担い手も異世界から来るそうですよ?   作:吉井

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 おまたせしました~
 オリ展開ばっかりでお送りするこの小説ももうすぐ(やっと)1章が終わります。
 このままでは原作に追いつけない、ペース上げねば、といった強迫観念に侵されつつあります(笑)。
 では、どうぞ!


第十二話 事後処理

「う......ここは?」

 

 目が覚めた華蓮は見知らぬ天井に疑問を抱いた。てっきりノーネームの屋敷にいると思っていたのだが。

 

「おーやっと起きたか。おはようと言ったほうがいいかの?」

 

 そんなことを考えているといきなり後ろから声をかけられた。どうやら付き添ってくれた誰かがいたようだ。

 しかしいきなり話しかけられるというのは心臓に悪い。感謝はするがそれとこれとは話が別だ。

 文句を言おうと振り向いた瞬間、華蓮の表情が強張った。と、同時にもう一つの疑問も解消された。

 

「白夜叉?......ってことはサウザンドアイズなの?ここ」

 

 振り向いた先にいたのは白夜叉だった。ということはサウザンドアイズにいることで間違いないだろう。

 

(でもびっくりしたなぁ...まさか白夜叉が付き添ってるなんて......)

 

 あれだけのことをしたからいろいろ聞かれると思っていたが、まさか幹部クラスが来るとは思わなかった。

 いざとなったら倒してでも逃げようと思っていたが、正直勝てる気がしない。しかも体に力が入らないという最悪のコンディション。華蓮は内心すごく焦っていた。

 

「そう固くならんでもよい。別に拷問するわけでもない、ただお主の...いや朱雀(レイラ)が起こしたゲームの後始末をするだけじゃ」

 

「そうですか。そういえば私はどれくらい意識を失ってたんですか?」

 

「3日じゃ」

 

「3日?!ってあいつらは?黒ウサギたちはどうなりましたか?!」

 

 おもわず白夜叉に詰め寄ってしまう。白夜叉は華蓮を落ち着かせてから、あの後のことを話してくれた。

 

「私が知らせを受けたのは次の日のことじゃったからな、これは黒ウサギに聞いた話じゃ。お主が倒れてすぐにギフトゲームクリアの知らせと最終結果がプレイヤーに通達された。最終結果に書かれてあったのは参加プレイヤーの名前とコミュニティ名。つまりリストじゃな、じゃがこれで終わりならいいものを、ご丁寧なことにそのプレイヤーの現在の状態(・・・・・)まで書かれておった。......そしてそのあと黒ウサギ達は特に何事もなく拠点に戻ったということじゃ」

 

 華蓮は白夜叉の話を黙って真剣に聞いていた。家族として罪を一緒に背負うと決めたからには、無視できない話だ。

 そこまで話すと白夜叉は真面目な顔になり、華蓮をジッと見て話し始めた。

 

「さて、私的な話は終わりじゃ......今から『再生と業火の魔王』復活と、そのゲームのことを質問していく。ノーネーム所属、柊 華蓮(・ ・・)、偽りなくすべての問いに答えるのだぞ」

 

「はい」

 

 こうして長い取り調べが始まった。

 

 ◇◇◇

 

「まずは今回のゲームでの被害からだ。最終結果から参加プレイヤー総数は213人、その9割強が精神に異常をきたし日常生活に支障をきたしている。......情報に虚偽はないな?」

 

「はい、すべて真実です。私は朱雀と記憶を共有しているので、ゲーム中のことは把握していますので」

 

 その回答に白夜叉は眉をひそめた。

 

「記憶を共有?じゃがお主は呼び起こされるまで意識がなかったと聞いておるが」

 

「確かに意識はありませんでしたが今でははっきりと思い出すことができます。理由はわかりませんが......」

 

「ふむ。おそらく体を共有しているため脳に記憶されていたのだろう。次に『再生と業火の魔王』――朱雀のことだが」

 

「‼?」

 

 その話を始めた瞬間、華蓮の体がビクッっと震えるのを白夜叉は見逃さなかった。

 もちろん華蓮もレイラのことをもっと詳しく知りたいとは思っている。だがいざとなるとやはり恐ろしいのだ。

 

「......では少し昔話をするとしようかの。――昔、私がまだ魔王として活動していた時、箱庭は今ほど平和ではなかった。いつもどこかで大規模なギフトゲームが開催されていた。......そんなある日、箱庭の東西南北に異彩を放つ若手の魔王が現れた」

 

「それが朱雀なんだね......」

 

「そうだ。――奴らは実力的に4桁、一つのジャンルにおいて3桁クラスの実力者だった。新人がここまでの実力を持つことはまずないのだが、奴らは今までに見たことないギフトを持っていたのじゃ」

 

「その、ギフトって?」

 

 華蓮は白夜叉の言葉に疑問を抱いた。白夜叉がそこまで危険視するギフトが気になったからだ。

 

「うむ、お主も一度使ったはずじゃぞ。――――――あらゆる炎を創造し創り出すギフト『創炎(フレイム・クリエイト)』を」

 

「もしかしてクリアした時の?あの時はほとんど無意識だったからよくわからないよ」

 

「まあそれのことだ。しかもそのギフトは持っているだけで神格と同じ効果を持つ(・・・・・・・・・・)といった副産物があっての、奴らは数か月で下層のコミュニティをほとんど壊滅させたのじゃ」

 

「そう......で、それからどうなったの?」

 

 華蓮は恐る恐る聞いた。

 

「それからすぐ、それぞれの階層で魔王と階層支配者(フロアマスター)の全面戦争が勃発した。......結果からいえば魔王側が勝った。フロアマスターの所属するコミュニティは大きな打撃を受け、しばらく活動できないでいた」

 

「それじゃあ朱雀たちはどうやって負けたの?」

 

「......奴らの力は強大で4桁以下のコミュニティではほとんど勝ち目はなかった。じゃが奴らはやりすぎた。奴らを3桁クラスだと認めた上層のコミュニティが本気で討伐戦を仕掛けたのじゃ。......いくら3桁クラスといっても数が数じゃった。徐々に奴らは追い詰められ、やがて瀕死の重傷を負いこの箱庭から追放されたのじゃ」

 

「そんな......」 

 

 白夜叉の語った話に衝撃を隠せない華蓮。深呼吸をして無理に気を落ち着けると、白夜叉に問いかけた。それは華蓮が最も気になり知りたいことだった。

 

「で、でも朱雀たちは私の中にいるんでしょ?瀕死だったのにどうして?」

 

 この問いに白夜叉は初めて沈黙した。この事実を言っていいものか迷っているのだろう。

 

「......初めに言っておくが、お主にとってつらい話になるかもしれんぞ」

 

「はい、覚悟はできています」

 

 華蓮の覚悟を聞いた白夜叉は、数秒黙り込むと話し始めた。

 

「まず最初に謝っておく。お主が寝ている合間に体をちょっと調べさせてもらった。すまない」

 

「.........えっ?!ちょっと!人が寝ている間に何してるんですか!」

 

「いや、いかがわしいことなどしておらん。ただお主の造りをちょっと調べただけじゃ」

 

「造り...ですか?」

 

「うむ。そして調べた結果あることが分かった。......お主、胸にある痣は生まれつきか?」

 

「脱がしたんですか?!うう...そうです。物心ついた時からありました。それが何か?」

 

「うむ、それは封印術式の使用の時に生じる印じゃ。お主のギフト、『四神相応』は封印術式なのじゃ」

 

「封印術式......」

 

「ああ、しかもこれは今まで見た中でも高い威力を誇るものじゃ。基本としては人柱を使い、人体に四獣を封印しておる。このままでは普通の術式じゃが、これは極精密な力のコントロールにより、みごとな正方形となり、四獣自身の力で互いを相殺しあい封印していた。これは箱庭でもそうは見られんものじゃ」

 

「すごい......私にそんなものが」

 

 術式の凄さに呆ける華蓮。だがそんな彼女を白夜叉はしかりつけた。

 

 

「呆けておる場合ではないぞ!今までは4体いたからこそ均衡を保っていられたが、ゲームで朱雀を倒したことにより、力が弱り均衡が崩れようとしておる!そうなれば抱え込むことができなくなり、術式は破壊され奴らが復活する。そしてお主は運が良くて重症、最悪命を落とす。これはまず間違いない」

 

「なっ?!ど、どうすればいいんですか!」

 

 命の危機に恐怖し慌てる華蓮。そんな彼女を白夜叉は落ち着かせ、話し始めた。

 

「まぁ、すぐに破壊されるわけではない、いくらか時間はあるじゃろう。......これは最重要として、最期にお主の寿命についてじゃ」

 

「寿命?!」

 

 寿命がわかることに華蓮は驚いた。しかし白夜叉の次の言葉を聞いた瞬間、華蓮の表情が凍り付いた。

 

「寿命は大げさじゃったな。つまり生命エネルギーといったところじゃ。そして華蓮、お主の生命エネルギーはゲームの前にこの店に来た時より明らかに減っておった。それも通常では考えられない程な。しかも今この瞬間も少しずつじゃが減っておる。何もしていないにもかかわらずじゃ」

 

「えっと、それってどうゆうことですか?」

 

 華蓮はその事実に恐怖するも、何とか口を開き疑問を発した。

 そして帰ってきたのは華蓮の覚悟をへし折る内容だった。

 

「つまり、お主が朱雀たちの力を使うと、その分エネルギーを消費するということじゃ。しかも封印が弱くなったせいか、常時エネルギーが減っておる。このままでは死に至るじゃろう」

 

「じゃあ、やっぱり封印術式を何とかしないと‼」

 

「そうじゃ。......そしてここまでの話を聞いて、お主には3つの選択肢がある」

 

 白夜叉は3本の指を立てるといった。

 

「1つ目は、黒ウサギたちのいるノーネームに戻ること。2つ目は、このまま上層の神軍に殺されること。そして3つ目が私たちのコミュニティ、サウザンドアイズで封印術式をどうにかすること。まぁ黒ウサギたちの元でどうにかしても良いがの。......さて、どうする?」

 

 白夜叉の出した選択肢を聞き、おもわず1つ目を選びそうになるがすぐに取り消す。白夜叉の話から、上層は私たちを殺そうとすると思い至ったからだ。

 

(そんなのできない。ただでさえ黒ウサギ達は復興で大変なのに、私の問題を持っていくことなんてできない。それに上層に狙われたら、今の力じゃすぐに全滅しちゃう。......白夜叉、これは選択肢なんかじゃない。最初から1択だ)

 

「......わかった、決めたよ。私はサウザンドアイズに入る」

 

「うむ、お主が賢くて助かった。このことは私から黒ウサギ達に伝えておくからの。......おそらく、お主はしばらく離れて生活することになる。なにか伝言はあるかの?」

 

 その問いに、華蓮はしばらく考えたのち答えた。

 

「じゃあ黒ウサギとジンに『せっかく召喚してもらったのにごめんね』ってお願い。それとあの3人に『私がいなくても黒ウサギ達のことお願いね』って。そして最後にみんなに――――」

 

 そこで華蓮は不敵に笑うと。

 

 

「『私はいつまでもサウザンドアイズ(ここ)にいるつもりはない』ってお願い」

 

 

 白夜叉は一瞬きょとんとすると、高らかに笑い声をあげた。

 

「そうかそうか!ふふ、なるほど。よし!必ず伝える。お主は明日に備えてここでゆっくりしておるといい。明日からサウザンドアイズとしてバリバリ働いてもらうでの!」

 

 白夜叉はそういうと部屋から出ていった。残された華蓮は一人ぽつりとつぶやいた。

 

「まってて、みんな」

 

 

 

 

 

 柊華蓮、サウザンドアイズに所属

 




 サウザンドアイズでもいいじゃないか!
 批評等ございまいたらどんどんお願いします。
 ではまた。

朱雀の持つ反則級ギフト《創炎(フレイム・クリエイト)
あらゆる炎を生み出し操るギフト。それに制限はなく、それが炎ならば新たに性質を追加することが可能。持つものに神格と同等の効果を与える副作用がある。
白夜叉曰く、『朱雀たちは皆このようなギフトを持っていた』また、『一回一回、創り出したギフトの名前を言っていた』らしい。

朱雀の持つ先天性ギフト《灰被りの雛(アッシュドール)
灰から元々の物体を作り治すギフト。燃えてできた灰が全て残っていれば、あらゆるものを治すことが可能。だが治す際に、傷ついた時の記憶がなくなるというデメリットがある。

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