***第30話***
《でね、エリオ君がソニックフォームになったフェイトさんを撃墜したんだけどね?》
《へぇ》と感嘆の声を洩らすアリシア。エリオがフェイトを。成長したんだなぁと関心しつつも、キャロのその怒り気味の口調に首を傾げ、疑問をぶつける。
《そう言えばさ、何でキャロはそんなに怒ってるの?エリオが成長してるって事なんだから良い事なんじゃないの?》
キャロの隣で何やらニヤニヤして座っていたルーテシアがふと立ち上がり、待ってましたと言わんばかりにモニターを開き、話す。
《アリシア、キャロのご機嫌ナナメの原因は、コレ!》
エキシビション第1戦での1場面。2on1の状況になり、なのはに追われるフェイト。打開しようとソニックフォームになった次の瞬間。エリオがビルの上から降ってきて、フェイトにストラーダの強力な一撃を見舞う。それをまともに食らったフェイトは‥‥‥ジャケットの残った部分を手で押さえていないと、大事な部分が隠せないくらいにバリアジャケットが大破。両手で残った布部分を押さえ、顔が真っ紅のフェイトが、『エッ、エリオ!待って‥‥‥待って!』と叫んでいるが、エリオには聞こえていないようで、『フェイトさん、覚悟ぉ!』と叫び向かって行く所で映像終了。
その映像を見たアリシアの顔が変わる。瞳からハイライトが消え、無表情になり、映像のエリオを冷たい眼差しで見ている。
そのアリシアの表情を見たルーテシア。
「‥‥‥不味いよ、キャロ。私、あのアリシアの表情見たことある」
「えっ!?ルーちゃん、それいつ?」
「JS事件のとき、博士の所のモニターで。クァットロがボコボコにされた時の表情」
二人の血の気がサァーっと引いていく中、アリシアは音もなく立ち上がる。
《おっ、落ち着いて!》というキャロの声も聞こえていないアリシアがドアに向かおうとした時。後ろからその肩を掴む手に、ハッと我に帰るアリシア。
「どこ行くん?せやから何度も言うとるやろ。仕事終わったら何してもええよって。私も、カリムからもなのはちゃんからもフェイトちゃんからも頼まれてるんやから、確りな?」
振り返ると、満面の笑みを浮かべるはやて。しかしながら、その瞳は全く笑っていない。アリシアに向かってラグナロクでもブッ放しかねない威圧感のはやてに、アリシアは仕方なく仕事の続きを始めた。その横でモニター越しにはやてに絞られるキャロとルーテシアを横目に。
***
「お、終わった‥‥‥終わったよ、ライゼ。此れで合宿に合流出来るよ」
《ニャアァ!》
「うん、ありがと。もうすぐ朝だけどね」
深夜4時。コーヒー片手にテーブルに突っ伏しているアリシアは、終えたデータを教会に転送し始めた。隈の出来た目を擦りながら、荷物の整理を始める。
「なんだ、まだ起きていたのか。早く終わらせるのは悪いことではないが、身体を壊しては元も子もないぞ」
たった今帰ってきたらしいシグナム。こんな時間まで仕事をしているのはシグナムも同じなのだから、人の事は言えないと思いながらも、睡魔でそれを口にする気力もないアリシア。
「しかし、アリシアを見ていると、昔のテスタロッサを思い出すな。あの頃のテスタロッサとソックリだ」
「昔のフェイト?」
「そうだ。あれは昔から芯が確りしていて、腕もたった。バリアジャケットは昔からあんなだったが」
昔のフェイトのバリアジャケットならデータで見たことがある。今のソニックフォームに負けず劣らず、際どい。姉として、あのセンスはいつも心配になる。姉バカと言われようが何だろうが、もっとなのはのような、隙の少ない物にして欲しい、と思っていたり。
そんな会話をシグナムとしながら、今日の朝一でカルナージへ行く為に仮眠をとった。
***
アリシアが目覚めると、次元船の中だった。隣の席で、シャマルが静かに寝息をたてている。どうやらシャマルが寝ているアリシアを此処まで運んでくれたらしい。はやてに合宿中のメンバーのメディカルチェックとアリシアの引率を頼まれたシャマル。それに、向こうには自身の担当患者もいる。なのはとか。彼女の身体は、今は殆ど全線に出ず、残業もしていないとは言え重症。JS事件の際、アースラ魔導炉との魔力リンクの上、ブラスター3をフルドライブで使用、スターライトブレイカーまで使っている。一時期は最大魔力は80%まで落ち込み、常に痛みが消えないという状態だった。今はだいぶ落ち着いたが。
そんな訳で隣にいるシャマルを見つつ、まだ3時間程かかるその船旅を再び寝て過ごすアリシア。次に起きたら、カルナージ。
***
「「御世話になります」」と二人がメガーヌ・アルピーノに挨拶を終えると、シャマルは何処からか機材を取りだし、早速一人一人メディカルチェックを始めた。
アリシアは小さめの肩掛けのバッグを持ち、それ以外の荷物を部屋に置き、森の方へと向かう。所謂、森林浴。ここ3日間家から出られなかったアリシア。気分転換と、その後気分よく入浴するため。と言っても、森林浴自体は15分程にして、入浴を入れても50分程でみんなに合流する予定だった。無人世界だし心配ないと言ったのだが、一緒に行くと聞かなかったアインハルトと一緒に。
「アリシアさん。お仕事お疲れ様でした。今日はアリシアさんが合流したらまたエキシビションマッチをするそうです」
「そっか。アインハルトと手合わせするのは久しぶりだよね?」
心なしか顔が紅いアインハルトを見ながら、アリシアはテクテクと芝の上を歩く。
と、不意に二人の目の前に光が現れた。身構える間もなくその光に飲み込まれた二人の姿は、その場から消え失せた。
***
二人が気が付いた時には、月の浮かぶ夜空の下、空中を真っ逆さまに落ちていた。
「うわー!!!ライゼ、空中制御!アインハルトのサポートも!」
《ニャアァァ!!》
そうしてどうにか空中で浮遊している二人と一匹。隣では「ここは、何処でしょう?」と疑問を浮かべるアインハルト。何故かは分からないが、別の場所に飛ばされたらしい。森林浴と温泉を返して!と心の中で叫びながらも、アリシアは冷静に現状を分析する。しかしこの風景、何処かで見たことが‥‥‥。
「あっ」という声を発し、アリシアは気付いた。海鳴市だ。
「大丈夫だよ、アインハルト。ここ、海鳴市だよ。なのはとはやての故郷。知り合いの家にはミッド直通のゲートもあるし、取り合えず帰れるよ」
「それなら良かった。では現地の方々に見付からないように降り‥‥‥!!」
アインハルトは言いかけた途中で身構えた。二人に近づいてくる魔力が二つ。あり得ない。海鳴には現在、魔導師は常駐していない筈。アリシアも身構え、二人は魔法陣を展開する。
「『セーット、アーップ!』」
「『武装形態!』」
それぞれ大人モードになり、バリアジャケットに身を包む。その場で構えていた二人は、近付いてくる魔力に違和感を覚えた。
「アリシアさん、この魔力の感じは‥‥‥」
「うん、アインハルト。まさか‥‥‥ね」
近付いてきたその魔導師は。
「そこの魔導師の方々。こちら時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサです。ここは管理外世界です。渡航証明はお持ちですか?お持ちでないなら少しお話を」
「フェイトさん!?」
「ちっちゃいフェイト!?どうしたの!?新しい魔法の練習?」
二人の反応に、少し混乱しているフェイト。困惑顔で「何処かでお会いしましたでしょうか?」と話している。おかしい。何故さも知らないかのような反応?何故子供の姿?
そう考えていたアリシアの目の前に、またもや信じられない人物が現れた。
「フェイトちゃーん!」という聞き慣れた声を発し現れた人物。
「フェイトちゃん、この人達は?」
「うん、なのは。欠片ではないみたい。けど、私を知ってるみたい」
「そうなんだ」と発した、目の前にいるフェイトと同い年(9歳くらいか)のその人物は、予想通りの、驚くべき人物。
「私は時空管理局嘱託魔導師、高町なのはです。ここは管理外世界です。もし良かったらお話聞かせてもらえませんか?お時間は取らせませんから」
「ねえ、アインハルト。私頭痛くなって来たんだけど、今思ってる事言ってもいい?」
「アリシアさん。私も嫌な予感がするのですが‥‥‥。もう少し現状を把握してからでお願いします」
アインハルトがそう言うので、アリシアは目の前の、なのはと名乗った、なのはに何もかも瓜二つな少女に尋ねた。
「あの、今新暦何年ですか?」
「ふぇっ?新暦ですか?66年ですけど?」
やっぱり、と項垂れたアリシアとアインハルトは頭を抱えた。
過去に飛ばされたアリシアさんとアインハルトさん。
例によってあの事件に巻き込まれます。
戻った後のエリオの運命や如何に。
セイン「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「突撃インタビュー!」」
ウェンディ「祝!30話!」
セイン「まぁ、プロローグ入れたら31話だけどね」
ウェンディ「記念すべき今回のゲストさん、どうぞっス!」
セイン(こいつ聞いてねぇ)
フェイト「ど、どうも。フェイト・T・ハラオウン、です。」
セイン「お疲れ様です、フェイトさん。ウェンディに呼ばれるなんて大変ですね」
フェイト「セイン、これって何するコーナーなの?」
セイン「えっと…」
ウェンディ「フェイトさん!『なのフェイってありっスか?」
フェイト「なのフェイって?」
セイン「ウェンディ…この期に及んでそんな質問?フェイトさんは有りもなにも進行形で実践中だろ」
ウェンディ「そうっすね」
フェイト「え?え?二人とも?なのフェイって何??」