連邦横断鉄道。
ユーラシア大陸を横断する世界最大の路線は、第三次世界大戦が開戦した事によって、軍用物資を搬送するため、安全規定を無視したスピードで運行されてる。
一方通行(アクセラレータ)は貨物列車の中にいた。そして、彼の傍らに眠っている少女、打ち止め(ラストオーダー)は、エイワスという怪物を出現させるために利用され、脳に負荷がかかっているせいで、自分の足で歩くこともできず、今もぐったりしたままだ。
「ここどこ?ってミサカはミサカは辺りを見回してみたり」
「列車の中だ」
「ヨシカワやヨミカワは?ってミサカは質問してみる」
「今はいない。でも絶対にすぐに会える。必ずだ」
「そっか・・・・みんな一緒だったら、ヨミカワにまた煮込みハンバーグを作ってもらえたのにってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」
「・・・・」
「でも、良かった、ってミサカはミサカはホットしてみたり。やっと、久しぶりに、あなたの顔を見られたから、ってミサカはミサカは手を伸ばしてみる」
そう言ったが、打ち止めの手は小さく震えるだけで動かなかった。
「また、みんなと一緒にご飯食べようね、ってミサカはミサカは提案してみる」
笑顔とは裏腹に言葉を出すのもつらそうだった。そして、喋りつかれたのかまた眠ってしまった。
一方通行はやり場のない怒りを無理やり沈め、これからのことを考える。
その時だった。
ベコンッ!!という金属がへこむような音が頭上から聞こえてきた。
一方通行が顔を上げると、同じような音が連続して聞こえてきた。
おそらく、貨物列車のコンテナが歪んだのだろう。何者かが高速移動中の貨物列車に飛び移ってきたのだ。
相手は学園都市からの追ってか、ロシアからの迎撃か。
ロシア側から見れば、自分達は戦争中に学園都市からやってきた侵入者。
だが、それについては知ったことじゃない。学園都市の手先だと思われるのは心外だが、いちいち誤解を解いても時間を無駄にするだけだ。今の目的は打ち止めを救うこと。それを邪魔するなら何であろうと破壊して突き進むだけだ。
一方通行は静かに立ち上がる。
小さな少女の命を脅かす可能性のある者を、片っ端から粉砕するために。
首のチョーカーを能力使用モードに変更。
轟音と共に鋼鉄製の天井を突き破って列車の屋根へ飛び出す。
列車の屋根の上。普通の人間なら立っていられない烈風の中、三機のISと一方通行が対峙する。
ロシアのIS操縦者達は、突然下から現れた一方通行に一瞬動揺したが、すぐに冷静に戻り、一方通行を取り囲むようにして銃器を向けてくる。
「私はロシア軍IS武装隊隊長アーニャ・アレクセーエヴナだ。貴様が学園都市から侵入してきたスパイであることは分かっている。大人しくしていれば命は奪わないでやる。投降しろ」
一方通行を取り囲むIS部隊のリーダー格らしき女が、明らかな上から目線で投降を命じる。
しかし、銃器に取り囲まれた一方通行は、全く揺らぐ事はなかった。
周囲を見渡し、ため息をつく。
「俺も我慢強くなったもンだな」
彼女らの行動は間違ってはいなかった。
学園都市の情報を知るために、生かしたまま捕獲しようとした事。
ISで捕獲しようとすれば、誤って殺してしまう可能性がある事。
無駄な抵抗をされないように銃器を突き付け、自ら投降する機会を与えた事。
以上のことから、彼女達の行動は決して間違ってはいなかった。
ただ、とてもとても不幸な事に、相手が悪かったとしかいいようがない。
「・・・・ゴミクズが。俺の癇にさわってンじゃねエよ!!」
学園都市最強が動き出す。