戦女神~転生せし凶腕の魔神   作:暁の魔

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アンケートに回答してくれた方々、ありがとうございました!!
感想だけでなくメッセージボッスに送ってくれた人もいて、すごく嬉しかったです!
というかこれ読んでるリアルの友人、eメールするなw

結果は……後書きにあります。

今回はいつもより少し文章が多いです。
誤字・脱字報告もよろしくお願いします。


―狭間の宮殿・承―

 

 

俺の相手は、哭離生物に寄生された異質な上級悪魔。上級悪魔の中でも上位に達するであろうその魔力は、下級の魔神に匹敵している。凶腕の力を封印している今では、少し苦戦するかもしれないが……油断はせずに戦おう。

と、頭の片隅で考えてはいたのだが……。

 

戦闘開始から、一分以上五分未満。

 

「悲しいけど、これって戦争……ですらないな」

 

現実はやはり強者に甘く、弱者に厳しいようです。種族の壁は大きかったらしい。

特に何も活躍することは無く、消えてしまった。俺が負ける要素が一つもなかった事に、ちょっと罪悪感を覚える。折角あんなに強くなったのになぁ。

……配下にすればよかったって? 俺、哭離生物に寄生された魔物には興味ないんだ。

 

純粋系統の魔術は全くと言っていいほど効かなかったけど、殴り合ってたら勝った。

体格はあちらの方がデカいけど、魔神がそんな差で負けるわけもなかった。

 

アビルースに目を向けてみれば、負ける直前だった。相手が悪すぎる。

女神の身体を持つセリカに、アムドシアスも今はあちらにいるので、ソロモンの魔神が二柱。それだけでも充分な戦力だというのに、竜族の戦士にエルフの長までいるのだ。それに加えてセリカの他の使い魔達も、一人一人の質が高い。俺ですら、今の状態では敵にしたくない。小国なら簡単に落とせるんじゃないか?

 

「何故だ……何故、私のものにならないのです」

 

アビルースは叫ぶ。国を創り支配する神に成ることが出来るのに、セリカはその力を使わず、人目を忍んで逃げ回る。だからこそ私が使うのだ、と。

だがそれに対するように、耳を貸す必要はないとハイシェラが言い放つ。

 

(国が欲しければ自ら興せばよかろう。女神の身体が必要ならば、正々堂々戦って奪う。負ければ命を明け渡す。その覚悟無きまま他の力を利用し逃亡を繰り返した者に、情けは無用じゃ)

 

何とも厳しいお言葉だ。今あいつが言ったことは、全て自分がやってきたことでもあるから説得力がある。だがそれは人間にとっては難しすぎることばかりだ。

……魔神にとっても簡単という訳ではないが。討伐される可能性がある分、難易度は同じくらいか?

 

セリカはアビルースに問う。お前の目的は、女神の肉体だけなのか、と。そして奴はそれに肯定する。それ以外に何があるのだと。

だが今度は、それに否定する者がいた。ペルルだ。

 

「違うよ……お師範様の本当の願い。神の力や、平和な国が欲しかったのも嘘じゃない……けど……でも本当は、セリカに振り向いてほしかったんだ。セリカと一緒に、フノーロで魔術の研究をしながら……暮らしたかっただけなんだ。そうなんでしょう?」

 

ずっとセリカと一緒にいたかった。その気持ちがいつしか妄執に変わり、気持ちを利用され、ここまでになってしまった。ペルルの言葉を聞けば、そういう事なのだろう。

 

しかしその心からの声も、狂った魔術師にはもはや届かなかった。

 

「ペルル、もういい」

 

セリカが、一歩近づく。この身体はサティアの願いと共に預かった、大切な身体。だから譲り渡すことは出来ない。そう言いながら。

最早、共に生きることもできない。だから、死という終わりを与える。

 

剣を手にしたセリカが一歩進めば、しわがれた老魔術師は一歩後ずさる。

だがその直ぐ後ろは……。

 

「ひぃい、あぁぁ、あぁぁあああ……」

 

宮殿の、足場のない亀裂だ。

俺の生まれた場所であり、一部の例外を除いた”神”と名の付く者の力が消える場所へと、呻き声を上げながら落ちていった。

 

「異界の狭間に落ちて行ったのか?」

 

「ええ……奈落の底へと……」

 

レクシュミと白銀公が、その穴を見ながら話している。真下にある神の墓場は、異界の狭間とも言われる。落ちた者は今までに帰ってきたことがない、誰も知らぬ異界の奈落の亀裂。だからこそ、そう呼ばれてもいる。

 

「速く行こう。今はあいつの生死を確認しているほど暇じゃない」

 

「その魔神の言う通りだ。我々がこの地を彷徨っている間、アンリ・マユは宮殿の深い場所までにまで入り込んでいる」

 

俺が言った後にルナ=クリアからの知らせがあったのか、ゾノ・ジがそう続けた。その言葉を聞き、皆は先へと進み始める。

 

「……お師範……様……さようなら……」

 

ペルルは俯き、変わってしまったかつての主人へ別れを告げる。

だが直ぐに目に溜まった涙を羽根で拭い、セリカの後ろへと羽ばたいた。まだ傷付いているだろうに、強い娘だ。

 

「アムドシアス、一つ聞きたいことがある。ソロモンが死んだとき、お前らはペルルのようになったか?」

 

「さて、な。嘆き悲しんだ奴がおれば、泣き喚いていた輩もいた。我を除けば71も数がいた故に全ての反応を覚えているわけではないが……皆、悲しんでいたことは事実だ」

 

「……それはお前もか?」

 

「なっ!? そ、そんな訳がないだろう!!」

 

「そっか」

 

その反応じゃバレバレだが……黙っておこう。絶対に認めないだろうし。だけど、ということはあのパイモンや、ひたすら無関心なナベリウスも悲しんだのかね。

 

アムドシアスの話ではパイモンとナベリウスの事は知らないが、泣きはしなかったものの、最も悲しそうだったのはハァゲンティという奴らしい。どこにいるのか知らないが、いつかそいつにも会ってみたいものだ。

 

「危ない、避けろ!」

 

考え事をしていると、マーズテリアの騎士、ゾノ・ジが叫んだ。突如響いた声にしかし誰もが、もちろん俺も思考を停止して反応した。

何が、すらも考えず、一瞬すら経たない内に、それぞれが咄嗟に左右のどちらかに動く。もちろん俺も、すぐさま大きく横へ跳躍した。

 

それと同時に振り下ろされるのは、腐蝕した腕。

さっきまで邪気を感じていたのに……違うことを考えていたからか、潜んでいたのか、もしくは忽然と出てきたのかすら分からなかった。

 

「ちっ、不覚を取った。ゾノ・ジ、よく気づいたな」

 

「いや、こいつに気配はない。聖女様の御力を受け、マーズテリアの知らせを受けた」

 

よく見れば、こいつには気配というものが無い。気付かなかったのも道理かもしれないが、マーズテリアのおかげで助かるとは……一つの貸しにしておこう。

 

「久しぶりだね……セリカ。それに、ゼアノスも」

 

腐蝕した腕を振り下ろしてきた存在は無形だったが、変化している。

その姿は昔に出会い、話をした者と非常に似通っている。まあ、それも当たり前だが。

 

「あやつのこと、御主らは何か知っておるのか?」

 

奴の言葉を聞いた空の勇士が、『御主ら』という単語を使いつつ、俺のみに聞いてくる。

一部分が戻ったとはいえ、セリカの記憶が当てにならない事が分かっているからだろう。

 

「ああ、知っている。……久しぶりだな、セリカ・シルフィル」

 

「ふふ、僕は……セリカじゃないよ?」

 

俺達の会話に、一同が混乱する。まあこいつを細かく説明するならば、『神殺しの記憶と感情』という、『セリカ・シルフィルの断片』だ。それが、アンリ・マユの力によって、具現化した存在。

 

「いいや。自分でどう思っているのか知らないが、お前は『セリカ・シルフィル』だよ。あの日、セリカが置き忘れた人間の部分だ」

 

「ッ、そうか、セリカの記憶と感情が、形となって蘇ったか!? こやつも邪神と同様に精神攻撃を仕掛けてくるぞ。警戒せよ!」

 

白銀公と並んで比較的多い知識を持つ空の勇士がこいつの正体に気付き、警告する。

彼女の言う通り、人間とあまり変わらないその身体からは精神を揺さぶる波動が伝わってくる。特に、セリカを目指して。

 

この変異体の目的は、セリカと1つに()ること。

『神殺しセリカ・シルフィル』には、記憶を含めた『過去』がない。

『変異体セリカ・シルフィル』には、それの反対で『未来』がない。

 

「ねえ、セリカ。酷いよ……ダルノスを殺したこと、カヤが死んだこと。忘れちゃったの? 嫌な事を全部僕に押し付けて……哀しい事を忘れて……」

 

だから、完全な『セリカ・シルフィル』になろうとしている。

セリカはまともに精神攻撃を喰らってしまったのか、ゆっくりと変異体に近づいてゆく。

 

「覚めろ」

 

ブンッ! と、双剣の片割れをセリカの進行方向に振り下ろす。

 

「くっ! ……俺は……」

 

ついでに放った殺気で、セリカは我に返った。というか剣を振った意味が無い気がする。

ただ殺気を放つショック療法だけでよかったかもしれない。

 

周りを見ると、意外にもゾノ・ジは精神攻撃に耐えていた。というよりも冷や汗があるだけで、一番平気そうな顔をしている。聖女とマーズテリアの加護のおかげか?

それ以外の者は、それぞれが苦悶の表情を浮かべている。だがそれでも、変異体に立ち向かう姿勢を見せている。

 

「……みんな」

 

皆の準備ができ、戦意が高まった途端に、セリカがポツリと呟く。

 

「どうかしたか?」

 

「コレは……もう一人の俺だ。あの時に俺が、置き捨ててしまったもの。だから……頼む、俺に力を貸してくれ」

 

そう、セリカは決意を込めた言葉を言い放った。

 

「言われるまでもない、当たり前だ」

 

俺の言葉に同意するように、セリカの使い魔もそれぞれの思いを口に出す。

何を今更……などと言っている奴もいた。

 

「先程の精神攻撃は変異体に同調した者からきており、この変異体は操られているだけだ。倒してしまえば、同調した意識も手を出せない」

 

ルナ=クリアからの言葉なのか、ゾノ・ジが助言する。

 

「そうか、ならばこの変異体を倒す」

 

セリカのこの言葉が引き金となったのか、皆が一斉に動き始めた。

片手剣で、槍で、双剣で、鉤爪で、弓矢で、連接剣で、魔術で。

先程のアビルース以上の邪気を放つ存在に、様々な攻撃が向かって行く。

 

だが、それらが変異体に届くことは無かった。

 

「貴様ら……どういうつもりじゃ!」

 

なぜなら俺とアムドシアスが彼らの攻撃に対して攻撃し、相殺しきれなかった攻撃を、またしても俺達がその身で受けたからだ。

 

だが勘違いしないでほしいのは、これは俺にとっても想定外の出来事だという事だ。

俺も確かに攻撃したが、それは変異体に向かってだ。なのに、何で俺達はその変異体を守るようにして、セリカ達と相対しているのか。

 

「ふふ、ねえ、ゼアノス……これに見覚えはない?」

 

すっ、と変異体が見せてきたのは……影詠の腕輪か!

セリカがまだ人間だった頃、俺が渡した召喚効果のある腕輪だ。

※【星月が舞う夜の出来事】を参照。

 

そう言えば回収してなかった気がするが……うん、してないな。

 

「そうか……お前が持っていても不思議ではない、か」

 

そしてアムドシアスは俺の使い魔だから、こっち側にいるのだろう。他の使い魔達を出さないでおいてよかった。魔神がこれ以上増えたら、いくらセリカでも危なすぎる。

 

「ったく……セリカ、こいつの持ってる腕輪が見えるか? それを壊せ。あれはお前がまだ人間だった頃に俺が渡した物で、一時的に俺を召喚・使役できるようになる。壊せば問題ないが……こればかりは素直に謝る。すまん」

 

忘れてた事もあり、この事は完全に俺に非があるので、アムドシアスを含めた皆に頭を下げる。しかし、頭を上げた時の俺の顔は恐らく……笑っていただろう。

 

「とはいえ、だ。ここまで楽しそうな戦いは、滅多にないだろう。だから相手がお前らだとしても……本気でいくぞ」

 

さすがに凶腕状態の本気ではないが、魔神ゼアノスとしての本気。

いざとなったら俺が変異体を攻撃すればいいのだが、あいつは今の俺の主になっているので、それだと俺の身体に激痛が走り、最悪死ぬ。たぶん蘇ることは可能だろうが、そんな愚は犯したくない。

 

状態を理解したのか、各々が戦闘態勢をとる。

俺と相対するのは、白銀公、レクシュミ、リタ、ペルル、リ・クティナ、空の勇士。

アムドシアスには、ナベリウスのみ。

肝心の変異体には、セリカとパズモだ。

 

「俺だけ数が多い気がするが、ウォーミングアップ……あー、邪神との本番前の肩慣らしで怪我するなよ?」

 

「ふん、その言葉、そのまま御主に返してやろう。儂だけならばともかく、勢いが過ぎれば……怪我どころではなく、死ぬぞ?」

 

俺と空の勇士が、互いに言葉で牽制し合う。

 

「………本気で……………行く……」

 

「全く、我は乗り気ではないのだが……こうなってしまっては致し方なし、か。……所で、何故そんなにもやる気に満ちているのだ?」

 

煩い魔神(ナベリウスの一番嫌いなタイプ)を本気で倒す心算で構える一方で、もう片方は困惑しながらも構える。

 

「ふふ、行くよ?」

 

「こちらの台詞だ!」

 

変異体と神殺し。両方のセリカが剣を振るい合い、高い金属音の音が響く。

俺も既に駆け出しており、相対した敵全体に向けて……

 

「そら、受けてみろ」

 

― 紅燐剣 ―

 

ブゥン! と、剣を振るう。それに対するように、リタとレクシュミが同時に技を放ってくる。

 

「魔槍のリタ、参ります!」

 

「はぁっ!」

 

― 玄武の鎌撃 ―

 

彼女らの技は、俺が使った技よりも威力が高い。あちらは一撃の重さを重視し、こちらは複数の斬撃を剣圧にのせた、セリカも扱う飛燕剣だ。見様見真似だったが、最近になってほとんど覚えた。ハイシェラも使ってたし、50年も見れば覚える。

 

話しを戻すが、そんな重い技、しかもそれが二つもあっては、俺の分が悪い。もしも、俺が普通の人間だったのなら。だが残念、俺は魔神だ。つまり、

 

「っぐぅ……」

 

「流石、ですね……」

 

素の力が強い俺が勝つ。まあ当然の結果だ。二人は圧に負けて吹き飛んだ。……と、そこで何を思ったのか、突然後ろにジャンプする二人。

リタは霊体だからジャンプしないだろうって? 比喩表現だから気にしたら負けだ。

 

「竜骨砕きいぃぃ!!」

 

「超ねこぱんち!!」

 

「連接剣伸長!!」

 

鉤爪を装備している空の勇士とペルル、そして連接剣を振るうリ・クティナが、奥から突っ込んできた。しかもよく見ると、強化魔術が掛かっている。奥にいる白銀公の仕業だろう。しかしペルルの動きが若干遅いのは何故だろうか。

 

ペルルはともかく、空の勇士の技は受けたらヤバい。彼女の使う技の中に【延髄砕き】という技があるのだが、それの上位技がこの【竜骨砕き】なのだ。

それに引き替え、ペルルの【超ねこぱんち】。これは博打技だ。低確率で極大の威力を発揮するが、そうでない場合はプテテット……つまり最弱の魔物ですら倒せない。

 

【連接剣伸長】は、名の通り連接剣を伸長させる技。一直線にしか伸びないので、反応できれば簡単に避けられる。

 

という事なので、取り敢えず双剣でガードして空の勇士の拳を止める。そしてペルルを迎え撃とうするが、後退したはずのレクシュミとリタが左右からそれぞれの武器で攻撃してきたので、思わず避ける。結果的には連接剣も避けられた。

 

……そして、背後から寒気を感じた。

 

「――っ!! 沙綾円舞剣!」

 

直線状に走る斬撃を、迷わず背後へ放つ。そこには予想外な事に、ペルルがいた。変わらぬ態勢のまま、俺に向かって突進している最中だ。

そして打撃と斬撃はぶつかり、相殺し合って衝撃波を生み出した。その衝撃波にペルルが弾かれたのが見える。

 

「うわわっ!」

 

「はぁ、運が良いのか悪いのか……」

 

無意識に溜め息が出た。俺は今の一撃には、かなりの力を入れた。それこそ、上級悪魔程度なら屠れるほどに。そしてそれと相殺した、ペルルの技。つまり今回は低確率の『当たり』を見事に引いた訳だ。

俺に当たらなくて良かった、と安心すればいいのか。それとも俺との戦いで『当たり』を引くとは運が悪い、と落ち込めばいいのか……まあ、前者を選ぶが。

 

だが、面白かった。これなら、もう少し本気を出してもいいかもしれない。一時的とはいえ今の仲間を案じすぎて、本気と言っておきながら本気を出せていなかった。

……そのことは、心の中で謝るとしよう。

 

「さて、いくか……」

 

雰囲気が丸っきり変わった俺に警戒する彼女ら。だがそれではあまりにも……

 

「遅すぎるぞ!」

 

上空から俺を見下ろしている、空の勇士――もう面倒だから勇士でいいか――に向かって跳躍。かなり高い位置にいるが問題なく、一瞬で辿り着き、剣を振り下ろす。

 

「なんだとっ!? くっ!」

 

咄嗟に腕を交差してガードしてくるが、それは想定内。飛燕剣の基本技の【身妖舞】でその交差している腕をほどく。ガードが解かれて、彼女は無防備。俺はそのまま、

 

「ふんっ!」

 

「ぐぁ!」

 

腹を蹴りつけた。空中とはいえ、この体勢だと踏みつけに近い。

呻き声を漏らしていることは気にせずに、足元に向かって落ちることを利用して連続で、両足で交互に蹴りつける。

 

「そらそらそらそらそらそら!! そっ……らぁぁぁあああっ!!!」

 

何度も何度も蹴り落とし、足元にスレスレの場所で彼女の身体を両足で同時に踏んで、最後にジャンプ。両足での踏み込みによる蹴りは、竜族でもきつい筈だ。

 

「空の勇士殿!!」

 

「だ、大丈夫!?」

 

「か、はっ! く……皆の者、気を付けよ。こやつ、かつて儂と戦いし魔神ハイシェラ以上に強いぞ」

 

レクシュミとペルルの肩を借りて、空の勇士は何とか立てる、という状態だ。

白銀公は、今の俺によって下がってしまった戦意を上げる魔術を。リ・クティナは勇士を回復させるため、治癒魔術を使っている。

 

「有名な竜族の戦士にそこまで言われるとは……嬉しい限りだ」

 

「私達が今まで見てきた、散々ふざけていた姿は演技か……この道化め」

 

真面目な顔で言うと、満身創痍といった様子の勇士を治癒しているリ・クティナが、そう返してきた。勇士が瞬間回復等を使えればもっと早く治るだろうが、治癒魔術はそこまで万能ではない。いや、完治する魔術は一応あるが、彼女は回復がメインではないので、まだ覚えてないのだろう。

 

「演技ではないな。その時も今も、いかなる時も俺は演技などしたことがない」

 

「なるほど……いかにも歪魔、ということですか……」

 

白銀公の呟きに、他の一同は疑問の表情を向ける。あまり有名ではないからな、歪魔は。

だけど白銀公は、歪魔のことをよく調べていたようだ。

まあ演技はしないと言っても、凶腕の時は別だけどな。

 

「まあ、お喋りはこれくらいにして……行くぞ?」

 

そう言い、剣を振って今回お馴染みの形、飛燕剣を構える。その飛燕剣の中でも複合高速剣とも呼ばれる、身妖舞。更にその身妖舞の高等技に、複合高速剣最大の奥義と言われる技が存在する。その名も……

 

― 枢孔身妖舞 ―

 

何度も剣を振るうために命中精度の高い高速剣の、そのまた奥義。

誰が、どうやって受け止める?

 

 




微妙所で終わってしまってすみません。ここらで止めないともっと長くなるので切りました。
そうでもしないとこの時間に投稿できなかった……。

そしてアンケート結果ですが、僅差で『介入する』になりました。
『介入しない』を選んだ方も結構いたのですが、介入することになりました。

できるだけおかしくならないよう頑張りますので、見捨てないでください。

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