過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第32話

***第32話***

 

(隙が無いな。さて、どうしたものか)

 

二人と対峙するシグナムは、未だ動かない。アインハルトも筋は悪くないが、問題はアリシアの方。構えに全く隙が無い。肌で感じる魔力も、夜天の主であるはやてと同じかそれ以上か。はやてのような広域型ではなく近接格闘型のようだし、充分に警戒しなければならない。

 

「行きます!」

 

先に動いたのはアインハルト。そのアインハルトの拳をシールドで防ぎ、その蹴りを上体を反らして避ける。

 

「フム。筋はいい。悪くはないな。しかし」

 

シグナムはレヴァンティンを水平に凪ぎ払う。それを後退し避けたアインハルトに、一歩踏み込んで、一瞬の間に凪ぎ払いきった筈のレヴァンティンをすぐさま引き戻し降り下ろした。

 

「なっ!」

 

一瞬対応が遅れ、アインハルトの防御を素通りしたレヴァンティンがアインハルトの左肩に当たる直前。「ガキン」という金属音と共に、魔力を帯びたアリシアの右手がレヴァンティンを弾く。

 

(やはり、か)

 

一度二人から離れ、シグナムは距離を取る。

 

「剣速に付いてきたか‥‥‥レヴァンティン!」

 

一度鞘にレヴァンティンを収め、バシュン、バシュンとカートリッジを二度炸裂。

 

「『飛竜一閃!』」

 

シグナムは連結刃となったレヴァンティンに魔力を乗せ、二人に向かって振るう。その一撃は二人に直撃し、土煙を上げて爆発が起きた。

 

***

 

煙が晴れると、全くの無傷の二人の姿が現れる。アリシアがアインハルトを庇い、前方にシールドを展開し防いでいた。

 

「気を抜いちゃ駄目だよ、アインハルト。シグナムってば、本気で撃ってきた‥‥‥」

 

「はっ、ハイ、アリシアさん」

 

冷静にシグナムを睨むアリシア。その後ろで、シグナムの力に驚くアインハルト。確かに昨日、合宿でなのはやフェイトと模擬戦で戦ったが、あれには大人組に出力制限があったからこそ成立した戦い。今こうして対峙しているシグナムにはそんな制限はない訳で、あの威力ならまともに当たれば撃墜は必須。それを然も当たり前のように防いだアリシアもアリシアだが。

 

エンシェントベルカの魔法陣を展開しているアリシアにシグナムが驚いているところへ、フェイトが到着。二人と対峙する。

 

「フェイトも来ちゃったか。どうやって脱出しようか?」

 

アリシアとアインハルトは構え直す。

 

「フェイトはお願い。私は、シグナムを」

 

「ハイ!」

 

シグナムと対峙したアリシアは、再度構え直す。二人の間に、緊張が走る。

 

「何者だ?」

 

「‥‥‥言えません」

 

シグナムはアリシアに斬りかかる。レヴァンティンを右手甲で受け止め、それを弾きつつ、シグナムの懐に潜り、下から左手を突き上げる。狙いは、シグナムの顎。

シグナムは咄嗟に頭を反らしてそれを避ける。体が右側に流れて体勢を崩したシグナムを、左足で蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

シグナムはアリシアの蹴りを鳩尾に受け、少し後ろに飛ばされる。

 

「『カノーネ‥‥‥』」

 

追い討ちをかけようと魔法陣を展開し、魔力弾を生成してる所、ライゼが変わった反応を感知。遠くから近付く反応がある。

 

《アインハルト、妙な反応だよ。一人なのに、二人分の反応が近付いてくる‥‥‥?》

 

《アリシアさん、あれは‥‥‥?》

 

 

 

 

 

 

「シグナム姉さんとアリシアだけじゃない!?ちっさいフェイトさんも!?」

 

《何だか妙だよ、トーマ!》

 

禍々しい装備と、刺青のような紋様。見るからに悪役、の、トーマと呼ばれた人物は、どうやらシグナムとアリシアを知っているようだ。

 

「シグナム姉さん!何でアリシアと戦ってるんですか!」

 

「‥‥‥すまないが、お前が誰だか思い出せん。何処かで会ったか?」

 

シグナムの方は知らないようで、その言葉にトーマは驚いている。

 

《今だ。行くよ、アインハルト!》

 

《ハイ!》

 

前回同様、虹色の閃光を炸裂させて脱する、アリシアとアインハルト。

 

代わりに残されたトーマは、目の前の二人と向き合う。

 

「ひでーよ、アリシアもアインハルトも」

 

《仕方ないよ、トーマ!事情があるんだよ♪》

 

何故か嬉しそうなリリィに、アインハルトに去られて落ち込むトーマは、シグナムと小さなフェイトを見て冷や汗を流す。

 

「どうして嬉しそうなんだよ?またアインハルトに話しかけらんなかった‥‥‥ハァ」

 

目の前の好意に気が付かず、アインハルトの話を平気でする鈍感なトーマに《『そんなこと』より、現状を何とかしなきゃ!》とむくれて話すリリィ。そんなリリィの不機嫌の理由が分からず疑問符を浮かべながらも、トーマはシグナム達から如何にして逃げるか考えていた。

 

***

 

「危なかったね。囲まれたら不味かった。なのはやユーノ司書長じゃなくて助かったね。あの二人にバインドで拘束されてたら‥‥‥」

 

「え?ヴィヴィオさんのお母様は兎も角、ユーノ司書長もですか?」

 

アリシアの言葉に疑問を浮かべるアインハルト。エースオブエースと呼ばれ、合宿でも対峙したなのはの実力は、よくわかる。しかし、いくら若くして無限書庫の司書長だからといって、ユーノがアリシアの脅威となるとは思えなかった。

 

「あれ?言ってなかったっけ。ユーノ司書長、なのはの魔法の先生なんだよ?」

 

「そうだったんですか!あの方の先生なら、さぞかしお強いのでしょうね。是非一度お手合わせを‥‥‥」

 

どうやら余計な事を言ったようだと後悔するアリシアは、遠い目をして、空を眺めた。

 

(ユーノ司書長、ごめんなさい‥‥‥頑張って)

 

***

 

戦闘後、トーマにも逃げられたシグナムとフェイトは、その場で考え込んでいた。

 

「妙な技を使う奴だったな。だが筋は悪くなかった」

 

「シグナム、あの子達は‥‥‥。私とは、やっぱり関係あるんでしょうか。その、プロジェクト、Fとか‥‥‥」

 

俯くフェイト。シグナムは先程までアリシア達が居た場所でしゃがみこみ、フェイトに答えた。

 

「逃げられた、が、少なくとも収穫0ではないようだ」

 

シグナムのその手には、戦闘中に落ちたであろう、アリシアの髪の毛。

 

「シグナム、それは?」

 

「あの子の髪のようだ。これで少なくとも、お前との関係は分かりそうだな」

 

***

 

困惑した顔をして話す、マリエル技官。

 

「クロノ先輩、こんな事って」

 

「だが、何度やっても結果は同じ。事実として考えるしかないだろう」

 

クロノの横で、「でもさぁ」とエイミィが話し始める。

 

「アリシアちゃんってかなり前に亡くなってるし、あのとき確かにプレシアと一緒にポッドごと虚数空間に‥‥‥」

 

「魔力データは残っていないから、分からない。だが、フェイトそっくりの見た目と、この結果。あの子はアリシアと見て間違いない、としか言えないな」

 

そう言ったクロノが見ているモニターには、シグナムが採取してきた、先程交戦した少女の検査結果。

 

 

『-鑑定結果-検体Aにはクローンの技術等の痕跡はなく、検体B(フェイト・テスタロッサ)のオリジナル遺伝子であると結論』

 

 

 

 

 




衝突、そして、正体ばれちゃった回。そりゃあぶつかれば髪の毛1本や2本は落ちます。うかつです。

どうやら、トーマはアインハルトに好意を持っている模様。リリィはそれが面白くない。
大人モードのせいでアリシアとアインハルトがまだ小さい事には気が付かず。

***
セイン「セインと!」
キャロ「キャロの!」
セイン・キャロ「「突撃インタビュー!」」
セイン「あれ?ウェンディは?」
キャロ「別次元に出張してます!」
セイン「?まぁ、いいや。今日のゲストは、エリオ~」
エリオ「あ、どうも。エリオです」
キャロ「エ~リ~オ~君~?合宿の話がまだ終わってないんだけど!どうしてフェイトさんにあんな事!」プンスカ
エリオ「へ?あ!(怒ってる‥‥‥)」アセアセ
セイン(あ、だからキャロか。‥‥‥て、これ放送できるのか?‥‥‥あ)

ガーガーガー

セイン「大変お見苦しい物が映っておりますので、終了するまで、こちらの大自然の映像をご堪能ください」

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