まー、来週からまた忙しくなって、次いつか分からないんだけどね……
「厄払いが、必要だと思います!」
「「…………はい?」」
いつものファミレスで、対面に座った御坂さんと、いまだ風邪気味の初春に向かって叫んだら、疑問符を浮かべられた。ノリ悪いな~、もう!
「最近、おかしいじゃないですか! 銀行強盗にあったり、脱げ女に遭遇したり!」
「この間は、マユ毛まで大惨事になりましたからねえ……」
「それは、もういいの、初春! というか、忘れたいんだから、思い出させないで!!」
「あはは……」
自分の中では、あの事件が一番ショッキングだったんだよ!?油性だから、しばらく落ちなかったし!
「んー、でもさ、厄払いっていっても、何するの? 学園都市に神社なんか無いわよ?」
「そこは問題ないですよ、御坂さん!」
そう言って、初春に頼んで探してもらっていた画面を見せる。なんと、そこに映し出されていたのは!
「「『学園都市伝説収集所』…………『ラッキーアイテム特集』?」」
「そう! このサイトに載っているアイテムを片っ端から集めれば、厄なんか消滅! 代わりに幸運が舞い降りるってわけですよ!」
まさに、完璧な計画!――って、何で二人とも、無茶苦茶冷めた目つきで私を見ているの?
「……要は、いつもみたいにブラブラするついでに、このアイテムを探そうと」
「あ、あはははは……はぁ~」
え、なに?何で二人して、そんなに溜息までついてるの?
「……まー、いいか。今日は黒子も
「そうですね。それで何から探します?」
……み、御坂さ~ん、初春~。いい友達を持ったよ、私は!
「うん、そうだね。まずは!」
『私限定』のラッキーアイテムから!
「『初春のパンツ』から!」
「へ――――わきゃあ?!」
スカートをまくって顔を突っ込み、中身を確認!お、今日はピンク色か~。
「さあ! 気合も入ったし、行こうか!!」
「そんなことで気合入れないでください!」
◇ ◇ ◇
それから私たちは、学園都市の中をあっちにブラブラ、こっちにフラフラ。艱難辛苦を乗り越えて、見事!5つのラッキーアイテムをゲット!
「いや~、結構集まりましたねー」
「……はあ、そうですね。本当に、集めるの大変でしたけどね」
「え、そう? 結構楽しかったじゃない♪」
疲れ切ったような初春に対して、御坂さんは上機嫌。その理由は、その手の中にあるモノが原因。
「幻の『お医者さんゲコ太』のストラップ…………! まさかゲットできる日が来るなんて…………!」
そう、御坂さんに渡したストラップがその理由。実は、ゲコ太というあのキャラクターのうち、『居眠りゲコ太』という、両目を閉じて鼻提灯まで出したラッキーアイテムが存在するらしいのだ。以前に出たという路地裏の商店の前にあるガチャガチャをやってみたんだけど、出たのはアレだけでしかも最後の一つ。お目当てのラッキーアイテムでもなかったので、御坂さんにあげたのだ。
「でも、あっちこっち行って大変でしたね」
「あー、まあね。河原で『七つ葉クローバー』を探すのは、さすがにしんどかったねー」
「その前に、佐天さんが『一つだけ逆回転している風車』を探そうとか言い出したときは、どうしようかと思ったわよ」
えー、面白いじゃないですか。他にも『謎の文字が書かれた紙』とか、『根性が入るハチマキ』とか、『謎の黒曜石のナイフ』とか……見つからなかったけど、面白そうなものたくさんあるのに!
「まー、でもさすがにそろそろお開きですかねー。後のラッキーアイテムは、アイテムというかパーソンみたいですし」
「ん? それって出会えたら幸運とか、そういう人のこと?」
「そうみたいですよ? えーと、『眼鏡をかけた半透明の謎の制服少女』とか、この間の『怪奇・脱げ女』さんも載ってますね」
「……脱げ女は、ラッキーにはならなかったなあ、私」
「いやー御坂さん? 脱げ女で幸福になるのは、主に男子だけなんじゃないかなー。あはは……」
「あとは、これですね。『最高のラッキーパーソン、幸運の白いシスター!』なんでも、『学園都市にまるで高級ティーカップのような真っ白い
「いやー、流石にそんなのはいないんじゃない? この学園都市じゃ宗教関係者見つけるのも難しいし、ましてや白いシスターなんて――――」
そんな馬鹿話をしながら歩いていると、不意に通りに面した路地から、何かを引きずるような音が聞こえた。
「「「……ん?」」」
思わず三人とも足を止めて、その路地に注目した。すると、
「う……うう…………」
路地からは、綺麗な白地の布に、金の糸で刺繍を施した修道服の少女が現れ、バッタリと地面に横たわった。
「ちょ、ちょっと!?」
「行き倒れ? 病気? と、とにかく初春、病院に連絡を!」
「は、はい! て、あれ? この娘の格好……」
慌てて駆け寄った私達に向かって、目を開けた女の子が口を開いた。
「お――――」
『お』?
あ、そういえば私、外国語得意じゃないよ!?この娘見た感じ外国人ぽいし、分からない言葉だったらどうしたら――
「――おなか減った」
「「「……………………はい?」」」
◇ ◇ ◇
「(パクパクモグモグムグムグムシャムシャツルツルゴクゴク)美味しい! これが日本の、ファミレス! 一般大衆向けの食事処でも、これほどの味だなんて、さすが食にこだわる日本なんだよ!」
「あー、そう。良かったねー……」
まあそこまで高級でもなんでもない、ごく普通のファミレスの味なんだけど……なんなの、この
「私、カレーライスが『飲み物』だったなんて知らなかったわー……」
「食べないで、ゴクゴク音をたてて『飲んで』ましたからねー……」
横にいる二人は、既に現実逃避気味。本当に何なんだろう、この
「ぷはー! 美味しかったー! ようやく、人心地ついたんだよ。ありがとね、えーと……」
「ああ、そういえばまだ名乗ってなかったっけ。私は佐天涙子。で、こっちは――」
「あ、初春飾利といいます。佐天さんと同じ柵川中学の一年です」
「……御坂美琴よ。それで、そっちは?」
その言葉に、少しだけ居住まいを正した彼女は、こう告げた。
「私はね、
それが、彼女との出会いだった。
◇ ◇ ◇
SIDE:? ? ?
「――やれやれ、どうするかな」
ファミレスを見下ろす、高層ビルの屋上。そこに一組の男女が佇んでいた。男の方は黒服に赤い髪、目の下にはバーコードの刺青を入れ、くわえ煙草という、出来れば近づきたくないような風貌だった。女性の方は、その女性らしい肉体をシンプルな白のシャツとジーンズに包んでいたが、シャツは片方で結ばれ腰回りを涼しくし、ジーンズは片方を大胆にカットし太腿が出ているという、何ともその肢体を際立たせるような着衣だった。
そんな二人の後ろに、新たな人影が現れる。
「――確認したぜい。どうやら学園都市の情報掲示板に、彼女のことが載ったみたいでな。彼女に食事を奢ると、幸運になれるんだそうだ」
「……成程。つまり彼女らは、何らかの意図があって近づいたわけではないというわけですね」
「そういうことだ。で、どうする?」
その言葉に赤髪の男は、ふうっと煙を一筋吐く。
「一般人を巻き込むわけにいかないだろう。離れるのを待ってから、襲撃を仕掛けるさ」
「その通りです」
「あー、まあそうだよなあ……」
その返答に、新たに現れた男――アロハシャツを着た土御門と呼ばれる少年は、歯切れ悪く答えた。
「? どうした?」
「実は、学園都市の……『命令』ではなく、『要請』でな。もし襲撃をかけるんなら、あそこにいる髪の長い、『佐天涙子という少女も襲ってほしい』だそうだ」
「……なに?」
その言葉に、一度視線を眼下に移す。そこにいるのは、何の変哲もない一人の少女。それをわざわざ襲えとは、どういう要請なのだ?
「何の意図があって、そんな要請を……?」
「分からん。どのみちこれは強制的な命令でもないし、ただの要請だと言っていた」
「…………フン。くだらないな。僕らは
そう言って踵を返す赤髪の男と女性。後には土御門だけが残され、その視線は眼下の一人の少女に向けられていた。
「あの要請も不可解だが……何より不可解なのは、あの能力。あれは本当に能力なのか……?」
その問いに、答えはいまだ得られないままだった。
SIDE OUT
◇ ◇ ◇
「本当に、大丈夫ー?」
あの後、インデックスに奢った食事代をみんなでワリカンし、学園都市の地理がよくわかっていない彼女にいろいろ教えてあげた。何でも、学園都市内にあるどこだかの教会に行く途中だったとか。ミッション系の学校の、留学生とかなのかな?
「大丈夫なんだよ! るいこに教わった道順は、全部覚えたから!」
ついて行ってあげようかという私たちの問いは、すげなく断られた。こうも自信満々に答えられちゃねえ……?
「う~ん。じゃあ、私のケータイの番号教えてあげる! 何か困ったことあったら、かけてきなよ!」
「そうだね。私も渡しとくか」
「あ、それなら私も。一緒に
そうして計四つの番号を記したメモを渡して、インデックスとは別れることになった。
「じゃーね、るいこ、みこと、かざり! また一緒にご飯食べるんだよー!」
「……そんときは、自分の食事代は自分持ちでねー」
「「うんうん」」
そうして、インデックスは夕暮れの沈む方向に向かって、元気よく走っていき――――やがて、見えなくなった。
SIDE:黒子
ここは、
「はぁ~。こんなことなら、当番を初春にでも押し付けて、私がお姉様と遊びに行きたかったですわ」
そうして帰りには、お姉様との一晩のアバンチュールを……ぐへへ。そんなことを考えながら、食事代わりのシュークリームにかぶりつきます。すると、勢いよくドアが開きました。
「大変よ! 白井さん!」
「ムグッ?!」
部屋に飛び込んで来たのは、
「ゲホッ、ケホッ……ど、どうしましたの、固法先輩。本日は例のゴミ箱で起きた謎の爆発の件で、
「その打ち合わせ中、第二の『事件』が発生したわ! その上調査の結果、現場では重力子の加速が検出された! これは明らかに、能力による連続爆破事件よ!!」
「!?」
それを聞いて席から思わず立ち上がる。能力者による、連続爆破。もしも無差別だとしたら、大変なことですわ。街全体にパニックが巻き起こる可能性だってある。
「わかりましたわ! 非番の初春も緊急招集。すぐに現場近辺の監視カメラの映像を洗わせます。私も、これから近辺に聞き込みに参りますわ!」
「お願いね。
「お任せくださいな。――それで、事件名は、何と言いますの?」
その言葉に固法先輩は、手に持っていた手帳を一瞥し、その事件名を告げました。
「――――『連続
SIDE OUT
今回は、日常回。そしてインデックスさんの初登場と、グラビトン事件の始まり!
前回よりは文字数多いけど、これでも他の作者さんに比べれば少ないんだよなあ……
後少しでSAOの方がひと段落つくので、その後に週一か隔週に変更しようかな……?
今回お分かりのとおり、都市伝説やマユ毛事件は飛ばしました。あの辺りは変更のしようもなく、ただのアニメや原作の描写のみになりそうでしたから。作者個人の考えでは、二次小説は原作で語られない行間や、オリジナルを書いてこそ、だと思うので!