***第59話***
高町家、そのリビング。なのはとテーブルに向かい合って座っているのは、チンク。
「‥‥‥という訳ですので、ヴィヴィ陛下の事は事件解決迄は我々が警護します」
いよいよ表立った警備となった事に、なのはも不安を隠せない。万が一に備え常時SPとしてヴィヴィオに張り付くという事態は、穏やかではない。JS事件以来の非常事態と言える。
「アリシアちゃんの警護は?」
「オリヴィエ陛下は、今後ティアナに同行する事になりました」
成る程、つまりはアリシアはティアナの捜査の手伝いをしつつ、ティアナが警護にあたる、という事か。まだ満足に戦えないであろうヴィヴィオなら兎も角、アリシアならばそれでも大丈夫ではあるだろう。
「私に出来る事無いかな?捜査なら協力するよ?」
話を聞く限り、もしかしたらJS事件のあの時のような、ミッドチルダ全体が危険に晒される事態にも成りかねない。そんな事件を、なのはが黙って見ている事等出来ないのは明らか。
「いえ、高町一等空尉は通常通りの勤務で。危険な事にならないよう、捜査は全力で行います。‥‥‥万が一の時には‥‥‥お願いします」
「‥‥‥分かった。無事に解決出来るように頑張ってね」
「はい。では、失礼します」と答え、チンクは高町家を後にする。ヴィヴィオには迷惑を掛けてしまうだろうが、命には代えられない。
(一刻も早く解決しなくては)
真剣な表情を見せて見送るなのはと別れ、チンクはもう一度現場へと向かう。もしかしたら何か見落としが有るかも知れないし、イクスの居場所に繋がる何かが見つかるかも知れない。
チンクが向かった先は、あの血文字の残された事件、ミッドチルダでの二番目の被害者宅。
Keep outのテープを潜り、中へと入っていく。
(何か‥‥‥何か有る筈だ。冥王とトレディアに繋がる何かが)
***
一方、チンクが出ていった後の、高町家。ヴィヴィオの「ただいま~」という声の後に「お邪魔しま~す」という声がして、なのはは出迎えに行く。
「お帰りヴィヴィオ。それから、いらっしゃい、セイン」
「すみません、なのはさん。少しの間お世話になります」
遠慮がちに話すセインの両手には、食料の山。どうやら、ただ同行するのは悪いと思ったらしいセインの、せめてもの気遣いのようだ。
「あ、なのはさん。料理ならなるべくアタシがやりますから。少しの間はゆっくりしちゃってください」
「そんな、悪いよ。ヴィヴィオの警護だってしてもらってるのに」
「いえいえ、料理は好きでやるだけですから」と笑みを見せるセインに「ごめんね。それじゃ、甘えちゃいます」とニコリと微笑むなのはだが、直ぐに真剣な表情に変わる。
「‥‥‥ヴィヴィオの事、お願いね?私もいつも一緒に居られる訳じゃないから」
「はい。ヴィヴィ陛下は、必ず守ります」
セインのISから言って、戦って守る、というよりはいざとなったらヴィヴィオと共に逃げる、という事だろう。あのスカリエッティが一目置いたディープダイバーならば、当にうってつけだ。
「もうお腹ペコペコだよ~」と喚くヴィヴィオに手を引かれ、セインと共に中へと入るなのはは、思いの外重くなった事態に、捜査している二人の事を想う。
(ティアナもアリシアちゃんも、大丈夫かな‥‥‥?)
*********
「ノーヴェさん、待ってください」
「何だよアインハルト、まだ話途中だぞ?」
一年前の話をしていたノーヴェを、アインハルトは一旦遮る。
「そんな事があったなんて‥‥‥聞いてません!」
「いや、だから今話してんだろ」
叫んだアインハルトは、切なそうな、悲しそうな表情。理由は、ノーヴェにも何となくは分かる。
「そんな、ヴィヴィオさんに表立って警護がついたとか、アリシアさんがあの『ゆりかご事件』の犯人と会っていたなんて‥‥‥どうして‥‥‥どうして話してくれなかったんですか」
「いや、だから話す機会とかタイミングとかだろ‥‥‥って、おっ、おい、泣くな、泣くなよ」
我慢出来なくなって、肩を震わせ涙を流し始めるアインハルト。ノーヴェもこれには困惑。
「いや、好きな人に何も教えて貰えなかったらそりゃ悲しいだろうけどさ、アリシアだって話してないのなんて偶々、偶々だよ!」
「‥‥‥本当、ですか?」
涙目の上目遣いでノーヴェを見上げるアインハルト。本人は全くの無自覚でやっているのだろう。ノーヴェも表には出していないが(参ったな‥‥‥こんなアインハルト初めてだな)と心の中で苦笑い。
「本当だよ。ったく、お前らしさの欠片も無いな。アリシアが絡むと我を忘れるの、少し直した方がいいぞ?」
瞬間、アインハルトの顔が真っ赤に染まる。どうやら、今のノーヴェの言葉で自分が何をしたか理解したらしい。もう、『自分が好きな人はアリシア』と自白してしまっている事に漸く気が付いた。
「あっ、あっ、あのっ!アリシアさんには‥‥‥」
「分かってる分かってる。黙っててやるよ」
ノーヴェはニヤニヤし、ポンポンっ、とアインハルトの頭を軽く叩く。もう恥ずかしさで固まった、当に『穴があったら入りたい』状態のアインハルトは、か細い声で「約束、ですよ?」と絞り出すのが精一杯のようだ。
「分かった分かった。約束すっから。それじゃ続き、な?」
そうして一騒動のあと、ノーヴェが話を再開。アインハルトも黙って耳を傾ける。
「ほら‥‥‥あれだ。覚えてるか?一年前にあったマリンガーデンの‥‥‥」
******
話は再び戻り、セインがヴィヴィオの警護に就いた翌々の朝。
「‥‥‥は!?アリシア、貴女がスカリエッティに会ってきたの!?聞いてないわよ!」
「うん、だから今言ったでしょ?」
驚きを隠せないティアナに、悪戯な笑みのアリシア。ティアナの車で移動中。向かっている先は、マリンガーデン。
「本当に大丈夫だったの?スカリエッティに何かされたりしなかった?」
後部座席に座るスバルが心配そうに聞いてくる。「牢越しだったし、何もされなかったよ?」と笑顔のまま答えた後、アリシアの視線は鋭くなる。
「海底遺跡‥‥‥きっと、マリアージュが目指してるのはあそこだと思う」
「根拠は?」と、チラリと視線を向けてきたティアナに、「勘だよ」と静かに答える。
「勘って、アリシア‥‥‥大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫。きっとあそこだから」
半ば、確信はある。態々ミッド迄来たマリアージュ、アリシアの‥‥‥オリヴィエの記憶に残る古代ベルカの面影がある遺跡。思い当たる場所は、他には無い。それに‥‥‥。
「それにね?何かを感じる。こう‥‥‥口では上手く表現出来ないけど、何て言うか‥‥‥」
「信じるわよ。アリシアが其処まで言うんだし。それじゃ、少し急ぐわよ?」
ティアナがアクセルを踏み込む。「ちょっと、ティア!スピード違反になっちゃうって!」と後ろでスバルが喚いているが、車は加速。一路、マリンガーデンへと急ぐ。
さあて、いよいよ大詰めに近付いてきました。3人は海底遺跡へ。
ドジッ子覇王は、ついつい本音をポロリ。ノーヴェも苦笑いの事態になってます。
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「「突撃インタビュー!」」
イリヤ「あれ?ウェンディは?」
セイン「今日収録日って言ってないから。つかイリヤさ、もうウェンディの事呼び捨てなんだね」
イリヤ「だって、だって‥‥‥」
セイン「はいはい。それじゃ、今日のゲストは?」
シャッハ「シスター・セイン、見ましたよ?なんですか、あれは!皆さんにあんな御迷惑を掛けて!あろう事かあんな子供のような駄々まで捏ねて!」←注:カルナージ合宿の温泉での事を言ってる
セイン「うげっ!あっ、あれは違くて、その‥‥‥」
シャッハ「全く‥‥‥貴女もまだまだシャンテの事は言えませんね」
セイン「面目無いです‥‥‥」
イリヤ「何の話ですか?」
シャッハ「ああ、それはですね‥‥‥」
セイン「やめて!イリヤも聞かなくていいから!あれは黒歴史なんだ!」
ウェンディ(ヒェヒェヒェヒェ!収録日黙ってた仕返しっス!)←シャッハに教えた犯人