これが路地裏の作者、今年最後の投稿になります!
SIDE:美琴
「何よ、アレ……」
ルームメイトの黒子の紹介で会った、二人の女生徒。巻き込まれた銀行強盗事件の中で、私はそのうちの一人の能力に眼を剥いた。
(『
視線の先で、
そんな彼女は、近くの地面にそっと気絶した少年を横たえ、すっと腕を持ち上げると……
(攻撃? あんな離れた位置からいったいどんな――)
後ろの柵に、右腕を打ち付けた。
「……はい?」
SIDE OUT
「あ~~、も~~! 言うこと聞いてよ、ちょっと!!」
今現在、私は右腕を柵だの地面だの振り下ろし続けている。言ってると馬鹿みたいだが、原因はこの右腕。発動したはいいが、全く言うことを聞いてくれない。今も勝手に動き回り、周り中しっちゃかめっちゃかに攻撃してるし!……しかも。
「ちょ、ちょっと?! きゃああああ!?」
右腕が突如近くの柵の支柱を掴み、私の全身をそっちへ引き寄せた。……どうやらこの右腕、私の全身の筋力より強いみたい。
『――へ、へへ。何だよ、見たことない能力に警戒してたが、マトモに使うことも出来ねえんじゃねえか』
そんな声が、
「オイ、何やってんだ! 早いとこ人質もっかい奪って、逃げる準備だ!」
『へーい、了ー解』
『オイオイ、何腕もぎ取られてんだよ?』
『全くだな。これじゃ逃げるのに邪魔じゃねえ?』
さらに路地から二体の
『へっ。問題ねえさ。ガキ一人人質にとるだけだ。腕が一本残ってりゃあ十分さ』
そう言って、最初の
「――っ、お願い!」
気づくと、私は自分の右腕に話しかけていた。他人から見られるとバカみたいに見えるかもしれない。けど、先生に見せてもらったあの映像の中で、あの金属球は、私のことを治してくれた。そして、何かの意思を持ってるみたいだった。だから!
「お願い! 勝手なことだけど、私の話を聞いて。何年も一緒にいたのに、今更、って思うかもしれないけど、私の身勝手につき合わせることになるけど……でも、聞いてほしい!」
そうして話す間も
「私は……あの子を助けたい。もうあの時みたいに……あの日の私みたいに、見ず知らずの誰かに傷つけられる、誰かを見たくない」
――だから。だから!
「私に――――力を貸してぇええええええぇぇっ!!」
その途端――右腕の暴走は、ウソのように治まった。代わりに周り中に響き渡るほど、高音の振動を響かせる右腕が。力が、わいてくる?これなら、これならいける!
抱え込んでいた右腕から左手を離し、私は体を思い切りひねった。正直殴り方なんか、わからない。だから、分かってるやり方で!
「でえいっ!」
大きく後ろに振りかぶった右腕の横っ腹を、思い切り相手に打ち付ける。イメージは、野球のスイング。バッティングセンターに通っててよかったわよ!
『がっ!? こンのアマアッ!』
一度は吹っ飛んだ片腕がない
「こん、のぉーーーーッ!!」
テレビで見たボクシングのパンチをイメージして、私は右腕を振りぬいた。拳の先で
「って、とと?! わきゃあ!?」
拳から伝わった衝撃で、こっちまで吹き飛ばされてしまった。後転を何度かした後、柵に背中をぶつけてようやく止まる。~~~っ、いったぁ~~~~。
「あたたたた……でも、これで」
そう呟いて視線を上げると、そこには装甲こそ砕けたものの、起き上がろうとする姿があった。何、まだやる気?!
――――そう、思っていたのだが、すぐにその
「――――黒子ー、コイツラ相手にするのは、私の個人的なケンカだから」
その台詞とともに、横合いからすごくバチバチいってる御坂さんの姿が。え、なに?いったい何!?
「お、お姉様? どうか、落ち着いて下さいまし」
「……落ち着けるわけないでしょ」
何とか白井さんが諌めようとしているみたいだったが、私はその後ろの光景も気になった。アスファルトから白煙が上がって、溶け出すって、どんだけ!?
「――――子供人質にとったこともそうだけど…………コイツラは私の『友達』まで人質に取った! そんなことされて――」
そう言って彼女はコインを一度指で弾き――
「――――許せるわけないでしょうが!!!」
落ちてきたコインを、目にも止まらない速さで撃ち出した!一本の光の線になったコインは積み重なった
「
彼女の誇る、学園都市七人の
◇ ◇ ◇
「――ホントに、ほんとに、佐天さんは!」
「あ、いや、本当にスイマセン……」
私は今、道路の上で正座させられている。アスファルトである。屋外である。そんなことおかまいなしに、私は先程から三十分以上初春のお説教を聞かされている。あ~う~、段々足に感覚が~。
「聞いてますか、佐天さん!」
「ア、ハイ。キイテルヨ、ウン」
ちなみに、私と一緒に暴れた御坂さんは、一応は白井さんから注意はうけたものの、こういうことがしょっちゅうあるのか、数分で注意が終わった。理不尽すぎない?!
「ちゃんと、聞いて下さい、佐天さん!!」
「は~~い~~~」
結局私が解放されたのはそれからさらに一時間も後のことで、しかもしばらく足の痺れで悶えることになった……。
SIDE:???
「――ふふふ、ようやくの覚醒、といったところかな?」
強盗が行われた通りを、一望できるビルの屋上。そこにあまりにも不釣り合いな少年が佇んでいた。その少年は、まるで当たり前のように、十歳前後の幼い外見には合わない、灰色のスーツを着こなしていた。年齢こそ不釣り合いだが、その落ち着きは、何年もそうした服装を着慣れていることを示す風格を漂わせていた。欧米人特有の白い肌と、染めてもいない天然のブロンドは落ち着いた色のスーツによく似合っていた。肩まで届く長い髪を頭の後ろで縛っており、それを風になびかせながら、彼は眼下の光景を楽しむ。
「……そんなに、あの少女が気になるのか?」
少年に声をかけたのは、これまた異質な少年。金髪にサングラスにアロハシャツと、見た目はどこぞのチンピラのような少年だった。
「ああ、気になるね。彼女は、僕の長年の≪プログラム≫には不可欠な人材だ――なんだい、土御門? それとも彼女を
その言葉に対する、サングラスの少年の反応は、舌打ち一つ。
「アレイスターが直々に認定した『
「ふふ、期待しているよ、『背中刺す刃』。――だがまあ、君もしばらくは彼女について注目しておくといい。これは学園都市での生活と、『実験施設』を世話してくれた『友人』への忠告だ」
その言葉にサングラスの彼もまた、眼下へと視線を移す。そこにはいまだ、頭に花を大量につけた少女に説教される少女の姿。
「……そんなに重要なのか?」
「――ああ。ことによると、これから先、世界で最も重要な人物だよ。世界は果たして、
その言葉に、サングラスの少年は戦慄する。目の前にいるのは、ただすべてを睥睨する、少年の皮をかぶったナニカ。
「――……ふふ、次は魔術、か。
そう呟き、見つめるのは端末の小さな液晶画面。そこに映し出されていた画面には、『学園都市伝説収集所』というサイトの文字が躍っていた……。
SIDE OUT
はい、第5話でした。
ようやくまともに動くようになってきたARMS。それでも格闘技経験がなく、力の受け止め方や受け流し方も知らない佐天さんでは振り回されますがw全身がARMS化するまでは、そこらへんは彼女の課題です☆
そして最後の『謎の金髪少年』。ホントはここで出す予定でもなかったんですが、あんまり引っ張ると、盛り上がりに欠けると思い、ここで少しだけ出しちゃいました。その内色々明かされますが……彼は『物語』に必要な、最重要人物です!名前は――まあ、ファーストネームはすぐに読者にバレるとおもいます♪