ここから独自設定、独自解釈が多くなるかもしれませんのであしからず。
雲ひとつなく、削られた月が笑っているかのように見える夜だった。回りに人はおらず音は闇に吸い込まれ、夜空には光る白点が散りばめられていた。
レッドはとある中学校の屋上に座り込み夜の警備をしていた。警備といっても茶々丸から侵入者発見の連絡があったらその場所に向かい侵入者を蹴散らすだけの簡単な仕事なのだが。
(ねぇねぇ!今日はどんな敵がでるかな!)
頭の上にいるピカが顔を出しレッドの顔を覗き込むようにして尋ねる。
「…………」
(ぼくね!魔法使いがいいな!すごいんだよ魔法使いって!なんかよくわかんないことべちゃべちゃ唱えてね!炎とか風がね!びゅーって!)
「…………」
ピカは喋らないレッドに気にすることなくく、嬉々として話続ける。尻尾を激しく上下しながら話すのでレッドの後頭部にピシピシと尻尾が当たる音が響くのだがそれを気にすることもない。
(わしは妖怪のような奴らがいいのう。あやつらをぶっ飛ばしてボンボンと音を立てて消させるのが癖になってきたぞ)
レッド達に寄り添われながらも横で猫の様に丸くなっているリザが嬉しそうにしながら言う。リザの回りは炎タイプだからか尻尾にある火のおかげかは分からないが、温度が高いため皆湯たんぽの様に回りに寄り添う。しかしリザがそれを煩わしく思うことはほとんどなかった。
(あいつらあんま強くねーから面白くねーよ。大抵が数多いだけだしよ。やっぱタイマンとかが面白くできねーと。レッドもそう思うだろ?)
少し離れた所でソウがレッドに声をかける。暑いのも苦手、寒いのも苦手という繊細な草タイプのソウはリザとそこそこの距離をとって座っていた。
「…………」
レッドはソウに問われ、警備員としてここで戦ってきた敵について思い出していた。まだ何度目かという夜の警備の仕事だが、侵入者として退治する相手は大きく分けて3ついた。
一つ目は魔法使い。基本ペア、もしくは数人のチームで攻めてくる彼らは、闘いの心構えができておりなかなか面白い動きをする。前衛と後衛にわかれ、前衛が近戦を狙ってきてる間に後衛が遠距離の魔法を仕掛けてくるのが大半であった。それぞれ風、雷、氷、炎など様々な魔法を駆使し空を駆ける様に闘う姿に芸術を感じてしまったこともある。
しかし、相手が二人ならこちらも二匹のポケモンを出しタッグバトルを仕掛ける。相手のコンビネーションを崩す様に攻撃を仕掛け、翻弄しながら考えて闘うのはそれなりに楽しかった。懸念があるとしたら魔法使いだとしても彼らは人間だということだ。流石にポケモン達の技を直に当てるのはレッドもポケモンも抵抗を消せなかったため、足場や体勢を崩してから眠らせたり気絶させたりすることが多かった。まぁ相手は遠慮なくこちらに魔法をぶつけてくるし、こっちも熱くなったら加減を忘れてしまうのだが…………。
二つ目は妖魔や術師。 大量の妖魔を呼び出したり、それなりに強い妖魔を単数で召喚してくることもある。基本術師は隠れるか敷地外から召喚するため、術師を見つけるまで妖怪を蹴散らし続ける羽目に会うこともある。ある一定のダメージを与えると消える奴らは、魔法使いなどの人を相手にするよりも抵抗がなく、リザなどは無双するかのように妖怪を吹っ飛ばしていく。無双する様子は見てて爽快を感じる事もあるし、妖魔のもつ武器や形状から瞬時に作戦を立てて次々と湧いてくる敵を蹴散らしていくのはもとの世界では出来ない経験であった。
最後はよくわからない奴ら。妖魔に近い姿をしているが悪魔と呼ばれるものであったり、害意のない謎の存在や自然発生した妖怪だったりする。それらとは、見かけた事はあるが深く攻め込んでくることは少なく様子を見ているうちに消えているということが多い。
それなりに頻繁に攻め込まれる麻帆良だが、それぞれ目的は違っているように見える。世界樹を目掛けて一直線する奴らも入れば、学園長のいる場所に向かう奴らもいる。麻帆良自体を荒らすものは少ないが、偵察や様子見を目的にするものも多い。
だがレッドにとって敵の目的はあまり重要ではなかった。どんな敵であろうが初めて見た奴らに闘い方を考えて挑むのはそれなりに楽しく、レッドの気持ちを高揚させるには十分であった。
そんなことを考えていると、茶々丸から預かった通信機が音を立ててなった。
「…………レッドさん。そこから南東に一キロ向かった先に複数の妖魔の出現を確認。退治に向かってください」
事務的な機械音のような声のあと、プツっと音を立てて通信が切れる。
(どうやら今日は妖魔のようね。すぐ終わればいいけど)
フィーが眠そうな声で呟きながら立ち上がる。
(よっしゃいくぜお前らぁ!)
ゼニが気合いを入れた声で叫び手を突き上げる。その顔を見ると黒光りする眼鏡をつけてどや顔をしている様子が目に入った。
「…………」
…………なんでこいつ夜なのにグラサンしての?
(うわああああああああ!!!!グラサン返してよぉー!!!!)
ひょいっとグラサンを取り上げると静かだったはずの夜に騒がしい念話が頭に響いた。
――――――――――――――――――――
「愛衣!なにしてますの!早くいきますよ!」
まだ若干の寒さが残る夜の中、高音・D・グッドマンは後輩の佐倉愛衣に声を張り上げながら駆ける。
「姉様!ほんとにいくんですか?!」
多少の息切れを起こしながらも愛衣は高音に付いていこうと必死に走りながら問いかけた。
「当然ですわ!新学期が始まって私たちももっとマギステルマギを目指さなければなりませんわ!愛衣もいよいよ中等部に入学したんですからここらで私たちの活躍を見せつけてやりますわ!」
意気揚々と語る高音の横で愛衣は不安と緊張が入り交じった表情で息を吐く。
これまでの戦闘はいつも魔法先生が一人は付いてくれていた。だが今日は独断行動ということで高音と愛衣の二人だけである。不安も緊張も仕方のないことなのだ。
移動しながら前方を見ると、激しい光を洩らしながら衝撃音が聞こえる場所を見つける。
「……!!愛衣!戦場を発見しましたわ!すでに交戦しているようですけど助太刀に行きますよ!」
「…………はい!お姉様!」
愛衣はすでに誰かが戦っていることを知り少し安心する。麻帆良の魔法関係者で警備に当たるものは総じて実力がある。それに皆ペアを組んでいるため、少なくともあそこには二人の実力者がいることになる。安堵した表情で高音に追い付き横につく。そこで高音と一緒に戦場に踏み入ろうとするが、高音はなかなか足をあげない。不思議に思った愛衣はちらりと顔を向けると、高音はなんとも言えない表情をしている。
「…………お姉様?」
先程までやる気が溢れでていたのに、急に足を止めた高音をみて愛衣は妙に感じる。愛衣の姉貴分は直前になって怖じ気付くような人だっただろうか。そのまま高音を見つめていると不意に高音が腕をあげ戦闘が起こっている場所を指差した。
「……愛衣。どれが敵ですの?」
「え?」
高音に言われ、愛衣は初めて戦場に目をやる。
「…………ん?」
愛衣の目に入ったのは何度か戦った覚えのある妖魔の大群………を簡単に蹴散らしていく空を飛び火を吹く竜、目に見えぬ速度で戦場を駆ける黄色のネズミ、甲羅のまま宙を舞うように動くカメ、背中に着けた葉で敵を切り裂くカエル、優雅に敵を浮かす猫、そしてそれらに指示を出す赤い帽子を被った青年であった。
「あの妖魔は…………」
「あれは間違いなく敵ですわ!関西呪術協会の使い魔に決まってますわ!でもそれと戦うあの謎の生き物はなんなんですの?!竜までいるなんて聞いてませんわ!」
珍しく狼狽えるようにして高音が騒ぎたてる。
「………仲間割れですかね?それとも第三者が介入しているのか……」
「……どちらにしてもこの状況で乱入するのは得策とは思いませんわ。ひとまず距離をおいて様子を見ましょう」
二人はひそひそと相談をし、物影に隠れようとこそこそと移動を始めるのだが……
(ねぇねぇ!なにしてんの??)
「「!!!」」
突然の念話に驚きながらも、二人は即座に臨戦体制になる。だが振り返った先には人影が見えずキョロキョロと周りを見渡すがそれでも念話の相手は見つからない。
(ね!こっちこっち!)
愛衣の足元にちょんちょんと触れられるような感触がする。ゆっくりと視線を下にすると先程あばれ回っていた黄色のネズミが愛衣の足元から見上げている。
(や!こんばわ!ね!)
右手を精一杯上に伸ばしてピかは二人に挨拶する。
「……!お姉様!」
「愛衣!とりあえず離れなさい!」
「で、でも!」
「なんですの!」
「すごい可愛いです!」
「言ってる場合ですの?!」
ピかの突然の訪問に気が動転しながらわーきゃーと騒ぎたてる愛衣と高音。
レッドはそんな二人をポケモンに戦闘の指示を出しながら横目に見ていた。
…………あの二人は……妖魔の術者ではなさそうだな。……魔法使いか?しかし攻めてきた者にしては害意が見られないな。………一般人か麻帆良の関係者か?
二人の登場に対して色々と思考しても確定的なことは分からなかったが、見てくれとピカとの対応で何となく敵では無いのだろうと当たりをつけた。
シャドーボールを空中で放ち、何匹かの妖魔を還したフィーがスタッと音を立ててレッドの横に着地し、ちらりとみる。
(レッド。あの子達が何者かは知らないけどあそこにいたら敵に狙われるわ。どうにかしましょ)
「……」
……確かにそうだ。敵の数はなかなか減らず、戦闘するにつれて敵が散らばって行くので、敵の行動範囲が広がっている。あの二人が強いか弱いかは分からないが、敵でないなら守ったほうがいいのだろう。
そこまで考えると、レッドはちょうど身に付ける葉で妖魔を切り裂いたソウに指示を出す。
(あいよー)
ソウ返事ををしながら体からツル二本だし、二人の方へ急速に伸ばす。
「へ?」
「……!なんですのこれ?!」
急に現れたツルに体を巻き付かれ身動きが取れなくなる愛衣と高音。反抗の声をあげじたばたと動くのをソウは無視し、二人をぐいっと空中にあげ引き寄せる。
「キャアアアアア!」
叫び声をあげながら二人は妖魔達の上をロケットのように移動し、レッドの側方に引っ張りあげられる。
(わあ!すごい!楽しそう!!)
ピカが瞳をキラキラとさせながら空を横切る二人を目で追う。
レッドのすぐ側までくると着地直前に速度を緩め、すとんっと尻から地面に落ちる。
「な、な、な、なにするんですの!」
「…………こ、こわかったですぅぅぅ」
「あなた達!やっぱり敵なんですわね!こんなことして唯ではすみませんのよ!!」
急な空の旅によりツルに縛られながらも愛衣は涙目になり、高音は激昂している。
「こんなツル!魔法ですぐに切れますわ!あなた達を同じようにぐるぐるにして即刻学園長のもとに送り…………」
ぼん!と音を立てソウの背中から粉が吹き出てそれが二人に直撃すると、話途中でスゥスゥと寝息を立てて眠りに入ってしまった。
「………… 」
そこまでしなくても……と伝えるようにレッドはジロリとソウを睨む。
(や、なんかうるさかったしよ。あんま暴れられても邪魔だろ?)
(それでももっといいやり方があったでしょ。というかあんなふうに連れてくるように指示したレッドも同罪よ)
「…………」
いや、敵を潜り抜けながら近くに引き寄せるにはベストな方法だと思うんだがな………
(……はぁ。あなたに女の子の扱いなんて教えるだけ無駄よね)
呆れるように頭を振るフィー。それが何故かも分からずレッドを首を傾げる。
(お前らはいつまで遊んどるんじゃ。はよ戦闘にもどらんかい)
(そうだぞおら!)
しまった。わちゃわちゃとしてる間リザとゼニに戦場を任せきりにしてしまった。
まぁ任せたところで心配はいらないのだろうが。
「…………」
レッドは腕をあげ、ポケモン達に指示を出す。
(……りょーかい)
(……そうね。さっさと蹴りをつけてしまいましょ)
(うん!うん!んじゃいくよ!!)
レッドの指示を受け取ると、ポケモン達はそれぞれにやりと笑いながら戦場へと駆けていった。
…………一気に終わらそう。
――――――――――――――――――――
そこから先はまさに圧倒的であった。それぞれが妖魔を蹴散らすためだけに技をだし続け次々と還していく。敵の数はみるみる少なくなっていき、気付いたら残り一匹だけであった。その一匹もせめて一撃与えようとレッドに向かって棍棒を振るが、振り切る前に体を水柱が貫き、ぼん!と音を立てて消えていった。
「…………」
皆お疲れさん。
(さて、後はこの二人をどうするかよね)
未だにソウのツルで縛られながら眠っている二人を見ながらフィーが呟く。
こんな時間に戦場に入ろうとしていた時点で一般人ということはなさそうだが、この二人の立ち位置がいまいち掴めない。レッド達からしたら急にやってきた女子学生という情報しかないのだ。とりあえず学園長のところへ連れていけばいいのか?そこまで考えると、誰かがこちらへ向かってくる気配がする。
新たな敵、もしくは先ほどの妖魔の術者である可能性を検討し迎え撃つ準備をする。
暗い夜の影から出てきたのは、褐色の肌をもち短髪でスーツを着た男性と、スラッとした体でストレートの長い髪の女性。どちらも眼鏡を掛けているようであった。
やってきたこの男女ペアはツルに巻き付かれ眠らされてる女学生二人に目をやり、怒気に溢れた表情をする。
「君たち…………学園の生徒をどうするつもりだ!!!」
「…………」
……あれ。これ誤解されるパターンじゃね。
約半年ぶり…。皆様お待たせして本当にすいません。これからもスローペースながらも書いていきたいと思っています。
ネギ先生の来た年って愛衣はまだ中学に入ったばかりですよね。
ジョンソン魔法学校に留学してたとかいってますがいまいち背景がつかめずこんな感じで出しちゃいました。
さて、新作スマブラにてリザードンとゲッコウガの参入が決定しましたね。
……ポケモントレーナー…。
リザードンはむちゃくちゃ優遇されてますね。いやいいんですけどでね、ただフシギソウを残してくれてもよかったんじゃないかなぁとね。
ほかにポケモン枠はいるんでしょうかねぇ。
…関係ない話してすいませんでした。