異世界人こと俺氏の憂鬱   作:魚乃眼

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Anothoer Chapter 3

 

 

随分と古臭い手法をとっているようではないか。

わざわざ起動と終了を繰り返す必要があるらしいな。

必要ならば仕方の無い事だが、キミはクライアント側ではなくサーバ側だろう?

勝手にサービスを終了されると迷惑だ……そう思う人間は山のように居るぞ。

 

 

『介入する。実行――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……本格的に俺が『ヤバい』と思い始めたのは夏休みに突入してからの話となる。

では、それまで俺は何をしていたかと言えば特筆するような事はない。

五月には異世界人朝倉涼子が我が家に住みつく――これはなんてタイトルの大人向け恋愛ADVなんだ?――といった衝撃的一件があった。

だからと言って俺が宇宙人未来人超能力者に目をつけられるかと言えば、彼女の存在が明るみとなってないんだからマークのしようもない。

どこぞの殺人鬼爆弾魔サラリーマンではないが俺の正体を知った者だけはどうにかする必要がある。

記憶を完全に消し去れはしないものの、誤魔化す程度は俺にも出来る。

情報を聞き出すのも結局は俺と会話する"その気"にさせる程度のものだ。

 

 

「ふっ……」

 

なけなしの威力しか持たない精神感応能力者(テレパシスト)として俺は自分に課したルールが二つある。

一つ、絶対に悪用はしない。

俺にとっての正義に従ってのみ、この能力を行使する。

一つ、絶対に他人のために使わない。

これは何があっても自己責任だという意味だ。

……つまり、俺は自分に判断を任せているのにも関わらず正義の基準さえも自分にあるのだ。

悪用しないと言っても、誰が俺を信じられるのか。

他ならない俺が俺を信じていなかった。

自身に自信を持つ根拠がなかったからだ。

 

 

『――黎くん。キミを俗世間で燻らせておいてよいものなのか。実にもったいない。キミは気づいていないのだろうが、キミの能力の全貌は決して弱々しい精神操作などではない。そして勘違いしてはならないぞ。我々がもつEMPは、決して"あってはならないエネルギー"などではないのだ。常に見えない所で作用し続けている、この世界に必要とされている"あるべきエネルギー"なのだよ』

 

俺を損得勘定抜きに評価しようとしてくれるのは、両親を除けば宮野先輩ぐらいだ。

もっと言えば彼の周囲の人々は彼と違って比較的マシな部類――それでも変人ばかり――であり、有象無象の存在でしかない俺に強い言葉をかける必要もない。

そして、損得だとか利害でしか物事を考えないクズ野郎。

俺が知る限り最低の人間にランクされる男。

 

 

『――お前は俺のようになるなよ。お前はただ、ほんの少しだけ外に出て、家に帰る。……それでいいんだ、そんな生活でいいんだ。お前は世界を渡り歩ける程、冷酷な心を持ち合わせてなどいない。俺と違って優しいからな。お前の分まで、俺が代わりに嫌な物と向き合う。それがせめてもの罪滅ぼしになればいいと思っている……』

 

勝手な事を言うな。

何も俺に語りかけるな。

俺を無意味にイラつかせないでくれ、

頭に来すぎて腹も立たないし、関わりたくもない。

宇宙人、未来人、異世界人。 

そして……超能力者だと?

この際、EMP能力者だってそれに纏めて考えてやる。

涼宮ハルヒだとか、神の力だとか、平行世界だとか、"上位"だとか。

何より"世界"を語る人間の屑。

自分で自分の記憶を消せればどれだけ楽だろう。

言った通り、俺は他人のそれさえまともに干渉出来ない。

俺には自我があって、くだらない自意識がある。邪魔だ。邪魔でしかない。

どいつもこいつも邪魔でしかない。

ふざけた"役割"なんかを押し付けられたせいで精神までふざけて仕上がっている。

 

 

『……お前は俺と、二度と会いたいとは決して思わないはずだ。構わない。しかし、少なくとも後一回は会う事になる』

 

いけしゃあしゃあとそんな事を言う。

思い出すだけで真底、心から兄貴が憎たらしい。

 

 

『ああ!? 勝手な事を言うんじゃあねえ! オレはてめぇをその名前ごと葬り去ってやってもいいんだぜ。二度とその減らず口を叩けなくしてやる、二度と陽の光を拝めなくしてやる、二度と考える事を出来なくしてやる。何故かは知らねえが、てめえ相手にだけはそれが出来る。そんな気がしちまうね。この瞬間だけ、オレは最強なんだよ』

 

『……それも選択だ。だが、これだけは忘れるな』

 

無駄に高い金がかかっているオーダー制のスーツを着込んだ野郎。

そいつはこっちを振り返らずに、歩いて立ち去っていく。

最後に無駄な言葉を、無駄に残して。

 

 

『その一回は俺が死んだ時だ。……棺の中でぐらい、俺にいい夢を見させてくれ』

 

なら、さっさとくたばってくれ。

何より皮肉なもんだ。

あんたは"明"と名付けられ、俺は"黎"と名付けられた。

夜明け、暁、黎明、光と影。

黎とは即ち黒色であり、闇の象徴である。

俺は生まれながらにして表舞台に立つ事を拒否された影の人間なのだ。

だのに、何故あんたは裏切ったんだ?

光の道を進むべきなのは、あんたの方だった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――目覚めたその瞬間から忌々しさだけが俺を支配していた。

下らない事を夢で見るようになってしまったのか。

落ちぶれたんじゃない、落ちぶれていたのさ。

 

 

「オレは」

 

八月十六日の朝。

世間一般で言う所の楽しい楽しい夏休みとやらの真っ只中。

何をするでも、何処へ行くでもない。

宇宙人と異世界人を兼業しているお方と一緒に生活はしているが、今の所彼女の存在以上の劇的な変化などない。

ただのそれだけ。

寝間着姿のままなのは怠けている気がしてならない。

俺はベッドから抜け出しカーテンを開け手早く着替えを済ませた。

 

 

「……朝から暑そうだ」

 

俺の誕生日など数日前に経過している。

明智黎。

現在、年齢16歳。

以下の項目は何ら変わりない。

"学園"の連中だって俺の存在を知るのはごく一部なんだ。

そもそも知らなくてもいい、居てもいなくても大差ない能力者。

秘匿や情報操作されるまでもないのさ。

 

 

「期待などしていないさ。今も、依然変わりはなし」

 

否。

俺は認めていなかっただけなのだ。

急な変革など。

 

――いつも通りに朝の時間は何事もなく消化。

夏バテも何もあるか。バテる程にエネルギーを消費していないんだから。

俺一人だけで過ごそうが朝倉涼子と二人で過ごそうが、大差ない。

 

 

「少なくとも、君にとってはそうなんだろ」

 

「さあ? ヒトはマシンに命令する事は出来るわ。それが可能となるようにプログラムする事だって出来る。まるで神そのもの。だけど、ヒトがマシンを理解する事は出来ないし、マシンがヒトを理解することだってない。覆らないわね」

 

朝倉涼子に割り当てられた部屋も徐々にだが私物――衣服とそれを収納する木製のタンス程度――が置かれてきている。

床に座って使う高さの四角テーブルだったり、その上には女子が持つような小物。

化粧こそしていないが、長ったらしい――素直に美しいと認めはしない――髪の毛を整える事ぐらいはしているらしい。

彼女はベッドに腰掛けて、俺は床に座りながら各々読書をしている。

ここのところの時間消費方法はこんな感じなのである。

とりあえず俺は朝倉涼子の発言に反論しておく。

 

 

「その通りさ。だけど別世界の朝倉涼子本人はその固定観念を手放せた……それが進化なんじゃあないのか? だから君だってそのルーツを知りたかったのだと俺は判断したけど」

 

「……くだらない」

 

「進化について、具体的な方法がわかっているのならば実践すべきだと思うね。その辺どうなの」

 

「さあ。もし私が知っていたとしても、実戦する気はないわ。全ては結果よ。他の方法を私は模索する」

 

俺も異世界人明智黎と同じだったのさ。

こっちがそれと気付くまで、朝倉さんが何を求めているのかを理解していなかった。

宮野先輩と同じ、総ての頂点を目指していたのだ。

全ては結果ではなく過程。

選択する必要があったのだ。

 

 

「さいですか。君の悲願が果たされる事をオレも祈っておこう」

 

「どうしてかしら」

 

「たまにオレと一緒に出かけた時も君は情報操作とやらで姿を隠しているんだろ? 不条理さ。自由に生きる権利を奪おうだとか、オレは気に食わない」

 

「やけにアツいのね。夏の熱気にあてられているようだわ」

 

何とでも言うがいいさ。

この時の俺は何とも思っていなかったんだから。

今だって言っている事自体に特別な変化があるわけじゃない。

 

 

「『前進あるのみ』……オレの師匠の教えさ」

 

「師匠? そんな関係にあたる人物があなたに居たとは驚きね」

 

「交流関係の手狭さはオレが一番自覚している。悔しい事に」

 

「……とにかく、明日からが楽しみね」

 

唐突にそんな事を言い出し始めた朝倉涼子。

俺は彼女の方を見る。読書を中断する気配はない。

そのまま彼女は黙っているので。

 

 

「明日がどうかしたのか?」

 

「……べつに。どうもこうもないわよ」

 

とだけしか答えてくれなかった。

何が言いたいのかわからないが、俺と彼女に信頼関係の一切が無い事は明白だ。

人間、少しでも得体の知れない奴が登場すると身構えてしまう。

加えて朝倉涼子は俺にたいして良からぬ方向で思う所があるらしく、春も何もなかったとしか俺には思えない。

ざまあないって奴さ。

 

 

「あいよ。オレは本でも買いに外へ出かけに行くけど、何か希望の品はありますか」

 

「……アイスクリーム」

 

「わがままなお嬢さんだ。タイプは? フレーバーは?」

 

「ミニカップでバニラの」

 

「まさかとは思うけど、一個で200円強もするブランドのそれを所望しているわけじゃあないよな?」

 

「あら、私は"アイスクリーム"と言ったのよ。ラクトアイスもアイスミルクも許されない。あなたが察しのいい人種で助かるわ」

 

この瞬間だけ彼女は一瞬こちらを向いて笑顔になっていた。

が、笑顔とは本来攻撃的な意味を持ち合わせている。俺からむしるつもりらしい。

彼女がパイント(約473ml)ではなくミニカップと120mlの容量を希望しているだけ慈悲深かった。

本来であれば俺が彼女に奢る道理なんてまるでない。

精々彼女も料理を作っているだとか、家事を手伝っているらしいとかの実績だけ。

俺からすれば特別何かが変わったなんて事は本当にないんだけど。

 

 

「……オーケィ。一時間ぐらいしたら戻って来る。その頃にはちょうど十五時で、おやつの時間だ」

 

「そう言えば誰か決めたの? その時間制度を」

 

まあ、疑問ではあるわな。

十時もおやつの時間だし、正直関係ない気がする。

これもキャンペーンとして言われているだけに過ぎないだろう。

一応の体裁としては。

 

 

「オレもよく知らないけど、どうやら体内のリズムの問題が関係しているとか」

 

「ふーん」

 

「じゃ、行ってくる」

 

「アイスに妥協は許されないわよ」

 

そこはしっかり行ってらっしゃいが欲しかったね。

期待してなかったけど。

 

――問題は凄くシンプルだ。

少なくとも俺は朝倉涼子という存在を理解していなかった。

俺の方が何一つ理解しようと努力をしていない。

彼女の方は何一つ自分の心底を明かそうとしない。

高々マシンだ、と切り捨てるのは簡単だろう。

俺にはとてもじゃないがそう思えなかった。人間にしか見えない。

人間にしか見えないと思う反面、俺はどこかで朝倉涼子を間違いなく畏怖している。

死ぬだとか生きるだとか、そんな次元の話ではない。

やがて彼女が何かとんでもない事をしでかす……それは間違いなく復讐に関してなのだろう。

倒してハイ終わり、もしくは朝倉涼子がまたまた消されてさようなら。

どちらでも良かった。

良くなかったんだよ。

自律進化の鍵を握るクラスメートの少年。

あいつの日常を変化させたのが涼宮ハルヒだとすれば。

俺は一体、何処へ行くのか?

それぐらい教えてくれてもよかっただろ。

ねえ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

適当な本を一冊。

今回は娯楽時代小説を購入した。

本にしてはやたらと分厚いのが気になったが、何、面白ければそれでいい。

面白いかは。

 

 

「オレが決めよう」

 

だから本を買い続ける。

だって本が売り続けられる以上は、読むしか消費する方法がない。

いつかどこかで聞いた誰かの言葉だ。

 

 

『本ではない。本を読んだ記憶こそが宝物なのだ』

 

……と。

俺には未だその境地は遠いが、すがってみるのも悪くないだろう。

こんな退屈で何一つ期待できない世界なんだ、せめて俺にすがらせてくれ。

書店を後にしてコンビニエンスストアへ向かおうとしたその時。

 

 

「待ってください」

 

後ろから、女性の声がした。

落ち着いていてどこか芯が通っている。

周囲の人はまばら、俺であるか確信は持てないが、迷いなくその言葉は発せられた。

そんな気がした。

とりあえず俺は後ろを振り返る。

性別、高確率で女性。

推定年齢、学生のそれではない。

髪、色は栗色のロングヘアでウェーブがかっている。

ゆるふわとはこんな感じだろうか。

服装はOLのそれに近い。

とりあえず確認だ。

 

 

「今……誰かに声をかけませんでした……? 別に自意識過剰ってワケじゃあないんですが、あなたはこちらを窺っておられる。ひょっとして……オレに声をかけた。そうなんですかね?」

 

言うまでもなく初めて見る人物だった。

その人物の返答を聞くよりも早く俺は高速で思考していく。

 

――俺に用があるような人物。

悪徳商法だとか、キャッチだとかの類。

見てくれはスゲー美人。

出来るだけ視界に入れたくはないが特大がつくような巨乳さん。

こんな人が俺に声をかけるわけがない。

最有力候補だろうよ。

次点の有力候補としては、"学園"関係者。

一応の折り合いはつけてあるものの、連中の方針がどう変わるとも知れない。

宮野先輩とて現状では支配されている側なのだ。

彼もそれに決して満足はしていないが、審判の時は訪れていない。

まだ少し先なんだってさ。

だから関係者とはつまり学生側ではない。

この場合は運営側なのさ。

目の前の人物が、どうかは知らないけど。

 

 

「あなたが何者かは知りたくもありませんが、オレに関わらない方がいいですよ。ああ、勘違いしないで下さい。オレを相手にすると厄介な奴まで相手にしないといけなくなりますから。あなたがそれを知っているかは別ですが」

 

まさか……兄貴の関係者ではあるまい。

ありがた迷惑な話だが、あの屑のおかげさまで俺は学園に強制収容されず、自由の身なのだ。

無駄に兄貴が俺を気にしているのは確かで、兄貴と関わるとそいつは死にたくなる事請け合いさ。

候補にあれど、死にたがりじゃない限り俺に手を出そうとはしないはず。

誤差の範囲内か。

残る最後の候補の方がまだ可能性は高い。

即ち――。

 

 

「明智黎さん。あなたにお話ししたいことがあります」

 

こんな往来で向き合っていては注目されてしまう。

ドラマのワンシーンじゃあるまい。

俺は全然ロマンと程遠い眼つきの悪さなんだよ。

他を当たってほしいね。

 

 

「明日じゃあ駄目なんですか?」

 

「はい。今日が限界……明日からは……とにかく、早急な用件なんです」

 

「なるほど。オレはあなたに明日が来ることを祈っておきますよ」

 

「お台はわたしが持ちます。喫茶店にでもどうでしょう?」

 

「オレが下種な人種だ、と思わないからには相当強力な後ろ盾があるんでしょうね。そういう間違いに対応出来る、オレなんて取るに足らない。あなたのそれが虚勢ならば大したお方だ」

 

美人の提案なんてホイホイ乗るもんじゃあない。

俺が知る限りで美人の人格者と出逢えた例がないんだから。

この人が例外だと俺には思えなかった。

 

 

「手厳しいなぁ。……でも、同意とみなしてよろしいですね?」

 

「構いませんよ……。それと、支払いはオレがしますから。気にせず何でも頼んでください」

 

「お願いしてるのはわたしの方なんだけど……いいんですか?」

 

「男の意地ってヤツですよ」

 

――そうだ。

残る最後の候補は、涼宮ハルヒの関係者。

ならばとうとう北高から出たと言うのか。

迷惑をかけるテリトリーを、学校の外にも拡げてしまった。

皮肉なもんだ。

学園の外に出ている俺に対する当てつけだ。

まだ、そうと決まったわけではない。

しかし、そうかもしれない。

これが兄貴の関係者で、兄貴が俺に会いたがっているみたいな話をされたなら……。

俺はこの人を殺してもおかしくはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――私の登場に驚いておるのか?

なるほど、これが物語であればそれも致し方ない事だろう。

確かに物語とは往々にして意味不明かつ奇怪な設定を押し付けて来る。

外の世界へ飛び出そうとするのだよ。まるで、波紋のように。

電波のようにな。

しかし、否定ばかりとは感心せんな。

私の登場は随分と前から約束されていた事なのだよ。

あの世界の黎くんは、私の弟子の方よりも見識や判断力が数段上だ。

最終的にはどんな真相にも辿り着いてしまう。

違うな、辿り着ける可能性を秘めている。

EMPも念能力もどきも、終着点こそ異なるが過程は同じ。

何故ならば根源的には同じエネルギーを操るからな。

どちらも、必要なエネルギーではないか。

 

 

「私はそう考えている。この考えが正しいとも確信している。では、キミの考えはどうなのかね?」

 

だが黎くんには悪いクセがあってな。

深く考えすぎた末に、ちっぽけな事を見落としてしまう。

流されることに慣れ続けてしまったせいか、大きな出来事に視点を奪われてしまう。

視野を広げたところで、これでは無意味ではないか。

 

 

「そうだ、私が彼女にアクセスしたのだ」

 

私にとってはつい昨日の出来事のようなものだ。

しかし、君たちにとってはかなり前の出来事かもしれないな。

時間とはそういうものなのだ。時空も同じだ。

二次元、三次元、四次元。

どれも同じだ。

問題はそれが"外の世界"かどうかという一点に過ぎないのだよ。

 

 

「私はとうとうここまで辿り着いてみせたぞ! 七月七日の、あの日までな!」

 

私の初登場は"消失"、平行世界。

何故ジェイと名乗った異世界人が……佐藤詩織があんな行動をとったのか。

黎くんを助けるのか助けないのか、曖昧な結果に終わってしまったのか。

決まっておろう。

 

 

「そう! 私が彼女の"ボス"だったのだよ!」

 

わざとらしく彼には口調の変化といったヒントまで与えてあげたのにな。

しまいには気にせず終えようとしているではないか。

もっとも、私の干渉を佐藤詩織が自覚していたわけではない。

精神操作や精神感応は私の得意分野ではない。

しかし愛する弟子にこちらを最大限利用してもらい、師匠も弟子を利用するというのが理想の師弟関係ではないのかね?

……さて、キミはどう思っているのだろう。

私を消すのならば早くしたまえ。その方がいいぞ。

取り返しがつかなくなってしまう、その前

 

 

 

『――終了』

 

 


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