IS学園VS学園都市   作:零番隊

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更新遅くなってすいません。
今回は本作から先に待ち受けるかもしれない物語。本編の話が行き詰まり、遅れ、このままでは新約のあの話にたどり着くのはいつになるのかわからん!

というわけでずっと書きたかったあの物語が始まります!

今月中に最低でももう1話新約編投稿します。




新約
新約第1話 終わる世界


そもそもの始まりは一人の少女との出会いだった。

 

超能力が科学によって解明された世界。能力開発をカリキュラムに組み込む巨大な学園都市。その街に住む無能力者の高校生だった●●●●のもとに、純白のシスターが現れた。彼女は禁書目録(インデックス)と名乗り、魔術師に追われていると語る。

 

こうして●●●●は、科学と魔術の交差する世界へと足を踏み入れていくことになったのだ。

 

特別な血を持つ少女を助け出すために錬金術師と戦った。

第三位の超能力者や彼女の妹達を助けるために、最強の怪物とも戦った

海の家ではクラスメイトの裏切り者と死闘を繰り広げた。八月三一日には色んな事があった。

AIM拡散力場の集合体たる『ともだち』を助けるために本物のゴーレムに立ち向かった。『法の書』を解読できるという触れ込みのシスターを助けるために十字教最大宗派にケンカを売った。

常盤台中学の少女の後輩と関わった事もあった。

大覇星祭では運営委員やクラスメイトが巻き込まれる事態になりながらも『使徒十字』の驚異から学園都市を守った。

イタリアのキオッジアではかつて敵だった少女を助けるために氷の艦隊に突撃した。

九月三○日には変わり果てた『友達』を助けるため、『神の右席』の女と激突した。

クラスのみんなと食べたすき焼きは美味しかったし、常盤台中学の少女の母親を助けるためにスキルアウトともぶつかった。

フランスのアビニョンではC文書を巡って『神の右席』と戦った。

学園都市の地下街では天草式十字凄教と一緒に強大な『聖人』と戦った。

イギリスのロンドンでは第二王女が主導するクーデターを食い止めた。

そして第三次世界大戦の元凶右方のフィアンマを打ち破った。

 

「本当にそうか?」

 

何も無い真っ黒な世界に女の声が聞こえた。次々と思い浮かぶ回想にノイズが走るかのようにその声は●●●●の頭に響き渡り、意識が遠のいていった。

 

 

 

「……はっ?」

 

そこで一夏は目を覚ました。自分が意識を失う前後の状態は把握できない状態が続く。一夏が横になっていたのは見覚えのない小さな寝室のベットの上だった。どうやら今は夜の様で電気はついておらず、部屋の中は薄暗かった

 

(一体何が、そもそもここは何処なんだ?俺は確か、学園都市に攫われた簪を助ける為にロシアに向かって、第三次世界大戦の元凶のフィアンマって奴を倒した後に、簪を学園都市の連中から助け出して、被害を抑える為に白式で天使とかいうのにぶつかったはずじゃあ……)

 

考えられる可能性としては天使とぶつかった後気絶した自分を誰かが保護し、この部屋に運び込んだのだろう。自分の身を調べてみると白式は問題なく待機形態で右腕に装着されている。

 

ともかく簪や学園都市に残してきた仲間たちの事が心配だ。

 

箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ。皆に自分の無事を伝え、合流することが第一だろう。

 

「とにかく、これで全部終わったんだ!早く皆に会って安心させてあげよう。あいつらも一緒にIS学園で特訓してきたんだ。簡単にへこたれるような奴らじゃない。きっと無事だろ」

 

……だけど、なにか絶対に忘れてはいけない前提条件が間違っている様な、自分でも説明が出来ない不安に苛まれる。

 

そんなとき、ノイズのような音が聞こえ薄暗い部屋を微かに何かが照らす。見るとテレビがニュース報道しているようだ。

 

海外に派遣された日本人の女性レポーターが、どこか遠い国の戦争について報道している。

テレビに映る街並みは大地震の後のように瓦礫に埋もれ、ビルや建物の跡がぼんやりと浮かび上がっている。

 

「……あれ?」

 

そこで一夏は違和感を覚える。原型を留めないほど崩れて分かりにくいが、その街並みにどこか覚えがある気がしたのだ。

 

『日本の首都東京では、都内に潜伏する織斑一夏の掃討のため、多国籍連合軍による総合侵攻作戦が依然として継続されています。都心二十三区の既に七割は既に瓦礫と化しているとの情報も流れていますが、大規模な破壊活動は、かえって織斑一夏の生死を不明瞭にしてしまうのではという懸念もあるようで……』

 

「…………………………………は?」

 

意味が分からなかった。

 

(このニュースはどこか遠い国の戦争を報道しているんじゃないのか?それに多国籍連合軍?俺を掃討?一体何の冗談だよ)

 

一夏は震える自分の体に気付かず、ベットから立ち上がると窓の外を覗き込んだ。

 

だがそこから見えたのは燃え広がる街の姿だった。

 

一夏は絶句し、声も出なかった。

 

中継は切り替わり、何かの記者会見の現場を映し出す。

 

『日本国政府は織斑一夏の潜伏とその所在を認めておきながら、その事実を長らく隠蔽し続けてきた。これは国際社会の安定と平穏を望む、国家の枠組みを超えたあらゆる人民への冒涜に他ならない』

 

どこかの国の大統領が胸を張って言い切っていた。

 

「な、なんだよこれは!」

 

思わず叫ぶ一夏に構わずニュースは続いていく。

 

『国連決議によって該当国への国交、貿易、食糧支援などは全て断ち切られました。該当国日本の食料自給率は40%未満。二人に一人は死ぬ計算になっています』

 

『IS学園から学生たちが外へ逃げ出す疎開活動が盛んになっているようだけど、多国籍連合軍はこいつを認めちゃいない。疎開先となった地はくまなく空爆することで負の芽の可能性を残らず摘み取るんだとさ。おっかねえ、世の中平和が一番だ』

 

「ふざけんな!」

 

思わず叫んだ一夏はテレビを蹴飛ばして外へと走り出す。燃え上がり、瓦礫と化した街の中をひたすら走り続ける。

 

(なんでだよ。なんで目が覚めたら日本が世紀末みたいになってんだよ!夢なら早く覚めろよ!)

 

そのときだった、空から何かが落ちてきた。

 

それが巡航ミサイルだと気づいたときには、轟音と共に吹き飛ばされた。

 

「がっ……げほっ、がはっ……っ!!」

 

だいぶ離れた場所に着弾した様だが、それでも一夏の意識を奪いそうになるほどの衝撃が襲った。もし直撃していたら間違いなく一夏は死んでいた。

 

全身に痛みが走り、胃から強い吐き気が込み上げる。その感覚が、嫌でも一夏にこれが夢ではないことを教えてくれる。

 

だが今はそんなことを気にしている場合じゃない。さっきのニュースの言っていたことが本当なら、今の爆撃はIS学園から逃げてきた者たちを狙ったものだ。

 

「くそっ、ふざけんな!冗談じゃねえ!」

 

一夏は白式を展開し、IS学園に向けて全速力で飛びたった。

 

 

 

上空から見ると改めて事の凄惨さがわかる。電気が完全に止まった夜の街は炎で照らされ、あちこちに黒煙が上がっている。

 

「そんな……」

 

一夏達の通っていたIS学園。正門は瓦礫の下に埋もれ、校舎は瓦解し廃墟のようになっていた。

 

(なんでだよ。ISは最強の兵器のはずだろ?ミサイルを何発ぶち込まれようとISで迎撃できるはずだ。実際に白騎士事件のときは一機のISで何発ものミサイルを撃退したって聞くし。それなのに……)

 

もしもあの中にクラスメイトやのほほんさんたち、生きている人間が大勢いるとしたら。

 

(いいや!そんなわけない!IS学園は避難用のシェルターだってあるはずだし、もしかしたら既に別の場所に避難したのかもしれない!きっと大丈夫なはずだ!)

 

弱気になってしまっては、すべてが悪い方向へと進んでしまう気がした。

 

「楽観論は結構だが、お前の思っている通りに行くかな?」

 

「誰だ!」

 

どこからか聞こえてきた女の声に振り向くも、周りには誰の姿も見当たらない。幻聴だったのか。

 

「くそっ!なんなんだよいったい!俺の頭の方がおかしくなっちまったのか!?」

 

廃墟のようになってしまったIS学園の中へと突入し、白式の雪片弐型で邪魔な瓦礫を吹き飛ばしながら進んでいく。いつも自分が通っていたIS学園だとは思えない。不気味な静寂さに包まれている。

 

「ここも電気が止まっているのか。でも皆どこかに避難しているはずだ。大丈夫。千冬姉がいるなら皆無事なはずだ。というか、千冬姉がいるのにIS学園がこんなことになるなんて、亡国機業(ファントムタスク)がまたなにかしたのか?」

 

その時、一夏はようやく人を見つけることができた。避難に遅れたのか、瓦礫の転がる廊下に倒れ伏している。

 

「り、りん……?」

 

それは一夏の幼馴染である凰鈴音(ファン リンイン)の姿だった。

 

「鈴!大丈夫か?一体何が?どうしてこんなことになっているんだ!?」

 

一夏は慌てて鈴に駆け寄ると、早口にまくしたてた。

 

「ぐっ、がはっ……げふっ、がっ……」

 

だが一夏に答える鈴の声は声にならず、生暖かい真っ赤な液体を吐き出した。

 

「り、鈴!?くっ、悪い。今は無理に喋らなくていい。とにかく安全な場所に移動するぞ。大丈夫だ。なんとかしてやる。絶対に何とかしてやるからな!」

 

一夏は鈴を抱き上げると、安全な場所を探す。皆が避難している場所がどこかにあるはずだ。

 

だが一夏の思考はそこで無理やり止められた。

 

「なに……っ!?」

 

突然一夏の装備していたIS白式が解除されたのだ。もう一度展開させようとしても全く反応を返さない。

 

「なんで反応しないんだ?エネルギー切れによる強制解除か?いや、まだエネルギーには余裕があったはず」

 

そんな一夏の疑問に答えるように。学内放送のスピーカーが壊れたラジオのようなノイズ交じりの

 

『なお国際連合は亡国機業と協力し合い、IS学園付近とその他地域にISの機能を妨害する設備を配置しています。これは凶悪な兵器であるISを封じ込め、IS学園から疎開する危険人物による被害を防ぐための人道的な試みであり、世界平和の為に全面効力してくださった亡国機業の方々には感謝の念が堪えません』

 

「亡国機業。やっぱり奴らの仕業か。世界中の情報を操作して、俺に罪を擦り付けるつもりなのか」

 

……本当に悪い夢でも見ているようだ。だが、悲劇は終わらない。

 

一夏の首元に鈴の手が伸びる。

 

「なに、が……何が、助けてやるよ」

 

鈴の両手が一夏の首を締め上げる。その瞳には絶望の色を浮かべ、怨嗟の声を上げる。

 

「織斑一夏。あんたが、あんたがあんな事さえしなければ、誰も死なずにすんだんじゃない!!」

 

…………………………意味が、わからない。

 

「ど、どうしたんだよ鈴。まさか亡国機業の奴らに洗脳されたのか!?」

 

「……あんたには、もう、何を言っても無駄ね」

 

「目を覚ませ鈴!お前は亡国機業に騙されているんだ!」

 

そうでもないと、幼馴染である鈴が自分に対してこんな目を向ける説明がつかない。

 

だが一夏の言葉に対して、鈴はさらに首を絞める力を強めた。

 

「都合の悪いことから目を逸らして、主人公(ヒーロー)である自分が、悪者をやつける自分は偉くて凄い?ふざけんじゃないわよ!あんたの!その身勝手で、どれだけの人がぁ、巻き込まれたと思ってんのよおぉ……っ!」

 

一夏はただ学園都市に攫われた簪を助け出したいだけだった。だが、自分の行動がどれだけの人に迷惑をかけていたのか理解していなかった。千冬姉や仲間達にも気付かない間にたくさん迷惑をかけてしまったかもしれないが、それでもきちんと謝れば最後には笑って許してくれる。そんな甘えが一夏の心の片隅にあったのだ。

 

例え正しくても、その正しさが取り返しのつかない事態を引き起こすなど思ってもみなかった。

 

とにかく、早く鈴の手を振りほどかないと窒息してしまう。きっと何か誤解があるんだろう。話せばわかるはずだ。

 

一夏は強引に鈴を振り払った。

 

「がはっ!げほっっ!」

 

一夏は膝をついて咳き込み、呼吸を整えるとゆっくりと立ち上がる。

 

「鈴……?」

 

だが鈴は一夏の呼びかけにも全く反応を返さず、床に倒れ伏している。

 

「どうしたんだよ鈴?まさか打ち所が悪かったのか!?」

 

一夏は慌てて駆け寄ると鈴の容態を確かめる。

 

「うそ、だろ……」

 

鈴は息をしていなかった。物言わぬ姿に成り果てていた。辛うじて気力で繋ぎとめていた命が途切れるように。

 

「ひ」

 

ふいに、裏返った声が一夏の喉から漏れる。

 

ふと視線を上げると、薄暗い廊下の片隅に鈴と同じように倒れ伏している人達がいるのが見えた。だが、誰も彼も動く気配すら見受けられない。

 

無慈悲に、残酷に、命は奪い尽くされたのだ。

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

気付けば一夏は何かから逃げるように走り出していた。自分を知る誰かを求めて一夏は学園中をひたすらに走り続ける。だが、生存者は誰一人として見当たらない。

 

――どうして私たちが死ななくちゃいけないの

 

「……ちが、う」

 

――どうしてお前は生き残っているの

 

「ちがう」

 

――お前のせいで私たちは死んでしまったのに

 

「違う!俺のせいじゃない!」

 

クラスメイトの皆が、生徒会の皆が、共に笑い合った仲間たちが、皆が自分を責める声が聞こえるような気がした。

 

「誰か、誰かいないのか!」

 

この惨状が自身の軽はずみな考えによって引き起こされたものなのだと思い込んでしまったら心が壊れてしまいそうだ。誰かに自分の無実を証明して欲しかった。

 

「織斑くん……」

 

自分の名前を呼ぶ声に振り返る。

 

「山田先生!よかった。無事だったんですね」

 

「…………ごめんなさい」

 

突如わき腹に痛みが走った。

 

「えっ?」

 

一夏は何が起こったのか理解するのを拒否したかった。自分のクラスの副担任の山田麻耶が、まさか包丁で刺してくるなどあるはずがない。

 

「ごめんなさい織斑くん。だけど私は、クラスの皆が大変なことになるのを、目の当たりにしたんです。どうしても、あれだけは起こってはいけないことだったのに。先生は、そのけじめをつけないといけません」

 

一夏にはもう指一本動かす気力すら起こらなかった。だが、絶望はまだ終わらない。

 

『確かに一夏は私の弟です。それは間違いありません』

 

IS学園に設置されたモニターが光る。そこに映る人物は一夏が憧れ、最も信頼する姉の姿だった。

 

「ちふ、ゆねぇ……」

 

その人は厳しくもいつだって一夏を守ってくれた。世界最強の『ブリュンヒルデ』。その弟であることに重苦しさを感じながらも、大好きな家族であり絶対的な強者の象徴だった。

 

『ですが私は織斑一夏の姉として、そしてIS学園の責任者として、全ての元凶である織斑一夏を討つことに全面協力することをここに誓います。それが今の私にできるせめてもの贖罪です』

 

その言葉を聞くのを最後に、一夏の意識は真っ暗になった。

 

 

 




次回「奪われた世界」

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