オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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第9話

 

トラックの窓から見える、今日からの仕事先である機動六課の隊舎。間近で見ると実にでかい。昨日まで自分の居たプレハブと比べれば月とスッポンというほどだ。腹立たしいが、この機動六課で今日から働かねばならない。

胃の痛くなる日々が続きそうだ。トラックが完全に停車すると、隊舎玄関からこの課のトップである八神二佐と、その取り巻き3名と1匹が、制服に身を包んで出迎えてくれた。

 

 自分もシートベルトを外し、外に出る。続いてあとの四名も降りてきて、私の後ろに横一列に整列する。

 

「質量兵器運用第一小隊、オズワルド准尉。ただいま召喚に応じ参りました。本日より、我が部隊は貴官の指揮下に入ります」

「ようこそ機動六課へ。あんたら全員、歓迎するわ」

 

 白々しい事を言う。顔は笑顔で取り繕っても、声に歓迎はしないと言うメッセージがこれでもかというほど込められている。先に手柄を立てられたのがそれほど妬ましかったのだろうか。

 

「ところで、一人除いて全員魔導師やないって聞いたけど、大丈夫なん?」

「本部隊の設立の名目は、非魔導師の有効戦力化であります。非魔導師が主戦力となっております。そしてこの編成で実戦をし、戦果を挙げております。それでも戦力として不安でしょうか」

 

 役に立つのか? とか人殺しをするのか? とか、そういうのはよく聞かれる話だ。もう聞き飽きた。地球では全てのほぼ軍人が魔法も使わず、質量兵器で殺し合いをしているのに、戦闘で使えない訳がない。心配されているわけも無いので、単に嫌がらせだろう。

 

「そういうわけやないんや」

 

 取り繕ったような回答。いきなり士気を下げる事を言ってくれる。喧嘩を売っているのだろうか。そうなのだろう、ならば買ってやろうじゃないか。

 

「失礼ながら、こちらを信用していただけないのなら、私達も貴官の部隊を信用出来ません。信用出来ない相手に背中は任せられません」

「せやから、信用するためにまずは模擬戦をして実力を見せてもらいたいんやけど」

「そちらのエース相手だと我々は手も足も出ませんが」

 

 恥をかかせるのが目的なら帰らせてもらおう。

 

「安心してくれ。模擬戦の相手は新人だ」

 

 赤い髪の女……確か、八神シグナム。が前に出てきて言う。新人が相手なら別に問題無いだろう。歳が違い、実戦経験があるだけで、こちらの部隊も訓練を始めたばかりの新人共だ。一人はそれなりに慣れているようだが、うちの部隊にとっての新人には変わりない。

 

 最初から最悪の第一印象だが、空気が合わなくとも予算だけ回してもらえればそれでいい。もとよりそれだけが目的なのだし。

 

「というわけで、お願いできんかな。まともに戦って、どれだけの戦力になるか見ときたい」

「まあ、構いませんが……禁止事項はありますか」

「部隊員の殺害。または再起不能になるほどの重傷を負わせる。これされ守ってもらえれば好きにやってくれてええ。ペイント弾とそれを撃つための銃も用意しとるから、それを使ってな」

 

 少なくとも狙撃用のペイント弾は用意されてないだろう。ペイント弾はおそらくガス発射式。弾速も射程も精度も実弾に劣る。ということは近寄って撃つしかないわけで、リスクは大きくなるか。死角から襲撃しろと教えてはいるものの、それを実践できるかはわからない。高所で観察しつつ指揮をとるのが一番いいか。

 

「了解しました。もしもそうなった場合はどうなるのしょう」

「少なくとも始末書では済まされんな。他には」

「開始時刻はいつでしょう」

「いつでも。早い方がうれしいけどな」

 

 武器の準備に時間はさほどかからないが、戦場の地形を把握して作戦を立てないときっと負ける。負けてどうなると言う事もないだろうが、やるからには勝った方が気分がいい。

 

「すぐでも問題ありません。模擬戦場の地図はありますか」

 

 地形がわかれば作戦も立てやすいし、袋小路に迷い込むこともない。地の利

 

「部屋にあるけん取って来るわ。それじゃシグナム、後は頼んだで」

「わかりました。では、私についてこい。訓練場まで案内する」

 

 階級ではなく呼び捨て。やけに親しいようだが、そういえば家族だったか。髪の色からして血は……どうなんだろう。ハラオウン家は緑の髪から黒い髪だし。名前は両親の国籍がそれぞれ違えばおかしくもない。深いことは考えないようにしよう。時間の無駄だ。


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