オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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現時点での退場者リスト
原作キャラ
フェイト
ヴィータ
スバル

名も無きオリジナルキャラ達
質量兵器運用小隊メンバー数名
猟犬達
犯罪者達


退場者はこれからさらに増加する予定です。特定のキャラがひどい目にあうのが嫌という方は、読むのをやめておいた方が懸命です。


第66話 会議

テーマ 思案

流れ フェイトが戦力として使用できなくなった事を残念に思いつつ、使用者の居なくなったバルディッシュをクラッキングして所有者を切り替える。

 

 

 さて……結局、フェイト・テスタロッサは戦力としての復帰はもはや不可能と言っていい。となれば彼女と交わした契約も無効となる。制限一切なしで戦えるのは、やりやすいといえばそうなのだが、やはり優秀な魔導師を相手にするとなると、同じく高位の魔導師を護衛に付けないと不安が残る。特にシグナム。アレの剣の腕はまさしく一流だ、正面から、という条件の中ではナンバーズでさえ勝てるかどうか怪しい。騎士ゼストはリミッターが解除された彼女を相手にしても勝てそうなほど優秀だが、下手をすれば死にかねないやつを戦力として運用するのは、自分が相手をするよりも不安だ。

 しかし、いざ戦うとなれば、絶対に誰かが彼女の相手をしなければならない。その時に誰を当てるべきか。

 

「それほど深く考える必要はないでしょう。敵の戦力はあなたのお陰でかなり下がっていますし、機動六課はもはやドクターの計画の障害とはなりません。どうにかなるでしょう」

 

 テーブルを挟んで反対側に座るウーノが言う。彼女はこの陣営においての参謀の役割を持つ者だ。今後のことを決めるのには、スカリエッティか彼女の判断を仰ぐべきであると判断し、手の開いているだろうウーノに頼んで対話の場を設けてもらった。

 

「相手を過小評価すると痛い目を見るぞ、ウーノ。魔導師三人が抜けた分は質量兵器を使う部隊を編成・合流して穴埋めしている。下手な魔導師より奴らのほうが質が悪い」

 

 質量兵器の特徴は、すべての使用者に平等な力を与えるということ。トリガーだけ引ければ、極端な話赤ん坊だろうと筋肉隆々とした大男だろうと殺すことが出来る。弾丸は種類にもよるが、おおよその場合音の速度を大きく上回る。それこそ二倍三倍に。ならば、戦闘機人の防御力を超える攻撃力を持った質量兵器を、一個中隊が標準装備とした場合どうなるか。

 練度にもよるが、それは間違いなく大きな脅威となる。

 

「全員が全員あなたほどの実力を持つのならそれは脅威でしょうが。そうではないのでしょう?」

「楽観的過ぎるし、私を過大評価しすぎだ。私は一兵士の域を超えない程度の能力しか無い。魔導師のように一人で戦況を変えるほどの力はない」

「それこそ過小評価でしょう。ロストロギアによる能力の強化を抜きにしても、あなたの能力は素晴らしいものです。設立したばかりの部隊を指揮し、魔導師でさえ手を焼いた犯罪者を皆殺しにし。戦闘機人であるチンクを正面から戦って捕縛し……」

「もうそれ以上は言わなくていい」

 

 何度も言われたことだ。そろそろ聞き飽きた。それを言われる度にすべて偶然が重なった事だと返しているのに、それでも飽きずに繰り返し賛辞を伝える。あまり褒められるとそれが油断となる可能性がある以上、迷惑以外の何物でもない。その全てに悪意がないのがまた悪質さに拍車をかけている。

 

「……まあ、その姿勢も強さの一つなのでしょう。賛辞を素直に受け入れず、自らを小さく見ることにより、慢心せず万全の準備をしてから敵を襲う」

「逆に言えば。準備をする時間を与えられずに襲われたら最悪何もできずに終わる」

 

 戦い。というよりも、私がするのは戦争だ。事前に出来る限りの準備を整え、万全の体制を敷いてから戦いに挑む。ただその場限りの力を、何も考えずに正面からぶつけ合うだけなら猿でもできる。それが悪いとは言わないが、それで勝てるのは力で劣る相手のみ。格上を相手にするにはやはりいくらかの対策をしなければならない。

 まあ、対策をする前に襲われてしまった事も一度や二度ではない。前だってそうだ。

 

「そういう時には妹たちを使ってください。そのために指揮権を与えているんですから」

 

 ……本当に今更だが、指揮権を与えられるというのは信用の証でもある。いつの間にか、その信頼を勝ち取るための成果は上げてしまっていた。特別優秀というわけではないはずなのに、なぜここまでの戦果を挙げられたのか自分でも不思議だ。おそらくは、単純に策が上手くいた事。それと相手の質量兵器に関する知識が薄かった事があげられるだろう。他にも要因はあったろうが、主なのはこの二つ。相手も対策を練ってきたら、途端にこちらが不利になる。

 

「彼女たちでは不安ですか?」

「もちろん不安だ」

 

 ナンバーズで戦闘向きの能力を持つメンバー。ウーノ・ドゥーエ・クアットロ・セインの四人以外なら一人二人欠けても問題ない。そして当然、それに劣る戦力しか無い上に、指揮官としても並み程度の実力しか無い私が欠けたところで一切の問題はない。スカリエッティからしても、既に解析の終わった私にリスクを犯してまで助けだす価値はないだろう。

 よって私はもう一度捕まってしまえば、二度と日の目を見ることはないだろう。妹が治ったとしてもその姿を見ることはできない。敵側からすれば、大きな被害を出している私はなんとしても捕まえたいだろうし。私の姿を見たら被害を一切無視して、ナンバーズには目もくれず私だけを狙ってくるかもしれない。普通ならば考えられないことだが、機動六課は良くも悪くも普通じゃない。それを思うと、戦力はいくらあっても不安だ。

 

「それならばいっそ、ここで全てが終わるまでジッとしていればいいじゃないですか。あなたは十分に働きましたし、許されないことではないですよ」

「私もできればそうしたいんだがな」

 

 果たしてそれをスカリエッティが許すかどうか。奴の戦力として働く、という条件と引き換えに妹を治療してもらうという契約をしているのだから、役割を放棄するのはどうかと思う。無論奴が許すのならば喜んで引きこもらせてもらうが。

 

「もちろん、そんなのは許さないよ。君にはまだまだ働いてもらう」

「ドクター……」

「ということだ」

 

 背後から話しかけてきたスカリエッティ。その言葉は、私が隠居することを許さないというものだった。やはり世の中はそれほど甘くないらしい。

 

「出来る限りの援助はするが、働かない者を手元に置いておくつもりはないよ」

「正論だ。しかし、いつまで無給でこんなに危ない仕事をさせるつもりだ」

 

 椅子を回転させてスカリエッティに向き直り、返事をする。成果はある程度出しているつもりだ。それこそ、人間一人の命を買うのには少々過分なほど。そろそろ、情報の更新がほしい。

 

「急いては事を仕損じるとも言う。まあ楽しみに待っていてくれたまえ」

「急げとは言うつもりはないが、必ず成功させろ。それがお前の仕事だ」

「もし失敗したら?」

「お前を殺して、私も殺されよう」

 

 スカリエッティを手にかけた時点で、私はナンバーズの誰かに殺される。しかしそれは問題ない。私は妹の治った姿が見たいという望みだけで生きているのだから、妹が治らないとわかれば生きる意味もない。契約違反の罰を与え、そして死ぬ。

 

「自分の死をそうも簡単に容認するとはね。狂ってる」

「お互い様だろう……さて、役者がそろったことだし。会議の続きをしよう」

 

 もう一度椅子を回して、またテーブルに向き合う。スカリエッティの計画の最終段階。作戦の大筋はスカリエッティとウーノの二人に決めてもらい、私はそれが実行可能かどうかを様々な可能性を考慮して、実行可能ならば細かい戦力の割り振りをシミュレートし、決めていく。私はそのためだけにここに居る。

 

「そうだね。とは言っても、計画に大きな変更はない。要点はアインヘリアルの破壊。聖王の器を奪取。地上本部の無力化。この3つ。これだけだが、どれかが失敗すれば終わりだ」

「それで、どうする」

「まず戦力を二班に分ける。アインヘリアルを派手に壊して注意を引き付ける班、時間差で手の空いた機動六課に襲撃を掛け、器を奪う班。スピードが重要になるから、細かい細工はせずに正面から突っ込んで奪っていくべきだろう。異論は?」

「私はドクターの作戦が上手くいくよう、全力でサポートするのみです」

「私からは一つだけ。騒ぎを起こしたかといって必ずそっちに人が行くわけじゃないだろう。多少注意は向くだろうが、他にも方法はあるだろう」

 

 拉致するだけなら正面突破よりももっとリスクなく、静かにやる方法がいくつもある。戦力を正面からぶつけるのは、おそらく機動六課を潰したいからなのだろうが、それも拉致のついでに静かにやれる。主要な柱に爆弾を仕掛けて起爆すればいい。セインの能力なら柱の内部に直接仕掛けられるから解除される恐れもない。

 

「隠密行動が得意な者が今手元に居ないから正面からの方が……そういえば君が居たね」

「私は表立っての戦闘よりそっちの方が得意なんだがな」

 

 今までは何故か得意分野ではない戦闘ばかり任されていたが。敵地への侵入、重要人物の拉致または暗殺、敵拠点の破壊。そのどれもが、私の本領といえる分野だ。慢心するわけではないが、今の機動六課は質量兵器運用小隊という異物が混ざり、馴染んでいない状態であり、そういった状態の組織に潜り込むのは、とても容易い。

 

「では、プランを少しだけ変更しようか。必要な物は」

「セインとスタンガンと爆薬5キロ」

「随分と控えめだね」

「潜入、目標確保、脱出の三段階」

 

 時間さえあれば施設をまるごと潰す位訳ないのだが、メインは拉致。そして時間のないタイムアタック。柱を一本折るのがせいぜいだろう。しかし、爆発の混乱に紛れて逃げるには丁度いい。一本爆破したらまた他のも探すだろうし、それだけ逃げる時間を稼げる。

 

「ついでに六課の隊舎も木っ端微塵にしてくれると嬉しいんですけどね。後が楽になります」

「欲張るな」

 

 さすがに拉致と発破解体の両方は無理だ。拉致をするだけでもかなりのリスクがあるのに、さらに爆破の用意までしていたらバレるにきまっている。敵地のど真ん中で身バレなんて、冗談でも笑えない事態は避けたい。二兎を追う者は一兎をも得ずという諺もあるのだし、二兎を追って両方共逃すよりかは確実に得られる一兎を負うべきだ。

 

「無理かい?」

「無理だ。そうまでして壊したいなら拉致して爆破して混乱してるところに、ガジェットを遠隔召喚してミサイルの雨を降らせればいい。もちろん私が脱出した後にな」

 

 ただし、あの規模の施設を破壊しようとすればさっき言ったとおりミサイルを大量に撃ち込まないといけない。つまりそれだけのガジェットを出撃させる必要がある。機動六課には、広域殲滅魔法の使い手が二名と強力な竜召喚士が一名居るのだから、多くが撃破されることになるだろう。

 

「ならその案でいこう。それならば、万が一にも器を壊してしまうこともないだろうし」

 

 予定では順序が逆になるはずだったからね、とほざくスカリエッティ。拉致するのに殺しては意味が無いだろうに、なんでそんなに派手なやり方をするのか。

 

「……ああ、そうだ。今になってからなんだけども、中将からの伝言を忘れていたよ。『やりすぎだ』とさ」

「今さらだな……そういえばお前は中将とつながってたはずだが。今回の作戦は伝えてあるのか?」

 

 管理局への……海と空には限定せず、つながっているはずの陸にさえ宣戦布告となるものだ。中将が知れば確実に反対。いや、妨害……拘束しそうなものだが、伝言がそれだけならおそらく。

 

「うん、伝えてないが。それがどうかしたかね?」

「……いや。もういい」

 

 やることは決まった。あとはプラン通り進めるだけ。私は私のやるべきことをやる。残る段階は本当に少し。あと少しで、孤独の苦しみからも開放される。

 

「次の仕事が終わったら、こういう仕事からも引退したいな」

 

 そして残りの人生を、妹と共にゆっくりと過ごす。それはきっと、私の生きてきた半生のどの時間よりも素晴らしい物になるだろう。

 

「ドクターの計画が成功すればそれも可能でしょう。そのためにも、お互い頑張りましょう」

「ああ、必ず成功させる」

「士気は上々か。頼もしい限りだよ。では、私も自分の仕事に戻るとしよう。君たちも、準備は怠らないようにね」

 

 その言葉を最後に、それぞれ立ち上がり、自分の準備のためにバラバラに動き出す。これが終われば、私は昔のエリーを取り戻せる。あの事件の前の、誰よりも愛おしく、誰よりも大事な妹を。

 いつも以上に気を引き締めてかからなければ。今回ばかりは、どれほど些細なミスであっても許されない。

 

「もうすぐだから……あと少しだけ待っててくれ。エリー」 




次話から動きが以前よりもさらに激しくなります。物語もいよいよ大詰め。駆け足気味で進めれば、20話以内には終わるかと。

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