過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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一緒に居ようって、必ず守るって、約束した。
だから、どんな事が有っても、助けてみせる。あなたの笑顔が守れるのなら。
ーーー高町 なのはーーー

魔法少女リリカルなのはstrikers、はじまります。


第4章 『ゆりかご』
第19話 覚悟


***第19話***

 

「良かった。アリシアちゃん、無事だったんだね」

 

その場に落ちていたボロボロの兎のぬいぐるみを拾い、なのはは込み上げる思いに必至に堪えて言葉を絞り出した。

 

「うん。無限書庫にいたから。なのは、あの‥‥‥」

 

なのはの表情は、他から見ても分かるくらい悲しみを湛えている。なんと言って良いのか、掛ける言葉が見つからない。アリシアは迷った末、大人モードになり、なのはを抱き寄せた。

 

「!?アリシアちゃん?」

 

「無理しないで、なのは。ヴィヴィオの事は私も辛いよ。でも、きっとなのははもっと辛いよね。今なら、周りに誰も居ないから」

 

その言葉に、なのはは感情を抑えられず、アリシアの胸に凭れかかる。そこには、エースオブエースでも教導官でもない、素顔のなのはの姿があった。

 

「‥‥‥約束したのに。ずっと一緒だって。私が、守るって。ヴィヴィオが痛い思いをしてるかもって思うと、身体が震えて、どうにかなりそうなの!私‥‥‥うっ、ううっ‥‥‥ごめんね、今だけ‥‥‥だから」

 

なのははアリシアの胸に顔を埋め、泣いている。たとえ不屈のエースだったとしても、なのはとて一人の弱い人間。辛いものは辛いし、泣きたい時だってある。

「いいよ、気が済むまで」と耳元で囁き、アリシアはなのはを抱き締める。

 

フェイトはその様子を遠くから見ていた。ヴィヴィオの事はフェイトだって辛くない訳がない。でもきっと、なのはのそれはフェイトのとは少し違うのだろう。なのはのそれは恐らく、目の前でプレシアを助けられなかったあの時のフェイトの感情に近いのだろう。

 

検分をしつつティアナと話しながら歩いていたシグナムが、辛そうなフェイトに気付き話しかける。

 

「テスタロッサ、お前も余り無理はするな。エリオの様子を見に行ってやれ。ティアナ、お前もだ。ここは私一人でも大丈夫だ」

 

「すみません、シグナム。お言葉に甘えさせてもらいます。ティアナ、一緒に乗ってく?」

 

「はい、フェイトさん。ありがとうございます」

 

フェイトとティアナは礼を言って、六課の負傷者が入院している病院に向かうのだった。

 

***

 

キャロ、エリオ、スバルの3人がいる病室。ティアナが立っているその隣のベッドの、スバルの負傷した左腕が、動かす度にウィィン、ウィィンとぎこちない機械音をあげる。当のスバルも、バツが悪いのか、辛そうな笑みを浮かべている。

 

キャロは空気を察し「飲み物買ってきます。行こう?エリオ君」と言ってエリオと病室を出る。2人となったティアナとスバルは、地上本部でのテロ事件を思い返していた。先に口を開いたのは、スバル。

 

「ティア、ごめんね」

 

「何に対してのごめんよ。私やなのはさんの言うこと聞かずに先行しすぎたこと?大ケガしてみんなに迷惑掛けたこと?」

 

「‥‥‥色々」

 

あくまでもその表情は暗い。あと1歩の所で、自身の目の前で拐われたギンガ。スバルは思う。助けられなかった。自分が、もっと強ければ‥‥‥‥‥‥。

 

「助けるチャンスはまだある。任務はこれから、スカリエッティ一味の追跡に変更になると思う。そうなればチームで助けに行ける。今度は絶対失敗なんてしない。必ず守るし奪われたものは奪い返す。全部よ!」

 

「‥‥‥うん」

 

スバルのその返事は弱々しいものだったが、ティアナへの感謝と決意に満ちていた。

 

***

 

『バイタル良好、魔力安定良し。移植準備OK』

 

スカリエッティのアジトの奥。固定され泣き叫ぶヴィヴィオ。レリックを手に、それを見てニヤリと笑うスカリエッティ。

 

『良いタイミングだね。さて、始めようか。 聖王の器に、今、王の印を譲り渡す。ヴィヴィオ、君は私の最高傑作になるんだよ』

 

 

 

***

新暦75年9月19日。

スバルの怪我も完治したその日の早朝。アリシアは聖王教会にいた。目的は、アインハルトに会うため。

 

「おはようございます、アリシアさん。今日はどうしてこんなに早くに?」

 

いつもなら放課後に会っている2人。早朝なんて珍しいな、程度で余り気に掛けていなかったアインハルトだったが、アリシアの様子がいつもと違うのに気付く。

 

「どうかしましたか?アリシアさん」

 

それに答えるかのように、アリシアは静かに口を開く。

 

「今日は模擬戦、しよっか」

 

それを聞いて、アインハルトはドキリとした。今まで、アリシアは模擬戦どころか、彼女の前ではバリアジャケット姿にすらなった事が無かったのだ。戦う姿を見たことがないので、当然アリシアの戦闘スタイルも見たことはない。一体今日はどういう訳だろう、と。しかし、いつもの言動からしてアリシアの能力が高いのはアインハルトにも分かる。彼女にしてみれば、自分の力を測るチャンスでもあるし、アリシアと組手ができる。誘いを受けない理由はない。

 

「分かりました。受けて立ちます。よろしくお願いします。‥‥‥『武装形態』!」

 

アインハルトはアリシアと作ったミッド、ベルカ混合術式を展開、大人モードになると同時に、自身の武装を展開した。

 

「うん、ありがとう、アインハルト。じゃあライゼ?『セット、アップ』」

 

虹色の光に包まれ、大人モードと騎士甲冑姿になるアリシア。

その姿を見て、アインハルトは息を飲んだ。その顔こそアリシアだが、纏っている甲冑はオリヴィエのそれそのもの。その格闘の構えまで同じ。

 

「‥‥‥アリシアさん」

 

「行くよ、アインハルト」

 

アリシアは疑問を口にする余裕を与えず、アインハルトに向かって行く。

 

 

 

結論から言えば、アインハルトの完敗。攻撃はアリシアに悉く避けられ、いなされ、反動を利用され。逆にアリシアの攻撃は反応するのがやっと。その殆どをまともに受けて、アインハルトは地面に寝そべって動けずにいた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ。アリシアさん、強いですね」

 

言いながらも、1つの推論がアインハルトの頭の中で確信になっていく。アリシアの格闘術は、やはりオリヴィエのそれだったのだから。

 

「ごめんね、やり過ぎちゃったかも。でも、手を抜くなんて嫌だったんだ。これが最後かも知れないから」

 

「えっ?それはどういう‥‥‥?」

 

これが『最後』とはどういう事なのか。引っ越しでもするのだろうか‥‥‥いや、それならば転移魔法でどうとでもなる。そう言えば、この光景は何処かで見たような‥‥‥‥‥‥まさか。

1つの確信を持って、アインハルトはアリシアの眼鏡型デバイスに手を伸ばした。その眼鏡を手に取ったまま、固まる。

やがて、涙が頬を伝い、アインハルトはその名を呼んだ。

 

「『オリヴィエ』‥‥‥!」

 

眼鏡型デバイスを外したアリシアの瞳は、アインハルトの脳裏に焼き付いたオリヴィエの印、紅と翠の虹彩異色。もう間違いない。オリヴィエだ、この人は。

 

「アリシアさん、どうして!」

 

「そっか。アインハルトは知ってるんだね、オリヴィエを」

 

「私には、クラウスの記憶が宿っているんです。あのとき貴女を救えなかった、クラウスの無念が!」

 

アインハルトはもう迷わない。自身の中のクラウスの記憶が叫ぶ。『アリシアをこのまま行かせるな』と。

 

「だけど私は、行かないと、いけないんです。『妹のように大切な子』が、助けを必要としているんです。ですから、私は行きます。例えあの時と同じ結果になったとしても。分かってください。クラウスの‥‥‥‥‥‥私の大切な人の子孫なら」

 

アリシアは、オリヴィエの時と同じ口調で、アインハルトに語る。クラウスと別れた時と同じ笑顔で。

 

「だから、今まで本当にありがとう、アインハルト」

 

嫌だ、そんなの。まるであの記憶と同じ、最後の別れ。アリシアは‥‥‥オリヴィエは目の前に、手の届く所にいるのに身体が動いてくれない。アインハルトに出来た事は、その場で涙を流し手を伸ばす事だけ。

 

「嫌です!お願いですから、行かないで下さい‥‥‥行かないで」

 

背を向け歩きだしたアリシアに向かって、精一杯の言葉を絞り出す。と、アリシアは歩を止めて、こちらに近付く。その顔がアインハルトの顔に近付いて‥‥‥。

 

「アッ、アリシアさん!?」

 

アインハルトは、狼狽し、顔が紅くなるのが分かった。その頬に、口付けをされた、のだから。

 

「貴女は、生きて下さい。クラウスの記憶や、私に縛られずに」

 

そう言ってアリシアは、転移魔法でアインハルトの前から消えた。最後まで笑顔のままで。

 

 

 

その日、アインハルトは空を見上げたまま、再び涙を流した。視線の先には、『ゆりかご』の姿。

 

「アリシアさん‥‥‥」

 

 

***

地上本部は混乱していた。レジアスの汚職を隠すためか、地上本部だけでの事件捜査の継続を強硬に主張、本局の介入を頑くなに拒んでいる状態。本局からの戦力投入は未だ行われず、同様に本局所属である機動六課にも捜査情況は公開されていない。

 

「私達が追うのは、テロ事件でも、その主犯格としてのスカリエッティでもない。ロストロギア『レリック』や。その捜査線上に、スカリエッティ一味がおるだけ、そういう方向で捜査していく」

 

巡航船アースラ内の会議室。フォワード陣、隊長陣主要メンバーを集め、はやては今後の方針を説明する。

 

「で、その過程において誘拐されたギンガと、ヴィヴィオを救出する。そういう線で動いていく。後見人の皆さんの黙認と協力はちゃんと固めてあるよ。こんな時の為の機動六課や。ここで動けな、部隊を起こした意味もない」

 

出動は本日中の予定。なのはは決意を新たにしていた。

 

(もうすぐだよ、なのはママが助けに行くから)

 

***

「はやて部隊長、ちょっと話があるんですけど、良いでしょうか?ゆりかごについて、なんですけれど」

 

会議の終わったあと。聖王教会から戻ったアリシアは、会議室に一人留まっていたはやてに話し掛けた。

 

「なんや?アリシアちゃん」

 

「ゆりかごの魔力供給システムについてです。玉座の聖王には駆動炉から半永久的に魔力が供給される仕組みになってるんです。 ですから‥‥‥」

 

「なるほどな。駆動炉を破壊する必要がある、と」

 

流石はやて。話が早くて助かる。

 

「それに‥‥‥『聖王』が相手なら、こちらも魔力供給をする必要があると思うんです。ゆりかごが出現した場合の突入隊メンバーは決まっていますか?」

 

「うん。私とヴィータと、なのはちゃんやけど」

 

「そのメンバーなら‥‥‥なのはのリンカーコアに、アースラ駆動炉と魔力リンクを繋いで駆動炉からの魔力供給をするべきです」

 

全力ではなかったにしろ、今のアリシアの『聖王の鎧』ですらオーバーSのゼストの攻撃を防いだのだ。レリックを融合させているであろうヴィヴィオに、果たしてどこまで攻撃が通るか。

3人の戦力を考えれば、一撃の威力が最も高く、防御も固いなのはにリンクを繋ぐのが妥当な線。

 

「でもなぁ。なのはちゃんの身体にこれ以上負担掛けるっちゅうのはなぁ。因みにやけど、シャーリー、今のアースラは最大出力どのくらいまで耐えられそうなん?」

 

「現状だと80%が限度ですかね。運航には50%有れば行けますから、25%をなのはさんに送るとすると計算上だと‥‥‥SSSに届きます!でも、なのはさんの身体がどこまで耐えられるかは‥‥‥」

 

シャーリーもはやても、なのはの事は心配。只でさえ無理をしているなのはに、これ以上の負担を強いるのは本意ではない。

 

「時間を限定する必要があるな。運用に当たって本人の了承も必要やけど」

 

「‥‥‥‥‥‥私、やるよ。はやてちゃん」

 

いつからそこにいたのか。なのはは決意を持って答えた。ヴィヴィオを助ける為なら、と。

 

「なのはちゃん!?せやけど、なのはちゃんの身体が‥‥‥」

 

「時間限定なら、平気だよ。それに、時間を過ぎてからならブレイカーもある。大丈夫。お願い、やらせて!」

 

それでも。はやてはこれ以上なのはに無理をして欲しくない。

 

「‥‥‥15分や。それ以上のリンクはあかんよ、なのはちゃん」

 

「分かった。15分だね。それで決めてみせるよ」

 

なのはは答える。いざとなれば、エクシードモードだけでなく、ブラスターもある。その上でリンクすれば。

 

そんな折。アコース査察官からの通信。

 

《はやてかい?スカリエッティのアジトを見つけた!》

 

***

 

「エネルギー反応、これは、戦闘機人のものです!地上本部に向かっています!」

 

「空からも別反応!こちらも目標は地上本部!」

 

戦闘機人とゼスト達の反応。地上本部に向かっているようだ。はやてが迎撃を指示しようとしたその時だった。

 

「エネルギー膨大!スカリエッティのアジト近くから何かが浮上しています!」

 

「あれは‥‥‥『ゆりかご』!!」

 

アリシアはモニターに映るゆりかごを睨む。あれが動いている、ということはやはりヴィヴィオが‥‥‥。アリシアは唇を噛んだ。

 

(ヴィヴィ‥‥‥必ず、助けてみせます)

 




なのはさん、アリシアさんそれぞれの決意回。
アリシアさんはこの時点では死も覚悟しています。

そしてアインハルトさんにバレました。
それから、ついにガールズラブのタグの正体が。

***
セイン 「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「突撃インタビュー!!」」
セイン「いやー、まさか続くなんて思わなかった!」
ウェ「何言ってるんスか!今日も張り切って行くっスよ!」キラキラ
セイン「ウェンディ、何か機嫌いいね?」
ウェ「いや~、パパリンにミルクプリン貰っちゃって!」
セイン「(どうでもよかった…)今週のゲストはこの人!すっかり質問キャラでお馴染みの、キャロ・ル・ルシエさんです!」
キャロ「えっ、ちょっと!酷いですよ!質問キャラなんて!」プンスカ
セイン「だって、ホラ、物語読み返してみてよ。」
キャロ ヨミカエス「……そんなぁ!私、原作ではもっとちゃんと……」シクシク
セイン「(あ、このコーナーそういう事か)そういえば、キャロは原作だとエリオに胸触られたり、一緒にお風呂入ったりしてるよね。」
キャロ「えっと///」カオガマッカ
ウェ「(分かりやすい…
)そういえばで思い出したんスけど」
セイン(何か嫌な予感が)
ウェ「今回の前書きってなのはさんスけど、この時って19歳っスよね?自分で『少女』って言うの、抵抗とかないん……どうしたんスか?二人とも?」
セイン・キャロ「「……」」
なのは「……。シュテル、ちょっといいかな?」ゴゴゴゴゴ
シュテル「いいでしょう、分かりました、ナノハ。」
なのは「ブラスター1!スターライトーー」
シュテル「豪熱滅砕!ルシフェリオンーー」
ウェ「……神は居なかった」
なのは・シュテル「「ブレイカーーー!!」」

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