***第52話***
チームナカジマの面々や、ジーク、ヴィクトーリアといった実力者も順当に勝ち上がった二回戦の終わったその日の夕方、聖王教会。
「次は‥‥‥アインハルトとですね。コロナは勝てるでしょうか?」
「コロナには『勝てる』と言いましたが、正直五分五分だと思います。後は運と気持ちの問題ですよ、イクス」
部屋で話す、イクスとアリシア。もっともっと時間を掛けてじっくり育てたい所だが、大会は待ってはくれない。短期間で出来る限りの事は教えたが、最後はコロナ次第である。
「エレミアが見たら驚くでしょうね。何せ彼女と同じスタイルなのですから」
「はい。『物真似』なんて言われないよう、基礎は確り教えたつもりです。私の‥‥‥『聖王』の弟子として恥ずかしくないように」
座っていた椅子から立ち上がり、「では、そろそろ」と口にして笑顔を見せるアリシア。イクスも笑みを向けながら、「はい、ではまた明日」と手を振る。
「コロナに『頑張って』と伝えて下さい、オリヴィエ」
「はい。伝えておきます」
***
イクスと別れ、アリシアは教会の庭を歩く。
「あ、居た居た」
声を掛けられ後ろを振り向くと、ルーテシアの姿。
「ルールー、どうしたの?」
「いやさ、私と同じブロックの魔女っ子の事なんだけど‥‥‥何か気になるって言うかさ」
確かにこの時代に、魔導師ではなく純粋な魔女は珍しい。「へえ‥‥‥そんな子居たんだ?」と余り気にしていなかったアリシア。ルーテシアがその言動に拗ねつつ(表情は笑っているのでからかい半分)、話を続ける。
「あーハイハイ、アリシアは今はコロナに御執心だもんね、私の事なんかどうでもいいんだもんねぇ?」
「いや、そういう訳じゃ‥‥‥」
「まあ、冗談は兎も角。その魔女っ子、ヴィヴィオやアインハルトの事遠くから眺めてるっていうか、観察してるっていうか。そんな感じなんだよね。目が合うと逃げちゃうし。今の所は実害はないけど‥‥‥アリシアはどう思う?」
聖王のクローンであるヴィヴィオや、覇王の直系のアインハルト。彼女達の素性を知って興味があるだけ、という可能性も無くはない。だが‥‥‥アリシアには何かが引っ掛かる。
「魔女っ子‥‥‥魔女か‥‥‥」
「そうそう。確か名前は、ファビア・クロゼルグだったわよ?順調に勝ち上がれば私と当たるけど‥‥‥」
言い掛けたルーテシアの話を、アリシアが遮る。驚きハッとした表情を見せるアリシア。
「クロ‥‥‥ゼルグ‥‥‥?」
「ええ。クロゼルグ。ひょっとして、またオリヴィエ関連?」
アリシアの表情がまた変わる。今度は昔を懐かしむような、穏やかな表情に。
「うん。関連っていうかさ‥‥‥そっか。きっとクロの‥‥‥」
アリシアはちょっとした昔話を始めた。古代ベルカ時代、シュトゥラ南部の「魔女の森」に住んでいた悪戯好きな魔女の子。クラウスに良くなついていて、エレミアとは喧嘩ばかりだった子‥‥‥クロゼルグ。
「そっか。やっぱオリヴィエの関係者か‥‥‥どうする?」
静かに聞いていたルーテシアが訪ねる。アリシアは空を見上げながら一言だけ答える。ルーテシアからは死角になっているその表情は伺い知れない。
「話して、みたいかな」
***
そんな事があって、三回戦当日。
「良い?気持ちで負けちゃ駄目だよ。それと‥‥‥出し惜しみは無し。アインハルト相手でも全力でぶつかる事」
「はいっ、師匠!」
控室。少し緊張気味のコロナの背中をパンっ、と叩き、気合いを入れ直すアリシア。
「うん、それじゃ、行こうか?‥‥‥コロナ、絶対勝つよ」
「はいっ!」
強く頷いたコロナが立ち上がり、会場のリングへと向かう。アインハルトは既にリングに上がり、瞳を閉じて静かに佇んでいた。
「アインハルトさん!」
「コロナさん‥‥‥」
瞳を開いたアインハルトの視線は、コロナを通り越してアリシアへ。再びコロナへと視線を戻し、アインハルトが構える。コロナもブランゼルを握り締め、それに対峙する。
(落ち着くんだ。大丈夫。あのオリヴィエ・ゼーゲブレヒトが『勝てる』って言ったんだ!)
開幕のゴングが鳴り響き、同時にアインハルトがコロナに向かってくる。
「『クリエイション‥‥‥!』」
コロナもゴングと同時に足元に魔法陣を展開する。『出し惜しみは無し』というアリシアの言葉通り、今迄にないスピードでゴーレムが形成されていく。
「なっ!」というアインハルトの驚きの声と、「バカっ、止まれっ!!」と叫んだアインハルトのセコンドに付いたノーヴェの声が同時に響く。
「『ゴライアスっ』!」
二回戦迄は見せなかった、10秒程での創成。攻撃に入る前のアインハルトの頭上から、ゴライアスの拳が襲い掛かり、その威力にリングが沈む。
「よしっ!」と後方でガッツポーズを見せるアリシアの声にも、ゴライアスの肩に乗ったコロナは警戒は解かない。レフェリーが入り、アインハルトに結構なダメージと全身打撲のクラッシュエミュレート、それにダウンが取られる。
(行ける‥‥‥!勝つんだ、このまま!)
ニュートラルコーナーに下がり、アインハルトが立ち上がるのを見つめる。ライフは半分以上は削ったが、当然これで倒れるアインハルトではない。
「コロナ、このまま畳み掛けて。油断は無しだよ」
「うんっ!」
アリシアに力強く返事を返し、コロナは構え直したアインハルトと対峙する。再開と共にゴライアスでアインハルトに向かい走る。
再び降り下ろされたゴライアスの拳を避けたアインハルトが、それに飛び乗り肩に居るコロナの所まで駆け上がる。
「コロナさんっ!」
アインハルトの右拳には魔力の塊。「『空破断!』」というアインハルトの叫びと共に解放された力が、コロナに向かって走る。慌てて防御体制に入ったコロナだがそれは直撃。大きく吹き飛ばされる。
そのまま地面に降りたアインハルトは魔法陣を展開。魔力を込めた拳をゴライアスに向けて降り下ろした。
「『覇王流・破城槌!』」
ゴライアスは轟音と共に砕け散る。
飛ばされた方のコロナも無傷とはいかなかったが、甚大なダメージではないようだ。
(大丈夫。想定内だもん)
アリシアとのミーティングの範囲内。ゴライアスであれだけアインハルトのライフを削ったのだから上等である。
(暫く休んでてね、私のゴライアス)
コロナはガードした体勢のまま、リングの端に着地。その両腕には、形に出来るまで何度も何度も練習した、あの岩石の籠手。
「岩石の‥‥‥?成る程、流石ですね、コロナさん。やはり全力で‥‥‥‥‥‥え?」
構え直したアインハルトが、驚きの余り固まる。やがて観客席もその意味を理解したようで、ざわつき始める。
「コロナさん‥‥‥その構えは‥‥‥」
「ここからが本番ですよ、アインハルトさんっ!」
コロナの構えはオリヴィエと同じ、エレミアのそれ。岩石の籠手も相まって、オリヴィエそっくりと言ったところか。アインハルトの視線が一瞬アリシアの方へと動き、表情が険しくなる。
「‥‥‥成る程。アリシアさん直伝ですか。ですが‥‥‥」
一度瞳を閉じ、ゆっくり開くアインハルト。その足元から気を練り上げていき、右拳に集めていく。
「『覇王‥‥‥断空拳!』」
コロナも両腕に魔力を集める。両足を踏ん張り、正面から迎え撃つつもりだ。
(負けないんだ‥‥‥私だって‥‥‥私だって、やれるんだ。そして、証明するんだ。私も、みんなの一員なんだって!)
さてさて、この章も大詰め、コロナvsアインハルト戦開始です。
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あの不穏分子もちょろっと登場ですね。
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セイン「今度は大丈夫だろうな?」
イリヤ「あの~、本当に良いんですか?」
セイン「いーのいーの。ウェンディが居たらメンドイだけだし。そいじゃ、改めましてタイトルコール」
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
ルビー「突撃インタビューですね!」
セイン「今度はお前かぁぁぁ!」
ルビー「まあまあセインさん、私が出た位で興奮してたら先に進めませんよ?イリヤさんと違って若く無いんですから」
セイン「誰のせいだよ!って、まだ若いわっ!」
ルビー「おやおや、今回のゲストもカオスですねぇ」
霊夢「‥‥‥納得いかないわ」
レミィ「あら霊夢、出して貰えたんだから良かったじゃない」
霊夢「はぁぁあ?あれで私が出たっていうの!?誰がどう見ても別人、ってか設定だけだったじゃないの!」
レミィ「良いじゃない、カリスマ溢れる私と同じよ?」
霊夢「設定のみの登場の奴の何処にカリスマ性があるっつーのよ?」
レミィ「‥‥‥聞き捨てならないわね」
霊夢「何?やるの?」
レミィ「仕方無いわね。この私がカリスマとは何なのか直々に教えてあげるわ」
セイン「はぁ‥‥‥またか‥‥‥」
ルビー「良いじゃないですか。ロリババァのレミリアさんの需要だって高いんですから。やっぱり見た目位はローティーンじゃないといけませんよね?」
セイン「お前、ほんと何なの?」
イリヤ「私の出番が‥‥‥」シクシク