戦女神~転生せし凶腕の魔神   作:暁の魔

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今回でゼアノスの種族が分かります。色々と無理矢理感がありますが、そこは無視の方向でお願いします。独自設定も少しありますが、そこも無視でお願いします。前から決めていた事なので。


ようやくここまで来ました。某所ではこれが最新話だったので。これからも頑張ります。
誤字・脱字等ありましたら、報告、よろしくお願いします。



―決戦前―

 

 

 

「お前のことも思い出した。何度か助けてもらったな、ゼアノス」

 

目が覚めて仲間と何度か言葉を交わしたセリカが、俺を見てそう言った。

先程アレに取り込まれかけて、精神攻撃を受けた際に大体のことを思い出したらしい。

 

「それは重畳。無理矢理思い出させてやろうかと思ってもいたのだが、それ以上の刺激で思い出すとは皮肉だ。……全部思い出したのか?」

 

「いや、いくつか……姉さんがいたのは覚えているが、名前までは…」

 

「そうか……」

 

悲しそうな声だが、その顔に感情はほとんど含まれていない。注意しなければわからないほどに、その顔には変化がない。感情までは戻らなかったようだ。

 

 

 

セリカの記憶の一部が戻った、その日の夕方。俺らのいる遺絃の渓谷にルナ=クリアと、その御供らしい寡黙な騎士が来た。騎士の名は、ゾノ・ジというらしい。

 

「お久しぶりですね、魔神ゼアノス」

 

「ああ、久しぶりだな、聖女殿。ディストピア以来だ」

 

何本かの石柱で支えられている宮殿の内部で、俺達は再開の挨拶をする。

ふと周りを見渡せば、ここにはルナ=クリア、ハイシェラ、アムドシアス、空の勇士、白銀公、レクシュミ。そしてセリカとその使い魔達がいる。一つの場に、他種族がここまで揃うのも珍しい。立場や種の違いを考えれば、殺し合いを始めてもおかしくない。

 

現に、空の勇士は俺の少し後ろから、監視しているが如く見てくる。未だに、俺を警戒しているらしい。まあそれが妥当だな。俺の事を知らないわけだし。

むしろ俺としては、ここにいる九割と知り合いだからと、問答無用で連れてこられたのだがそれが怖い。こいつら不用心すぎるだろ。

 

ちなみにシャマーラは、泣き疲れて眠っている。セリカのとあることで、大泣きしてしまったのだ。

 

「ゼアノス、貴方に聞きたいことがあります。あの邪神のことを詳しく知りたいのですが、教えてはくれませんか? 古神アイドスから生まれ出たという事までは調べがついていますが、それ以外で不明な点が多いのです」

 

「……現神のしもべであるお前が、何故俺に聞く?」

 

「かの凶腕が統治せしディストピアであれば知っていても不思議ではなく、そして貴方は今までの経緯から、其の国の重鎮だと推測できます。だからです」

 

その推測は、あながち間違ってはいない。確かに俺はディストピアの重鎮……ってか、王だからな。見れば、この場にいるセリカ以外もそう思っているようだし。

 

「それで、どうなのだ? 御主は知っておるのか?」

 

隣にいるハイシェラが聞いてくる。気が付けば、周囲の目は全て俺に向けられていた。

秘密にする事でもないし、俺は話し出す。邪気をばらまく古神、アンリ・マユのことを。

 

「とは言っても、昔にそういう存在がいたから、この考えになっただけだ。あれが偽物って訳ではないが、本物は既にいない。三神戦争で対立神と共に消えた。もしかしたら、それの残留思念がアイドスに憑りついたのかもしれんが」

 

「そうでしたか、そのような古神が……」

 

ルナ=クリアは目を閉じ、俺からセリカへと向き直った。

 

「セリカ……貴方はどうしますか?」

 

「どうする、とは? お前は、俺を殺しに来たのではないのか?」

 

「ええ、神殺しという存在を認めることは出来ない。でも……私は貴方、セリカ・シルフィルの話をしているのよ。それにそれを言うならば、凶腕の存在は神殺し以上に認めることは出来ない」

 

そう言うと、チラッと俺を見て、視線をセリカに戻す。

 

「マーズテリアの教義は絶対です。しかし、もののあり方はひとつではないの。私には私の、貴方には貴方の役目があります。」

 

「……例えセリカが死を選んでも、か?」

 

「いいえ、セリカは決して死を選ばない。どれほど絶望の淵に落ちても」

 

俺の質問にそう返すと、『そうでしょう?』と言いたげな目で、ルナ=クリアはセリカと視線を合わせる。

 

「……そうだな、選べない。それがサティアとの、約束だ」

 

セリカとアストライアの、約束。それは、『生きて』という、アストライアの願い。

 

「古神アンリ・マユと決着をつける場所ですが――ゼアノス。もうひとつ、貴方に頼みたいことがあります。私ではなく、我が神から凶腕への、です。その仲介をお願いしたいのです」

 

「へぇ、内容は?」

 

「マーズテリアが提案した決戦の場は、”狭間の宮殿”。その地への進入の許可です」

 

「ああ、そういうことか。なるほどな」

 

思わず、ニヤリと笑ってしまう。狭間の宮殿。あそこは史実通りであるならば、現神の許可がなければ誰であろうと入れぬ場所。

だが俺は古神の友人達に、”狭間の魔神”と謂われてきた。だからその名に懸けて、能力をフルに活用し、俺の私有地にしたのだ。

つまり、あの地に行くには現神の許可ではなく、凶腕の許可を得るのが必須だ。

 

「神々の牢獄にして処刑の場。神と名づく者が入れば、二度と出ることのできない宮殿。それは女神の身体を持つセリカも同じ。……神殺しと邪神を同時に”処刑”できるから、だな?」

 

「その考えがないとは言いません。しかし運が良ければ、邪神のみを討伐し、セリカは無事に戻るでしょう」

 

「分かっている。まったくもってマーズテリアらしい。許可については、まあそういう目的なら大丈夫だろう」

 

「そうですか……それでは、お願いします」

 

お願いも何も、最初からOKだけどさ。”処刑”した後に、復元するのが面倒だけど。

 

 

 

—————————————☆

 

 

 

決戦についての話し合いをしたその後、俺は白銀公に呼ばれた。何だと思ってみれば、白銀公だけでなく、ルナ=クリアまでそこにいた。

 

「呼ばれたから来たが……何の用だ?」

 

「隠すことではないので、単刀直入に言います。貴方の種族についてです」

 

……あ、そういえばそんな話題、120年くらい前に聞かれた記憶がある。調べ終わったらスッキリして、今まで忘れてたよ。というか何でルナ=クリアまで?

 

「初めは直接聞こうと思っていたのですが、マーズテリア神殿も同じことを調査していたとのことでした」

 

だからいるわけね。別に不利になるわけじゃないからいいけどさ。

 

「で、マーズテリア神殿は分かったのか?」

 

「ええ。とは言えこれはあくまで、今までの貴方の戦闘方法や性格を纏めた結果の推測、いえ、憶測にすぎませんが……」

 

そこで一旦言葉を区切り、その憶測とやらを話し出した。

まず戦闘についてだが、多用している魔術は暗黒や純粋系統。そして転移魔術。近接でも遠距離でも、転移してからの攻撃などが非常に多い。とのこと。

性格に関しては一言で済まされた。曰く、快楽主義。自覚しているが、敢えて言わせて貰おう。ほっとけ。

 

というかよくそんなデータがあったな。と聞けば、過去にフレイシア湾で勇者と戦った際の資料らしい。ロコパウル司祭が纏めていたとか。そういえばいたな。

あの勇者は、『テルカ』とかいう家系だったはずだが……また会う気がする。その時が楽しみだ。

 

もちろんそれだけではなく、俺を偶然見かけた人の感想なども加え、共通点を合わせて結果を導き出したらしい。答に関しては憶測の域を出ないらしいが、当たっている気がする。

 

「結構頑張ってるんだな、神殿の連中。まあいい、それで答えは?」

 

「はい。貴方は……”歪魔”、ではないのですか?」

 

歪魔。それは上級悪魔よりもさらに上の、貴族悪魔。下位の歪魔ですら上級悪魔と同等の力を持ち、上位となれば神格者並みの力を有している。そしてそれは、

 

「……大正解」

 

俺の種族でもある。ちなみに俺は、『手』を使って調べた。だから一瞬で分かったので、必死に考えた神殿にはお疲れ様、としか言いようがない。いやマジですごいと思った。自力でそこまでやるってどんだけだよ。

 

「しっかし、何でマーズテリア神殿がわざわざ俺のことを調べたんだ?」

 

「……それは、半分は白銀公殿と同じ理由です。もう半分は光の神殿の全てが、貴方がディストピアの二番目の脅威だと認識しているからです」

 

…………あ〜、あれか。動きすぎて危険視されたのか。現神は俺が凶腕だと知っているけど、神殿の奴らは知らない。そして現神は教えることができない。

だから情報は少しでもあった方がいいもんな、バカした。でも後悔はしない。

 

「そういうことか。白銀公、悪いが歪魔は、他の魔族よりも己の欲望に忠実だ。だから、お前らに害を与えないとは言い切れん」

 

「どうやら、そのようですね。非常に残念でなりません」

 

だが歪魔だからこそ、俺は昔から転移魔術が得意だったのかもしれない。こんな性格になったのも、よくよく考えれば魔神になってからだし。

 

「それで、だ。ルナ=クリア、一つ取引をしないか?」

 

「取引……ですか?」

 

「そう。今言った通り、歪魔は欲望に忠実だ。だが他の魔族と同じ様に、自分より強い者の命令には従う。もちろん従うのは闇の陣営に、ほとんど限定されるがな」

 

「……」

 

俺が何を言いたいのか分からないらしく、じっと黙っている。

 

「そこで、ディストピアに歪魔を集めようと思っている。場合によっては魔神級に強いのもいるから、人間の国の危機も減ってくる。どうだ、結構いい案だろ?」

 

「確かに、それによって安全にはなりますが……そちらが出す要求は?」

 

「簡単な事だ。集める連中も、いきなり住む場所を変えろと言っても困るだろう。だから場合によっては、『土地ごとディストピアに移動させる』というものだ。もちろん、人間が住んでいる(・・・・・)所は移動させない。どうだ?」

 

「なっ!? ………そのようなことが、本当にできると?」

 

「一応できるぞ。俺の転移魔術と凶腕の術。そして現地の歪魔の総力を使えばな」

 

「……」

 

ルナ=クリアが考える中で、白銀公は口を挟まない。俺が言っていることを聞いてはいたが、彼女は基本的には外に干渉しないエルフだ。何か思うことはあっても、口に出すことはしないだろう。

 

それと、その歪魔が住んでいる地だが、実は既に目星はいくつかある。ディストピアに転移するのに協力してくれるように頼んであるし、転移のための術式は展開済み。後は少量の魔力を込めれば、ディストピアに転移される。

なので、現神が頷けば万事解決だ。用意はしていたのに、すっかり忘れてたよ。

 

「本当に、人が住んでいる土地には手を出さないのですか?」

 

「無論だ。元々人間が住んでいた場所を襲撃し、誰もいなくなって無人にしてから移動させる、という事も絶対にしない。現神と凶腕の約束に反するしな」

 

そう。人間が、『住んでいる』場所はね。

 

「私だけでは、さすがに答は出せません。一度神殿へ戻ってから、各神殿と神々の意思を聞いておきます」

 

「こちらはそれで構わない。明日はアンリ・マユとの決戦の日だ。お前も休んでおけ」

 

一度後ろを振り向き、二人と目を合わせ、すぐに目線を外して外に出る。

夜の暗い世界を見てアンリ・マユを思い出す。そこから派生して、アイドスとまた会えるのはいつだろうと、柄にもなく、そんなことを思ってしまった。

 

そしてそんな日の翌日、セリカに訪れるものがあった。それは、シャマーラとの別れ。

記憶を取り戻し、神との戦いを控えるセリカ。そんなやつと、一般人……とは言わないかもしれないが、ただの人間であるシャマーラ。彼女は渋ったが、セリカの説得により、最終的には別離することになった。

 

涙を流しながら、名残惜しそうにセリカを見つめる。だがそれでも踵を返し、セリカと以前に関わったらしいドワーフと共に去った。

俺は知っている。あいつらの絆は、ここで途切れたわけではないことを。500年もしない内に、魂が再び巡り合うことを。

 

 

 




最後のルナ=クリアとの会話、ちょいとフラグを建ててみたり。
分かる人には分かる、あの場所です。

感想待ってます。
|д・)チラッ

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