過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第57話

***第57話***

 

「どう?二人とも来れそうなの?」

 

《うん。ミラさんも『たまには二人で出掛けてこい』って言ってくれてるから》

 

「そっか、良かった」

 

アリシアの通信先は、スプールスキャンプ。相手はキャロである。エリオと共に数日の休暇を許可してもらったらしく、ミッドに遊びに来る事になっている。

 

「そうそう、今ティアナが此方に来てるんだ。って言っても事件絡みなんだけどね」

 

《ホントに?ティアナさんとは暫く会ってないからなぁ‥‥‥去年の合宿以来かな?‥‥‥会えそうなの?》

 

「そのくらいは大丈夫でしょ」

 

去年のカルナージでの合宿以来、ティアナは忙しく事件を追っている。なんでも、最初に担当した事件を切っ掛けに、ティアナに回ってくるのは凶悪事件ばかりらしい。それだけ実力を買われているという事でもあるが。やはり、なのはの愛弟子でフェイトの補佐をしていただけの事はある。

 

《じゃあ、明後日にでも着くようにするから!》

 

「え?そんなに早いの?」

 

キャロの話だと、どうやら休みは明日から1週間。態々ミッドまで来てやることは、買い物、知人達への顔出し、その他にも色々とあるのだが、今回はそれとはまた別の用もある。

 

《うん。早く行っておかないと間に合わなくなっちゃう。この会話、ヴィヴィオには聞かれてない?大丈夫?》

 

「聞かれてないよ、大丈夫。もうすぐだしね」

 

今回は、ヴィヴィオの誕生日プレゼントを選ぶ、という目的が主。

JS事件のあの日、『ゆりかご』内でなのはとヴィヴィオが真の意味での親子の絆を結んだ9月19日を、ヴィヴィオの誕生日に選んだ。知っての通り、ヴィヴィオの本当の生まれた日は不明である。ヴィヴィオとなのはが新たな一歩を歩み始めた日を誕生日に定めた事に反対する者など、当然居ない。

その日まで、もうあと1ヶ月程。成る程、キャロのいう通り時間は無い。

 

《良かったあ。それじゃ、また連絡するね?》

 

「うん。エリオにもよろしくね」

 

通信を終え、「ふぅ」と息を吐くアリシア。決して溜め息等ではない、笑みを溢しながら。

 

(ヴィヴィの誕生日ですか。早いものですね。あれから‥‥‥3年、ですか)

 

自身の、肘までしか無い右手を見ながら、感慨に耽る。そうして飲みかけの紅茶に手を伸ばし口をつけたタイミングで、後ろから呼ぶ声が聞こえた。

 

「お姉ちゃん、お仕事の話?」

 

「ううん、違うよ。‥‥‥そうだ、ヴィヴィ。今度コロナとノーヴェと一緒に、マリンガーデンに行こう?」

 

「本当!?やったぁ!」と、満面の笑みで大袈裟に喜ぶヴィヴィオ。浮かべた笑みをヴィヴィオに向けながらアリシアは改めて思う。

 

(あの時、右手を犠牲にした甲斐は‥‥‥ありましたね)

 

***

 

ちょうどその頃の、108部隊。

 

「ティアナはどうだい?」

 

「優秀な執務官だと思います」

 

現場の部隊長ゲンヤ・ナカジマと、性格なのかルネッサは固い表情のまま話す。

 

「アイツとは昔っから家族同然に過ごしてきたからよ、ティアナの事よろしく頼む。‥‥‥そいじゃ、その辺の物は適当に使っていいからよ、何かあったら言ってくれ」

 

そう話し席を立つゲンヤに「わかりました」と答え、出ていくのを見送ったルネッサは、周りを見回してからモニターを開いた。

 

(JS事件‥‥‥機動六課‥‥‥)

 

項目を入力、当時の事件の詳細や機動六課の事を検索していたのだが‥‥‥。

 

「‥‥‥閲覧ロック?どうして‥‥‥」

 

思わず声に出す。JS事件の詳細はおろか、概要すら見られない。機動六課に関しても、同様。

 

(何故‥‥‥?トップシークレット‥‥‥?)

 

悩んでいるルネッサの後ろから「あら、機動六課?」と声が聞こえて、驚いて振り返る。立っていたのは、ギンガ。

 

「ギンガ捜査官‥‥‥」

 

「どうして機動六課の事を?」

 

顔には出さないよう暫し悩んだ後、ルネッサは答える。「いえ‥‥‥捜査に協力出来る方がいらっしゃらないか、と」と、尤もらしい言葉で。

 

「当時のメンバーはみんな忙しいし、難しいとは思うけど。そうね‥‥‥」

 

ギンガがコンソールを叩く。彼女の持っているレベルは3。見れるのは六課メンバーの簡易データ迄。

 

「私のセキュリティレベルだと此処まで。人材、見付かると良いわね」

 

「ありがとうございます、捜査官」

 

ギンガが笑顔を向けて、その場を後にする。改めてギンガが開いたそのデータを見て、ルネッサは思慮に耽る。

 

(これは‥‥‥)

 

***

 

そうして、翌々日。

 

「アリシア、久し振り!」

 

「うん、久し振りだね!フリードも」

 

キュウ~!と返事をしたフリードの頭を撫でるアリシア。「エリオは?」と訊ねると、満面の笑みで答えるキャロ。

 

「エリオ君なら、買い物に行ってるよ。買い物リスト渡しておいたから」

 

そう言ってキャロがそのデータを見せる。その膨大な量を見て、口をあんぐりと開いて停止、呆れるアリシア。

 

「‥‥‥もしかして、これ全部買いに行かせたの?」

 

「え?うん」

 

『何か疑問に思われる事でもあったかな?』という表情のキャロに、アリシアは更に呆れる。暫し停止したあと、フリードを抱いたままキャロの手を引っ張る。

 

「駄目だよ、こんなに沢山なんて。手伝いに行こう、ね?」

 

「え?‥‥‥うん」

 

走りながらモニターを開き、エリオと繋ぐ。既に両手にかなりの荷物を持っているエリオが、笑顔を向ける。

 

「エリオ、久し振り。今から二人で手伝いに行くから」

 

《え?ああ、ありがとう。今は‥‥‥ベルウィードホテルの辺りだから、それじゃ此処で待ってるよ》

 

***

 

アリシア達が合流した時、目の前には信じられない光景が広がっていた。

 

「エリオ君、これって‥‥‥」

 

「うん、キャロ。助けに行かないと」

 

目の前にあるベルウィードホテルは、物凄い炎をあげて燃えていた。当然ながら、まだ中に逃げ遅れた人が居る筈。

 

「早くレスキューに連絡して、私達も行かなきゃ!」

 

アリシアが大人モードへと変わり、救助隊へと連絡を入れようとすると、後ろから声が聞こえた。

 

「もう連絡済みよ。もうスバルも中に入ってる」

 

「ティアナ?どうして此処に?」

 

嫌な予感を覚えつつ問うアリシア。ティアナの答えは、予想した通りのものだった。

 

「此処で、ある人と会う予定だったのよ。‥‥‥考古学者と」

 

「じゃあ、やっぱり例の事件の?」

 

険しい表情を見せるティアナに、同じく険しくなるアリシアの表情。キャロとエリオは状況を飲み込めない。

 

「あの‥‥‥ティアナさん、事件って?」

 

「エリオ、詳しい事は後で話すわ。今は救助を。3人とも、無理はしないでよ?」

 

四人は散開。アリシア達3人はホテル内へ。ティアナは‥‥‥。

 

(まだ、犯人が近くに居る筈。今度こそ‥‥‥)

 

ティアナは注意深く辺りを捜索。不審人物が居ないか慎重に探していく。

‥‥‥と、余り目立たない所を歩く、少し身長の高い女性を見付ける。黒のジャケットを羽織り、顔には深いバイザーを着けた女性。感じる魔力が、普通とは違う。どうやら間違いないようだ。

 

ティアナは慎重に近付いて、後ろからバインドで拘束。女性にクロスミラージュを向ける。

 

「マリアージュね?管理局です!大人しくしなさい!」

 

『‥‥‥これは‥‥‥』

 

口を開いたマリアージュの声は、何処か不自然というか、普通の人間のものとは違う。眉をひそめるティアナの方を向いたマリアージュが、表情は変えぬまま言葉を漏らす。

 

『確かに‥‥‥此れでは動けません。ですが‥‥‥『トレディア』と『イクス』への手掛かりは掴みました。私は消えても、量機達が捜し出します』

 

「何を言ってるの?トレディアとイクスって何?」

 

クロスミラージュを構え直し、強い口調で語るティアナが、ある変化に気付く。

 

(‥‥‥何かしら、この臭い‥‥‥‥‥‥!)

 

目の前のマリアージュの手から、液体が滴り落ちている。否、正しく表現するならば、マリアージュ自身が液体化している、と表現するのが正しいか。

 

「燃焼液‥‥‥!!」

 

気付いて、ティアナは慌ててプロテクションを張る。直後、マリアージュは轟音をあげ爆発した。




元六課のフォワード集合しましたよ回。原典と若干違うのはアリシアの影響です。

***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「「突撃インタビュー!」」
セイン「何かさあ、今月更新早くない?」
イリヤ「あ、それは作者が『アニメ終わる前にイクス編書き終える!』って言ってたから」
セイン「メタ発言だなぁ‥‥‥そいじゃ、ゲスト」ニヤニヤ
アインハルト「あの、えっと、何を話せばいいのでしょう?」
イリヤ「こんにちは!」
アインハルト「はい、こんにちは‥‥‥あの、どなたですか?」
セイン「まあまあ、細かい事は良いから。それよりアインハルトさあ、自分のせいでこのSSにガールズラブのタグが付いてるのをどう思う?」
アインハルト「ガールズラブ‥‥‥?‥‥‥えっ!?そっ、それは、その‥‥‥アリシアさんとはそんな関係ではありませんから!」
イリヤ「あの、アインハルトさん‥‥‥自白しちゃってますよ?」
アインハルト「‥‥‥!!」///カァァ

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