装で構成されている軍団を派遣している。このままでも解決できるだろうが、確実にするためには自分で動き、相手の頭をとる方が良いだろう。
だがそうすれば、多数の魔族や闇夜の眷属に動揺が走ることになる。『魔を蔑にして人を贔屓する王』という評判も付いてしまう。ただでさえゼフィラを倒したばかりなのだから、尚更だ。ただし、神殿側からは信用も得られるようになる。
かといってどちらも動かないとなれば、優柔不断としてどちらからも信用されなくなる。
しかもメンフィルは戦争が終わったばかり。復興を早めるためにも、早期解決が望ましい。
さて、ここで話を戻そう。リウイが漏らした息の原因は、ディアーネとゼフィラ。これには続きがある。犠牲者が少なくなるように苦労してゼフィラを倒したあとは、地下牢に閉じ込めていた。
そう。閉じ込めて……いた。過去形だ。
知っての通り、ゼフィラはグラザに惚れていた。そのことから今回のような暴挙を起こしたのだが、戦った相手に問題があった。リウイ・マーシルンは魔神グラザの、ゼフィラが恋した男の息子だ。
その姿を、仲間に指示を出しながらも立ち向かってくる勇猛で男気溢れる瞳を見て、ゼフィラはこれまでにない感動を覚えた。この人こそ自分が仕える主だ、と。だがそれからしばらくは、本気を出して戦った。いくらなんでも弱い主は御免だからだ。結果は予想通りで、ゼフィラはリウイに破れた。
問題はここからだ。マーズテリアの使節団が任務を終えて帰った後、リウイはゼフィラを捕らえてある地下牢へ足を運んだ。あれだけ暴れたというのにおとなしいと報告を受け、怪訝に思ったからだ。
そして会ってみれば初見とは全く違った、畏まった態度で接してくるようになっていた。
魔神とは、基本的にプライドが高い。罠に嵌める時ですら、こんな態度をとる者はいないだろう。それを良く知っていたリウイは数日掛けて、時にはイリーナも同伴させて話をした。
初対面では猛烈に突っかかっていたゼフィラだったが、リウイの素晴らしさを語る姿にイリーナは青筋を見せ、神殺し程ではないがゼフィラを超える魔力で威嚇し返して静かにさせていた。戦闘技術はともかく、魔力量だけなら姫神とほぼ同等だったので、ゼフィラは縮こまるしかなくなったのだ。
その後も話し合い、結果的には仲間に加えることにした。今度はこれに猛反発したのは、ディアーネだった。リウイに恋するゼフィラは、新しい『女』がまた来たから嫉妬しているのだと信じて疑わないが、もちろんそんなはずもない。単純に、ゼフィラがいることが気に食わなかっただけである。
結局どうなったのかと言うと、ディアーネはメンフィルから去った。『我も好きに動かせてもらうぞ! 我の代わりにゼフィラが入ったのだから、戦力としては問題なかろう!』という言葉と共に。
以上が、リウイが息を漏らした理由である。彼としては『問題大アリだ、馬鹿者が』と言ってやりたいが、肝心の本人はいない。本人もそれが分かって出て行き、帰ってこないのだろう。それが余計に、腹が立つ。
「お疲れのようですが……あなた、大丈夫ですか?」
背後から優しい声で語りかけてきたのは、イリーナ・マーシルン。一度は死んでしまったかと思ったが、一命を取り留めた、彼が最も愛する妻だ。その目には、薄らと涙の跡が残っている。
また、姉のことを……エクリアではなく、最近死亡の報せが届いた、セリーヌ・テシュオスのことを思い出していたのだろう。
そう思いながらも敢えてその話題を出さないようにして、リウイも口を動かした。
「ああ、どうしようかと考えていたんだ」
「……『海雪の間』と『モナルカの滝』、ですか」
身を乗り出しながら各拠点の載っている地図を見る妻をジッと見つめ、互いが抱える同じ夢を心の中で反復させる。
問題はまだ山積みである。これらだけではなく、ついこの前に新しく発見したブレアード迷宮も調べなければならないのだから。
「となれば、こちらしかないな……イリーナ、手伝ってくれるか? 俺達の夢のために」
「まったくもう、言われるまでもありません。断れても付いていくつもりでしたから」
死の淵から蘇ってからやけに強くなった彼女は、戦場で守られていた、か弱い姫ではない。経験はまだ足らずに危ない時もあるが、背中を任せられる最高の相棒にもなった。
夢を叶えるには、おそらくあいつらとは分かりあえないだろう。そう考えて、城内で偶然見かけた幼馴染のカーリアンにも声をかける。
こうしてリウイ、イリーナ、カーリアンの三人は……『海雪の間』へと向かう、準備を始めた。
―――――――――――――○
(おい、どうするんだ? 本当について来ているぞ)
(また会う気がするとは言っておったが、こんなにも早いとは……我は、もう会うことはないと思っていたんだがの)
(……)
エクリアとハイシェラの心話を聞いたセリカは、パラダの街から何故か同行してくるようになった人物……ノワールを見た。街から出て当てのない旅を再開しようとしたら街に帰ってきたらしい彼女と出会い、後を付いてくるようになったのは記憶に新しい。
エクリアは一族に伝わる『殺戮の魔女の呪い』を、一族にまだ子供がいない今の内にセリカに殺してもらう事で断ち切ってもらうことを望んだ。その事はセリカとハイシェラには話したが、ハイシェラが言うには子供がいなくても近しい親族(エクリアの場合はイリーナやセリーヌ)に呪いが渡ってしまう可能性が高いとのこと。
セリーヌは死んでいるらしいため、新しく呪いが出るとするなら奇跡的に生きていたイリーナだ。
一度殺しかけてしまった罪悪感もあるが、それ以前に『殺戮の魔女の呪い』の効力が薄らいでいる今は、イリーナは愛する妹だ。愛する妹を呪わせたいはずがない。だが今更メンフィルに行っても、イリーナに会える以外に良い事はないだろう。
幻燐戦争で負けてから弱くなった呪いだが、いつまた表に出るかは分からない。だから今は答えを探す意味を含めてセリカと共に行動しているわけだが……故に、ノワールの存在が気になる。
危険だと何度も言っているにも関わらず、返答は全て『君達の想像以上に私は強いから大丈夫』のみ。まさしくノワールは神に匹敵する実力者だが、知るはずもない三者は三様に困っていた。
セリカ達からしたら、ノワールは戦闘面でも決して弱くはない。どこで手に入れたのか、貴重な魔導銃なんて代物を使って背後から援護してくれる様は、中々頼りになる。だがそれは一般的な魔物相手だからこそだ。セリカやエクリアを狙う魔神などが相手では、どうなるか分からない。
……そんな一種の心配をしてもらっているノワールは、それが分かっていてセリカの後ろを追っている。彼らの反応を見て楽しんでいるのだ。
そのことを報告で聞いたどっかの誰かさんは『性格悪い』と評したが、生真面目熾天使からすれば『どっちもどっち』というのが本音だ。
今いるレスペレント地方から出てケレース地方へ向かっている一行だが、当たり前のように正規ルートではない。本来ならサンターフという港町の船で海を渡るのだが、そこからの行き先はマーズテリアの入植地。つまり敵地だ。なので徒歩でケレースに向かう道筋を、砂漠を南に突き進んで海峡を越えるという道を辿っている。
(あの娘……泣き言ひとつ言わぬ。少々侮っていたか?)
砂漠の暑さは尋常ではなく、神の肉体を持つセリカですらダメージを受け、夜になれば
冷えて体力の消耗が激しい。碌な説明もせずそんなルートを行くのだから文句の一つや二つ、あってもおかしくはない。勝手に付いて来たのだから些か理不尽だが、それが普通だ。
それでもノワールは何も言わずに、まるで追従するかのようにセリカとエクリアの後ろを歩いていた。そこまでになると暗殺者などの可能性もあって警戒はしたが、隙を何度見せても変わらなかったので、今ではその心配はしていない。
ちなみにノワールはそれを見て楽し(ry
猛暑と極寒が交互に味わえる嬉しくない土地を渡り切り、辿り着いたのは『ケテ海峡』。悪霊や怨霊が湧いて出るほどに溢れているが、セリカとエクリアの障害には成り得ない。ノワールに至っては霊体の行動を先読みして、現れる前に魔導銃を放ち、出てきた瞬間に霧散させるという絶技をしてみせた。
それを間近で見たハイシェラが本格的に旅の仲間に入れるかどうか悩んでいたが、それは割愛。
強風が吹き荒れて何度か落ちそうになる道を渡り、真下が海となっていて足場が危険な海岸線に着いた。周囲には悪霊の気配が漂っているが、水平線から現れる紅い月は美しい光景だった。
「なんか、特別強そうな魔霊の気配を感じるな……ちょっと見てくるね」
「……気をつけろ」
明るく言いながら来た道を戻ろうとするノワールに、技量を見ていたのでそこまで心配はしていないセリカが、一応の忠告をする。ここの霊体は少し特殊で、倒しても完全に消滅させられる訳ではない。無数の未練や残滓が霧となり、それが形作って霊体と化しているのだ。
とはいっても倒してすぐに復活という流れではないので、一度倒せば一時期は収まる。
ノワールの姿が見えなくなってからエクリアを見れば、紅い月の光に照らされている。しかしその顔には陰が差していた。どうしたのかとセリカが聞けば、『呪い』について考えていたのだと言う。
「フェミリンスの呪いをあなたに、『神殺し』によって裁いてもらう事で消滅してもらおうと思っていたけど、それも叶わぬ夢。私が死ねば折角幸せになれた妹を、イリーナを今まで以上に苦しめてしまう。それならば……」
「……」
独白を続けるエクリアに、セリカは何も言わない。ただ静かに聞いていた。
「この海峡の噂が真実であるなら私は死なず、魔霊となる。そうすれば私という身体だけが消滅し、呪いは残ったままになる。この苦しみを誰かに残すこともない。ならばこうするのが、私の最善の途……」
その瞳にあるのは、絶望ではなく決意。その意思を持ち、エクリアが歩を進めたのは岬の先端。
「よせっ!!」
セリカは思わず声を張り上げる。あと少しでも歩けば、そこにあるのは海へ落ちる崖だ。
「今までありがとう、セリカ。ノワールには謝っておいてほしい。そして……さようなら」
最後に微笑んで、迷いなくエクリアは崖下に投身した。彼女を追ったセリカも躊躇なく身を投げる。この時、セリカの頭にはノワールのことは全く考えていなかった。
単純に……嫌だったのだ。セリカは数百年間放浪し、出会いと別れが何度もあった。だがどれも、セリカ自身が望んだ別れは一切なかった。身の都合上や事故、戦闘、寿命による死別。そのどれもが、割り切れるものだ。しかし今のは、出来るわけがない。別れを告げられても手放す気には、諦める気など一切なかった。
だから空中でエクリアを抱きしめて……二人一緒に、海へと落ちて行った。
「……何か悩んでるらしかったから二人きりにしたのに、まさか自殺を図るとは予想外だよ君ぃ。セリカも私を置いて行っちゃうしさ。まあ丁度、新しい任務が入ったからいいけどね」
そう言って手に持つ紙をヒラヒラと動かしながら崖を見下ろす、ノワール。
中々の魔力を持った霞の魔霊を難なく討伐した直後、ゼアノスの配下の歪魔が手紙を渡して来たのだ。詳しく聞けば、それには任務が書いてあるらしい。ゼアノス本人は何やら忙しいらしいので手紙を書き、配下を使ってノワールへ渡すことになっていたようだ。
「しっかし、魔霊になることで自分という存在を殺して、でも身体は残ってるから呪いも残すことができる、か。前向きなのか後ろ向きなのか、判断しにくいなぁっと、それで任務内容は……うげ」
手紙の中身を見た途端に、ノワールは顔を歪ませた。よほど嫌なことか、面倒なことが書いてあるのだろう。表情を変えず、手で持ったまま魔術で燃やした。
「……で、君は誰? 霧の中の暗殺者なの?」
「見ていただけで暗殺者なんぞにするでない」
どことなく聞いたノワールへの返答は、まさしく霧の中から現れた。頭には大きな角と、茶色のような色の長い髪。背中にあるのは灰色の翼。
「君は……魔神ディアーネ、だね? ゼアノスから聞いてるよ」
「ふん、やはりあの男の仲間か。エクリア・フェミリンスはともかく、ゼフィラの話を聞けばあれが『神殺し』らしいな。噂に過ぎぬと思っていたが、実在していたとは驚きだ。しかし見つけたと思えば貴様が奴らと共にいた故、様子見しておったのだ」
ノワールはセリカやハイシェラから見ても、魔神を相手にできるとは思えない。ディアーネとて、直接対面している今でも同じだ。とても強者には見えない。だがディアーネは油断しない。
かつてグラザと組んでゼアノスに負けて、最近ではメンフィルに負けた。後者は個人同士の戦闘ならば勝敗は分からなかったが、国としての負けもまた己の敗北と同義だ。
そのどちらも、油断があった。ゼアノスとの戦いでは、2対1で負けるはずがない、と。メンフィルとの戦争では、半魔人如きに、と。
だからこそ、ディアーネは必要以上に目の前の存在を警戒していた。
これはセリカも無意識に感じていた事で、ノワールをかなり早い段階で信用していた理由でもあるのだが、何しろゼアノスと似ているのだ。雰囲気が。
眷族なので当たり前と言えば当たり前なのだが、それを知るのは当人のみだ。
「なぜ奴らと共に動いていたのだ? 護衛などではなかろう?」
「別に理由なんてないよ。敢えて言うなら……『神殺し』をゼアノスが気にかけていてね。興味が湧いたってだけ」
「ゼアノスが?」
ディアーネとしても、それは予想外だった。封印から解かれたあとはレスペレントで暴れていたし、セリカやゼアノスの旅に関係していなかったので、知らなかったのだから当然だ。セリカとゼアノスの関連に結びつくはずがない。
「でもまあ、君が彼らと戦うのだとしても、私の名前を出さないのなら好きにすれば? 止めはしないよ」
「……何だと。貴様はゼアノスの仲間で、そのゼアノスは『神殺し』を気にかけているのだろう? だのに、何故だ?」
「私は敵対するつもりはないけど、他者に殺されたならしょうがないというか、それまでの存在だったというか……それに、守られるほど弱い訳でもないでしょ。それじゃ、やることがあるからもう行くね」
ディアーネの疑問に最低限で答え、言い終わると同時に堕天使の翼を出し、その際に砂漠用にと着ていた衣が落ちる。その姿を見て、ディアーネは目を細めた。彼女の元同僚のラーシェナは重鎧という重い装備をしていたが、ノワールのはそれよりも重々しい物だったからだ。魔導鎧という、一種の兵器だ。
そんな装備をしたまま空へと飛翔し、並みの魔神では追いつけない速度で飛んでいる。
「あの姿にあの魔力、まさか……」
それを見てディアーネは呟くが、聞き取れたものは誰もいなかった。
>ノワールの性格
実はこんな性格です。
コミュニケーションを取ると朗らかだけど、内心は冷めている。そんなタイプ。
ただしゼアノスに対する態度は、完全に素です。主には尻尾を振り、その他はランキング制度で意外と犬っぽい。
>ノワールの任務
一体どこへ、何をしに行ったのでしょう?
ヒントは幻燐戦争。物語的にも結構重要です。
>最後のディアーネの呟き
実はあんまり本編とは関係ありません。
誤字・脱字報告、ありましたらよろしくおねがいします。
感想も待ってま~す。