オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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今回、非常に短くて投稿しようかどうか迷ったのですが。これ以上増量もできないので思い切って投稿しました。


第26話 処分

最高の気分ではあるが、これから行く場所はヘラヘラ、あるいはニヤニヤとした軽い顔で在席していい場所ではない。

緩みかけて居た顔を叩いて引き締め、いつも通りの無感情な顔を作る。気分も復讐の余韻から抜け出し、できるだけ平静に近い状態にして、重苦しい扉を開く。

 

扉の先には左右と正面に長い机があり、その机に式典ではよく見る偉いさんが何人か座っている。その中にはレジアス中将の姿もある。

 

その人達の視線の集まる、部屋の中央へと私は進む。

 

「ハンク・オズワルド准尉。これより君に対する査問を執り行う。なぜ呼ばれたかは把握して居るかね?」

 

正面の、一段高い所にある机に座る老人から、低くよく通る声が発される。中将からは尋問と聞いていたが……まあ同じ事か。

 

「把握しております」

「ならば、話を進めよう。君は本日12時15分、逃走中の犯罪者を殺害した。これに間違いはないかね?」

「はい」

 

余計な事は言わない。返事だけしてひとまずは様子を見て、それから対応を決めよう。

 

「書類によると、警告の後に威嚇射撃をし、その後に砲撃を受けヘリの武装が爆発。不時着したそうだな」

「はい」

「不時着するよりも早く地面に降り、犯罪者を殺害したと報告が入っている。君はEランクの魔導師で空を飛ぶ手段を有していないはずだが、一体どうやって着地したのかね? もしも空を飛べるのなら、書類偽造で君を別件で処分しなければならないが」

「私の所有するロストロギアを棒のように伸ばし、それを伝って降りました」

 

つまらない質問をする。時間を無駄に使わせて何が楽しいのやら。

 

「現場にはSSランクに匹敵する魔力を使った痕跡があったが、君の保有魔力はEランクのはずだろう」

「感情を魔力に変換するという、ロストロギアの効果の一つです。質問をするなら、資料に目を通してからにしていただきたい」

「……貴様、私が誰かわかっていて口答えするのか!」

「存じておりますが。何か先の発言で不適切なところがありましたか、レジアス中将」

 

顔を茹でたエビのように赤くして騒ぐ空の大将は無視して、レジアス中将に助けを求める。階級が上の相手に真っ向から喧嘩を挑むなんて馬鹿な真似はしない。何をされるかわかったものじゃない。

 

「不適切なところは一つとして見当たらんな。質問をするなら中身のあるものにしていただきたいのは、私も同じだ」

 

珍しく中将が笑っている。自分の嫌いな相手を馬鹿にできるのがうれしくて堪らない、そんな表情だ。

 

「では今度は私から准尉に質問だ。一人の犯罪者の遺体が過度に損傷していたが、何か彼らに恨みでもあったのかね?」

 

今度は海の大将。

「民間人を轢き殺してまで逃げた。部下に重傷を負わされた。彼らが私の家族を殺した犯罪者だった。そういった事情から、一人は多少痛めつけてから殺害しました」

「つまり、痛めつけたのは私情からの行動だったと」

「肯定です」

「殺害した事に問題はないが、それは少し問題だな。気持ちはわからなくもないが、管理局員でなくとも仕事に私情を持ち込むなど以ての外だ。それはわかるな?」

「はい」

「だが、私も家族を殺した犯罪者を目前にして自分を抑えられる自信はない。よって、私は目をつぶりたいと思う。他の皆様はどうするかね?」

 

……単純に私を許すのではなく、中将に恩を売って操り人形にしようという意図が丸見えだ。これは少し露骨すぎるだろう。

 

「結果に問題がないなら、処分する必要もないだろう。だが、問題がないわけではない。貴様は部下を一名死なせ、もう一人は未だ意識不明。おまけにヘリは再利用不可だ。この損失は大きい。この責任をどう取る? 最終的に判断を下すのは我々だが、希望を一応聞いておこう」

 

海が露骨と言ったが、陸もなかなかだ。恩を売られてたまるものかと、掌を返して自らの首を切れと言って来た。さすが中将、やり口がえげつない。

 

「私の辞職をもって、事の償いとさせていただきたい」

「辞職か。貴様の部隊はどうする」

「残している仕事を終わらせてから部下に隊長の任を譲り、後を全て任せます」

 

隊長の椅子に座らせるのは、四号でいいか。奴の事はよく知らないが、感情に流されて行動する事は多分ないだろう。それに、魔導師をトップに置いた方が民間の受けはいい。

問題は辞めた後にもある。私は管理局の裏側に長く勤め過ぎた。そのせいで知らなくていい事、知っていてはならない事、とてもじゃないが公表できないような事を山ほど知っている。私はずっとそういう人間を始末してきたが、今度は始末される側に回る事になる。せっかくスカリエッティが妹を治してくれると言っているのだから、できれば見届けてから死にたい……が、管理局が本気で殺しにくれば私にはどうしようもない。そうなったら諦めよう。

 

「私は准尉の意見に賛成だ。二人とも、どうだ?」

「反対する理由はないな」

「同じく」

「では、ハンク・オズワルド准尉。後日残す職務を終えてから、速やかに辞表を提出するように。

 

……結局予想通りの結果になったか。まあ死ぬ事になっても最大の目的である復讐は果たせたのだし、良しとしよう。

 

 

 

 


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