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それぞれが異形の形を成し武器を持つ化け物たち。足の裏のブーストを使い戦場をかけ、所々に機械のようなものを身に着ける少女。そしてなにやら唱えるととも氷の塊を飛ばす金髪の幼女。その光景を見た時、俺は何が起きているかを把握することできず言葉を失った。……もとから失うほどの言葉は持ち合わせていなかったけど…
まずはあの異形の化け物たち。最初は新種のポケモンかと思ったがそれは違うとすぐに思い直す。
あれはポケモンなんかではない。今まで何匹ものポケモンを誰よりも近くで見てきた。少女たちに蹴散らされるのを見て、ダメージを負ったからといって消えるポケモンなど聞いたことがない。また、姿形があれよりおかしなポケモンはいくらでもいるだろうが、全てのポケモンに乏しくも少なからず感情がある。しかし、あれには感情などが見えない。あれのように「敵を倒す」という、ひとつの意思のみで動かされているものなどいなかった。
いや、奴らはその意思しか持てない様にできているのだ。
それらに相対しているのは2人の少女。どちらもまだ幼く、しかも一人は小学生ほどだ。だが機械を身に纏う少女は、自らに付属する機械を存分に使い少女とは思えぬ力と速さであれらを蹴散らしていく。金髪の幼女は前衛を援護するかのようにポケモンの技に似た何かを打ち出している。
この二人はポケモンでも化け物でもない。おそらく人に近い何かのはずだ。もしかしたら機械の女性は本当に機械で体全体ができているかもしれん。金髪の幼女は形は完全に人だがポケモンの技を打ち出すとなるとそうはいえない。…いやそれよりほんのわずかだが人にはない違和感を感じる…。
二人はあれら相手によくやっていた。うまく陣形をつくり、敵を前方におき前のみに集中できるように戦っている。言葉にすると簡単だが実際は用意ではない。敵もその陣形を崩そうと回り込もうとするのを幼女が奇妙な術でけん制して動きにくくしている。
しかしそんな戦法ではひっくり返せない戦力差がそこにはあった。数が違いすぎるのだ。2人に対してあれの数は約50匹ほど。
群がる自軍に隠れて1匹が地面に潜っていく。おそらくその一芸に熟練したものなのだろう。そいつはあっという間に地面を掘り抜けたのか、すぐに金髪の幼女の後ろから飛び出て、殴りつけようとする。
機械の少女が幼女をかばうように飛び出し痛手を負う。先ほどの陣形を崩されて二人はあれに囲まれる。絶体絶命というやつだ。
「ぴかぴか!」
状況を把握しようと、しばらく様子を見ていた俺をピカが上からはたく。
「がうう」
リザも俺に向かって唸る。
ああ、そうだな――この状況―――――
――――――あれらと戦ってみたらどんなにおもしろそうなんだ。
自分の口角が釣り上がるのがわかる。ゾクゾクと自分の体が震えた。
敵を倒すという意思しかもたない?50体もの数?それがどうした。それを全部自分に向けてくれたらあれらは俺と対等に戦えるのか?
ポケモンではないという敵がいったい自分達に何をしてくるのか。自分の興味心が刺激される。
「ぴか!」「がうう!」
俺が笑みをポケモンたちに向けるとも答えるようにポケモンたちは吼えた。長いこと一緒にいるこいつらには俺の内心が筒抜けだったみたいだ。
二人の少女を囲むようにしていたあれの群衆に手を向ける。
すぐに意図を察したリザがすぅと空気を軽く肺にねじ込み
高熱の炎を勢いよく吐き出した。
炎により何匹か片付けたあと、リザは地面すれすれをかなりの速さで飛び、あれの群れに飛び込んでいった。リザには目線や手振りで指示を与えながら、頭を上向きに軽く二回揺らす。上にいるピカが「ぴか」と返事をし、雷雲をつくり自分の周囲に雷を落とすための準備を始めた。
これはポケモンバトルではない。ともすればいずれあれらがこちらを狙ってくるのは当然。そのために自分の身を守る準備をしておく。自身が狙われるという戦いは何も初めてというわけではない。
シルフカンパニーに突入し、多くのロケット団と戦ったとき。容赦なくトレーナーをねらうあの組織相手では、自分の身を守りながらの戦いであった。またシロガネ山でも気性の荒いポケモンは見境なしにこちらに向かってくる。ルールも何もない戦いであったがその経験は今に役立つ。
リザを見ると、圧倒的な力で敵を蹂躙していた。1匹が武器を弓に持ち替え距離を置いたのを察知し、俺はリザにその方向と弓の発射予想時間を伝える。手振りだけでそれがわかってくれるのは長い時間が作った信頼の証だ。
リザが弓兵を焼き尽くした後、何匹がこちらに向かってくるが焦ることはなかった。ピカがタイミングをよんで、多くの敵に被弾するように雷を落として、こちらに向かってきた奴等を消滅させた。
その後リザが最後の敵を踏み潰しシュウウと音を立ててそれは消える。全ての敵を倒し終えたリザはドスドスと地面を踏み鳴らし、こちらに向かってくる。
リザをおつかれと軽くなでると、『自分も!』とピカが急かすのでそちらもなでる。
なんというか…意外とあっけなかったな…。もうちょい手ごたえある思ったんだが…。
予想より大した事ない戦いに少し落胆する。まぁ久々に思いっきり暴れれたリザが満足そうだからよしとするか。
視線を感じて目線を向けると、その先には先ほどの二人の少女がいた。二人は驚嘆半分警戒半分という顔をしている。
けっきょくこいつらはなんだったんだろうか。幼女はなんか「つららおとし」みたいのしてたし…。1度モンスターボールぶつけてみるか。でも途中しゃべってたしなぁ。しゃべるポケモンなんか―――――あ、いつかしゃべるニャースがいたな。
そう思いながら近づくと金髪の幼女が口を開いた。
「貴様は―――――」
「エヴァ!!!」
その言葉が、凄い速度でやってきた男性に遮られた。「大丈夫かい!」と心配そうな声で幼女に駆け寄り会話を始めた。途中で背負っていた気を失っている男性を下ろしながら俺のほうを向き
「――――それで…君は何者かな?」
そういうと彼の放つ雰囲気が変わった。軽く威圧してきたようだが、その変り様は人に飼われているような穏やかそうな動物から檻から放たれた猛獣のようだ。
「……」
俺は驚いた。人がこんな圧力をだせるものなのか。そう考えていると、彼から感じる圧力がさらに上がる。それを止めるように金髪幼女――エヴァと呼ばれた者がなだめる。
「まて、タカミチ。一応こいつには借りがある。…おい貴様、麻帆良の人間ではないな。どうやって麻帆良に侵入した。ここには浸入者を感知する結界があるのだが貴様を感知した覚えはない」
―――――――――――――――あんな圧力、強者の持つポケモンを前にしても何度かしか体験したことがない。
「っ!」
「おちつけタカミチ」
俺が先ほどの圧力の前に未だに唖然としていると男からの威圧感がさらに上がった。それを前にして俺の体は刺戟されていく。
「答――――こと―――答え――ればいい。目的は――だ」
―――――――――――――エヴァというものからの質問。先ほどからよく聞こえない。
「…――二匹―使い――?」
―――――――――――――こいつの動き、気配、すべて人から感じられるレベルではない。
「なぜ――――」
―――――――――――――ここに駆け寄った時の速度。あれも半端なポケモンなど置き去りにする速さだった。
「―――名――」
――――――――――――――こいつと戦ったらどれだけ楽しめる…!!!
「…――――!―――――!!」
―――――もはやあふれる動悸を止められない。好奇心ががりがりと俺の心を削っていく。
何やら声を発した後ゴゥと音を立てて男の周りに風が舞う。
―――――――――――そっちもやるきじゃねぇか…!!!!
向かってくる男を見ると、俺は自分の笑みを抑えることができなかった。
男が凄まじい速さでこちらに向かう途中、この場に及んでポケットに手を入れている姿が目に入る。
この状況であの構え…!意味のない構えのはずがない!
即座にリザに一歩前に出て防御するように指示する。リザも咄嗟の指示に反応し素早く俺の前に移動して自前の翼を前方でクロスさせるようにして防御態勢に入る。パパパン!と弾けるような音がリザの翼から鳴る。
「っ!」
男は防御されたことに少し驚くが、そのまま防御をこじ開けようと攻撃を続ける。その間に俺は男を観察する。
あの被弾音。そしてポケットに入れてみせない手。攻撃の発射部分もポケットだから…まさかポケットからなにか打ち出してるのか。しかし威力はそこまでたかくない…。――なら次のやつの立ち回りは!
一瞬で頭に考えをめぐらし行動する。
「……!!!」
ピカに後ろに電撃を放つように指示すると、ピカも俺の指示に疑うことなくそれを実行し、黄色い閃光が駆ける。―――――ドンピシャ!!!
「っな!」
ちょうどそのタイミングで後ろに回り込んだ男に電撃襲いかかる。男は電撃を避けるために体勢を崩しながらも攻撃を繰り出しそれが俺の頬をかする。
「……!!」
リザが体勢を崩してる奴に攻撃をしようと距離を詰める。男は距離をとろうとリザの爪をいなしながら後ろに跳ぶがそうはさせない。リザに極力距離を詰めるように指示し跳ぶ男に飛んでひっついていく。
あの見えない攻撃。おそらく間合いを詰められて手数を増やされると出すのは困難。ならリザにはどんどん攻めてもらう。あの瞬間的に移動する技はほんの僅かなタメがいり、直線状だけっぽい。なら初動に気をつければピカでなんとか対処できる。
ピカに次の指示を出そうとするとパンと弾けるような音が俺の前で鳴る。ピカの尾が俺の前で振り下ろされたおかげでなんとか俺は男の攻撃を受けずに済んだ。
あのやろう…!リザと戦いながら隙あれば俺に攻撃してきやがる…!――――――――はは、何て野郎だ。
思わず声が漏れそうになる。自分の身すら危うい状況。少しでも隙を見せてあの攻撃を食らえば一瞬でノックアウト。指示のひとつもミスは許されない。
久々に感じる戦闘の緊迫感。それは確実に俺の体を掻き立て、昂ぶらしていく。
リザに詰め寄られている男が後ろに向かって瞬時に移動し、距離をとることに成功する。まさか後ろにも移動できるとは…。
「君はすごいな…。僕の技を一瞬で見抜き対応してくる…。そうそうできることじゃないよ」
「……」
「悪いが、このままじゃ危ういんでね。僕も本気を出させてもらう。」
そういうと男は両手をポケットから出した。
「左腕に『魔力』右腕に『気』」
それぞれの手からッボという音を立てが光を放ち始める。
「ばか!タカミチ!!やりすぎだ!!」
幼女が叫ぶ。――確かにあれはやばそうだ。溢れる風圧に押されそうになりながら俺はあいつの入ったモンスターボールを手にする。
「ごうs――――」
俺はモンスターボールを投げあいつを出そうと動いた。
<そこまでよ>
頭に声が鳴り響き戦いが止められる。俺の手にかけたモンスターボールは空中に浮かされ、男は金縛りにあったように動けなくなっていた。
茂みから出てきたのは凛とした態度でこちらに向かうフィーと困惑した様子の眼鏡をかけた少女であった。
<ここまでよ、二人とも。レッド?この人相手にあいつを出したらどうなるかくらい分かるでしょ?>
「……」
<…はぁ。まぁいいわ。相当テンションあがって全然周り見えてなかったものね。――そこのダンディーなおじさん?私たちをここのトップの下に連れて行ってほしいのだけど。別に暴れたりするわけじゃないわ。>
「…本当かい?」
<誓って>
「…わかったよ」
男は困惑するように答える。すると同時に男にかけていた金縛りが解けた。
<そこの気を失っている青年はいいとして、あなたたちも大丈夫かしら?>
フィーは傷だらけの二人に声をかける。
「ふん。どうってことない。立てるか茶々丸?」
「もう大丈夫ですマスター」
そう言って二人は立ち上がった。
そのまま男の方に目をやると眼鏡をかけた少女と向き合っていた。
「高畑先生…これは一体どういうことで何が起こっているのですか…?」
「……すまない長谷川君…」
少女が苦慮した声で話しかけるのに男は申し訳なさそうに呟く。
<千雨。込み入った話は後にしましょう。―――それでは向かいましょうか>
この夜の関係者と巻き込まれた少女一人が学園長室に向かった。
ちょっと自分の無知のせいで迷惑をかけたのでここでもお詫びを。詳しくは小説の説明本文を見てください。
はい、5話ですね。
レッドさんはただの戦闘狂でした。そしてエヴァは実はがん無視されてただけ。てかレッドさん話きかなすぎです。
「タカミチ手出すのはやすぎじゃね?」という意見がありましたがまぁこれだけ闘志向けられたら手も出ちゃうんじゃないんすかねぇ。
エヴァはエヴァ自身に闘志向けられてるわけじゃないし、所詮一般人の闘志なんで気づかなかったってことで←適当
そして前回同様急に誰かが乱入するご都合主義。芸がなくてごめんなさいい。