過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第27話

***第27話***

 

とあるカフェテリアの屋外テーブルに座る女性グループがあった。年齢層は小学生~20歳前後くらいまでと様々。何故かシスターや執事までいるその集団の中。

 

「だー、うるさい!何でお前ら居るんだよ!いいか、『アイツ』は繊細なんだから余計な茶々入れるんじゃねえぞ!」

 

「すまんな、ノーヴェ。姉は止めたのだが……」

 

かつてのナンバーズの社会復帰組が全員揃っている。そんな状況に苦笑いをして謝るチンク。ノーヴェは「ハァ」と大きく溜め息をついてチンクに言った。

 

「いいよ、チンク姉。コイツらどうせ言っても聞かねえし」

 

「とは言え姉も噂の『覇王』がどんな人物か興味があったのも事実だがな」

 

そんなチンクの『自分も興味本意で来ました発言』に、ノーヴェは「チンク姉まで……」と言って頭に手を当て、大袈裟に溜め息をつく。

 

学校帰りのヴィヴィオはそんな2人の所へ来て、これから来るであろう人物について訊ねた。

 

「ねぇノーヴェ!アインハルトさんってどんな人?」

 

「フェイトさんに聞いてないのか?紺と青の虹彩異色の瞳で、カイザーアーツって古流派だ」

 

ヴィヴィオは首を傾げ、思った。それはもしかして、前にアリシアの言っていた『あの』アインハルトの事なのではないだろうかと。4年前にアリシアが教会でよく練習に付き合ったという、あの。

 

スバルに「取り合えず座りなよ」と促され、目の前のイスに座るヴィヴィオ。「アインハルトさんって、もしかして……」と言おうとしたところへ、「失礼します」、と声がした。その方向を見ると、一人の少女が立っている。

 

「すみません。遅くなりました。アインハルト・ストラトス、参りました」

 

碧銀のツインテール。虹彩異色の瞳。St.ヒルデ魔法学院の中等部の制服に身を包んだ彼女は、ヴィヴィオが『姉』と慕うアリシアの言っていた特徴と一致する。ヴィヴィオは彼女に駆け寄り、挨拶を交わした。

 

「初めまして。ミッド式ストライクアーツをやってます、高町ヴィヴィオです!」

 

***

 

アインハルトは目の前の少女の姿に、思わず息を飲んだ。紅と翠の瞳。その容姿は、クラウスの記憶の中のオリヴィエの少女時代のそれそのもの。アインハルトは確信した。この子が、クローン。アリシアが守った……。

 

「あの、アインハルトさん?」

 

ヴィヴィオのその声に、ハッとして意識を目の前の現実に戻す。

 

「すっ、すみません」

 

恐らくアリシアが生きていたらこの子と同じくらい。疑問を浮かべ首を傾げる少女の仕草は、オリヴィエのそれとは違う。アインハルトは少女に対する落胆を誤魔化す為もあり、質問で返事を返した。

 

「あの……今日はフェイトさんは?」

 

「フェイトママならお姉ちゃんとお仕事ですよ」

 

「ママ……ですか?」

 

「あぁ。私となのはママの後見人なんです」

 

フェイトがこの場に居ない事に、アインハルトは落胆していた。アリシアの事で聞きたい事が沢山あったのに。そんなアインハルトとヴィヴィオに、ノーヴェは手合わせを促し、市内のスポーツコートへと移動する。

 

そのストライクアーツエリア。アインハルトとヴィヴィオが打ち合おうと準備を始めた時であった。此方に向かって走る2人があった。

 

 

「間に合ったかな?フェイト」

 

「間に合ったみたいだよ、ホラ、あそこ」

 

アインハルトは、その声に思わず動きを止め、声の方向に振り向いた。その表情は目を見開き固まったまま。彼女の体は、一切の動きが止まっている。

暫くそのままだったが、ようやく彼女は言葉を絞り出した。

 

 

 

 

「アリシアさん!!」

 

 

 

 

アインハルトはアリシアへと駆け寄ると、その存在を確かめるようにその手に触れた。左手からはその温もりが伝わってくるが、右手は……

 

「ごめんね、アインハルト。ずっと会いたかったよ。あの事件の後ずっと入院しててね」

 

「あっ、あの!その右手……」

 

「うん。『ゆりかご』でちょっとね。でも、片手で済んだから」

 

「いえっ、そんな事が言いたいんじゃないんです。私……私は……」

 

アリシアは笑顔でその手を握り返す。遂にアインハルトは耐えられなくなり、その感情を抑えられなくなった。

 

「アリシアさん……貴女はこの世界から消えてしまったと思っていました。ずっと辛かった……ずっと会いたかった。もう、置いて行かないでください……」

 

アリシアのその手を握ったまま。アインハルトは下を向き、肩を震わせ涙を流す。アリシアはそのアインハルトをその場に座らせ、その横に自分も座る。

 

「大丈夫。『ゆりかご』はもうない。それに、もう何処にも行かないよ。私はちゃんと貴女の傍に居るから」

 

アリシアはそう言ってアインハルトの頭を撫でる。アリシアに寄り掛かったまま、肩を震わせ泣いたままのアインハルト。

 

やがて落ち着いたアインハルトは、公共の場で一目も憚らずアリシアに寄り添い泣いていた事が恥ずかしかったのか、それとも別の理由からなのか、頬を紅くしたままその場から動かない。アリシアの左肩にもたれかかり、じっと目を閉じたまま。アリシアはそんなアインハルトを、まるで自分の娘でも見るかのような優しい眼差しで見ていた。

 

 

そんな2人を見ていたヴィヴィオ。『大好きな姉』がアインハルトに独占されている事に少しだけ嫉妬していたが、2人が再会できて良かったとも思う。いくらヴィヴィオがオリヴィエのクローンだったとしても、アリシアはオリジナルでアインハルトは純血統。あの2人の間に入り込む余地はないのだろう。少しだけ自身の2人の母親の関係に似ている、と思ったヴィヴィオは、フェイトに感想を洩らした。

 

「今のアインハルトさんって、なのはママと一緒に居るときのフェイトママみたいだね」

 

「ヴィヴィオ、なっ、何言ってるの!?」

 

少しだけ、と言うには余りに盛大に狼狽したフェイト。それを見てヴィヴィオは続ける。

 

「だって、この前一緒にお風呂入った時だって、なのはママが入って来たら顔真っ赤にしてたし」

 

「そっ、それは恥ずかしかったから」

 

フェイトのその普通でない反応に、近くにいたノーヴェがポツリと言った。

 

「やっぱり……フェイトさんのなのはさんに対する感情はソッチ系の……」

 

「ノーヴェ、違うからね!?私はノーマル……待って。今『やっぱり』って言ったよね!?『やっぱり』ってどういう事!?」

 

いつもの弄られ役にフェイトが収まっているその瞬間も、アインハルトは喜びを噛み締めていた。

 




キリが良かったので、今回はいつにも増して短めで失礼します。
無事アリシアと再会おめでとう回でした。
***
セイン「セッ…セインと!」
なのは「なのはの!」
セイン・なのは「「突撃インタビュー!」」
なのは「どうしたの?そんなに緊張しちゃって」
セイン「い、いや、別に何でもないです」(展開が読めるからなのはさんが怖いだけです!)
なのは「じゃあ、今日のゲストさん行ってみようか♪」
ヴィヴィオ「こんにちはー!ゲストの高町ヴィヴィオです!早速ママに質問!」
セイン「!!」(嫌な予感!)
なのは「なーに、ヴィヴィオ?」
ヴィヴィオ「タイトルはいつまで『魔法少女』で行くの?」
セイン(うわー!!)
なのは「何か、Vividの次からは違うらしいよ?」
ヴィヴィオ「そうなんだ。『リリカルヴィヴィオ』にはならないんだね」ガッカリ
なのは「残念♪」
セイン(いつもと違う!親子補正か!?)

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