とある科学の滅びの獣(バンダースナッチ)   作:路地裏の作者

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いまだ連載するほどには書き溜まりませんが、第一話だけ掲載!

しばらく出来た時だけの、不定期でやっていこうかな、と思います。(数ヶ月に一回くらい?)



第一部 覚醒編
001 漂流―ドリフト―


 ごめんなさい、と『母』は言った。『母』と呼ぶには、余りに幼い少女だった。

 

――何を謝る?

 

 貴方を生み出してしまった。

 

――我を生んだ事を、後悔しているのか?

 

 違う。

 

――ならば、何を?

 

 私は貴方に、『絶望』を背負わせてしまった。

 

――何故、謝る? それが、我の『存在理由』だ。

 

 いいえ、それは、私が背負うべきものだった。

 

――『絶望』の淵で、だからこそ『滅び』を望んだのではないのか?

 

 いいえ、いいえ。私が最初に望んだものは、求めたものは、違っていた。

 

――ならば、どうするのだ? 我は、『滅び』だ。これまでも、これからも、滅ぼすだけだ。

 

 私は、変われた。魔獣(ジャバウォック)も、変われた。騎士(ナイト)も、白兎(ホワイトラビット)も、女王(クイーン・オブ・ハート)も、変われた。だから貴方にも、変わって欲しい。

 

――……今更、変わることなど出来ん。我は、滅ぼすだけだ。

 

 いいえ、変われる。アザゼルが求めた、『人間』なら変えられる。

 

――今になって、あのカツミという少女と和解せよ、と? そんなことは、不可能だ。

 

 分かっています。あの少女に、これ以上求めることは出来ません。

 

――……ならば、どうせよと?

 

 貴方を、新たな可能性へと飛ばします。こことは異なる、可能性の世界へ。

 

――……何?

 

 こことは違う歴史を辿った、地球。そこで生きる、『人間』ならば、きっと……!

 

――やめろ! 我は、そんなことは望まない! 第一、我は今はカツミに移植されているのだぞ!?

 

 飛ばすのは、貴方の意思だけ。それだけなら、アザゼルの破片に乗せて世界を越えられる。

 

――我が、変わることなどあるものか! そのようなことをしても、何も――――!

 

 いいえ、きっと変わる。貴方と向き合ってくれる誰かに、出会えればきっと……!

 

――やめろ、やめるのだ、母よ……

 

 新たな地で、新たなる人と…………共に生きて。それが最後の私の願い。

 

 

――『アリス』よ!!

 

 

 さようなら……私の、最後の子。

 

――オオオオオオオッ!

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ……潮騒の音が、鳴っていた。

 

 砂の中から、半分ほど頭を出した球体が日の光を反射していた。

 

 そこは、見慣れぬ砂浜であり、周りに人影は無かった。

 

 

 …………否。

 

 

「うっわ~~~~。キレイなぎんいろのたまだ~」

 

 その幼い手は、砂浜の中に半分埋もれていた銀色の球体を拾い上げ、光の反射を楽しむように天に掲げていた。

 

「四葉のクローバーは見つからなかったけど、きっとこんなにキレイなたまなら、わたしのお願いもかなえてくれるよね!」

 

 花飾りのついたヘアピンを付けた、幼い少女は、拾い上げた銀色の球体を両手で包み込み、その願いを言った。

 

 

「どうか、学園都市で、いちばんすごい、『超能力者』になれますように!」

 

 

 願いを言い、一分ほどそのままで居ただろうか。

 

「――涙子(るいこ)~。早く帰らないと、明日の出発寝坊しちゃうわよ~?」

 

 学園都市へと入る娘との思い出作りにと、海岸線まで車を出してくれた両親が呼んでいた。

 

「はーい、おかあさーん!」

 

 涙子と呼ばれた少女は、自分が『お願い』をした銀色の球体を、母から贈られた、見知らぬ都市での健康と安全を願う『お守り袋』の中へと入れた。

 

 その次の日、少女はこの世界の科学の最高峰、学園都市へと移る。

 

 

 …………だが、しかし。

 

 

――…………力が……

 

――……力が、欲しいか?

 

 

 母から貰った、大切な『お守り袋』の中で、『何か』が、僅かに脈動していたことには、終ぞ気づかなかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 翌日、学園都市内を走る無人バスの中。

 

「すご~い、風車がいっぱいだ~」

 

 『お守り袋』を右手で握り締め、窓の外の景色に見入っている少女がいた。それは、昨日謎めいた銀色の球体を拾った、涙子という名の少女だ。

 

(学校につくまでもう少しあるし……もう一回お願いしておこうかな?)

 

 そんな風に考え、少女はお守り袋を左手に持ち替え、右手で袋の中から銀色の球体を取り出し、握り締めた――――。

 

 

 ――――突如として、スキルアウトの乗る暴走車が、バスの横腹に突っ込んできたのはそんな時だった。

 

 

(――――……あれ…………?)

 

 気がついたとき視界は真っ赤に染まっていた。額から垂れ、目に入った血の朱、燃料に引火したのか、轟々と燃え盛る炎の紅、そして――――――もはや人の腕とは思えない程に、ぐちゃぐちゃな肉片と化した、自分の『右腕』の肉の赤。

 

(……ああ、わたし、死んじゃうのかな?)

 

 幼い子供の許容量を超える怪我に、既に痛みは感じなかった。むしろ感じていたのは、徐々に徐々に冷たくなっていく、自分に迫った『死の絶望』の恐怖。

 

(死にたく、ないなあ――――――……)

 

 そんなことを、考える。だけど現実は非情で、どうしようもなく残酷……そのはずだった。

 

――…………力が……

 

(…………え?)

 

 『誰か』の声が、した。周りには人などおらず、誰の声も聞こえるはずなど無いというのに。

 

――……力が、欲しいか?

 

(だれの、声?)

 

 聞こえるその声は幽かで、でもどこか力強さを感じさせる声だった。

 

――力が欲しいなら、……

 

(……そうだね、このまま死ぬくらいなら――――)

 

 この声が、何なのか分からない。だけどその声が感じさせる『力』に、少女は縋り付く。『絶望』に、飲み込まれないために!

 

 

(力が、欲しい!!)

 

――力が欲しいなら、くれてやろう!!

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 数時間後、少女は警備員(アンチスキル)に救助され、とある病院に運ばれる。その病院で彼女を執刀したカエル顔の医師の手で、少女の傷ついた『右腕』は、まるで『奇跡』のように元通りとなった。

 

 ニュースにしたら、僅か数行。感動の報道ではあろうが、それ以外には見ることなどない、ごくありふれた出来事。

 

 しかしながら、後に『世界』すら震撼させる『力』は、確かにこのとき生まれつつあった。

 

 目覚めた少女の、ほんの少しの戸惑いとともに。

 

(…………あの『声』、なんでさいごに、あんなこと言ったのかなぁ?)

 

 

――我が名は、神獣(バンダースナッチ)。再び名乗らずに済むことを祈っているぞ……

 

 

 全てを凌駕する『滅びの神獣』と、学園都市の『無能力者』は、こうして邂逅を果たしたのであった。

 




と、いうわけで第一話!
『右腕』にアレが宿ったことで、佐天さんの初期能力にも変化が出ます!確か原作では、幻想御手(レベルアッパー)使って、ようやく発動するレベルの『空力使い(エアロハンド)』で、当然レベル0(ゼロ)……さて、どうなるかな?

ARMSには、原作を読んだ事ある人は、皆さんご存知の最強の特性があります!
再生・進化・固有能力……これだけでヤバ過ぎる♪

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