過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第41話

***第41話***

 

 

「何ていうか‥‥‥そうして並んでると、親子みてえだよな」

 

ヴィータの言葉にクラウスは苦笑いを浮かべ、アリシアはテンションが急降下。「おっ‥‥‥親子‥‥‥」と呟いて、ガックリと項垂れている。確かに、大人モードを解いたアリシアの見た目ははやてと同じくらいの子供。その姿では、隣のクラウスとは見た目お似合いのカップル、とは言い難い。

「オリヴィエ?」と気にかけてくれたクラウスにも、「いいんです‥‥‥どうせ今の私は小さな子供なんです‥‥‥」と投げやり気味に答える。

 

「そんなデリカシーの無い事言うたらあかんよ、ヴィータ。折角の運命の再会なんよ?」

 

直後にはやてに『アイスクリーム一週間禁止』を言い渡され、今度はヴィータが涙目。「今度から気を付けるから!ごめんなさい、はやて!はやてぇ!」とすがり付いて叫んでいる。

 

アリシアとリインフォースは闇の欠片のクラウスを一先ず保護。先に出たはやてに追い付き、アースラへの帰還途中でヴィータと合流。その際クラウスは自己紹介をしている時にアリシアが聖王女オリヴィエである事を話してしまった。クラウスに口止めさせる事を失念していたアリシアとリインフォースは固まり、ヴィータは驚愕し、はやては「オリヴィエとクラウスって??」と疑問だらけ。

已む無くリインフォースが聖王と覇王についてを説明し、口外しない事を伝えた直後の事である。

 

「駄目や。愛する二人の、時を越えた再会を邪魔した罰やからね」

 

その場に崩れ落ちたヴィータをやれやれと溜め息混じりに眺めるリインフォースがアリシアに視線を向けると、その顔は真っ赤に染まっていた。

 

「あっ、あっ、愛するって、そんな事‥‥‥!」

 

クラウスの方も頬が紅い。「いや、その、僕は‥‥‥」としどろもどろとなっている。

 

「我が主、余りからかうのは良くありません」

 

「そない言われてもなぁ。間違ってないやろ?」

 

見た目10歳の少女と青年のカップルに、はやてが(若干犯罪の匂いがするわ)と思っていたのは秘密。そんな事は微塵も表情には出さずに、はやては終始笑顔。

 

「何と言うか‥‥‥聞いていたのとはかなり違いますね、オリヴィエ」

 

伝え聞いていたのは、凶悪で無感情、残忍な闇の書の守護騎士とその主。余りにかけ離れた姿に少々戸惑い気味のクラウス。

 

「そうですね。私も、初めて会った時は驚きました」

 

昔を思い出しながら、それに答えるアリシア。頬はまだ紅いが、その表情に笑顔が戻る。

 

(少し前とは雰囲気が随分変わった。やはり、聖王にとっては覇王の存在は大きいようだな)

 

アリシアとクラウスのやり取りを遠巻きに眺めながら、そんな事を考えているリインフォース。合流時にはやてが口にしていた「何やろな。アリシアちゃん‥‥‥嬉しそう、っちゅうか、幸せそう、やね」という言葉を思い出す。

 

そんな柔らかな雰囲気をぶち壊すかのように、再び闇の欠片が現れる。瞬間五人は気持ちを戦闘モードに切り替え、出現した欠片の守護騎士達と対峙した。

 

***

 

「へっ?クラウス‥‥‥ですか?」

 

《そうだよ、アインハルト》

 

アリシアからの通信に、アインハルトは驚く。まさか、自身に宿る記憶の本人が現れる(闇の欠片だが)とは。

しかも、アリシアは今まで見たことも無いような幸せそうな表情をしている。アインハルトは複雑な思いを抱えていた。

 

(どうして‥‥‥?アリシアさんが幸せそうなのは良い事の筈なのに‥‥‥喜ぶべき事の筈なのに‥‥‥)

 

いつか、アリシアと再会する以前にヴィヴィオに感じていたものと似ている感情。‥‥‥嫉妬。

 

《アインハルト?どうしたの?》

 

首を傾げて訊ねてくるアリシアの姿が、モニターに映る。やはり彼女の一挙手一投足は、オリヴィエのそれそのもの。曲げた首の角度も、オリヴィエ時代と全く変わらない。

モニター越しに《その姿でも変わりませんね、オリヴィエ》とクラウスの声が聞こえてきて、アインハルトの胸がズキリ、と痛む。アリシアが少し照れながら《そうでしょうか?》とクラウスに返した事で、また胸が締め付けられる。

 

(この気持ちは‥‥‥?)

 

それにはまだ答えは出ないままだった。モニター越しのアリシアの表情が一転して険しくなる。その相手の姿が見えない状態で、はやてとリインフォースはユニゾン。恐ろしいまでの魔力が感じられる方角を睨む。

 

「アリシアさん!八神司令、一体何が!?」

 

《アインハルト、ごめん、一旦切るよ》

 

アリシアがそう告げて、モニターが切れる。遠くに居る筈のアインハルトですら感じられるほど強大な魔力。

 

「これは‥‥‥!?」

 

《アインハルトちゃん!はやてちゃん達と直ぐに合流して!砕け得ぬ闇が現れたよ!》

 

戸惑っていた所に、エイミィからの通信。その魔力の余りの大きさに、驚きを隠せないアインハルト。

 

「そんな!こんな強大な!」

 

《急いで、アインハルトちゃん!》

 

***

 

魔力の感じられる方向から、どす黒い魔力の焔が飛んでくる。咄嗟に張ったアリシアのシールドにぶつかり、爆発。伸ばしていた右の義手が吹き飛ぶ。

 

「オリヴィエ!」

 

「大丈夫です、クラウス。右は義手ですから」

 

笑って見せたアリシアだが、額には冷や汗。想像以上の相手に、何時ものような余裕は無い。

 

「行きますよ、ライゼ!」

 

《ニャア!》

 

アリシアの懐からライゼが飛び出てきて、大人モードを展開。右手の武装の具合を確かめつつ、強大な魔力の主を睨む。

 

「貴女が、砕け得ぬ闇‥‥‥!」

 

『夜天の主と鉄槌の騎士、それに、欠片の覇王‥‥‥それと、君は‥‥‥?』

 

見た目はアリシアよりも幼い少女の姿をしているが、化け物。背中には、大きな焔の魔力の翼。砕け得ぬ闇‥‥‥システムU-Dは、アリシアを見たまま動きを止めている。

 

『君は‥‥‥ゆりかごの聖王‥‥‥?どうして?』

 

「貴女を止めた後で、話してあげます。行きますよ、クラウス、はやて、ヴィータ!」

 

四人は散開し、U-Dを囲むように陣取ると、其々魔力を集中し始める。

 

『無駄です。貴女方では、私は壊せない。白兵戦システム起動。出力‥‥‥35%』

 

U-Dの魔力が膨れ上がる。そこが穴だと踏んだのか、真っ直ぐクラウスへと向かうU-D。「クラウス!」と叫び、アリシアは慌ててクラウスの元へと飛ぶ。

 

その魄翼から、数多の魔力の塊が四人に放たれる。クラウスは旋衝破でそれを跳ね返しつつ、目の前まで迫ったU-Dに備え、構えている。だが、彼の身体は闇の欠片。大きな魔力を受ければ消えてしまう。アリシアは急ぎ、焦る。

 

(このままじゃ、間に合わない‥‥‥!)

 

シールドとシューターでU-Dの弾幕をどうにか防ぎながら近付いていたアリシアだが、それでは間に合わないと踏んで、シールドを解除。『聖王の鎧』を展開しつつ、被弾覚悟でクラウスの元へと突っ込む。

 

「クラウス!」

 

間一髪、U-Dの魄翼の焔の爪がクラウスを捉える直前に、割って入るアリシア。

 

「クラウス、大丈夫ですか!‥‥‥‥‥‥ハッ!」

 

クラウスに気を取られた、ほんの、僅かな一瞬。アリシアの胸に、U-Dの魄翼の先端が触れる。それと同時に、全身から強引に力を吸い取られるような感覚。

 

(不味い‥‥‥)

 

アリシアがそう思った時には、既に遅かった。全身から大半の魔力を引き出されて、その意識が霞む。と同時に、大人モードも解ける。U-Dの手の中には、アリシアの‥‥‥オリヴィエの、虹色の巨大な魔力の塊。

 

『先ずは、一人目。聖王オリヴィエ‥‥‥覇王を狙えば、必ず来ると思っていました』

 

言葉を終えたU-Dは、奪った虹色の魔力を槍状に形成する。

 

『エンシェント・マトリクス!』

 

U-Dによって放たれた巨大な虹色の槍。殆ど意識の無かったアリシアは成す術もなく直撃を受けて、奪われた自身の魔力の塊と共に海へと墜ちていく。

 

***

 

一方、高町家に居たトーマとリリィも、その恐ろしい魔力を感じて、走り、向かっていた。

 

「急ごう、トーマ!」

 

「アリシアや八神司令の魔力も感じる!早く助けに行かないと!」

 

 

 

 




対U-D第1ラウンド開始。と同時にアリシア離脱。

圧倒的なU-Dに立ち向かう鍵は、リリィとトーマ!?

セイン「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「突撃インタビュー!」」
ウェンディ「‥‥‥ヴィータさん、また出て来てるッスね」チッ
セイン「舌打ちすんなよ。で、今日のゲストって?」
ウェンディ「今日はゲストは無しッスよ」
セイン「は?じゃあこのコーナー要らないじゃん」
ノーヴェ「おい」
セイン「あ、ノーヴェ。何してんの?」
ノーヴェ「いや、何か後書きのコーナーに出ろって指示が‥‥‥」
セイン「おい、ウェンディ‥‥‥あれ?居ない‥‥‥逃げたな」


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