IS学園VS学園都市   作:零番隊

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第21話 コンビネーションアタック!

「いち、か・・・・・・?」

 

白式が粉々に砕け散り、一夏が大きく吹き飛ばされた。

 

「一夏ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

箒はすぐさま一夏の元へと飛んでいく。

 

「一夏!一夏!」

 

箒は倒れ伏した一夏を抱き上げる。

 

「う、あ、っ・・・・・・」

 

一夏のか細い呻き声が聞こえる。意識はないが、生きているようだ。

 

(・・・・・私は、また守れなかったのか?)

 

箒の頭に蘇るのは臨海学校での記憶。

 

目の前で一夏が撃墜した時と同じ。自分の焦燥感と無力感に苛まれそうになる。

 

「やべっ、加減間違えた」

 

削板から焦ったような独り言が漏れた。

 

「悪い。やりすぎちまったな。そいつ大丈夫か?」

 

「おまえが・・・・・」

 

削板は純粋に一夏を心配しての言葉だったが、その言葉は今の箒にとっては逆効果だった。

 

「お前があああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」

 

「うおっ!」

 

箒は右手の刀、雨月を振るう。

雨月から繰り出される無数のレーザーが削板に襲いかかった。

 

だが

 

削板が両手を大きく広げると、襲いくるレーザーを跡形もなく吹き散らした。

 

「うおおおおおおおおおっっっ!!!」

 

左手に握る刀。空裂を振りぬくと、巨大なエネルギー刃が削板向けて飛びかかる。

 

「すごいパーンチ」

 

削板から繰り出された衝撃波のような何かが襲いくるレーザーを打ち消してしまった。

 

「そんな・・・・・・」

 

どうすればいい。

 

こんな絶望的な相手に、何が出来る?

 

「落ち着け箒!」

 

「・・・・・ラウラ」

 

ラウラは箒を連れて、空高くへ飛び上がった。

 

箒は焦燥している様子だ。

 

何をやっても相手に通用せず、絶望してしまいそうになっていた。

 

「むやみに突っ込んでもヨメの二の舞になるだけだ。落ち着いて自分を思い出せ。お前は何のために戦っているんだ?何のためにここまで来たのだ!?」

 

「わた、し。私は・・・・・」

 

箒の顔色に平静が戻ってきた。

 

(そうだ。私は一夏と一緒に戦うために、今度こそ一夏の背中を守るために一緒についてきたんだ。でも・・・・)

 

傷つき、倒れ伏した一夏は戦えない。

今の箒は恨みによって戦っていた。

 

それじゃあ駄目だ。一夏は弱い人たちを、そして自分の仲間を助けるために戦っていたはずだ。

 

「私は、一夏を助けたい」

 

「少しは冷静になったようだな。こんな所で立ち止まっていても、ヨメは喜ばんぞ。早くあいつを倒して、ヨメを迎えに行くぞ」

 

「もちろんだ」

 

箒は改めて思う。削板の言う根性云々はともかくとして、思いの力なら自分は負けない。

 

思い上がりと言われようが何だろうが、気持ちで負けていたら話にならない。

強がりでもいい。自分は目の前の男に勝てるんだ。

 

箒は固く両手に持つ刀を握りしめた。

 

「すまない。待たせてしまった様だな」

 

「いや、別に構わないぜ」

 

箒の言葉に削板は笑って答える。

 

表情から、先ほどまでの箒と何かが変わったのだと分かる。

 

削板は律儀にこちらの会話が終わるまで何もしなかった。

 

まあ二人とも高く飛び上がっていたので、手が出せなかっただけなのかもしれないが。

 

(足場が全くない空中戦には対応できないのか?)

 

ラウラは推測をたてて戦術を考える。

 

「箒、空から砲撃しろ」

 

「分かった」

 

箒は高く飛び上がると、地上にいる削ぎ板めがけてレーザーを撃ちこんでいく。

 

さっきと同じようにレーザーは掻き消されたり、挙句の果てに手で弾き飛ばしたりしているが、削板はその場に縫いとめられ、動けなくなる。

 

(このまま砲撃を続ければ押し勝てるか?)

 

箒がそう考えたその瞬間。

 

「超すごいパーンチ!」

 

凄まじい衝撃が削板から発せられ、レーザーを吹き飛ばしながら箒めがけて襲い掛かった。

 

「なっ!!?」

 

箒は慌てて回避行動をとる。

 

(あの距離から攻撃できるのか!?そもそも衝撃波でレーザーを打ち消すなんて訳が分からんぞ!!)

 

だが大振りの攻撃のおかげで削板に隙が出来た。

 

「うおっっ!?」

 

削板は後ろからラウラに体を締め上げられ拘束され、体にちぎれたワイヤーブレードが巻きつく。

 

だがこれではさっきと一緒。ISの力をもってしても削板相手では力負けすることはラウラも分かっているはずだ。

 

だが違う。ラウラは自らの体ごと削板をワイヤーブレードで雁字搦めに巻き付け、その先端をアスファルトの地面に深々と突き刺した。

 

無謀だ。力勝負では削板にちぎらされてしまうだけ。

 

実際、ラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンが軋むような嫌な音を発していた。

 

「一瞬でも動きを止めれば十分だ」

 

ラウラはニヤリと笑うと、右肩の大型レールカノンを無理やり削板の腹へと押し付ける。

 

「ゼロ距離からの砲撃なら、少しは効くだろ?」

 

多少無理な態勢だが、引き金を引くだけならできなくはない。ラウラは自分ごと削板をレールカノンで打ち抜いた。

 

「ぐおっ!!」

 

「くううっ!!」

 

ラウラもダメージをくらったが、削板の動きが止まった。

 

そして、まだ終わらない。

 

「箒!!」

 

「まかせろ!!」

 

ラウラは削板を拘束したまま、削板の範囲にだけ集中させてAIC(慣性停止結界)を起動させる。

 

展開装甲を使って攻撃力を底上げし、箒が雨月の斬撃で削板の首を斬りつける。

 

「はあっ!」

 

続け様に空裂の剣劇が削板の腹に叩きこまれる。

 

振りぬいた力はまるで流れるように止まることなく、繰り出す太刀筋が幾重にも斬撃を重ねていく。

 

二本の刀による連続攻撃。その攻撃は衰えることなく、むしろ速度を上げていった。

 

その剣速はかつてないほど速い。10を超え、20を超え、最高速度などとうに踏み超えて斬り込み続ける。

 

押し寄せる猛撃。一瞬で削板の体の複数個所に火花が舞っているようにすら見える。

 

首、腹、鳩尾、手首、股間、他にも様々な場所に容赦なく斬撃を加える。

 

人間なら急所と呼ぶべき場所、削板の弱点を探すかのように剣を振るう。

 

だがそれでも、一瞬でも手を緩めては危険だと本能が訴えていた。

 

ラウラが危険を冒してまで動きを止めている。その気持ちを裏切るわけにはいかない。

 

箒のIS赤椿は第四世代型のISだ。その機体性能は他のISより遥かに上回る。

 

そして赤椿の単一仕様能力、絢爛舞踏のエネルギー増幅能力によって常に最大出力での攻撃を可能にする。

 

雨月を握りしめた箒の突きが削板の顔面に叩きこまれた。

 

「ぐうっ!」

 

削板が苦悶の声を漏らし、よろめいた。

 

効いている!いける!今を逃せば勝機はない!

 

箒は雨月を手放し、空裂を構えて静止する。

 

それは居合のような構え。最後の一撃必殺の準備が整った。

 

「ラウラ!拘束を解け!」

 

箒はラウラに呼びかけると、ラウラも直ぐにその意味を察した。

 

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

 

拘束を解かれた削板に向けた最後の攻撃。箒自身がまるで一振りの刀になった様な感覚、全身全霊を込めた最強の一閃と化して撃ち放った。

 

真紅の残光を描き放たれる巨大な斬撃。

 

「ぐおおおっ!!」

 

極限まで高められた斬撃の威力に、削板が叫びを上げ大きく吹き飛び、地面に叩きつけられ動かなくなった。

 

そう、すなわちこれで、勝負あり。

 

「・・・・・やった、か」

 

「ああ、終わったな」

 

箒とラウラが安堵のため息をついた。

 

「全く、無理しすぎだぞラウラ」

 

「仕方がないだろう。ああでもしなければ勝てなかった。本当にこの街は化け物ぞろいだな」

 

あの恐ろしいまでの力。一人だけでは勝てなかっただろう。

 

「確かにな。あの男と同レベル以上の奴が何人もいるかもしれないと思うと、考えるだけで恐ろしい」

 

「こういう時日本では、今倒した奴が実は四天王の中でも最弱だった、とかいう展開だったか?」

 

「またおかしな知識を・・・・」

 

「まあ今考えていても仕方あるまい。追撃を受ける前に早くヨメを病院に連れて行くべきだろう」

 

「学園都市の病院に頼るのは危険じゃないか?」

 

「そうだな。一旦皆と合流し、学園都市から脱出した方がいいかもしれん。こうなった以上、ヨメの身が最優先だろう」

 

「そうだな。情けなく気絶して私たちに戦わせていたんだ。起きたら何を要求してやろうか」

 

ラウラと箒は戦場跡に背を向ける。

 

二人とも少なからず気を抜き、談笑しながら一夏の元に歩き出す。

 

「ラウラ?」

 

突然ラウラは動きを止め、背後に感じた気配にゆっくりと振り返った。

 

「・・・・・まさか」

 

ラウラの声に嫌な予感を感じ、箒もラウラの視線の先にあるものを見た。

 

手ごたえはあった。効いていないはずがない。

 

だから、信じたくはなかった。

 

「なん、だと・・・・」

 

箒の呟きが漏れる。

 

削板がふらつきながらも起き上っていた。

 

死んでいないにしても、気絶するか、しばらくは動けないだろうと思っていた。

 

だが・・・・

 

「まさか、無傷なのか?」

 

「本当に人間なのか疑いたくなってくる・・・・・」

 

体が汚れ、服が破けているだけで、削板自身には傷らしい傷が見られない。

 

だが無傷ではなかった。削板の開いた口から、一筋の血が流れていた。

 

学園都市ナンバーセブン削板軍覇に血を流させる。それは果たしてLEVEL5であっても何人が出来る事か。

 

ラウラは力なく構えをとる。箒も手に握る剣が震えていた。

 

二人とも体が限界を迎えていた。

 

ラウラは受けたダメージが大きすぎるし、箒は限界を超えて動き続けたせいで体ががたついている。

 

だがこんな所で負けを受け入れるつもりもない。

 

今戦えるのは自分達だけだ。

 

箒とラウラは力を振り絞って削板を見る。

 

「うん、っと」

 

削板は首をポキポキト回していた。

 

「・・・・・悪いな。正直なめてた」

 

削板の雰囲気が変わっていた。

 

うまく言葉に出来ないが、さっきまでとは何かが違うと感じられた。

 

「どうやら、俺はお前たちの事を道具に頼って弱い者虐めしている根性なしだって、勝手に決めつけてたみたいだ。駄目だな~。俺もまだまだ修行が足りねえや。だから、ここからは俺ももっと根性出していくぞ!」

 

次の瞬間、ラウラは地面に叩き伏せられていた。

 

「なっ!?」

 

箒は今起こった現象に目をむいて驚く。

 

油断はなかった。

 

万全とは言い難いが、何が起こっても対処できるように身構えていたはずだった。

 

だが、そもそも何が起こったのか分からず気づけばラウラが地面に打ち伏せられていた。

 

(さっきの女と同じ瞬間移動!?……いや、違う。まさか!)

 

まさに消失したとしか思えない現象。

 

だが違う。

 

削板は消えたわけではない。

 

ただ単純に凄まじく速かった。それだけだ。

 

(こい、つ・・・・・今まで手を抜いていたのか!?)

 

「ラウラ!大丈夫か!?」

 

箒の叫びに返答はない。

 

元々大きなダメージを負っていたラウラは、今の攻撃で戦闘不能となっていた。

 

いや、むしろ今まで動けていた方がおかしかったのだ。

 

ラウラが脱落し、箒は一人で削板の相手をすることになる。

 

ISの速度よりも遥に速い。だが対応策がないわけじゃない。

 

高速戦闘用に調整されたハイパーセンサーは、操縦者に対して詳細な情報を送るために感覚を鋭敏化させる。よってハイパーセンサー起動中は周りがスローモーションに感じる。

 

そのはずだった。

 

「っっ!!」

 

箒はなんとか避けることが出来た。

 

だが削板の動きが見えていた分けじゃなかった。削板が動き出す前に、全力で体を倒しただけだ。

 

人間なら誰しも動きに初動が生れる。それは削板であっても例外ではない。

 

箒やラウラは初動を読まれないよう動きを洗練させているが、削板にはそういったものはない。むしろ大仰な動作で初動を見切るのは難しくない。

 

(だけど、速すぎる!)

 

ただ単純に速いのだ。いくら初動を読めるとはいえ、動き出したその時には既に目の前から消えている。ハイパーセンサーの超感度をもってしても僅かな残影しか捕えられない。

 

箒は即座に空へと撤退し、体制を立て直そうとした。

だが、遅かった。

 

「なっ!!」

 

目の前に削板軍覇が迫ってきていた。

 

(まさか、跳びあがった!?)

 

驚きを無理やり押さえ込んで削板を見る。

 

「うおおおおおっ!」

 

箒は空裂を削板めがけて斬りつける。

 

悪あがきだろうと何だろうと、目の前の相手に気合いで負けてはいけないと思った。

 

「いい根性だ」

 

削板はニヤリと笑うと、真正面から素手で軽く箒の斬撃を受け止めた。

 

削板がゆっくり拳をあげる。

 

「すごいパーンチ」

 

次の瞬間、箒は自分が吹き飛び、地面に向かっていくのをスローモーションで感じていた。

 

箒は地面に叩きつけられ、削板も地面に着地する。

 

「大丈夫か?」

 

削板は倒れ伏す箒に声をかける。

 

「・・・・どういうつもりだ?」

 

「んっ?何がだ?」

 

「お前にとって私は敵だろう」

 

「ん~?まあ、あれだ!昨日の敵は今日の友って奴だ!お前たちが悪い奴にも見えないしな!」

 

「・・・・・・」

 

どこまで熱血思考なんだろう。

 

「お前らの事情は正直よく分からんが、安心しろ。俺が責任もってお前らを病院に連れて行く。だから今は休んでろ」

 

何故だろう。箒は削板の言葉をすんなり信じることが出来た。

 

拳を合わせたことで何かが伝わったのか?正直箒自身もよく分からなかった。

 

「しっかし今まで興味もなかったけど、改めて見てみるとISってかっこいいな!空飛ぶロボとか男のロマンだよな!なぁ、後で俺も乗ってみていいか?」

 

地面に倒れる箒に削板が声をかける。

 

「・・・・・ISは女にしか動かせん」

 

「大丈夫だ!根性さえあれば何とかなる!」

 

そんな分けないだろうと答えようとして、箒の意識が遠のく。

 

(この男なら本当に根性だけでISを動かしてしまいそうだな・・・・)

 

馬鹿らしい想像に苦笑してしまう。

 

(そうか。この男は無鉄砲な所が一夏と少し似ているのかもしれんな)

 

大切な幼馴染の安否。

 

(一夏・・・・・)

 

一夏の事を思いながら箒の意識は落ちていった。

 

 

 




あくまでありえないオマケなんで流してしまっても結構です。


とある根性の学園生活

根性「よっしゃー!ISを動かせたぜ!」

箒「冗談のつもりだったんだが・・・・」

何故かISを起動させることが出来た二人目の男性操縦者。

アレイスター「面白い。最大の原石をIS学園に編入させよう。私のプランの短縮の道具として役立つかもしれん」

何故かIS学園に編入することになった根性さん。

根性「今日から生徒会長になった削板軍覇だ!皆よろしくな!」

楯無「ええっ!?」

もはやどこからが能力でどこからがISの力なのかも分からなくなってきた根性さんは、
楯無不在の間に生徒会長の座を奪い取ってしまった。

だが、悲劇はここからだった。

根性「根性だしていくぞー!!」

全校生徒「「根性だしていくぞー!!」」

全世界から集まったIS学園の生徒達が根性に汚染されてしまった。

上条病、一夏病に続く根性病。かかった人全てが削板軍覇と同じ性格になる恐ろしい病気が世界に広まっていった。

無事だったのは上条病にかかった者たちと一夏病にかかったものたちだけ。

対抗するために上条病と一夏病が根性病を塗り替えた。

最終的に生き残れる病気は一つだけ。生き残った一人が世界を塗り替える。

生き残るのは一体誰だ!

つづかない


とある根性の学園生活

ぶっちゃけオマケは思い付きで書いただけですので深い設定とかありません。

でも世界中の人が根性になるって悪夢だなー




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