ーーコロナ・ティミルーー
魔法少女リリカルなのはVivid、始まります。
第28話
***第28話***
「今の演技、10点満点中何点?」
「ん~、7点かな」
「まだ7点かぁ。悔しいよぅ」
「でもだいぶ上手くなってきたね」
「う~。も、もう一回!もう一回やるから!」
高町邸。その部屋の一つ、アリシアの部屋。先生はアリシア、生徒はコロナ。何の授業かというと‥‥‥
コンコン、というノックと共に「お邪魔します♪」といういつものノリで入って来たのは、なのは。
「コロナちゃん、いらっしゃい。紅茶とケーキ作ったからどうぞ♪いつも頑張るね」
なのはは何故か三人分のケーキと紅茶を持ってきている。どうやらここでコロナの特訓を見学する気のようだ。
「ありがとうございます、なのはさん。なのはさんは何でも出来て羨ましいです」
丁寧なコロナのお礼に、なのはが答える。
「そんな事ないよ。私には『それ』、出来ないもん」
なのはの言う『それ』とは、今まさにコロナがテーブルの上で披露しているもの。熊のヌイグルミによる、フィギュアスケート。その熊をコロナが操り、演技をさせている。「今日はフィギュアスケートなんだね」と、何だか懐かしそうな目でそれを見ているなのは。
「やっぱり7点。大分上手くはなったけど、もう少し」
アリシアは再採点をして、紅茶に口をつけた。
***
コロナがヴィヴィオと出会い、ストライクアーツを始めてもう暫く経つ。リオが加わり、アインハルトが加わり。最初はヴィヴィオに付いていくのも精一杯で、辛くて、上手くなれなくて、何度も辞めようと思った。しかし、ノーヴェに励まされ、少しずつだが上手くなっていくのに喜びを感じるようになり、辞める事なくここまで来た。
でも。コロナは分かっている。自分だけが他の三人よりも劣っているのを。
そんなある日の早朝の事だった。日直のコロナは早く学校に着きすぎてしまい、散歩でもしようかと教会の庭を歩いていた時だった。何処からか打ち合う音がする。音の方へと歩いてみると、ノーヴェとアリシアが手合わせをしている。コロナはその光景を見て、呆気に取られていた。あんなに凄いと思っていたノーヴェが、アリシアに押されているではないか。執務官の補佐をしている、という事は知っていたがまさかこんなに強いなんて。遠くで良く聞き取れなかったが、ノーヴェが何か言った後に、アリシアは変身魔法で『大人モード』に変わる。
『大人モード』になったアリシアは強かった。ノーヴェが反撃する間もなくやられるのを見ていたが、学校の時間があることを思いだし、コロナはその場を後にした。
その日の放課後にその事をアリシアに聞いてみると、彼女は照れ臭そうに「見てたの?教会のシスターさん達にはナイショね?うるさい人がいるから」と右手を口に当てて笑うだけ。
コロナはアリシアのその右手を見る。関節が可動式なだけの、普通の義手。にも拘らず、それはまるでアリシアの本当の右手のように動いている。
操り人形と似たような原理だとアリシアが言っていたそれは、数えるほどしかクリエイトしたことはないがゴーレムマイスターであるコロナにとって学ぶべき技術。自分と同じ魔法が使えて、しかも強さも技術も一級品。そして何より、毎日会える友達。これ以上の条件はない。そう思ったコロナは、アリシアに弟子入りする事を決めた。
「私に魔法の使い方を教えて!強くなりたいの!みんなの足を引っ張りたくないから‥‥‥」
そう言ったコロナに、アリシアは少し考えた後に「分かった」と了承の返事をした。
次の日にアリシアは、何処からか大量の映像データを持ってきた。
「97管理外世界の、ダンス諸々の映像だよ。コロナにはこれを演技してもらうから。これでね?」
そう言って差し出したものは、熊のヌイグルミ。ゴーレム操作の要領でこれを操り、映像の通り演技させるというもの。アリシアが言うには、小さく繊細な物を正確に動かす事が出来れば、大きい物を動かすのは簡単なのだそうだ。それに、この訓練は操作の反応速度を上げる事も考慮しているという。ともかくこれで10点満点中9点が取れれば次のステップに進む、という。
そうしてコロナの訓練の日々が始まったのである。ある時は、ベリーダンス、ある時は、サルサ、またある時は、フラメンコ。というように、毎回出される違うお題に挑むコロナ。初めはヌイグルミを上手く動かせなくて、散々な点数だった。悔しくて、家で泣きながら一晩中練習したことだってあった。
***
そんなこんなで、現在。熊を操り、テーブルというリンクを滑らかに滑り演技させている。かなり上達したものの、まだ7点。
「う~」と、悔しそうに唸るコロナを見て、なのははアリシアに念話を飛ばした。
《かなり上手くなったと思うけど。アリシアちゃん相変わらず厳しいね》
《そうかも。私だって早く色々教えたい。でも、強くなりたいならちゃんと手順を踏まないと。この魔法は『危険』だから》
ゴーレム操作の強さの行き着く先。自身の五体の完全外部操作。自身の身体の崩壊と隣り合わせの、危険な魔法。平和な現在の世界の競技者が使用すべき魔法ではない。コロナが本気であればあるほど、自身のリミットを知っていなければならない。そうしなければ、最悪、その身体がボロボロに破壊され、車イス生活になってしまう事だって有りうる。
だからこそ、アリシアは慎重にコロナを育てていた。自身やなのはのように、無茶をして欲しくなかったから。
それに、コロナはきっと強くなる、アリシアはそう思っている。何故ならば、オリヴィエのスタート時よりもコロナのほうが操作が上手かったから。
センスも判断力もあるこの子ならきっと、自分の技術をモノにしてくれる。アリシアはそんな思いをコロナに抱き、今日もその成果を見ていた。
「ただいま~」
元気な声をあげてヴィヴィオが帰って来た。今日の特訓はここまで。アリシアがなのはに釘をさす。
「ヴィヴィも帰って来たし、今日はここまでだね。なのは?」
「分かってるよ、二人とも。ヴィヴィオにはナイショ、だよね?」
そう言ってコロナとアリシアにウィンクするなのは。「じゃあ、宿題も頑張ってね、二人とも♪」と言って部屋を出るなのはに、「ハ~イ!」と返事をした二人は、合流したヴィヴィオと共に宿題を始めた。
***
「おぉ、アリシア。これはすっごいね!アイデア広がるわぁ」
「でしょ?ルールー?」
ここは湯の街、海鳴温泉。
何故か「本場の温泉が是非とも見たい!!」と駄々をこねるルーテシアを、使える手は全て使って97管理外世界の海鳴市まで連れて来た。犠牲にしたのは、なのは、フェイト、クロノ、はやて、カリム、リンディ、ゲンヤ・ナカジマと錚錚たるメンバー。ルーテシアの罪状から言って、本来なら管理外世界においそれと旅行できる立場ではない。
それを半ば強引に審査を通し、こうしてユックリまったり温泉に浸かっているわけだ。因みに、引き替えに次回の合宿はタダ、という訳。
「いやー、あったまるぅ。これが本場の温泉かぁ」
「それでさ、ルールー。何で温泉?」
「それはね、アリシア。な、な、なんと!掘ったら温泉湧いて来たって訳よ!だから、本場を参考に浴場作ろうかと思ってさ」
ルーテシアによれば、温泉が湧いて来たから大浴場を作る予定で、それに伴い宿泊ロッジも改装するのだとか。しかも、設計も工事もルーテシアがすると。スケールが大き過ぎて開いた口が塞がらないが、間に合うなら結構。アリシアは思考を本題へと移す。
「それでルールー、例の物は出来たの?」
「バッチリよ!私特製、コロナ専用インテリジェントデバイス!でもわざわざ取りに来たって事は、あの子も次のステップに進んだのね」
そう言ってお湯に浸かっていた状態からザバーッという音と共にいきなり立ち上がったルーテシアは、露天風呂のほうへと歩きだした。それに併せてアリシアも露天風呂へと移動する。
「うん。この短期間で課題クリアされちゃった。次はゴーレムクリエイトの時間短縮。何なら詠唱破棄。この調子なら教えられるんじゃないかな‥‥‥エレミア流」
心なしか嬉しそうなアリシアを見て、露天風呂に浸かりながらルーテシアはイタズラな笑みを溢しながら言う。
「『エレミア流格闘術』って正式名称なんて無いでしょ。それにアリシアって、コロナじゃなくてアインハルトにご執心じゃなかったっけ?」
アリシアは顔を真っ赤にし、ルーテシアの意地悪なそれにすぐさま反論した。
「ちっ、違うからっ!好きとか嫌いとかじゃなくて、クラウスの子孫だし、子供みたいって言うか‥‥‥」
最後の方はゴニョゴニョと尻すぼみになったアリシアを、ルーテシアは「ふーん」とニヤニヤして見る。
「アレー?『ご執心』とは言ったけど、好きとか嫌いとかは聞いて無いんだけどなー」
そんなイタズラな事を言うルーテシアに、「ばっ、バカ!」と更に顔を真っ赤にするアリシア。明後日の帰宅までルーテシアに振り回されるアリシアだった。
コロナフラグ回。ちゃんとした師匠が居れば強くなるんじゃ?と思いオリヴィエの一番弟子にしてみました
。ルーちゃんとアリシアの入浴シーンはオマケです。
***
セイン「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「突撃インタビュー!」」
ウェンディ「やっと出番!」
セイン「もうウェンディ居なくてもいいのに」
ウェンディ「そんなヒドイッスよ!」
セイン「んで、今日のゲストはっと‥‥‥」
ジーク「あっ、あの、ウチです‥‥」
セイン「顔真っ赤だけど、大丈夫?熱あるとか?」
ジーク「えと、大丈夫です。緊張しとるだけやし」マッカ
ウェンディ「おおー、チャンピオン!八神司令に話し方似てるっすね!早速ですけど、サイン下さ‥‥‥ゲフッ!!」
ジーク ビクッ
セイン「ジークが恐がってるだろ!ウェンディ!お前ちょっと黙ってろ」