担い手も異世界から来るそうですよ?   作:吉井

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はい、続きです!


第十話 異変は既に…

 私達はあの後数時間話し合い、結局のところ偽名での参加と力のセーブを条件として、ギフトゲームに参加することとなった。

 

 そして夜は明け、今日ギフトゲーム『造物主達の決闘』の決勝戦が行われる。

 そして今はノーネームの主要メンバーに華蓮のことを話している最中だ。

 

「そんなっ!?華蓮、出られないの?!」

 

 そして白夜叉の言葉を聞き、案の定悲痛な声を上げたのは三毛猫を抱えた少女、春日部耀。

 今にも泣き出しそうな顔を見ていられなくて、私達は揃って彼女から目をそらした。

 

「何があったのですか?」

 

 それを見ていた黒ウサギが心配そうな様子で尋ねてきた。

 私が対応に困っていると、白夜叉が代わりに答えてくれた。

 

「すまない黒ウサギ…これだけはお主にも話すことはできん。ただ、華蓮のことは心配いらん。私達サウザンドアイズが守っておるでの。いざとなれば私もおる、だから大丈夫じゃ」

 

「……白夜叉様がそうおっしゃるのなら、大丈夫ですね」

 

 黒ウサギは白夜叉の言葉を聞くと、安心したのかホッと息を吐いた。

 私的にはまだ少し表情が固いと感じたけれど、余程白夜叉を信頼しているのか、黒ウサギはそれ以上詮索しなかった。

 

 だが問題は彼女だ。私が視線をそちらに向けると、案の定まだ暗い顔をしていた。

 春日部耀ーーー彼女は、白夜叉と黒ウサギが話している間、ずっと心ここに在らずといった様子だった。

 それもそのはず、耀は黒ウサギと違って白夜叉のことを知らなすぎる。それなのに完全に信頼できる道理はない。

 

 それを見た瞬間、私は何を言えばいいのかわからなくなってしまった。昨夜考えた、華蓮の分まで楽しんでとか、君が落ち込んでいたら華蓮が悲しむよといった台詞(セリフ)がどうも安っぽく感じてしまった。

 

 今の彼女に贈る言葉には相応しくない、彼女には本当のことを話して納得してもらうしかないんじゃないかと、そう思った。

 白夜叉ゴメンと心の中で謝ると、私は意を決して口を開いた。

 

「皆、聞いて欲しい事があります。華蓮のことです」

 

「なっ!?お主、何のつもりじゃ!」

 

 やはり白夜叉が口を挟んできたが無視、私は話を続ける。

 

「華蓮は昨夜、一人で街を歩いていたところを襲われました。幸いにも命に別条はありませんでしたが、封印が壊れて今は昏睡状態となっています」

 

 隣で白夜叉の呆れたようなため息が聞こえる。

 全くその通りだとは思う。話したところで余計な心配をかけるだけだし、手伝うと言い出しても今の彼女たちがあの男に勝てるとは到底思えない。可能性があるとすれば、私のゲームの謎を解いたこの男ぐらいだろう。

 

 だけど人の気持ちがままならないことはずっと見てきた。その経験があるからだろうか、私は自分でも馬鹿らしいと思う行動に出ているのだろう。

 

「一つ質問だ…っと、その前にお前の名前を教えてくれ」

 

「ああ、まだ名乗ってなかったね。私はレイランだ、華蓮とは同僚の関係にある。よろしく」

 

 例の少年が質問してきたので、私はあらかじめ決めておいた偽名と身分を話した。

 十六夜は、分かったと言うと改めて質問し直した。

 

「レイランの話だと、華蓮の封印が壊れたんだよな?封印していた神獣が逃げたりしなかったのか?」

 

「治療に当たっている同士が言うには、封印にも神獣にも異常はなかったそうです。おそらく襲撃者が直して行ったのかと、意図は不明ですが…」

 

「神獣に暴れられると迷惑なのか…それとも別の意図があるのか……どちらにしても警戒しとかないとな」

 

 私は、そう言って思案に暮れる十六夜から意識を切り上げ、話を再開した。

 

「その後、白夜叉様に発見されサウザンドアイズに保護されました。これが昨夜、華蓮の身に起きた全てです」

 

 それを最後に私は話し終わった。すると、

 

「話してくれたのには素直に感謝するぜ。それで?何か意図があってその話をしたんだろ?」

 

 十六夜がそんなことを言ってきた。

 

「意図なんでありませんよ、逆廻さん。御友人の状態を報告するのは当然ではないですか」

 

「ハッ、とぼけんなよ。お前が話出した時に白夜叉が狼狽えていたのは、あの話が白夜叉の予期していなかったものだってことじゃないのか?つまりお前は自分の意思で、何かしらの意図があってその話を俺たちにしたって事だ」

 

「…………わお」

 

 見事に看破された。

 どうしよう、と白夜叉をチラリと横目で見てみるがまさかのスルー。確かに勝手なことしたけど最低限のフォローも無しとか白状にもほどがあるよ!

 

 まさか勝手な行動のつけがこんな形で回ってくるとは思ってなかった私は珍しく動揺してしまった。そして十六夜がそれを見逃すはずもなく、

 

「これは俺の推測だが、襲撃者は華蓮の家の関係者じゃないのか?……まあ、そこらは適当だけどな。で、そいつは再び華蓮を襲う可能性がある、だからいざとなれば守って欲しい。そういうことだろ?」

 

 今日何度目になるだろうか、再び十六夜に看破されてしまった。

 

 しかも偶然とはいえ襲撃者のことまで当てるというおまけ付き。

 

「逆廻さんには驚かされてばかりですよ。その通りです。華蓮が襲われた時刻に、その通りだけ人が誰もいなかったことから、計画されたものだということが推測されます。改めてお願いします!魔王への警戒や対策で大変だとは思いますが、力を貸していただけないでしょうか!」

 

 そう言って私は頭を下げる。

 こんな風に頼み込んだのはいつぶりか、下手をすると数世紀はくだらないかもしれない。あっ、やべ、歳バレる。

 

 すぐに答えが返ってくるとは思ってない。魔王に加えて襲撃者にも備えるなんて、どのコミュニティでも難しい。

 このノーネームには将来有望な人材がいるけど、人員不足だ。

 

 華蓮に関する依頼だから断られはしないと思うけど、返答にはかなりの時間がかかるだろう……そう思っていた。

 

 だけど、返答は意外と早く返ってきた。

 全く意識してなかったところ、より正確に言うならば私の真後ろから。

 

 

「その心配はないよ。なんせ守る対象がここにいるんですから!」

 

 ………………はぁ?!

 

「あれ?どうしたの皆、そんな顔して。ああ〜いきなりの登場にビックリしてんのか!でも仕方ないんだよ、私もついさっき目が覚めたんだし、多分白夜叉にも連絡いってないと思うよ」

 

 どうして……さっきまで意識不明だったのに……

 

「それにしても私って、気ィ失ってばっかりだね。しかも今回みたいな最悪のタイミングで…でも大丈夫!完全復活…ではないけど……間に合ったよ!耀!!」

 

「華れ……!ん?」

 

 何故か疑問形になる耀。その疑問はすぐに解決された。

 私が振り向くと、そこには……

 

「ん?どうしたの?………あ、ああ〜これね!いや、これは私もよく分かんないんだけどさ。医者が言うには膨大な力に当てられた弊害らしいんだってさ!」

 

 サラサラした柔らかそうな毛で全身を覆われーーー

 

「まあでも今んところ異常ないし、大丈夫だよ!」

 

 頭に、どう見ても人のものではない耳を生やした華蓮がいた。

 

 




華蓮、まさかの猫化!!(虎です)
因みに作者はケモナーです。
猫がいいですね、最高。

〜追記〜
因みに毛の色は白銀。
触り心地はそのまんま猫をイメージしてください。
ではでは〜

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