意識して防いだわけではない。
ただ、雷撃に包まれる寸前に、一瞬体の感覚が消えた。
時間が止まり、意識が薄くなるような感覚。
まるで体を、というより魂に干渉されたような感じがした。
自分でもおかしな表現だと思う。魂だなんて科学かオカルトかも分からないようなもの。
ただ自分がISに魂を喰われていると思えた。
しかも、それを忌避も嫌悪もせず、当然のものとして受け入れている自分に驚く。
白式の零落白夜はエネルギーそのものを消し去る力。
その力を使えばISのエネルギー兵器による攻撃を無効化することができる。
一夏は確信した。相手はISを使っている。服の中に展開しているのか、それとも隠密性のある不可視効果でもあるのかもしれない。
どっちにしろ生身の人間が雷撃なんて放てるはずがない。ゆえに相手はISを装備していると結論付けた。
一夏がこれまで一方的にやられたのは相手が生身の人間だと思ったからだ。
ISを装備してない人間相手にISを使えば殺してしまうかもしれない。しかし、銃を持って武装している相手を抑えるにはISを使うしかない。
実際一夏は本気をだせず、黒い壁に邪魔されたことを除いても、まともに攻撃する事さえできなかった。しかし、相手がISを装備しているなら話は別だ。
雷撃の閃光を凌いだ一夏は改めて相手を見据える。全く同じ顔をした八人の少女。一見ISを装備している様には見えず、銃とゴーグルを外せば普通に街中を歩いていても全く違和感のない恰好をしている。
しかし、それが相手の思惑なのだと一夏は考えた。
忘れもしない学園祭の日、一般人を装って一夏に近づいてきた亡国機業の女。この八人が亡国機業の人間なら、ISを装備してないと見せかけて一夏に本気を出させないように仕向ける事は十分に考えられる。相手の策略に嵌ったと思った一夏は怒りに震えるが、相手は八人。ISを装備している以上迂闊に飛び込めない。
「でも、これで全力で戦える！」
IS八機相手に出し惜しみは出来ないと判断した一夏は、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰めようとする。荷電粒子砲ではエネルギーが心配なため接近戦を選んだ。
黒い壁が襲ってくるが、雪羅(せつら)をクローモードで起動し、零落白夜のエネルギー爪で一瞬で振り払う。
黒い壁を振り払ったその先から数本の雷撃の槍が襲ってくる。
どうやら視界を封じる役と、振り払って防御できない内に攻撃する役で分けていたようだ。
しかし攻撃する人数が少ない分威力も弱い。
一夏は体にまとわりつく雷撃を振り払い、少女の一人を見据える。
雪片弐型を振りかぶる。
少女は逃げようとするが、すでに白式の攻撃範囲内。
雪片弐型を少女に振りおろし・・・・・
一夏の目の前は真っ赤に染まった。
～束とアレイスターの解説コーナー～
「束」あ～あ、やっちゃったね、いっくん
「アレ」相手を見極めず勝手にISと勘違いするからだ
「アレ」しかし、彼は随分ととばしていたが、エネルギーは大丈夫なのかな？
「アレ」たしか
・海上への移動、空中での加速旋回
・荷電粒子砲一発
・ビームクロー使用一回
・シールド展開数秒
・雪片弐型の使用
これだけでエネルギーの大半を消費していたようだが？
「束」あ～、まずいね～。もうほとんどエネルギー使っちゃったんじゃないの～
「アレ」それ以前に少女を傷つけた彼がまだ戦えるのかね
「束」不安だらけだねーいっくん
「束」それより、いっくんは魂がどうのとか言ってたけど、これは何かの比喩表現なのかな？
「アレ」君が白式に使用者の精神を蝕んでISを強化する機能でも付けたのではないのかね？
「束」あはは、どうだろうね～
「束」そっちこそ心当たりはないのー。原石の候補リストにいっくんの名前が載ってるみたいだけど？
「アレ」さて、どうだろうな
「束」まっ、いっか、読者のみんな～読んでくれてありがとね～
「アレ」このコーナーは本編とは全く関係ない話だ。今の所このコーナーが続く予定はない
「束」今回は更新にずいぶんと時間がかかった上に話もかなり短かったから作者のお詫びと言い訳のためのコーナーなんだよね～
「アレ」次に会うのは本編になるだろう
「束」まったね～