無口なレッドの世界旅行記   作:duyaku

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3 過去とこれから

 豪雪が吹き荒れ轟々しい雰囲気を放つシロガネ山。野生のポケモンがあまりに凶暴で、内部も入り乱れた構造になっているために、ここに訪れる人はめったにいない。しかしそんな物騒なシロガネ山であるが、ある時から妙な噂が流れるようになった。曰く、「シロガネ山の頂上にはポケモントレーナーの頂点たる人物がいる」と。そんな噂が流れてから、そのトレーナーを一目見ようという野次馬根性をもつものや、頂点たるトレーナーと戦いたいという野心あふれるトレーナーがその山の山頂を目指した。しかし、過酷な環境と襲いかかるポケモンたちに心が折れ、多くのものが途中で挫折していく。そんな中、万に一人ほど頂上にたどり着く者がいる。

 シロガネ山の頂上は決して運でたどり着けるような場所ではない。奥に進むほど増していく野生のポケモンの獰猛さには、自ら育てたポケモンと共に切磋琢磨に乗り越えて、迫りくる自然の環境には、強靭な忍耐力で耐えなければならない。シロガネ山の頂上に辿りつけるという事実だけで、そのトレーナーは世界でも上位を目指せるものだと言えるだろう。

 

「お前が頂点と呼ばれるトレーナーか」

 

 その青年もまたシロガネ山という過酷な道を乗り越え、噂のトレーナーと戦いにきた一人である。青年はシロガネ山の頂上たるところにただずむ、赤い帽子をかぶった少年に話しかける。

 

「… …」

 

 赤い帽子の少年は答えない。しかし青年はこいつこそが噂のトレーナーだということが確信できた。姿こそいまだ幼さを残しているが、彼を前にした時、言い表せない圧力を感じたのだ。巨大な力と能力を持つポケモンにそれを感じることはあれど、トレーナー自身からそのような圧力をかけられたことは青年にとって初めての経験であった。

 

「手合わせ…願おうか」

 

「… …」

 

 やはり少年は答えない。しかし青年の意思は伝わっているようである。青年がボールに手をかけると、少年もまた自らのボールを手にし、前に向ける。その動作だけで空気が変わった。豪雪も気にならないような存在感を少年は放ち、青年は冷汗をかき、肌にピリピリとした感触を残す。だが青年もこのようなプレッシャ―だけで引き返すほど安いプライドはもっていない。

 

「では…勝負!!!」

 

「… … … …」

 

青年のプライドと意地をかけたポケモンバトルがはじまった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「あら、レッドもう終わったの?早かったわね」

 

 長い金髪をなびかせた黒い服の女性が、二足歩行する青いドラゴン「ガブリアス」の上からひょこっと顔を出す。どうやらガブリアスは彼女を背中におぶさっているようだ。彼女は先の戦いを少しばかり見える位置にいたようであった。

 

「……」

 

 退屈そうな顔をしながらレッドと呼ばれた赤い帽子の少年は先ほどの女性「シロナ」に目をやる。

 

「そんな顔しないの。彼も彼なりに本気で勝負を仕掛けたんだから」

 

 そう言いながら倒れているガブリアスが青年をひょいと背負う。先ほどの戦い、一言でいえばレッドの圧勝であった。しかも青年が6匹のポケモンを使用したのに対し、レッドが使ったポケモンは1匹だけ。それも進化前のポケモンである。ポケモン同士の戦いといえど、自分の自慢のポケモンたちがたった1匹にあっという間に倒されていく姿をみたら青年が気を失ってもおかしくない。

 

「……」

 

「私はたまたまカントーに用事があったから、ついでにレッドの様子を見にきただけよ。」

 

 ボールを持ち、その手を前にし交戦の意思を示すレッドに、なだめるようにシロナが言う。

 

「だいたい、私でももうあなたとは勝負にならないわ。」

 

「… …」

 

 そう言うと、レッドは手を下に向け、視線も下にする。彼は悩んでいるのだろう、そう思うと、シロナはそんなレッドの姿にいたたまれなくなってしまってつい言葉をもらしてしまう。

 

「ねぇレッド…。あなた最近バトルを楽しめているかしら?」

 

「……」

 

 無言でうつむき続けるレッド。無言なのはいつも通りなのだが、やはり表情はいつもより暗い。

 言ったらだめだ。そう思っていながら私は前から考えていた言葉を彼にぶつけてしまった。

 

「レッド…。あなたは強くなりすぎてしまったのね。ポケモンバトルを楽しめないほどに。頂点とはよくいったものね。もうあなたの実力は「ポケモンバトル」という枠を完全に超えているわ。他の誰がどれだけ修業しようときっとあなたには追いつけない。例え誰かが二回目の人生を迎えて鍛えても、あなたには勝てない。あなたはすでに「ポケモンバトル」という限界値すら超えているのよ。あなたにはポケモンバトルの才能も、上に向かい努力する才能ももちすぎたのだわ。」

 

「… …」

 

「…きっとあなたはなにか新しいことを見つけた方がいいわ。世の中にはいろんなことがあるんだから」

 

「… …」

 

「……じゃあね。」

 

 手を軽く振り別れを告げ、シロナはガブリアスによろしくと頼む。ガブリアスが低い声で唸ったあと、シロナと青年を背に乗せてロケットのように飛んでいく。カブリアスの上で小さくなっていくレッドを見ながらシロナはなんて残酷な事を言ってしまったのだろうと後悔した。レッドはきっとだれよりもポケモンバトルが好きで、だれよりも努力してきた。そんな彼から有り余る才能は、ポケモンバトルの楽しさを奪ってしまった。努力すればするほど、ポケモンバトルが楽しくなくなる。

 それはいったいどんな気持ちであろう。彼が一番勝利の神に微笑まれているのに、彼自身が微笑むことなどない。このままいけばレッドは好きなものが嫌いになってしまう。シロナはそれだけは防ぎたかった。残酷なことをいってでも、せめて好きなものは好きなもののままで終わらせてあげたかった。

 シロナは彼にポケモンバトルをあきらめるという選択肢しか出せなかった自分が嫌になる。私がもっと強ければ彼にこんな思いをさせずに済んだのに。

 知らぬ間にシロナの目から涙がこぼれた。

 

「ごめん…ごめんね…レッド…」

 

「… …」

 

小さくなっていく赤い帽子の少年の顔は最後まで下を向いたままだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 目を覚ますとまず、嫌な夢をみたな。と思った。体はまだだるい感じがしたが、むりやり腕を動かし、腕で目を覆いながら、俺は夢での出来事を忘れようとした。

 

「がう、がうがう」

 

 

 肩を揺らされる感触を感じて腕をよける。俺の目の前には心配そうな顔をしたリザが目に映った。俺の方を覗きこんで次は鼻で顔を揺らし俺の反応を確かめる。まだ少し寝ぼけたまま、起こしてくれたリザに感謝の意を込めて、そっとリザの顔をなでた。リザは満足そうな顔をすると俺の首根っこをくわえ、無理やり立たせようとしてきた。少し体勢を崩しそうになりながら立って周りを見渡す。

 

「… …」

 

 暗闇の空には月が浮かんでいることから時間は夜であることがわかる。月の光とリザのしっぽの炎のおかげで比較的周りはよく見えて、ここは明らかにテンガン山ではないことが分かる。自分が寝ていた場所は軽い草原のようになっていて、それよりさらに奥は森が広がっている。さらに遠くをみると信じられないような大きさの木があった。

 

「… …」

 まずはフィーの手掛かりを見つけなければいけない。自分たちがあのよくわからないものに触れてここに来たということはきっとフィーもまたこの近くにいるであろう。そうは思うがどこに行けばいいかまったく見当がつかなかった。とりあえずリザに乗って上空を飛びまわってみるか。そう考えていると先ほどの大きな木の近くから音が聞こえた。それはキンという金属音のようなものから、ドスンという重低音までまざって鳴り続けている。

 

「… …」

 

 とりあえずそこに向かおうと俺は決める。リザも俺の横に並んでドスンドスンと音を立てながら歩き始めた。

 

 あの音はおそらく戦闘の音。どのような音かは想定できないがここまで聞こえてくるということはかなり激しい戦闘なのであろう。リザ一人でも問題はないであろうが、万が一を考えておきたい。そう思いポケットからひとつボールをだし、開閉スイッチをおしてから前に放り投げた。

 

「ぴかぁ!」

 

黄色のネズミみたいなポケモン、「ピカチュウ」はボールから出るとすぐに俺の体を登るように駆けていき、帽子の上に自分の腹を乗せた。

 

「ぴかぴ!」

 

「… …」

 

 こいつの名前は「ピカ」。まるで進め!とでもいうように小さな手を前に出しもう片方の手でぺしぺしと俺の頭をたたく。毎度思うがなぜこいつはいつも俺の上に乗るのであろうか。別に重いというわけではないが当然のように頭にのられると少し思うところもある。まぁいいんだけど。

 

 俺たちはゆっくりと歩いて音の元へと向かっていく。

 

 フィーのことは、きっと心配はいらないであろうと思う。フィーはずいぶん前から共に旅する仲間であり、彼女1匹で何体か同時に相手してもほとんどのポケモンを殲滅できるほどの力を持っている。というか俺のポケモンは大体そのくらいの力は持っているのだが。

彼女のしっかりとした性格は把握しているし信用もしている。自分がここに来た時点でお互いが探しあっていればいつか必ず会えるであろうという確信があった。

 

 

 …俺はまだここがどこなのかはまだ分からない。しかし見たことのないこの場所は何か新しいものを俺に与えてくれるのではないか。何も根拠となるような理由はないのだが何故かそう思った。聞こえてくる音は間違いなく戦闘の音。ここでの戦闘は俺を楽しませてくれるのであろうか。そう考えていると自分が珍しく少し高まっていることがわかる。新たな出会いに期待を寄せながら俺は歩き続けるとそんな俺を見てリザは「ぐおお、ぐお、ぐお」と吠える。フィーに念話を繋げてもらったら、きっとまた<がっはっは>とでも笑っている声が聞こえるのであろう。そんなリザの声さえ心地よく思いながら俺は目的地に向かっていった。

 

 

 




ポケモン図鑑

№6 リザードン

つばさで おおぞらたかく まう。たたかいの けいけんを つむほど ほのおの おんどは あがっていく。

はい、おっちゃんキャラのリザードンです。飛べるのでこれからも出る機会は多そうですね。ゲームでも御三家の中じゃ使えるほうですし。カメ?なにそれ。


№25 ピカチュウ

しっぽをたてて まわりのけはいを かんじとっている。 だから むやみに しっぽを ひっぱると かみつくよ。

なんかかわいい説明文。ピカチュウ版の説明ですね。名前もいつもどおりそのまんま。何人か候補にこいつをあげてくれたけどやっぱりレッドにはこいついりますよね。まあこいつの性格はフィーがこないとわからないっすね。


てことで3話です。過去の話いれたら戦闘までいけなかった…つぎこそは…!

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