無口なレッドの世界旅行記   作:duyaku

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おそくなってすいませんでした。お気に入り1000件突破ありがとうございます!


11  超と家

 夕暮れ時、このかと別れた俺は頭にピカを乗せ新しく俺たちの居場所になろう所に帰ろうとしていた。少し冷え込んだ気温の影響により若干かじかんだ手で、先ほど購入した必要最低限の日用品を持って歩く。あきらかに手に持つことができないものなどは店側に住所を教え後日届けてもらうように頼んだ。

 ピカは見慣れない風景を見るのにはしゃぎ疲れたようで寝息を立てながらぐっすりと眠っている。歩く振動で振り落とされるかと思ったが、寝ながらも頭しっかりつかんでいて落ちる心配はなさそうだ。まったく、器用な奴。

 

 さて、家を建てるとフィーは言っていたが、あいつらはうまくやっているのだろうか。俺たちは旅の途中はテントを立てたり宿に泊まったりしていたので、家など建てたことはない。修業のため山に籠る時も洞窟などを利用して拠点にしたりしていたし。…まぁフィーが自信満々に家を建てると言ったんだ。なんとかなっているだろう。そう思って歩いていると、林の方から何かが崩れ落ちるような大きな音が鳴り響いた。

 

「……!」

 

(…ん?え!?なになに!?なにごと!?ねぇねぇなにごと!?)

 

 轟音に驚いたピカが俺の上で跳ねあがるようにして起きる。音が聞こえたのは俺たちが帰ろうとしていた場所だ。何かあったのかと思い俺は荷物をその場に置きすぐに音の下へ向かう。フィーたち頼む、無事でいてくれ。そう願いながらその場所にたどり着くと…

 

 

 

 不格好に斬られた丸太が瓦礫のようにばらばらに散乱し、それを囲むようにしてうなだれているポケモンたちの姿があった。

 

 

 

 

 

(ち、ちがうのよレッド。これはちょっと組み立てるの失敗しただけで、あの、せ、精々10回目ほどよ。次はうまくやるわ、うん。)

 

「……」

 

 どうやらあの音は組み立てていた家が崩壊したときに聞こえた音らしい。ていうか精々10回て、10回もこんな騒音ならしてたのか。どれだけ近所迷惑だ。いや近所はエヴァの家しかないからいいのか?

 

(ふーむ。難しいのう。丸太を地面にぶっさして囲いを作ればそれで家になるかとおもったんだが)

 

「……」

 

 リザよ。絶対違う。地面がぼこぼこなのはお前のせいか。

 

(だめだ…。俺はいったい何をすればいいんだ…)

 

「……」

 

 俺が聞きたい。ゼニお前なんでここに?家建てるのに手伝えることあるか?てかグラサンいつのまにつけたんだ。

 

 

 しかし、まさか何の知識もないまま家を建てようとしていたとは。万が一できてたとしても地震なんか起きたら絶対崩れてたな。

 

(…エヴァのログハウス見てたらできると思ったのよ…。)

 

(ねぇねぇ!フィーてさ!たまにね!たまにだけどね!ちょっとあほだよね!)

 

「……」

 

(…ぐす)

 

 他ならぬピカにあほと言われてフィーはずっしりと沈みながら涙目になっていた。まぁ一日で家を建てようとしていたことを考えればこうなるのは予想できたか。だがこれからはどうしようか。数日くらいはなんとかなっても、どれだけの期間この世界にいるか分からない以上しっかりとした拠点は作っておきたい。エヴァの魔法球にお世話になりっぱなしという訳にもいかないし。

 

 そんな風に考えているとピカがピンと耳を立てるようにした。

 

(ねね。だれか来るよ)

 

 どうやら誰かの足音を聞いたらしい。エヴァか茶々丸だろうか?そう思って俺もその人物が現れるだろう方向に目を向ける。…少しするとそこからガサっと音を立てて一人の少女が現れた。

 

「あいやー。なにやらひどい有様あるネ」

 

 その少女は見たことのない子であった。千雨と同じくらいの年齢だろうか。黒髪でお団子にしている髪型がその子によく似合っていた。迷い込んでここに来てしまったのかとも思ったがそれにしては足取りがしっかりとしすぎている。俺とポケモンたちが若干の警戒態勢に入り様子を確かめる。

 

「あーそんな警戒しないでほしいヨ。怪しいものじゃないネ」

 

無抵抗を表すかのように両手をひらひらさせながら少女は笑う。

 

「……」

 

そうは言っても俺たちはこの世界においては明らかに不審人物である。どんな人物が接触を図ってくるか分からない以上警戒するに越したことはない。ポケモンたちも余計な情報を与えないように念話をせずにこの状況の成り行きを見ている。

 

「ふーむ。私から自己紹介した方が早そうネ。私の名前は「超 鈴音」。長谷川さんのクラスメイトで茶々丸の生みの親ネ。茶々丸に恩人が新しい家を建てるから協力してくれないかと頼まれたので様子を見に来たヨ」

 

 少女は笑みを崩さないままでそう言った。そういえば茶々丸が自分を作ってくれた人に頼んでくれるといってたっけ。しかしまだこの少女が本当にその目的で来たかは分からない。

 俺がどう対応すべきか迷っていると、ピカが俺の上からポンと地面に飛び降り超という少女の前に出た。

 

(僕はね!ピカっていうんだ!よろしくね!)

 

 ピカがにっこりと笑いながら小さな手を差し出すと、超はしゃがみこんでしっかりとピカの手を握った。

 

「ピカ、かわいい名前ネ。こちらこそよろしくネ」

 

 本能的にいい人と仲良くなれるピカと信用して手を握り合う姿は、俺たちの警戒を解くのに十分の光景だった。

 

 

 

 

「なるほど。ログハウスを建てようとしてこんな状況になったしまたカ…」

 

(いやあのほら、何事も失敗からっていうじゃない?)

 

(ずっと失敗しかしてないがのう)

 

(俺なんか何すればいいかもわかってねぇぜ)

 

「……」

 

 それぞれが自己紹介をすました後、超がこの状況をみて若干遠慮気味に呟いたのに対しポケモンたちが応える。超は茶々丸のデータを通して俺たちの現状などを知っているらしくあまり説明する暇が省けたのは正直助かった。

 

「流石に設計図もないのは無理があるネ。あなたたちがいいなら私が知り合いに頼んでうまくやてもらてもいいヨ?」

 

(うわ!すごい!すごいね!太っ腹だよ超!)

 

「ふっふっふ、その言葉は乙女には使ったらだめヨ、ピカ」

 

「……」

 

ピカの額をこつんと突いて超が言う。しかしいいのだろうか。超が俺たちにそんな世話をやく理由が分からないし、金銭的にも生活費を考えたらそんなに多くは出せない。

俺のそんな考えを見抜いたのだろうか超が俺を見てにこりと笑う。

 

「心配ないヨ。あなたたちがエヴァンジェリンを救ってくれなかったら茶々丸も壊されていたかもしれない。あなたたちには感謝してるネ。これでもいろんな業界顔は広いし最低限の費用でなんとかしてもらえるヨ」

 

(ほ、ほんと!?)

 

「……」

 

 フィーが顔をあげパァっと喜ぶ。確かにこちらからすれば本当にありがたい話だ。しかし助けたつもりがないのにそこまでしてもらっていいのだろうか

 

「…そんなに気になるなら、今度私が困ったことがあったら手伝ってくれないか?今回のことはその報酬の前払いという形でいいヨ」

 

「……」

 

 相変わらず笑顔を絶やさないまま超は言う。しかし、この時だけ超の顔つきが少し違って見えた。まるで何か大きな覚悟を背負った者のようであった。

 …安易に頷いて良いものなんだろうか。少し考えたが、俺から見てもこの子は悪い子ではない。何かを隠しているようではあるが、それを教える気などなさそうだ。…とりあえず自分とピカの直感を信じてみよう。間違った道であったらまたその時考える。

 そう結論し俺はこくりと頷く。

 

「…ふふ、交渉成立ネ。その時がきたらまたよろしく」

 

 超が差し出した手を俺はしっかりと握った。

 

「…さて、そうは言ってもさすがにすぐに家はできないヨ。それまでどうするつもりカ」

 

「……」

 

「ふん。そのくらいなら私の家に泊めてやろう。もっとも魔法球の中だがな」

 

 それまでは野宿か宿をとるかしようか…。そう考えているとエヴァと茶々丸が林のほうから歩いて現れた。エヴァは右手に茶々丸にどことなく似ている人形を手にしていて、茶々丸は俺が途中で置いてきた荷物を持っていた。どうやらここに来る前に拾ってくれたらしい。荷物のことをすっかり忘れていたから助かった。

 

(あ!エヴァ!ねね!どこいってたの!)

 

「貴様らががしゃんがしゃんうるさくて寝れんから茶々丸のメンテに付き合ってたん…って乗るなといってるだろ!」

 

「ああ、マスター…。…卑怯です」

 

ぴょんぴょんとジャンプしながらピカがエヴァの上に着地するとそれを振り落とすために頭を揺らすが一向にピカが離れる気配がない。

 

「ケケケ、御主人いつの間にいじられキャラになったンダ?」

 

「……!」

 

(おお、人形がしゃべったぞ。すごいのう魔法は)

 

(うわわ!なにそれ!おもしろい!)

 

 エヴァが右手にもっている人形が急に話し出したが、ポケモンたちはもうこの程度の事じゃ驚かないようだ。

 

「紹介しておくか、こいつはチャチャゼロ。機械でなく私の魔力で動く人形だ。まぁ今の私の魔力じゃなんとか声が出せるくらいだがな」

 

「ケケケ、お前らのおかげで退屈な日々からちょっとは抜けれそうダ。だれかキラセロ。あと黄色ネズミ。そこはオレの特等席ナンダガ」

 

(やーだよー。どかないよー。レッドの上でものぼってー)

 

「ケケ、動けるようなったらキッテヤル」

 

「……」

 

 なんというか、物騒な人形だな。人形を魔力で動かすってのはピッピ人形だかも動くようになるんだろうか。頼んでみるか…。…いや性格に難ありっぽいしな。ギエピーとか言い出したらうっとうしいしやめておこう。

 

「しかし御主人ヨオ。ずいぶんこいつらに気を利かせるジャネーカ。…命を救われてアイツと重ねてんノカ?」

 

「…だまれ」

 

「…ケケ、これ以上はいわネーヨ」

 

「…?」

 

 少し小声でエヴァとチャチャゼロが話している。よく聞こえなかったがとりあえずエヴァがあの少しの間家を貸してくれるならそれを使わしてもらおう。

 

「さて、これでひとまず話はまとまりそうネ。明日から本格的に工事が始まると思うからまた困ったことがあったらよんで欲しいヨ。あと食べるものに困ったら「超包子」の点心でももってきてあげるヨ。んでは再見!」

 

 俺たちに手を振って超は帰って行く。その姿を見届けて、俺たちも今日はこれで休もうというは話になり、エヴァの家に入ろうとするとエヴァが思い出したかのように言った。

 

「んん?貴様らと一緒にいて木を切っていた緑のカエルみたいなやつはどうした。」

 

(((あ、そういえば)))

 

「……」

 

 …あいつも出していたの忘れてた。どこいったんだあいつ。

 

 

 

 




すいませんなかなか更新できませんでした。そのくせ短いしこんな質でほんと…

今回は超やらチャチャゼロがでました。チャチャゼロはいつだそういつだそうと思ってました。どっちの口調も難しいです、はい。

ではまた

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