***第47話***
カルナージ合宿の最後の夜。夕食を終えて、温泉にゆったりと浸かる子供組とアリシア。
「そー言えばさ」
前振り無く突然リオが話し出す。
「ん?どうしたの、リオ?」
それに最初に反応したヴィヴィオに寄り掛かりながら、リオはふと浮かんだ自身の疑問を口にする。
「いや、クラウスとオリヴィエってさ、愛し合ってたんだよね?どのくらいだったのかな?キスとかはしてるのかな?」
何ともデリカシーの無い発言である。何せ、等の本人であるオリヴィエは目の前に居るというのに。ヴィヴィオが苦笑いを浮かべながらアインハルトとアリシアの方をチラリと見ると、真っ赤になって耳の辺りまでお湯に沈んでブクブクと空気を吹いているアインハルトと、笑みを浮かべては居るもののこれまた頬の紅いアリシア。‥‥‥が、アリシアの方は憂いの混ざった笑み。
「リッ、リオっ!ほら、そういう話は本人の前では‥‥‥」
「あっ、そっか!本人に聞いたら良かったんだっけ。ねえ、アリシア~?」
ヴィヴィオは焦って止めたつもりだったのだが、事態は悪化。当事者に確認するという、ヴィヴィオが最も回避したかった方へと転がる。
そのアリシアは、想い出を懐かしむように空を見上げながら、「‥‥‥そうだね」と一言答えるのみ。
「‥‥‥その、ごめんなさい」
漸くアリシアの心情を察して申し訳無さそうに謝るリオに、アリシアは空を見上げたままで、静かに答える。
「ううん、良いよ。気持ちも整理出来たんだ。ちょっと‥‥‥色々あったんだけどね」
「そっか。ねえ、アリシア。詳しく聞いた事無かったけど、オリヴィエやクラウスの時代ってどんなだったの?」
リオの質問に、瞳を閉じて過去を思い出すアリシア。場面場面がその目蓋に、ハッキリと思い出される。
「そうだな‥‥‥あの頃は‥‥‥いつも『三人』だった。私‥‥‥オリヴィエとクラウスと、エレミアの三人」
その発言に、黙って聞いていたアインハルトの表情が曇る。
「あの‥‥‥アリシアさん。エレミアの事なんですが‥‥‥オリヴィエが『ゆりかご』に乗った後、エレミアは消えてしまったんです。‥‥‥忽然と、クラウスの前から」
「そう‥‥‥なんだ。けどエレミアが何も言わずに消えるなんて‥‥‥」
疑問に思い悩むアリシアに、事態を把握出来ないヴィヴィオが「あの、二人とも。エレミアって?」と問う。
「ああ、ヴィヴィ。エレミアって言うのはね?オリヴィエとクラウスと共にあった親友。なのはとフェイト、はやてみたいな感じかな」
話しているアリシアの少し後ろ。アインハルトの表情が更に曇る。ヴィヴィオは気が付いたが、アリシアは気付けずに話を続ける。
「それでね?そのエレミアなんだけど」
「お姉ちゃん、あの‥‥‥」
ヴィヴィオが遠慮がちに口を挟む。その視線がアインハルトに向いているのに気付いて、アリシアも視線を移す。
「アイン‥‥‥ハルト‥‥‥?」
「アリシアさん。私は‥‥‥」
アインハルトのその表情に、悲しみと怒りが見てとれる。空気に耐えきれなくなって口を開こうとしたヴィヴィオより一瞬だけ早く、アインハルトが語り出す。
「私は‥‥‥許せないんです。分かってはいます。エレミアのせいじゃない。けど‥‥‥エレミアが、エレミアさえその武術をアリシアさんに‥‥‥オリヴィエに教えなければ。そうすれば、オリヴィエは『ゆりかご』に乗らずに済んだかも知れない。アリシアさんに、その苦痛を味あわせずに済んだかも知れないんです。ですから、私は‥‥‥」
涙を浮かべ話すアインハルトを、そっと抱き締めるアリシア。その頬を染めながらも、アインハルトの瞳からはポロポロと雫が流れ落ちる。
「分かってる。でもね、私の役目だったんだ。クラウスやエレミア、他のみんなには悲しい思いさせちゃったけど‥‥‥」
「でも、アリシアさん!」
声を荒げるアインハルトを抱き締めたまま、アリシアは静かに囁く。
「‥‥‥アインハルト。私でよかったんです。あの時は、そうするしか無かった。ですから、アインハルト」
***
涙を流したまま、お湯から上がり部屋へと一人帰るアインハルト。空気を読んだのか何時の間にかリオとコロナは居なくなっていて、アリシアとヴィヴィオだけが残った。
「お姉ちゃん、本当に、そうだったの?後悔、したんだよね?エレミアやクラウスと、本当は別れたくなかったんだよね?」
「‥‥‥後悔、したよ。沢山。けど、私を産んだ時にママは死んじゃって、『母を殺した鬼子』なんて言われて、愛する人を抱き締める腕もない。だから、私でよかったの。私で‥‥‥」
ヴィヴィオに、努めて笑みを向けるアリシア。その表情は兎も角、瞳はうっすらと濡れているように見える。
「お姉ちゃん‥‥‥」
「そうだ。はやてに頼んだんだ。エレミアの末裔に会えないかって。ジークリンデ・エレミアに」
「‥‥‥へっ?ジークリンデ・エレミアって、チャンピオン!?」
ヴィヴィオは驚きを隠せない。あのインターミドルチャンピオン、ジークリンデがそのエレミアだと言うのだから。思わず「ほっ、本当に!?」と聞き返したヴィヴィオ。
「うん、ヴィヴィ。間違いないよ。あの構え、それにエレミアの神髄。あれは、一族のみが使える筈だから」
***
場所は変わって、ミッド某所。
《お嬢様》
《こんな時に、何ですの?》
シャワーを浴びていたヴィクトーリア・ダールグリュン。不意の念話に気分を害され、眉をひそめる。
《申し訳ありません。八神はやて海上司令からの通信でして》
《‥‥‥繋いで頂戴》
はやての名を聞き、何事かと思いながらも通信を繋ぐ。ミッドを救った英雄部隊として有名な元機動六課の部隊長、八神はやて。その彼女からの直々の通信。
(八神司令が直々に?)
《始めまして。八神はやてです‥‥‥っと、入浴中やったか。これは申し訳ない》
「構いませんわ、八神司令。ヴィクトーリア・ダールグリュンです。今日はどのような要件で?」
ヴィクトーリアは笑顔を見せながらも、訝しげにモニターを睨む。その警戒した様子にヒラヒラと手を翳しながら、はやてが返す。
《ごめんな。重々しい話や無いんやけど、チャンピオンに会えへんやろか?‥‥‥古代ベルカ絡みでなんやけど》
「古代ベルカですか‥‥‥例の覇王、聖王のクローン関連ですか?」
成る程、それなら理解できる。ジークリンデ・エレミアとは長い付き合いだし、つい今日の昼間まで屋敷に滞在していた。放浪癖のあるジークを泊めておくのは一苦労だったのだが。
《まあ、そうやね。それから、『聖王のクローン』って言い方は、出来たら止めて欲しいな》
「そうですわね。お気を害されたのなら謝りますわ。高町一等空尉のご令嬢‥‥‥ヴィヴィオ、でしたわね。それから、ジークなら昼迄は居たのですが、また何処かに出ていってしまいましたわ」
《そうか。それは残念やけど‥‥‥まあ、大会当日でもええか。同じ古代ベルカ同士、これから仲良くしてくれたら嬉しいよ》
「此方こそ、宜しくお願いしますわ」と答えて通信を切る。
(覇王に聖王、ですか。あまりジークの過去には触れて欲しくは無いのですが‥‥‥)
ヴィクトーリアは思い悩む。ジークに過去の事で無用な負担はかけたくはない。
(けれど、あの子が少しでも前を向けるのなら‥‥‥)
シャワーを浴び終えてローブを羽織り、部屋へと歩く。彼女はまだ知らない。あのオリヴィエ・ゼーゲブレヒトが今を生きている、という事を。
会話回でした。雷帝が登場。やっとvividの他のキャラが出てきます。肌色成分の多さはvividの仕様です。
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「「突撃インタビュー!」」
セイン「こっ、今回は普通だよな?もう前回みたいに別キャラとか無いよな?」
イリヤ「あ、大丈夫みたいです、ほら」
エリオ「あ、どうも。また呼んでもらっちゃって‥‥‥あ痛っ!」
セイン「タヒね、リア充」
イリヤ「セインさん、暴力はダメですよ!」
セイン「止めるなイリヤ。アタシは全国のみんなの気持ちを代行しただけだ。良いか?イリヤ。コイツは敵だ。作者のこの作品ではキャロに膝枕されて、別作品なんかもう書いたら色々不味い事してやがるんだぞ?」
イリヤ「膝枕‥‥‥お兄ちゃんに、膝枕‥‥‥」ボソッ
セイン「なあ、イリヤ。何か今『お兄ちゃん』とか聞こえたけど?」
イリヤ「なっ、何でもないですっ!!」
エリオ「‥‥‥あれ?僕ゲストだよね?