無口なレッドの世界旅行記   作:duyaku

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時系列と視点かわったりしてちょっとわかりにくいかもしれません。


10 ピカと買い物

 俺は今、麻帆良の街の方にピカを乗せて出ている。家づくりは木を切ったり運んで組み立てる作業のできる他のポケモンたちに任し、それができない俺とピカは必要物資の買い出し係となった。そのため商店街や繁華街を模索中である。

 ピカを乗せて歩くのはポケモンのいないこの世界では目立ってしまうかと思ったが、エヴァ曰く学園長の認識阻害はかなり強力なので周りには珍しいペットを連れているようにしか見えないらしい。実際周りの人もこちらを一度はちら見する人は多かったが、立ち止まって驚くほどの人はいなかった。

 

「ぴかぴか!」

 

「……」

 

 休日ということもあってか人も多く賑やかな声が聞こえ、買い物リストの紙を持つピカのテンションが俺の上で妙に上がっているのが分かる。かく言う俺も、初めての街を訪れるという久しぶりの感覚に多少の冒険心が刺激され、若干探究心が高揚している。

 

――――――――――――――

 

 昨日あの不思議な魔法球で一晩過ごした後、そこから転移してエヴァの家に戻り、皆でエヴァに宿のお礼をした。あんな啖呵を切ったのにお礼を言われることにエヴァは驚いていたが、俺としては力が戻った時に戦いさえしてくれればいいので、あれくらいで敵対関係になろうなんて思っていなかった。

 

 その時茶々丸が俺たちに、改めてマスターを助けてくれてありがとうございました。と礼儀正しくお礼を言ってきた。こちらとしてはたまたま助けた形になっただけなのでお礼なんていらなかったが、それでも何か手伝えることがあったら言ってください。と言うので、新しい家の電気や機械関係を手伝ってもらうようにフィーが頼んでいた。どうやら茶々丸を作ってくれた人は工学にとても強いらしく何とかしてくれるよう聞いてようだ。

 

 その後、千雨は卵をもっていったん寮に戻った。彼女はまだ昨日の疲れが残っているようでこの土日はのんびりとするつもりらしい。フィーは千雨のことが心配らしくとりあえず送り届けると言い彼女について行った。

 その時に何故か俺の胸辺りをしっぽでポンと叩いてから行ったが…。家づくりは任したという合図なんだろうか。

 しかしフィーは相当千雨になついているな…。短い期間でフィーがこんなになつくのは珍しいので少し驚いたが。

 

 

 フィーと千雨が行った後、俺たちはエヴァが好きに使っていいといった林の方に向かい、ポケモンを何匹か出して概要を伝えた。適当な広ささえあれば特に中身は外観や中身はこだわってないので、後をポケモンたちに任し俺たちは買い出しに出かけた。

 

 

そして今に至る。

 

 

 やはり俺たちの世界にはないものがたくさんあり、何か見るたびに目移りしてしまう。初めて旅にでて、世界の広さを知ったときを思い出し、この感覚を持てただけでこの世界にきてよかったなと少し思った。

 

 昨晩フィーと話した結果俺たちが帰る手段は浮かばず、千雨のこともあるので多少はここに滞在することになった。おそらく俺たちが転移してしまった原因は、ゴールドが言っていたシンオウの神話のポケモンが生み出した空間の乱れというもののせいであろう。ならば、こちらからそのポケモンに干渉する方法がない以上、俺たちには待機して他力本願という手段しか思いつかなかった。俺たちがいなくなったことに気づいたら、もしかしたらグリーンやゴールドたちがそのポケモンについて調べてくれるかもしれない。その時になんかしらの方法でまた空間を繋げてくれればきっと帰れるだろう。…まぁいつになるかは分からないが。しかししばらくはこの世界で新しい発見を楽しむつもりである。強い奴もいるし、今まで見たことないものもある。どうせならこの世界を堪能してから帰りたいものだ。

 

 

 そんなことを考えながら俺とピカは街を歩く。歩くのだが…。…やはり広いな、この街…。初めてだから当然だが自分がどこを歩いているかまったくわからない。とりあえず人ごみに向かって歩いたが店っぽいものはあまり見当たらないし…。そしてなんというか学生が多い。小学生が俺たちを横切り、俺を見た子はちょっと笑うようにしてから通り過ぎていく。…もしかして田舎っぽさがでているのだろうか。少し恥ずかしくなり、どうやら店もないようなので人ごみから外れてまた商店街を探すことにする。

そうして路地裏の方を歩いていると、かわいらしい声が奥の方から聞こえてきた。

 

「やーん。だれかたすけてやー!」

 

「……」

 

「ぴか!」

 

 …どうやら厄介事のようだ。助けを求める声を聞いたとたんピカはやる気満々になっている。俺としたらあまり関わりたくないのだが、無視するとピカの機嫌を損ねて俺が代わりにびりびりされてしまうししょうがない…。魔法や魔法使いのことを言わなければ助けた子も記憶を消されることはないだろう。そう思いながら俺たちは声のする方に向かった。

 

 

 

 

「やーん。だれかたすけてやー!」

 

 どうしてこうなってしまったんやろか、と考えながらウチは住宅街の裏の道を走っていた。

発端はいつも通りおじいちゃんのお見合いをさせようとする嫌な趣味のせいだった。いつもはお見合い用の写真を撮られる段階で逃走を図るのだが、今回の相手はすでにウチを見かけたことがあり、どうやらずいぶん気に入ってしまったらしい。その相手にお見合いを申し込まれておじいちゃんもすっかりその気になり、お見合いの場まで決められてしまった。少しのんびりしてるウチは着物を着せられて場についた時にようやくそれを察しし、急いでそこから逃げてきた。しかし相手方は本気でお見合いするつもりらしく、何人か黒服をきた人がウチを追いかけて来て、いつもの追手より早いその人たちは、路地裏に逃げ込んだウチをしっかり追ってきていた。

 

 ウチはまだ結婚相手なんか決めとうないし、お見合いなんてしとうない。いつもそういってるのにおじいちゃんは無理にお見合いを勧めてくる。相手は大体30代以上やし、自分のパートナーは自分で決めたい。無理やりお見合いなんて嫌や。そう思いながら逃げているが、今回はどうやら捕まってしまいそうである。

 

 

ああ…嫌やなぁ…。

 

 

 後ろからの追手がウチに近づいているのが分かり、諦めたような気持ちになる。必死に走っていて下げていた頭を上げ前を見ると――――

 

 

 

――――――――赤い帽子をかぶり、上に黄色い珍しい動物を乗せた少年が立っていた。

 

 

 

 少年が手を前にやり人差し指を伸ばすと、勢いよく上に乗っている動物が跳び出しウチの頭の上を追い越して行った。ウチを追い越す時、その顔はにんまりと笑っていたようにも見える。

 そのあとすぐに後ろでバリバリと弾けるような音と光がした。ウチはそれにびっくりして立ち止まって振り返ってしまう。

 後ろを見るとさっきまでウチを追っていた黒服の男たちがシュウウと音を立てながらうつ伏せに倒れており、黄色い動物はエッヘン!とでもいうように胸を張っていた。どうやらウチはこの子に助けられたらしい。倒れている黒服を気絶しているだけだと確認した後、ウチはその子を抱き上げた。

 

「ありがとえー。おかげで助かったえ」

 

「ぴかぴか!」

 

 気にするなとでも言うように返事をするこの動物。

 …なんやこれすっごいかわいいえ…。そのかわいさに耐えれず胸にその子を抱え撫でていると、正面から先ほどこの子を乗せていた少年が近づいてきた。

 飼い主さんやろうか?しかしこんな珍しい動物居るもんやなぁ。さっきはなんか電気ウナギみとうなことしてウチを助けてくれたっぽいし。あ、そしたら飼い主さんにもお礼いわな!

 

「えーっと。ウチを助けてくれてありがとう。ウチは近衛 木乃香ゆうんや。…えと、レッドさん?」

 

「……!」

 

 声は出さないがウチが名前を当てたことに驚いてる様子である。…ってことは気づいてないんかな?

 

「あのぅ、胸になんやネームプレートみたいの張ってありますえ?」

 

「……!」

 

 ウチが教えてあげるとレッドさんはバッと素早く胸元を確認した。そこには―――

 

―――――――――『私の名前はレッドです。上にいるのはピカです。』

 

 と書いてあるネームプレートがしっかりと張られていた。レッドさんはすぐにそれを外してポケットに突っ込んだ。

なんやおもしろい人やなぁ。それでこの子はピカっていうんか。かわええなぁ。…ほんまかわええなぁ。

 ウチがかわいがるようにピカを撫でていると、ピカはどこからか紙を取り出してウチに見せてきた。

 

「うーんと、生活用品やら家具やらたくさん書かれとるなぁ。もしかしてこれ買いきたん?」

 

「ぴかぴか」

 

「……」

 

 二人とも頷くように首を下に振る。その動作がシンクロしていてなんだかおかしかった。

 

「この辺は住宅街やからお店はあんまないんよ。…それを知らんてことはもしかして引っ越してきたばっかなん?」

 

「ぴかぴか」

 

「……」

 

 またシンクロして頷く。なんやとっても仲ええんやなぁ、と思い少し心がなごむ。よーし、ウチ助けてもらったし!

 

「ほならウチが商店街を案内する。助けてもらったお詫びやえ」

 

「ぴか!」

 

「……」

 

 ピカが嬉しそうに声を上げる。しかしレッドさんはなんとも言えない表情だ。

 お詫びなんていらないって感じやろうか?というかなんでこの人さっきからしゃべらんのやろうか?まぁええわ。実際困ってそうやし、お見合なんかするよりピカとレッドさんと歩いて回る方が何倍もたのしそうや。

 

「ほな、いこか。」

 

「ぴかぴ!」

 

「……」

 

 ウチがピカを抱いたまま進むとレッドさんもついてきた。やっぱり仲良しさんなんやなぁと少し羨ましくも思いながらウチらは商店街に向かった。

 

 

 

―――――――――

 

「なんやたくさん買い物したえー」

 

「ぴかぁ…」

 

「……」

 

 買い物リストにあるものの大体を買ったウチらは公園で休んでいた。レッドさんもピカもとても疲れたようでぐったりとしている。…ぐったりとしたピカもかわいいえー…。

 

「そういえば、レッドさんはなんでしゃべらへんの?」

 

「……」

 

 やっぱりしゃべらへん…。もしかして…

 

「…しゃべれないってことかえ?」

 

「……」

 

 レッドさんは首を横に振る。ほなら…

 

「…ただしゃべらへんだけかえ?」

 

「……」

 

 うんうんと首を縦にふる。ついでに抱えているピカもぐったりしながらもうんうんと首を振ってシンクロしていた。

 

「…っぷ!なんやそれー!」

 

 あはははとウチは声を出して笑っていた。かわいい動物を飼っているしゃべれるのにしゃべらないなんだか変な人。そんな人に助けてもらってこうやって公園で話しているのがなんだか楽しかった。

 

 その後もウチらは公園でおしゃべりを続けた。といってもウチが一方的に話しているだけやけど。ウチと同じ部屋に住んどる子の事とか、クラスの事とか、…それから、久しぶりにあったのに昔みたいに話してくれへんよ―になった子の事とか。レッドさんはその間もしゃべることはなかったけど、ウチの話を真剣に聞いてくれていることは分かった。せっちゃんの事はあんまりクラスで大事にしとうなくてまだアスナにもいってへんかった。でもレッドさんはうんうんと黙って話を聞いてくれるし、なんだか話やすかった。せっちゃんのことについて答えが見つかったわけやないけど、話を聞いてくれる人がいて、心配そうになめてくれるピカがいて、少し気持ちが楽になった。

 

「…あ、もうこんな時間や!レッドさん。話聞いてくれてありがとうえ。ピカも心配してくれてありがとう。あっちに行けば大きな案内の看板があるからきっと帰りは大丈夫やえ。…ほなら、またいつかお話きいてやぁ」

 

「ぴーかぴー」

 

「……」

 

 レッドさんにピカを返して私は立ち上がる。もう一度お礼を言い、ほなまたなぁと手を振りながらウチは彼らから遠ざかっていく。

 

 何もしゃべらずとも小さく手を振るレッドさんを見て少し嬉しく思いながらウチは寮に戻って行った。

 




はい、どーも10話です。ついに二桁いきました。

今回はこのか登場。京都弁のむずかしさ。違和感かんじたらすいません。

まじでネームプレートつけるフィーさん。ピカが上にいるのも想定済み。おかげでこのかは名前がわかったね!

レッドとポケモンたちはなんやかんや一年かけてクラスの子と知り合っていけたらいいね。
でもしゃべらないの気にしないのこの子だけな気もするね。
あと千雨も一年でポケモンどうにかしなきゃね。


えーお盆はちょっと書ける状況じゃないんで次はしばらく後になるかと。
うまくいけばその前に一話かけるかなぁ…。ちょっとわかんないっすね。

ではまた。

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