具体的にいうとイッセー視点を排除しました
緩やかに物語は進みます
「い、いっせーさんなんておっきいひと、はいらないよぉ……」
悪魔の駒も含めて爆散させてしまったのでもうこのままネットの世界に引きこもることになるのかなぁ、と期待半分で覚悟もしていたのだけれど、どうやらイッセーさんの伝手を辿ることで肉体を復活させてもらえることもできるらしいです。
それは本来ならとてもありがたいことなのだろうけど、元々引きこもりでもあった僕のことであるし、正直要らない世話なんじゃないかな、とも思いかけてしまうけど……。
……うぅ、でも自分でもわかってはいるんです。いつまでも逃げているだけじゃ駄目だって。
流され続けることに定評のある某凡庸機動兵器人形のパイロットの少年だって自分を奮い立たせていたのだし、僕だって男だし、いつかは自分の生まれ故郷であるルーマニアとかに戻って気にかけていた幼なじみの女の子のことも確認しなくてはいけないとも思っている。
男だから女だから、っていう単純かもしれない理由だけど、それでも心残りでもあるのは間違いないのだし。その際にでも必要にはなってくるはずなので、肉体を得ておくことは断るつもりはありませんでした。
――こんな結末になるとは思いもしなかったですけど。
「………………ダンボール?」
台車に載せてガラガラと運ばれた僕を見てでしょう、小猫ちゃんからの率直な意見が聞こえます。
悪魔合体、とやらを行使したお爺さんの説明によるとこれは見栄えだけらしいので。ですが問題はそこではないのです。
愛●みかん、とご丁寧にロゴまで入っているそれを見下ろしている気配が複数あるのは中からでもわかるので、出たくないのが正直な感想です。
「え、なんなのこれ? ギャスパーは文字通り箱入りに……?」
「一応合体は成功して、中に人型が出来ているって爺さんの話だけど。出てこようとしないんだよな、何故か」
「何か不都合でもあったのかしら?」
リアス部長、イッセーさん、朱乃さんが順に声をかけてきます。
このまま部室まで運んでもらえないかなー……、なーんて。
「分類は秘怪、秘文怪異とかいうのの略称だそうで、種族はミミック」
「吸血鬼成分は何処に行ったんだ」
「肉体と一緒に爆破されたんじゃね?」
「で、神器と悪魔の駒もだよね……。この先ギャスパー君の扱いってどうなるんだろうね……?」
イッセーさんとゼノヴィアさんがからりとした会話を、それに続いて祐斗先輩の心配そうな声が。
あ、あれ?そうなるとひょっとして僕って文字通りお払い箱に?
た、確かに停止世界の邪眼は亡くなった気配がありますけど、それですぐさまお外に出そう、なんて考えてはいないですよね……?正直、まだ外の世界は怖いところがあったりしてー……。
「……懸念が無くなったなら出てこない理由はないですね」
ひぃ!?小猫ちゃんの言葉と一緒にダンボールのふたを開ける気配が!?
ま、まだ心の準備ができてないのにぃ!
「小猫ちゃん、無理やりはだめですよ?」
めっ、というアーシア先輩の台詞で開けようとする気配が治まりましたぁ!
ありがとうございますアーシア先輩!僕も今日から聖母教に入信します!
ほっ、と胸をなでおろして、内側から抑えていた手をふたから離しました。
「――と見せかけてご開帳ーぅ!」
「ひきゃあああああああああああああ!?」
――その瞬間イッセー先輩の声と共に上から差し込む光がぁ!?
目がぁ!目がぁあああ!?
「なんだ、どれだけ隠しているからどんな変貌かと思ったら、それほど大差ないじゃないか」
「あらそうね。格好もいつもの駒王の制服だし、姿かたちも生前のままね」
「部長、生前って言い方はどうかと……間違ってはないですけど」
「あらあらうふふ」
「てっきりどんな怪物が生まれたのかと焦ったが、これなら間違って討伐しなくて済みそうだな」
確認されて口々にそう仰る先輩方ですけども、もうちょっと注目ー!?ほらほら!違うところがきっちりありますからね!?
「………………あれ、ギャスパーちゃん、なんか成長しました?」
「………………ささやかだけど、胸が……」
「え、マジ?」
「はいそうですよそこですよ!イッセーさんに聞きたいんですけども!?なんで僕女の子になっちゃってるんですかぁあああああ!?」
若干嬉しそうな目で胸へと視線を移さないでくださいよ!あとなんかアーシア先輩と小猫ちゃんの目つきが怖いですぅ!?
「おお、ほんとだ。見たところ……C、か、D?」
「「なん……だと……?」」
ひぃっ!?お二人の視線がさらに鋭くなった!?
「やったなギャスパー!ちっぱい四天王から脱却できたぞ!」
「嬉しくないですしそもそもそんなのに入っていた覚えも無いですよ!?いい笑顔でサムズアップする前に後ろのお二人のフォローからお願いしますぅ!!」
あまりの怖さに再びダンボールの中に逃げ込んだ僕はきっと悪くないはずです!
☆ ★ ☆ ★ ☆
「………………言われてみると確かにそうね。ごめんなさいギャスパー、気づかなかったわ」
「………………あら、本当に。ギャスパーくんにもきちんとブラのつけ方とか教えないといけないですわね」
「………………ああ、本当だ。ちなみに私はつけてないからな、聞かれても答えられん。すまん」
「………………お三方にはわからないんですよ、しっかり凝視しないとわからない大きさでも無いのに気付かなかったとか……。普段から乳袋をぶら下げている豊乳同盟のお三方には既に見慣れたものだったのでしょうね……」
「………………胸の大きさには貴賎の差が如実に顕れる……」
意味合いの違う沈黙をそれぞれ抱えて、女性陣は口々に人の胸部を凝視して呟きます。あとゼノヴィアさんはちゃんと下着はつけましょうね?
そしてそんな空気にはなじめないのは男子の性なのでしょうね。少し離れた場所から遠巻きに、裕斗先輩とイッセーさんはこちらを窺っていました。
「なんだろうねこのカオス」
「ああ、かける言葉が見つからないな」
僕もそっちに匿ってください。一番怖いのが小猫ちゃんです。鷲摑みされているんです。もぎ取られそうです。復活できたばかりだというのに早くも命のピンチです。
「小猫、放してあげなさい」
「でも、でも、部長……!」
「あなたがそんな泣きそうな顔になるのは珍しくて貴重で重視してあげたいのだけども、それを放置する代償が部員の命というのはさすがに看過できないの。だから、ね?」
「でも……!」
早く、ヘルプ。
「小猫ちゃん、大丈夫です。私はちゃんとわかってますから」
「……っ!お姉ちゃん……!」
優しく抱きとめてあげるアーシア先輩。優しいなー。小猫ちゃんの暴走っぷりが目に入らないくらいだー。
「で、ギャスパーって女の子じゃなかったの?」
「男の子ですよ!?」
「ああ、男の娘か。見ただけじゃわからなかったわ」
「あれ、なんか今微妙な食い違いが……?」
あとイッセーさんはおっぱいレーダーとか自称するくらいの凄い感覚器官を持っているはずなのに、なんでわからなかったのでしょうね?
それはともかく、ひと段落して近寄ってきたイッセーさんに一言。
「とりあえず早めに元に戻してください」
「え?なんで?」
「なんで!?」
いやむしろこっちがなんでと聞きたいですよ!?
「逆男の娘として生きていけばいいんじゃね?山田も最終的にはそうなったんだし」
「誰ですか山田って!?あと嫌ですよ!男に戻してください!」
縋るような仕草で詰め寄れば、お、おう、と少し顔を赤くするイッセーさん。
……中身は男子ですよ!?
「いや、そう主張するのもわかるのだけどもな、前々から女子として見ていたから今更男子だといわれても判断できないというか、身体は正直というか……」
「前から気になってはいましたけどガチで女子としか見られていなかったとか……!」
遣る瀬無い気持ちで胸がいっぱいです。
いえ、そうとしか見えない格好をしていた僕にも責任はあるでしょうけども。けども!
☆ ★ ☆ ★ ☆
「悪魔合体をお望みかね?」
「いや、男子に戻してほしいとかって言われたんだけどできる?」
イッセーさんに連れられてさっきの部屋へと出戻りします。
というかなんかダンボールから出られないのですけど。これって呪いなんじゃないんでしょうか。
「……?性別を変更する仕様など無かったはずだが」
「え。じゃあギャスパーやっぱり元から女子なんじゃね?」
「男子ですってば」
何度言えば納得してくれるのか。
「ふぅむ。男性悪魔に成りたいと言うならば更に合体すれば出来る可能性もあるが……。その場合自我が融けて新たな身体に持っていかれる可能性もあるな……」
「ナニソレコワイ」
「じゃあやっぱりそのままでいようぜ。部の皆も受け入れ体勢だったんだし、平気じゃねえの?」
いえ、約二名ちょっと怖かったんですけど。
うう、でもこれから女子として生きていくのかぁ……。気が重い――
「ちなみに安易に合体すれば今の容姿は完全に消えてこういったものになるかも知れぬ」
「――このままでお願いします」
ぱっ、と正面のモニターに映し出された筋骨隆々のマッチョとか上半身裸の頭部の捻じれたものとか高らかに哄笑している姿のパンクなイケメンとか。そんな色物に変えられるくらいならこのままがいい、と判断した僕でした。
やっぱり可愛いのが一番だよね!可愛いは正義!これからは色んなコスプレを楽しめるかも!
「吹っ切れるの早すぎだろ」
「だってろくな姿が候補に無いですし!あと僕自分の容姿にもそこそこ愛着があるので!」
「まあ、いいけどさ……。あ、あとダンボから出られないらしいんだけど、これって仕様?」
「当然である。ミミックは箱の内部から出現して人を脅かすフォークロアであるからして」
え、なにそれ聞いてない。
「あれ。それじゃあ僕やっぱり引きこもりのままになるんでしょうか」
「だなぁ、移動できないとなると……」
「誰が移動できないといったかね」
イッセーさんと二人、若干落ち込んでいるとお爺さんが口を挟んできた。どうやらまだ説明があるみたいです。
「箱から箱へ、ミミックの中の人はそういう移動方法をとると聞く。箱限定の亜空間移動こそがミミックの本領である」
「中の人とか言うのはどうかと」
でもそっか、そうやれば移動できるのか。
「よっし、じゃあ試しに俺の部屋にあるダンボールへ移動してみるか。念のため俺も」
「そうですね、やってみますか――イッセーさんも?」
言うが早いかダンボールへと足を挿入れるイッセーさんの姿が!?
いやいやいや無理無理!二人とか入れないですよ!?
ちょ、ふぁ、キツイ……!ひぁああ!変なところ触っちゃらめぇえええ!?
集まった票を参考に書いてみたので載せてみたけど
なんだこれw