一夏は、先ほどのニュースの映像を見て呆然としている。
他の皆は、ISを超える兵器が存在している事にショックを受けているようだ。
「一体何なのよ!あの無茶苦茶な兵器は!」
鈴はイライラしている。ISを超えるものが存在している事が受け入れられないのだ。
「・・・これが、学園都市の技術力なの?」
シャルは震えている。あまりに圧倒的な力の差を見て怯えているようだ。
一夏は、まだ状況を飲み込めずポカンとしているが、この映像を見た誰もが思った。
世界が荒れる。
その時。
ーーービィィィィッ!!ビィィィィッ!!
IS学園に警報が響き渡った。
廊下の電灯が全て赤に変わる。続けて、あちこちに浮かんだディスプレイが『非常事態警報発令』の文字を告げていた。
『侵入者発生!侵入者発生!全生徒はただちに地下シェルターに避難してください!繰り返す。全生徒は地下シェルターに避難してください!』
学校中に緊急放送が流れる。
「侵入者!!」
ラウラが一番に反応する。
「まさか!また亡国機業!?」
鈴が叫ぶ。
「あっ!一夏!!」
一夏が走り出していた。
箒が呼び止めるが、一夏は止まることなく走っていく。
何度もやられたまま終わりたくないから。
「ところで、一夏は侵入者の居場所を知ってるのかな?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
シャルの質問に誰も答えない。
一体どこに行ったんだ一夏?
「織斑先生!」
廊下を走っていた真耶まやは、やっとのことで千冬を見つけた。
「山田先生、状況は?何が起こっている?」
「わっ、わかりません。侵入してきたというより、まるで学園の中に突然現れたみたいなんです」
息を切らしながら、真耶は困惑した様に答える。
「出入口の警備員は誰も見てないって言ってるし、それに学園内の監視カメラが突然一斉に故障しだしたんです!」
そんな馬鹿なと思うが、実際侵入者は現れている。
「数は?」
「詳しい人数は分かりませんが、何故かISもなしに待機中だった専用機持ちの生徒が襲われて、行動不能になっています!詳しい報告を聞く前に電波が途切れてしまいました!私たちはどうすれば!?」
真耶は懇願するように千冬を見上げる。
IS学園において『予想外事態の対処における実質的な指揮』は、全て千冬に一任されている。それはもちろん、かって世界最強の称号『ブリュンヒルデ』を冠したことに起因していた。
「各セクションの状況は?」
「前回と同じく、最高レベルでロックされています」
「わかった。教師は生徒の避難を優先。同時にシステムにアクセスしてロックを解除しろ。戦闘教員は全員が突入用意、装備はレベルⅢでツーマンセルを基本に拠点防衛布陣をしけ!」
「りょ、了解!」
真耶は背筋を伸ばしてそう答えると、自分の機体を取りに格納庫へと走り出した。
その背中を見送ってから、千冬は思いきり壁を殴りつける。
「やってくれるな・・・・だが、甘く見るなよ」
千冬はその目に怒りの炎を宿しながら、はっきりした声で呟いた。
一夏は走っていた。
自分を誘拐した亡国機業、楯無さんが来てくれなかったらISまで奪われていた。
探す当てなんてなかったが、じっとしていられなかった。これ以上、自分の大切なものを奪われたくなかった。
そして、たどりついたISアリーナ。
偶然にも侵入者はそこにいたが、今の一夏の目には映っていなかった。
「・・・・・えっ?」
最初に目に入ったのは、何かのがれきだった。
それを見て一夏は困惑する。
「うそ・・・・・・」
それはバラバラになったISだった。
「なんで・・・・・」
あれには見覚えがある。
そのISを組み上げるのに、自分も関わっていたから一目で分かる。
「なん・・・で?だって、あれは簪の・・・・」
あれは簪かんざしの専用IS「打鉄弐式」だったものだ。
「なんで、何でだよ・・・・あいつ、やっと自分のISが持てるって喜んでたのに・・・・
自分たちの手で、ようやくISを作り出すことができたって喜んでくれたのに・・・・
何でだ・・・・何でだよオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーー!!!!!!」
一夏は悲しみと怒りに満ちた叫びを上げ、一夏の感情に呼応する様にISが展開されていく。
ここに簪の姿はないが、アリーナの中にいる八人が侵入者で間違いない。
一夏の中で何かが弾けた。