過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第72話

***第72話***

 

「それが聖王戦争の‥‥‥成る程、こうして聞くと、聖王教会が最近主張している説も理解出来ますわね」

 

ヴィクターが神妙な表情で頷く。アインハルトが話したクラウスの記憶。敢えて一切口を挟まなかったアリシアにチラリと視線を向けつつ。

因みに、聖王教会が最近主張、と言ってもここ数年の話。言う間でも無くそれは『聖王オリヴィエと覇王クラウスは共にあった』という内容のもの。当然ながら、アリシアの話を元に聖王教会が主張し出した事だ。

 

ヴィクターが「聖王陛‥‥‥アリシアさん?」と、アインハルトの話の補足を求めてくる。アリシアは表面的には笑みを作る。

 

「ええ。間違い有りませんよ。アインハルトの話した通りです」

 

内心は、穏やかではなかった。アインハルトが当時の事を詳しく話せば、アリシアだって当然思い出してしまう。否応無しに、想いが甦ってくる。当時の、やむを得なかったとは言えクラウスやエレミア、クロ達と永遠に離れなくてはならなかった辛さ。それに何よりも、愛するクラウスと別れなくてはならなかった、五体を引き裂かれるような心の痛みを。

 

「‥‥‥オリヴィエ?」

 

そんなアリシアに気付いたようで、イクスが声を掛け心配そうに見つめてくる。

 

「大丈夫ですよ、イクス。私なら、大丈夫」

 

改めて笑顔を作り、アリシアは「そう‥‥‥ですか?」とまだ心配してくれているイクスに笑い返す。

 

「ええ、大丈夫。もう遠い過去の事です」

 

「‥‥‥そうでしょうか?少なくとも、オリヴィエにとっては、ついこの前の出来事のように感じられるのでは?」

 

イクスの言葉は的を得ていた。アリシアの瞳が曇る。アリシアからすれば、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトとしての死を迎えてからアリシア・テスタロッサとして生まれ変わり記憶を取り戻す迄、ほんの数年に感じられる。遠い歴史上の出来事ではあるのだが、そんな感じは微塵もない。オリヴィエとしての記憶が戻ってからもクラウスの事は忘れた事はないし、あの時の最後の別れの場面も昨日の事のように脳裏に焼き付いている。

 

「私は‥‥‥」

 

言葉に詰まってしまったアリシア。イクスが左手を握ってきて、悲しそうな眼差しを向けてくる。

 

「私は少なくとも、貴女の事を親友だと思っています。ですからオリヴィエ‥‥‥私では頼りないかも知れませんが、辛いときは言ってください。一緒に悩む事くらいなら出来ます。それで少しでもオリヴィエの気持ちが明るくなれるのなら、幾らでも付き合いますから」

 

アリシアはハッとして顔をあげる。『何でも付き合うよ。ヴィヴィ様の気持ちが明るくなる為ならね』という、何時だったか言われた遠い記憶の彼方のエレミアの言葉と、今のイクスが重なる。

 

「‥‥‥ええ。ありがとうイクス。私も、貴女の事を大切な親友だと思っています。それに、頼りにもしていますよ」

 

嘗ての親友、エレミアの事を思い出しながら、アリシアは微笑む。

 

***

 

そんな二人の様子を、少し離れ座って見ていたアインハルト。仲睦まじく見えるアリシアとイクスの姿に、思わず視線を外す。

 

「ハルにゃん?」

 

暫くボーッとしていたアインハルトだったが、ジークに呼ばれている事に気付き、我に返る。

 

「えっ?あっ、あの‥‥‥」

 

「ホラ、もうみんな移動しとるし、ウチらも行こう?な?」

 

ジークに手を引かれ立ち上がる。いつの間に移動したのか、周りには誰もいない。

 

「例の手記、古代ベルカ関連の辺りにあるらしいんよ」

 

「手記、ですか」

 

過去にコロナが検索中に『エレミア』というワードをたまたま見付けた事があるらしい。

 

「アリシアちゃんも『エレミアは日記をつけていたから、多分ある筈』って言うとったし」

 

「そう‥‥‥ですか」

 

俯いたままのアインハルト。ジークがその手を、振り向かずに引きながら二人は書庫内へと向かう。

 

「あのな?」

 

「はい?」

 

不意に、ジークが話し掛けてくる。その背を見上げたアインハルトに、ジークは静かに、自らに言い聞かせるように話す。

 

「物心付いた時には、もうエレミアの力があった。今でも制御できへん力や。当時はもっと辛かった。どうしてこんな呪われた力があるんか、ウチは生きとったら駄目な人間なんか、ってずっと思ってた。せやけどな、ヴィクターに会って、みんなと会って。それから、イクス陛下、アリシアちゃんやハルにゃん、ヴィヴィちゃん達と会って‥‥‥」

 

ジークが振り向く。呆然とするアインハルトに、笑顔を向ける。

 

「ウチも『向かい合わなきゃ』って思ったんよ。自分の力と。エレミアの血と、な?」

 

少し照れ臭そうにして、前を向き直したジーク。アインハルトは何も言えず、その背中を見つめていた。

 

***

 

「それじゃ、サクッと捜索しちゃいましょー!」

 

ヴィヴィオの言葉と同時に動き出す一行。アリシアはそのままジークと捜索に行くアインハルトの後ろ姿を見つめる。

 

「心配ですか?」

 

「はい、少し」

 

一緒の行動となったイクスにその顔を覗き込まれながら聞かれて、苦笑いを見せる。

 

「大丈夫ですよ。アインハルトならきっと。過去は過去です。大切なのは、未来に向かう事ですから。きっと彼女も分かる時が来ます」

 

「まるで歳の離れたお姉さんみたいですよ?」

 

今の心境を誤魔化すようにクスッと笑い、茶化してみせる。イクスもそれが分かっているらしく「生まれてから今に至るまでの年齢的には、お姉さんですよ?」と答えて見せた。

 

「そうですね。イクスは身体的には私達と同じでも、実年齢は数百‥‥‥」

 

「オリヴィエ?」

 

今度はプクッと頬を膨らませるイクス。アリシアは思わず吹き出す。

 

「クスクスッ。冗談です。それを言ったら、私だって中身は大人、って事になりますし」

 

「私は眠りに就いていたので、中身だって子供ですよ?」

 

今度はイクスがからかう。「もーうっ」と形だけ拗ねて見せて、アリシアはイクスの手を引き書庫の奥へと進んでいく。

 

***

 

「あの、ヴィヴィオさん?」

 

「どうしたんですか?」

 

別の場所で探していたミウラとヴィヴィオ。ミウラの方が先に小さな異変に気が付いたようだ。

 

「皆さんは‥‥‥何処に行ったんでしょうか?バラバラに探しているとは言え、幾らなんでも‥‥‥」

 

「そう言えば‥‥‥変ですね?」

 

言われてヴィヴィオも首を傾げる。あちこちで探しているとは言っても、周りに気配が無さすぎる。まるでみんな消えてしまったかのように。

 

「うーん‥‥‥連絡とってみましょうか」

 

ヴィヴィオはモニターを開いて、コロナやリオ、アインハルトを呼び出す。が、繋がる気配はない。

 

「捜索に夢中で気が付かないのかなあ?‥‥‥あ、お姉ちゃんからだ」

 

アリシアからの通信が入り、そちらを開く。モニターの向こうにはアリシア、それと不安そうな表情のイクスが映っている。

 

《ヴィヴィ、変だよ。みんなの姿が見当たらない‥‥‥ってヴィヴィ、ミウラちゃんは?》

 

「え?ミウラさんなら後ろに‥‥‥あれ?」

 

言われてヴィヴィオが振り返ると、つい先程まで居たミウラの姿が無い。慌ててモニターに視線を戻すと、声を張るアリシアの姿。

 

《周りを警戒して!ヴィヴィ、私が行くまで動いちゃ駄目だよ!》

 

「うっ、うん!」

 

検索に使っていたサーチャーを戻し、周辺警戒に充てる。余りこういった使い方はしたことが無いが、なのはに一応教わっていたのが幸いしている。

 

(何‥‥‥何なの‥‥‥?)

 

額から冷や汗を流し、周辺を見渡す。本棚の数々に阻まれて、視界はかなり制限されている。

 

『タ‥‥‥チ‥‥‥ヴィ‥‥オ』

 

何処かで声が微かに聞こえ、目の前に巨大な何かが覆い被さる。「‥‥‥え?」という声を残し、ヴィヴィオの意識は其処で途切れた。

 

***

 

「オリヴィエ!」

 

「イクスは此処で!絶対に動かないでください!」

 

イクスに古代ベルカのシールドを張り、一直線に飛んで行くアリシア。その視界に映っているのは、大きな何かがヴィヴィオを飲み込もうとしている姿。

 

(魔術‥‥‥クロに間違いない‥‥‥間に合って!)

 

 




新年最初の話です。ついにクロがその影を見せました。次回はアリシアがファビアと対峙します。

え?オリヴィエとクラウスの昔話ですか?原作から変える場所もないですし‥‥‥今回は省略です。
コミック見てて思ったのですが、なのはが(9才当時、AAAランク相当)魔力平均値127万(砲撃時3倍)。オリヴィエは時代が違うので単位が違う可能性もありますが、平時で7560万。一撃がなのはのバスター20発相当とかチートじゃないですかやだー


***
セイン「セインと!」

イリヤ「イリヤの!」

御坂妹「新年明けましておめでとうございます、とミサカは二人を出し抜いてほくそ笑みます」

セイン「‥‥‥またアンタかよ」

イリヤ「新年の挨拶、私が言いたかったのに」

御坂妹「いいではないですか。どうせ私など、新作が始まったらチョイ役の噛ませなんですから。とミサカは同情を誘う為に涙ぐむ素振りを見せます」グスン

セイン「いや、それ言ったら駄目でしょ。ってか表情が全く悲しそうではないんですけど?」

イリヤ「あの‥‥‥セインさん、そろそろ」

セイン「あ、そうか。新年最初のゲスト‥‥‥って!だからぁ!なんで毎度毎度こうなんだよ!」

霊夢「いいじゃない。それより、私が主役になれなかった理由が分かったわ」

御坂妹「厨二全開でグウタラ駄目巫女だからですよね?とミサカはここぞとばかりに‥‥‥」

霊夢「違うわよっ!誰がグウタラ駄目巫女よ!」

イリヤ・セイン((合ってるじゃん))

霊夢「仕方ないわね。教えてあげるわ。私が『強すぎるから』よ」

イリヤ(え~‥‥‥)

霊夢「ホラ、私天才だし?夢想転生とかチート級のスペルあるし」

セイン(あ゛あ゛っ?)イラッ

御坂妹「成る程。つまり作者の意向に合わなかったという事ですか。もっと言えば‥‥‥貴女にこの作者の作品で主役は永遠に回って来ないという訳ですね、とミサカはドヤ顔で核心を突きます」

霊夢「‥‥‥え?」

セイン「あー、つまり作者は俺Tueee系が好きじゃないって事か」

霊夢「‥‥‥ちょっと作者退治してくるわ」

イリヤ(あれ?でもオリヴィエって結構‥‥‥?まあいいや)

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