………
最初に言っておきます。
今回、ストーリーはほとんど進みません。
やるならこのタイミングだろ!と思ってしまいまして……
では、どうぞ!
「ぅお〜い、生きてるか〜十六夜〜」
「おう、なんとかなぁ。だが……だめだ、体が動かねぇ」
ボロボロの地面に横たわるのは、同じくボロボロの華蓮と十六夜。
満身創痍の二人に契約書類が舞い落ちてきた。
【ギフトゲーム:月下の銀虎
リザルト:ドロー
引き分けのため、お互いに一回分の命令権が与えられます。使用の際にはこのギアスロールを提示してください。】
結果は引き分け。
お互いの全力をぶつけた結果、引き分けと判断されたようだ。
「……ああーいってぇ。おい華蓮、なんだあの一撃は?右腕すげー痛いんだが」
「ってか、そんなこと言ったら十六夜のもおかしい威力だったよ?これ絶対、右腕折れてるわ〜」
だがそんな事よりも、二人はこの戦いの余韻に浸っていたいようだった。結果などまるで眼中にないかのように、のんびり談笑している。
が、正直談笑してる場合ではない。
二人の戦いの余波によって、周辺の建築物に甚大な被害が出ていた。特にあの時計塔は、十六夜の蹴りによって上半分がなくなっていた。
そして和やかに談笑する二人の状態もひどかった。
まず華蓮は、長時間のギフト使用と限界突破により、所々の筋肉が断裂及び肉離れしていた。そして右腕は思ったとおり、最後の一撃の時に折れていた。幸いにもギフトによって治療可能な範囲だったため再生は可能だが、少なくとも一ヶ月は右腕を使えないだろう。
それは十六夜も同じ。十六夜が華蓮からまともに受けた攻撃は二回だけ。にも関わらず一回目の蹴りで肋骨、最後の一撃で右腕が折れていた。両方華蓮と同じく全治一ヶ月の怪我だ。
「ああ?引き分けだと?」
そこでやっと十六夜がギアスロールに気づいた。
結果を見た十六夜は引き分けという結果に納得いかないようで語気を荒くしていた。
「まあまあ十六夜、落ち着いて。引き分けって言われたんじゃ仕方ないよ。……それにお互いに命令権を得たんだし、いいんじゃない?」
「良くねぇ……まあ、いいか……強かったぜ、
「っ!……また十六夜は、そうやってサラッと言うんだね」
十六夜が華蓮の名前を呼んだ途端、華蓮は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
十六夜はそんな華蓮の反応にキョトンとする。が、そこは問題児筆頭、ニヤリと頬を吊り上げるとわざとらしく咳までして話だした。
「なに赤くなってんだ、
「っ!……いや、ないけど……」
華蓮がボソボソと反論するが、無視して行動する。
十六夜は痛む体を動かし、華蓮に近づいていく。
華蓮は逃げようともがくが、十六夜と違って筋肉が傷ついているため全然動けていない。
その間に華蓮のそばまで近づいた十六夜は、動けない華蓮の体を起こした。
(な、何をする気?!)
内心ビクビクしている華蓮。動けない今回ばかりは恐怖を感じていた。
そんな華蓮に対して、十六夜は彼らしくない優しく笑みを浮かべると、そっと顔を近づけて行った。
(ま、まさか……)
「ちょ、ちょっと…十六夜、近いよ…恥ずかしい……わ、私に…何かするの?」
「うん?……何を?」
意地悪な笑みを浮かべてそう返す十六夜。
キャラ崩壊も甚だしいが、今の華蓮にそこまで考える余裕はない。
「えっ、あの、だから……アレ、とかだよ」
「アレじゃあ、分からないぜ?ちゃんと言ってみな……」
もう十六夜の原型がない。誰だこいつ。
十六夜と華蓮の距離は近い。そんな超至近距離で話しかけられている華蓮に、冷静な判断などできなかった。
「だ、だからぁ……キ、キ…スとか……」
涙目になりながら華蓮がボソッと呟いたその言葉を聞いた十六夜は、過去一番の笑みを浮かべた。
「……ふーん、期待してるのか?」
「えっ!ええ!?き、期待なんて…してない……よ?」
「そうか?顔、真っ赤だぜ……華蓮」
甘い声を耳元で囁かれ、ゾクゾクと体を震わせる華蓮。
その反応を見た十六夜は、左手で華蓮の頬に触れるとゆっくりと顔を近づけ始めた。
「えっ、ちょっと…い、十六夜?!近い!近いって……」
「しゃべんな。……大人しくしてろ…悪いようにはしない……」
「ふわぁ…!」
もうすでに息がかかる距離、華蓮は顔を真っ赤にしながらも、覚悟を決めたのか目をつぶり顔を上げた。
そして、二人の距離が0に……
「華蓮……」
「うう……う、あれ?」
は、ならなかった。
十六夜の顔は確かに近いが、0ではなかった。
「熱はないみたいだな、華蓮」
「……はあ?」
十六夜は自分のおでこを華蓮のおでこにくっつけていた。
漫画などで時々見かける熱の計り方だ。
「えっ……あの、十六夜?」
「うん?どうした華蓮…顔、真っ赤だぞ?」
「えっ、だって…十六夜が……」
「俺が、何だって?」
ニヤリと十六夜は笑う。それこそイタズラを成功させた子供のように、邪気たっぷりに無邪気に笑った。
「えっ…えっ…キ…スは?」
「おいおい華蓮、俺は熱を計ろうとしただけだぜ?……もしかして…して欲しかったのか?」
そう言って十六夜は華蓮の顎に手をやると、クイッっと上を向かせた。
再び華蓮の心臓はバクバクと早鐘のようになり始める。
「あっ…えっと……ちょ、ちょっと…だけ……」
「……それじゃあ……する?」
そう言うと、十六夜は今度こそ華蓮の唇に顔を近づけ始めた。
華蓮ももう抵抗せず、二人の距離が今度こそ0にーーー
「なにをやってるんですか、お二人方!!!」
ーーーは、ならなかった。
二人が慌てて顔を上げると、そこには髪と顔を赤く染め上げた黒ウサギと、憲兵らしき男たちが数十人いた。
「貴様ら!大人し……」
「全く!いつまでも帰って来ませんから、心配して探しに来たというのに!!街で誰かが戦っていると聞いて、慌ててきたというのに!!お二人は何をやっているのですか?!!」
憲兵の言葉を遮る黒ウサギ、相当頭に血が上っているようだ。
そして、この状況について行けず呆然とする華蓮の代わりに十六夜が答えた。
「ちょっと華蓮とギフトゲームをしてた」
「なぜそのようなことに?!それで、どちらが勝ったのですか?」
「結果は引き分け、ドローだ」
十六夜が引き分けた……そのことに驚きを隠せない黒ウサギ。それでも今回ばかりは許さないらしく、素早く立ち直り十六夜に詰め寄った。
◇◇◇◇◇
それを華蓮はボンヤリと眺めていた。が、意識がハッキリしていくとともに、先ほどまでのやりとりを徐々に思い出していった。
(あぅ…恥ずかしい……黒ウサギ達に見られてたなんて……でも…もう少しで…十六夜と……)
華蓮は、未だ鳴り響く心臓の音を聴きながら考える。
その気持ちがどのようなものなのか、華蓮にとって十六夜がどんな存在なのか……それはまだ、華蓮自身理解してない。
それでも…今感じているドキドキは心地よい……そう感じた。
後悔はしていない(キリッ
はい、この作品は
十六夜×華蓮となります。
でも十六夜って恋愛しなさそう……からかって反応を見てるだけな気がする……
何とかして落とします、お楽しみに。
ご意見などありましたら、お願いします。