カンピオーネ!~旅行好きの魔王~   作:首吊男

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番外編 中

門をくぐった竜司達を待ち受けていたのは、見渡す限りの手入れが行き届いた芝生だった。

 

「広っ!」

 

おいおい、なんの為にこんなとてつもない庭がついてんだ?軽く俺の家十個ぐらいは収まりそうだぞ。

 

「大げさね。このぐらい普通でしょ?」

「普通?馬鹿か!」

「貴方、今誰に向かって言ったの?」

「いや、だって俺ん家なんか、あっからそこぐらいの二階建てだぜ」

 

そう言って、指で大体の大きさを示す。

 

「そう...ごめんなさい」

 

すげー謝れた!何だその哀れみの目は!?別に困ったこともないぞ!これが格差社会!なんというヒエラルキー!

 

「止めてくれ、なんか惨めになる」

 

あーなんか空気が重くなったよ。俺か?俺が悪いのか?

ええーい、何か話しを変えなくては。

 

「それより名前なんてんだ?」

「えっ?」

「だから名前だよ、お前の」

「何でそんなこと貴方に教えないといけないの?」

 

う~ん、そうだよなー。誰だってそう思うよ。また警戒の目を強めたし。

 

「えーと、あれだ。名前知らないと不便だろ?それに俺なんかからお前とか言われんの嫌だろ?」

 

彼女はしばし考えたように俯くと、そっぽを向いて萎んだ果実のような声で。

 

「.....アリサ」

 

とだけ言ってきた。

 

「そうか、俺は天童竜司。よろしくなアリサ」

「何言ってるの。貴方はもうじき死ぬんだからさよならよ」

 

おいおいまじかよ...俺殺されるの!?

 

「なぁ...それってなかったことにできない?」

「無理よ。貴方は死ぬしかないの。その前に死にたくなるような苦痛を味わって、情報を聞きだせる分聞いたら処分よ」

「だから俺は何も知らないんだって」

 

そっからは再び銃を突きつけられて連行される。今思ったんだが、なんでアリサ普通に銃持ってんの?初めて会ってからずっと持ってたから違和感が無くなって来てた。この国の法律大丈夫なの?

 

「ほら、さっさと入りなさい」

「痛て」

 

もうちょっと丁寧に扱ってくれよ...。

 

「ねぇ、パパを呼んでくれない?」

 

うわー、セバスチャンって本当にいるんだー。

 

「分かりました。このセバス、お嬢の為ならなんなりと」

 

本当にセバスちゃんかよ!!?

 

「いいわね、絶対にパパの前で粗相がないようにね。じゃないと速攻で貴方の人生終わるから」

「お、親父さんは何をしている人なんだ?」

「そんな事も知らないで私を襲ったの?呆れた」

 

襲ってないんですけど...

 

「パパはシナーズファミリー、マフィアのトップよ」

 

ああーなる。だからこいつ銃なんか持ってんのか。

 

「ってそうじゃない!ヤベー奴やそれ!」

 

動揺しすぎて口調が可笑しくなったが、さすがにそれは想定していなかった。泣いて命乞いしたら許してくれるかなあはは。

 

「ほらパパが来たからもう逃げられないわよ」

 

大広間にある階段から降りてきたのは、いかにもマフィアといった風貌の男だった。

アリサより少しくすんだ白髪を、狼のような鬣を思わせるような後ろ髪を伸ばしたオールバックで、それと同じ色の武将髭。一番驚いたのは、そのとてつもない背だ。優に190はあるだろう。同年代で割りと高めの175cmの竜司の身長よりも、頭一つ飛び出ている。

 

「パパ、こいつギーベリファミリーの手下よ。多分」

 

多分で俺は命の危機なんですか!?

 

「なにぃ?こやつがか?」

「ええ、路地裏で私を襲った仲間に違いないわ」

「襲っただと!?」

 

いや、だから!襲ってないって!むしろ襲われたんだよ!!

 

「小僧、覚悟はできてるんだろうなぁ!」

「うおおおおお!待ってくれぇぇぇぇぇぇ!!」

「あらあら皆そろってどうしたの?...あら?其方の方は?」

「ママ!」

 

寸でのところで迫り来る拳が止まった。あ、危なかった。

ていうかママ?俺は俺の命の恩人の方へと顔を向ける。

はぁあ!?あれがママ!?若けぇーよ!どう見ても二十代後半ぐらいだろ!?

 

「ぬぅ、ニーナか」

 

アリサの母親はニーナと言うらしい。それより、母親って言えばこういう場面じゃ、言わば助け舟だ。お父さんを嗜めたりとか、漫画や小説でよくあるパターン。そうか、お母さんが俺を助けてくれるのか!そうに違いない!

 

ニーナはセバスちゃんから事の経緯を聞いている。最後まで聞き終えたニーナはアリサ、父親、最後に俺を見て言い放つ。

 

「あらあら、どこの馬の骨かしら」

 

詰んだああああああああああああ!!

これはもう死ねってことなのか!?

 

「最後に言い残す事はあるか小僧。あっても聞かんがな!!」

「待ってパパ!殺すのは後にして!それよりも情報を聞き出すのが先よ」

「う、そうじゃった。...セバス後は任せるぞ」

 

あ、アリサ...。おかげで助かった。そもそも俺が死にそうなのお前の所為だが。

 

「かしこまりました。...すまないが、君には気絶してもらわねければならない。私もこんなことはしたくないのだが、これも命令だ。悪く思うな」

 

ドスッ!!

 

「がはっ!!」

 

思わず身体がくの字に折れる。拳が鳩尾に5cmほどめり込む。セバスちゃんは只の執事じゃなかったのか!?

 

「ほう。今の一撃でまだ意識があるとは、鍛えられてあるな」

 

なんだって、こんな痛い思いしなくちゃなんねぇーんだよ。俺は旅行を楽しみに来た筈だろ。可笑しい。これは可笑しい。

 

「痛てぇーじゃねーか.....。あ?俺が何したってんだよ?ふざけんじゃねー.....」

「何をぼそぼそ言ってるんだ?まぁいい。次で楽にしてやる」

 

そう言って放たれたセバスの拳は、空を切った。

 

「何?」

「シッ」

 

竜司は殴られる直前、思いっきりジャンプし、回し蹴りを放った。竜司の右足のかかとが、セバスの側頭部を思いっきり弾く。それをセバスは、伸ばした拳を瞬時に戻し、手の甲で受け止める。

 

「くッ」

 

受け止めた筈のセバスの身体がたじろぐ。体重を乗せた蹴りは、何とも重い一撃だった。腕を縛られた状態で、尚且つジャンプしながらの空中で、バランスを崩さずに放たれた回りながらの蹴りがだ。

 

「何をしているセバス!さっさと仕留めろ」

「はっ!」

「すまんな、少年。奥の手を使わせてもらおう」

 

そういうといきなりセバスが消えた。気が付くと俺は地面に横たわっていた。

 

「正直驚いたぞ少年。まさか私に一撃いれてくるとわな」

 

その言葉を聞いて、俺は意識を失った。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「それでは、お前の知っている事を全て話してもらおうか」

 

竜司は魔法陣が描かれた床の上に横たわっていた。アリサの父の言葉をきっかけに魔法陣が青く輝き出す。これは他人の意識がない時に、対象の潜在意識を呼び出す。言わば自白剤の様なものだ。

 

「それではまず、お前の生い立ちについてでも聞かせてもらおうか。その歳でギーベリの手下をしているのだ、何か訳ありなのだろう?」

 

そう言われると、横たわっていた竜司が人形のように、不自然な動きで起き上がる。目は瞑ったままだ。

竜司は自分の今までの人生を語り出した。父親が死んだことから、母親が蒸発し貧しい生活を送ってきたことまで。

 

「俺の兄さんは高校を卒業して、すぐ軍に入隊した。二人目の兄はもう何年も家から出ていない引きこもりだから、俺は生きる為にがむしゃらに働いた。ここに来たのは只の旅行でギーべリとの関係は一切ない」

 

話しを聞いていた全員は竜司の話を信じられないような表情をしていた。

 

「それなら、何故アリサを襲った?」

「襲ってなんかいない、路地裏に怪しい男たちに連れられていくのをみて助けようと思って行っただけだ」

「えっ!?」

 

アリサはありえないといった表情で竜司を見ていた。今までマフィアの娘と言うこともあり、同い年の子どもから避けられたアリサにとって、それは衝撃の事実だった。

 

(今まで、皆わたしのことを怖がって助けてくれるなんて一度もなかったのに。たとえ私の正体を知らなかったからとは言え、見ず知らずの人を普通助ける?)

 

アリサは生まれて初めて知る、同い年位の男の子からの度が過ぎた親切に触れて、思考が定まらなくなっていた。気づけば竜司に目が釘付けになっていた。

 

「なら小僧。お前はアリサの事をなんと思っておる」

「最初見た時は素直に可愛いと思った。けど、こっちの話しは聞かないし、銃乱発するしで中身は最悪だと思った」

「こ、小僧ぉぉお!!」

「お、落ち着いてください!」

 

竜司の言葉にキレた父をセバスが必死に止める。

 

「でも、俺みたいな奴に名前教えてくれたし。両親を未だにパパママ言ってるのは笑ったけど、それだけ家族を愛してるんだとも思った。俺から見たら、とても輝いて見えた。だから、思った以上に悪い奴じゃないと、今なら分かる」

 

ドキンッ!

 

(な、何これ?なんか胸が締め付けられるような。...苦しい...)

 

今まで感じた事のない胸の痛みがアリサに襲った。何故だか分からない、だがこのまま竜司を失いたくないと思った。

 

「パパ、そいつどうするつもり?」

「そうだな、取りあえず私達に関する記憶を消そうか。一般人だったみたいだしの」

 

(ダメ、......それだけはダメ!)

 

「あなた、まあそう焦らなくても。私達の所為でここまで連れて来てしまったのですし、このままかえしてしまうのはシアーズの名折れなのでは?聞けばその方、ここには旅行に来たと言うのでしょう?ならばアリサ、これまでの非礼と助けて貰いそうになったお礼として、観光にでも付き合ってあげたら」

「ニーナ!何をいっておるのじゃ!?」

「あら?どうしたのかしら あ・な・た?」

 

般若もあわやと言う様な眼つき。それにたじろぐ父。何時の時代も、どんな時でも、女は男より強し。それはマフィアのボスとて例外では無かった。

 

「どう?アリサがよければの話しだけど?」

 

それを聞いてすかさずアリサの父が

 

「断るんじゃアリサ!何も見ず知らずの他人にそこまでする義理など無かろう!」

 

そうだ。赤の他人なのだ。そこまでして何の得がある?...けど、それでも彼は必要無かったにせよ、赤の他人であるわたしを助けようとしたのだ。なら...

 

「わたしは---------」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「っは!...痛ぅ~。ここは?」

 

確かセバスちゃんにやられて、気を失っちゃって、それから?

 

「う~ん。何かあったような気がするけど、無かったような気も」

 

ってか、すごい部屋だな。ベッド無駄にでかいし、シャンデリアとか普通についてるし。

 

「死後の世界?」

 

なのか?にしては実感が湧かない。死んだ記憶もないし。殺されそうな記憶は何回かあったけど...

 

「確かめるしかないか。外にでれば此処がどこか分かるだろ」

 

そう言って、俺は唯一この部屋にあるドアに向かう。と、ノブに手をかけようと伸ばした瞬間、ドアが独りでに開いた。そして

 

ボフッ 

 

っと、クッションを叩くような音が聞こえた。それと同時に、俺の胸に何かが当たった感触。

 

「えっ?」

 

続いて間の抜けた声。

恐る恐る自分の胸元に視線を向けると...俺の胸に埋まるアリサがいた。

俺は今二つだけ分かったことがある。一つは俺はまだ死んでいなかったこと。そして、まさにこれから殺されるという事だ。

 

ああーなんでこうなっちゃうんだろうね?俺は静かに瞼を閉じた。さぁ、俺は全て受け入れてやるよ泣

・・・が、なんもこない。未だ胸の中に埋まるアリサも、さっきから全然動かない。そっと目を開ける。すると、あんなに白くて綺麗な肌が真っ赤だった。しかも全身。こ、これは、怒りが頂点に達し過ぎてオーバーヒートしたのか。そうか、ならまだチャンスはある筈だ!

 

「そのまま動くなよ!」

 

俺は銃を取り出されて撃たれたりする前に、動きを封じる為、思いっきり抱きついた。頼むぞ、そのまま動かないでくれ、俺の命の為に!

 

「キャ、キャアアアアア」

 

そうだろうな、嫌いな男に抱きつかれたら嫌だもんな。う、ちょっと自分でも傷ついてきた。

 

「我慢してくれ!お互いの為にも!俺も我慢すっから!」

 

女の子の叫び声を間近で聞くのは辛い。それが自分のせいなら尚更だ。けど如何せん、まだ死にたくないんじゃ~!

そのまま数分後、アリサが急に身体の筋肉を緩めた。逆に、俺に項垂れ掛かってくる。

 

「き、気絶した!?」

 

そんなに強く圧迫したか!?いや、死に物狂いだったからありえない事も無い。

 

「ふみゅ~」

「う、海?」

 

どうしてこんな時に海?ん、海?

海=水

そうか!身体が熱いから、水に浸してくれってことか!

 

「いや、でもそんなことしたら...次は絶対に殺される!」

 

そうだ、わざわざ身体を冷やすのに水に浸す必要なんて無い!

 

「わ、悪いがこれで許してくれ」

 

俺はアリサをベッドに寝かせると、空気の循環を始めた。ついでに着ていたTシャツをうちわ代わりにして扇ぐ。これで大分ましになる...といいが。いや、良くならないと俺の身が危ないんだ!

俺は必死にTシャツを扇ぎまくった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

---日本にて

 

「天童くん、無事に行けたかしら?」

 

ベットの上で寝転がり、一人ごちるさゆりは一人の青年に思いを馳せていた。

 

「私も行きたかったなぁ」

 

本当は一緒に行きたかった。あの時は勢いで行かないと言ったが、今考えると勿体無い...。

でも、実際に現実的に自分じゃ行けない。家のことや他にも行けない理由があるのは確かだ。

 

「あの時、もし行くって言ってたら駆け落ちでもしてたのかしら」

 

と、口にして

 

(無い無い無い無い無い!何言ってるの!?天童くんよ?ありえないわ!)

 

自問自答したあげくもがきだした。

今のさゆりの心境は、穴があったら入りたいぐらいの羞恥で覆われていた。

 

「...そうよ。あの鈍感正直バカがそんなことした時点で、地球滅亡しても可笑しくないんだから!」

 

そうやって、何とか必死に自制心を取り戻していく。だが、急にフッと熱が冷めていく。

 

「もしかして、あっちでもフラグ立ててるんじゃ無いわよね?...でも有り得ない事じゃ...」

 

本人は絶対に気づいてないだろうが、竜司は結構もてる。頭も良いし、部活こそ入っていないが運動もかなりできる。多分、どこの部活でもレギュラーを張るぐらいに。実際、多くの部活から勧誘が来てた。そんな男が、今まで色恋沙汰が無いと言うのは、かなりの有料株だ。さゆりが知ってるだけでも三人は竜司を好きな人はいた。

 

「あいつ、無駄に優しいから...」

 

そんな面でかなりお世話になっている。だからこそ、同年代の男子に嫉まれそうなものの、そんな話しは聞いた事がない。

 

「もう...気が気でないんだから」

 

そう呟きながらゆっくりと瞼を落とした。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「う、ん...あれ?私」

「お?やっと起きた」

 

ふぅ~疲れた。ずっと扇ぎっぱなしだったから汗掻いたぞ。

 

「何で、ここ、確.......キャアアアアアアアアアア!!!!」

「ど、どうした!?や、やっぱ俺に抱きしめられたのが原因か?」

「な、何ではだ、か?て、抱き!?あれ?なんっで、べッッッと?わた、し覚え...」

 

プスー

 

「お、おい!またか!」

 

またオーバーヒートしやがった。ってかこれ冷静になった後が怖い...

 

「おーい、アリサ大丈夫か?」

 

ゆっくりと身体を揺すってやる。意外にも、今回の復帰は早かった。

 

「大丈夫よ!触らないで!!」

 

ここまで拒絶されると、俺だってさすがに傷つく。まあ、自分を襲った相手には仕方ないか。...誤解だけど。

 

「なぁ、俺はホントに襲った訳じゃないんだ。だから俺を「分かってるわよ」殺すのは...はい?」

 

聞き間違いか?

 

「今なんて?」

「だから分かったって言ってるの!貴方が本当にあいつらの仲間じゃなかった事が!だから、もう貴方を殺したりなんかしないわよ」

 

まさか、アリサが自分の非を認めた!?

出合って間もないが、コイツの今までを見ると信じられない。

 

「でも、そうかそうか!やっと分かってくれたのか。ちゃんと俺の話を聞いてくれたんだな!ありがとう!」

 

殺されないと分かった途端、安堵からなのか、盛大に俺は喜んだ。

 

「よ、良かったわね」

 

良かったという割に、何故こちらを向かない?そんなに俺を見るのは嫌か?

 

「んで?ここどこ?」

「私の家」

「はあ!?」

 

き、危機はまだ去っていないということなのか!?

 

「何?嫌なの?」

 

アリサがジト目で睨みつけてくる。

 

「嫌って言うより、大丈夫なのか?」

「何が?」

「親父さんとか」

「別に?パパがそうしなさいって言ってたし」

 

何だって!?もう何が何だか意味が分からない!誰かこの状況を説明してくれ!

 

「それより貴方、ホテルとか予約してあるの?」

「いや、してない」

「そう。なら、今日はここに泊まってくといいわ」

「...悪い。俺の脳ミソじゃ理解できなかった」

「だから、泊まっていきなさいって言ってるの!」

 

聞き間違いじゃ無い。これはどういう事?夢?

軽く頬を抓る。痛い。

 

「寝てる間に寝首を掻こうとか、そんなんじゃなくて?」

「違う」

「純粋に?」

「そうよ」

「急展開過ぎじゃないか?」

「そういうものよ」

「そうか」

 

・・・

 

「はぁ?」

 

思わずそんな声が漏れた。無理も無いだろ?殺されそうになった女の子に、何もしないから家に泊まりなさいって言ってるんだぜ?違う意味でドキドキして眠れないわ!

 

「一日この部屋使っていいから。嫌ならもっと大きな部屋あるけど、そっちにする?」

 

え、なになに?俺が泊まるのは確定ですか?後、さりげない優しさが怖い。

 

「はぁー、分かった。お言葉に甘えさせて貰う。部屋もここで充分過ぎる」

「そう。...良かった」

「良かった?」

「そんな事言ってないわよ!それより早く寝なさい。明日は早いんだから」

 

ああ、明日の朝にはさっさと出て行けってことか。

 

「分かったよ。直ぐに出てけるように準備しとく。それでさよならだな」

「何言ってるの?さよならはまだよ」

「はい?」

 

可笑しい。全然話しが噛み合っていない気がする。

 

「ああ、まだ言ってなかったわね。明日から私が、この国の観光を案内してあげる!」

 

ん?今なんて言った?


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