無口なレッドの世界旅行記   作:duyaku

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これから独自設定解釈多くなります。ご了承ください。


9 これからのこと

「……」

 

「…まじでなんでもありだなこりゃ。マクダウェルも本物の魔法使いってことか…。」

 

「ふん。エヴァでいい。尊敬したか?」

 

<わわ!すごい!すごいねエヴァ!魔法ってすごい!>

 

「ええい!だからなんで貴様は私の上に乗るんだ!主の上に乗れ!」

 

 私が本気で驚いている横で、相変わらずエヴァはピカと呼ばれてる黄色いでかネズミっぽいのに遊ばれていた。でかネズミというと気味が悪いイメージがするが、外見は誰もに好かれるようなかわいらしいものである。夢の国の○ッキーもそうだが、ネズミというのは高スペックであるのが基本なんだろうか。

 しかしエヴァもクラスでは少し幼い外見だがまともなやつだと思っていたのに…。魔法使いなんてあのクラスでも1、2位を争う非常識じゃないか。いやポケモントレーナーになるとかいってる私ももう人のこと言えないか。

 

 私らは今、ダイオラマ魔法球と呼ばれるミニチュアが入り込んだでかいフラスコのような物の中にいた。エヴァの家に来た後、リザがでかくて部屋が狭くなるだのピカやフィーの毛が落ちて人形につくだの文句を言いだし、地下に連れてかれたと思ったらどこからか引っ張り出したこの魔法球の中に転送させられた。これには大体無表情のレッドとかいうフィーの主も驚いた表情をしていた。

 

「これは広さも大したことないし時間設定もしてないやつだがな。私が作った物の中には1時間が24時間になるものもある」

 

 頭にピカを乗せながら言う。どうやらピカを下すことはあきらめたようだった。

しかしまさか精神と時の部屋がリアルで存在するとは。ていうか便利すぎるだろそれ。休み明けの課題とかまったく焦る必要ねえじゃねーか。

 

<では、そろそろこれからのことを話そうかしら。…エヴァ?あなたも聞いていくの?>

 

「当然だ。寝床もないような貴様らに場所を提供したのは誰だと思っている。私も貴様らの話には興味がある」

 

<…場所はあなたの命を救った対価じゃなかったかしら?まぁ命に対して寝床とは安い対価だけど>

 

 フィーの発言にエヴァはうぐっ、と唸った。

 

<まぁいいわ。レッドは対価目当てで救ったわけじゃないし、聞かれて困る話でもないしね。ではまず千雨のことについて話しましょうか>

 

 自分のこと、と聞いて少し私は身構える。

 

<その卵だけど、孵るのにそう時間はかからないと思うわ。詳しい時間は分からないけどね。それまで千雨には肌身離さず持っていてもらいたいわ>

 

「つまり学校にも持って行かなくちゃだめってことか…」

 

「それでももう少しで春休みですからちょっとの辛抱かと」

 

 茶々丸が主の上のピカから視線を外さずに言う。せめて話すときはこっちを向け。

 

 今は中1の三学期。次にある期末テストさえ終わってしまえば春休みだ。しかしそれでも学校に持っていかなければならない時間は心配だった。ただでさえ騒がしいうちのクラスにこんなでかい卵なんて持っていったらどうなるかわからん。割られんようにだけは注意しなければ。

 

<そんなに心配しなくても簡単には割れないから大丈夫よ。卵が孵るまではしばらくポケモンの育て方や特徴について教えていきたいのだけれど>

 

「ん。放課後で問題ないぜ。どうせ帰宅部だしな」

 

 どうせ帰ってもやることはネットぐらいしかない。少しブログの更新が怠りそうだが身の安全のためにはかえられない。

 

<では、放課後に私たちの所へ。っていっても私たちの拠点を決めなくちゃね>

 

 そう言ってフィーはエヴァの方を向く。

 

<ねえ、エヴァ。魔法球の外の家の周り一帯あなたの敷地なのかしら>

 

「そうだな。この辺には他の家などない。裏の山へ続く林一帯私の領地だ」

 

<そう。そしたら少し場所を貸してもらえないかしら?>

 

「林の方をか?野宿でもするつもりか?」

 

<家を建てるわ。木々はたくさんあるし、電気も水もため込むとさえできればなんとかなるわ。ポケモンがいるもの>

 

「別に木を切ろうが構わんが…。少なからず家具はいるだろう。金はあるのか?」

 

<一応たくさんもっているのだけどこの世界で使えるかしら。レッド>

 

「……」

 

 フィーが呼びかけるとレッドは自分のバッグの中から財布を取り出し、1枚紙幣を取り出してエヴァに見せる。

 

「ほう。こことまったく同じものだな。世界が違っても通貨が同じとはな」

 

<不思議なものね。ともかくこれでなんとかなりそうね。この辺に家を建てるから千雨はそこに来て頂戴>

 

「わかった。でも電気や火はなんとかなるのはわかるけどよ。水ってどうするんだ?買うのか?」

 

<飲料水はね。近くに川もあるし必要な分はなんとかなると思うわ。…一応水を出せるポケモンもいるんだけどね…。>

 

「ほう。他にもポケモンをもっているのか。それは見てみたいな、茶々丸」

 

「はい。それはぜひ。ほんとに」

 

「……」

 

 茶々丸がレッドに表情を変えずぐいぐいと近づき、レッドが少し押されていた。フィーは失言をしたという顔をしている。

 

<えー。あいつだすのー?>

 

<坊主。俺はボールにもどしてくれんか?水をひっかけられたらたまらん>

 

 他の二匹のポケモンも露骨にいやそうである。こんな嫌がられるポケモンてどんなのだよ…。

 しかしエヴァと茶々丸は興味津津である。特に茶々丸。つかこのロボこんな性格してたのか。

レッドは諦めたようにリザをボールに戻した後に、ひとつボールを手にとって、それを放ると

 

 

 

<おらあああ!出すのがおせえんだよ!おらああああ!>

 

 

 

 グラサンをかけた水色の小さなカメがいびり散らしながら現れた。

 

 

 

 

 

 

<こんな状況なんになかなか俺をださねえしよお!いったいどうなってんだレッドよお!>

 

「……」

 

 なんというか、うるさい。暑苦しい。涼しげなカラーのくせに。

レッドの膝下ほどの大きさのこのカメは、レッドにむかってグラサンをくいくいしながらどこぞのヤンキーのように絡んでいる。いつも通りレッドは無視である。

 

 茶々丸はあからさまにがっかりした表情を見せ、エヴァは何だこいつは…とあきれたように言う。

 

<ああん?何見てんだ嬢ちゃん>

 

 急に標的を変え、こちらに向かっててくてくと歩いてくる。

 

<話はきいてたぜぇ?ポケモントレーナーになるそうじゃねぇか?っは!んな簡単になれるほど甘い世界じゃねえんだよ!!>

 

 う、うぜえ。ちいせえくせにグラサンなんか掛けやがって。そう思ってカメのグラサンをつかんでひょいと持ち上げる。

 

<あ!な、何しやがる!返せ!グラサン返せ!ねぇ返してよ!!>

 

 グラサンをもった手を高く上げるとぴょんぴょんと目に涙を浮かばせながら跳ねる。てか

 

((グラサン外すとかわいい…))

 

 グラサンのない目はとてもかわいらしい目をしていた。

 

 

 

 その後、私がとったグラサンはいつの間にか茶々丸に処分され、カメは涙目になってしょげていた。そのそばにレッドが座り込み、また買ってやるから、とでも言うようにカメの頭をポンポンと叩いていた。

 

「…そいつが水を出せるポケモン?」

 

 確かに目から水を出してるけどよ。

 

<ええそうよ。名前は「ゼニ」。千雨はレッドのポケモンにお世話になることが多くなると思うから覚えておいてあげてね>

 

「ただの二足歩行するカメにしか見えないけどな…。そいつは強いのか?」

 

 なんというかリザとかはすげえ強そうな外見だったけど、こいつやピカはなんかペットみたいな感覚のが強いな。いやピカはすっげえ電気出してたし強いのは分かったけど。

 

<強いわよ。というかレッドに育てられたポケモンで弱い者はいないわ>

 

<そうだー!強いんだぞー!>

 

<…うう。グラサン…>

 

 エヴァの上で胸を張るピカと泣きじゃくるゼニ。うん、強そうには見えん。

 

<これでもレッドは私たちの世界で「頂点」と呼ばれていたわ。まともに戦えるものが僅かしかいないくらいのね。そのレッドに仕える私たちが弱いわけにはいかないわ>

 

 「頂点」って…つまり最強ってことかよ!そんな人とそのポケモンに教えてもらうってすげえことなんじゃねえか?

 

 急にスケールが大きくなった話に私が驚いていると、ピカを頭にのせたエヴァが急に笑い出す。

 

 

 

「くっくっく。「頂点」か。タカミチとやりあってあの程度の者が。なかなかレベルの低い世界のようだな」

 

 

 

 エヴァは笑いが抑えられないようで、くっくっく、と鼻につく笑いを続ける。

 

 その様子を見てレッドのポケモンたちの雰囲気が変わる。ピカはエヴァからおり真っ赤な頬からびりびりと電気を漏らしてエヴァを睨みつけ、ゼニは急に泣くのをやめた。フィーは学園長の部屋でしたように威圧感を湧きだす。

 

<いくらね。エヴァでもね。レッドを馬鹿にするのは許せないかな>

 

<おいテメー。レッドを「あの程度」だと?>

 

<…エヴァ。訂正するなら今のうちよ。それにあんな化け物どもにやられかけたあなたが言うセリフじゃないわね>

 

「……」

 

 レッドは気にしていない様子だったが、彼のポケモンたちは明らかに怒っていた。

 

「っふ。確かにな。言い訳になるかも知れんが、今の私はタカミチになど遠く及ばん。しかしそれはある理由によって本来の力が出せないからだ。」

 

 エヴァの幼い姿から考えるとこれはただの子供の強がりともとれるだろう。しかし戦いの経験すらない私でもこれが嘘やはったりではないことが分かる。エヴァが発する雰囲気には虚栄を微塵も感じさせないほどの凄みがあった。

 

「本気を出せばタカミチなど私の相手ではない。これでもこちらの世界では「最強」 のうちの一人と数えられるだろうな」

 

「……」

 

 それを聞いたレッドがおもむろに立ち上がりエヴァのそばまで近寄る。二人はしばらく言葉を交わすことなく見つめあっていた。それは恋人同士でやるロマンチックなものとはかけ離れたもので、二人の間には重苦しい空気が流れているようにも感じた。

 

「…ふん。やはり貴様はそういう人種か。いいだろう。力が戻った際には貴様とやりあってやる。全力でな。…だから次は人間相手に手加減しようなんて考えずに向かってこい」

 

「……」

 

 エヴァはレッドの目を見て何かに気づいたのかレッドにそう告げた後、エヴァは後ろを振り返って転移の魔法陣が書かれている場所に歩いていく。

 

「貴様ら今日はここを好きに使っていいからじっくり休むんだな。長谷川 千雨も明日はどうせ土曜日だ。ここで寝ていくといい」

 

「…ではみなさん。失礼します」

 

「……」

 

 歩きながら言うエヴァに茶々丸は少し物足りないような顔でついていき、二人で魔法陣の上に乗ると姿を消した。

 

<エヴァ…気づいていたのね。レッドが全力じゃなかったことに>

 

「高畑せんせと戦った時か?まさかあれで手加減してたのか?」

 

<手加減いうより無意識に本気を抑えていたという感じね。どんな強くても流石に人間相手に本気でポケモンの技をあてることは意識の奥でストップしてたみたい。…まぁ魔法使いと聞いた今、レッドに手加減できるかは分からないけどね>

 

「……」

 

 レッドの方を見ると、僅かだが口元が緩んでいるように思えた。これがきっとこの人にとって嬉しいという表情なのであろう。

 

<もう少し話したいことはあるけど、今日はもう寝ましょうか。千雨も疲れたでしょう?>

 

<そだねー!僕ももうねむいよー!>

 

<…あのロリッ子め。レッドをなめやがって…。ロボットはグラサン壊すし…。ろくな奴らじゃねえな>

 

 フィーもいつの間にか機嫌を直し、ピカもいつものようにひょいっとレッドの頭の上に乗った。ゼニだけは未だ怒っていてグラサンがないのにくいっと上にあげるような仕草をしていた。

 

 私のポケモンもいつかこんなふうに自分のために怒ったりしてくれるのだろうか。そう思うと少しうれしくなり、もっている卵をひとなでした。

 

 

 




ポケモン図鑑№7 ゼニガメ

こうらに とじこもり みを まもる。あいての すきを みのがさず みずを ふきだして はんげきする。


はい、どーも9話です。

無理やり新ポケ出した感?気のせいですきっと。
タカミチの戦闘時の違和感に無理に理由つけた感?気のせいです間違いなく

はい、新ポケゼニガメです。御三家二匹目。結局進化前。さてではもう一匹は…?
グラサンはアニメリスペクト。

エヴァとの絡み。不自然に思えるかもしれないが一応理由があります。

そんで一番重要などうやって帰るかとかの話ぜんぜんしてないじゃんこいつら。…まぁきっと今度話してくれる。

さて、なんか千雨魔改造みたいになってますが、あくまで主人公はレッドとそのポケモンたちのつもりです。まぁクロスとしてネギま側の主人公は千雨なんですけど。
なので基本的にレッドとポケモンに焦点あてたいなーとか思ってたり。いや思ってるだけですが。
原作開始まで1年あります。さぁ何させましょうかね。

では。

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