***第18話***
新暦75年9月10日。地上本部公開意見陳述会2日前の夕刻。
何時ものように教会敷地内のベンチに並んで座る二人。その光景はいつもと少しだけ違う。アリシアの膝にちょこんと座る、子猫のぬいぐるみ。アリシアの発したその名前に、アインハルトは思わず「えっ?」と声を漏らした。
アリシアは今何と言った。耳がどうにかなっていないのなら、間違いなく『ライゼ』と言った筈。猫のその姿もあるせいか、アインハルトには命名の理由が1つしか思い当たらない。古くからクラウスと共にいた雪豹の名。覇王流の既知、古代ベルカ式魔法、虹色の魔力光、オリヴィエの癖、極めつけにライゼの名。これだけ偶然が重なるなどまずあり得ない。アリシアは関係者に違いない。そうであって欲しい、アインハルトはそう願わずにはいられなかった。
「あの‥‥‥アリシアさん。この間聞きそびれた事なんですが」
隣で「なあに?」と首を斜めに傾げるアリシアとライゼ。アインハルトには在りし日のオリヴィエのそれと重なって見え、思わず見とれてしまう。ハッとして少し赤い顔を逸らし、言いかけた言葉を繋ぐ。
「アリシアさんはその……聖王女オリヴィエとはどういう関係なんですか?いくらなんでも共通点が有りすぎると思うんです」
その言葉にピクリと反応し、何かを言いかけ、言葉を飲み込むアリシア。次に紡がれた言葉は、アインハルトの期待した答えではなかった。
「関係、ないよ。偶然だよ‥‥‥きっと」
そう答えたアリシアはしかし、アインハルトから目を逸らし、憂いを帯びた笑みを湛えている。関係あると自白しているようなものだ。いつもなら引き下がる所だが、今日こそは。
「でっ、でも……アリシアさん、私は!」
「ねぇ、アインハルト。それって、今じゃなきゃダメかな?」
アリシアは言葉を遮るように話す。
「ちゃんと話すよ、全部上手く行って、落ち着いたその時に。だから、もう少しだけ待ってて」
笑顔で話すアリシアに、アインハルトは何も言えなかった。この人はズルい。そうやっていつも私を。
「‥‥‥はい。きっと、ですよ」
「じゃあ、今日も頑張ろっか」
「はい。お願いします」
そうしていつもの光景。
アリシアは心の中で謝る。
(ごめんなさい、アインハルト。いつか必ず話します。‥‥‥『ゆりかご』と運命を共にする事無く乗り切れた、その時に)
その日、アリシアは日が沈むまでアインハルトの練習に付き合った。
***
隊舎に戻り、アリシアは部屋で一人考える。ヴィヴィオは間違いなくオリヴィエのクローン。それも、ゆりかごの鍵となるべく生み出されたのだろう。にも関わらず、敵にここまで何の動きもないのは不自然だ。嫌な予感がする……何か大きな事が起きるような。
「おねえちゃん!」
いつの間に来たのか、ヴィヴィオがアリシアに抱きついてくる。
「うん、ヴィヴィ♪」
「えへへ~」
アリシアはヴィヴィオの頭を優しく撫でる。この子を、守らなければならない。
「アリシアちゃんすっかりお姉ちゃんだね」
なのはは笑顔で二人を見る。一見すれば似ていない筈の二人。何故だろうか、どこか似ている気がする。
「姉さん、また考え事?何か不安とかあるの?」
フェイトは最近何かを考え込んでいるアリシアを心配する。
「大したことじゃないよ。このまま何も起きずに事件が終わればなって」
アリシアは、切に思う。このまま、ゆりかごが使われずに犯人が逮捕されれば。
***
翌々日の12日。アリシアは聖王教会にいた。目的は、古代ベルカの資料。もしかしたら、ゆりかごの資料もどこかに眠っているかもと思い、教会の書庫をしらみ潰しに当たっていた。シスター・シャッハも騎士カリムも地上本部の公開意見陳述会に出席の為、不在。勿論、書庫を探すのは2人は了承済み。六課も陳述会の護衛に当たっているため、隊舎に残っている戦力はザッフィーとシャマル、強いて言えばヴァイスくらいか。はやても陳述会に出ている為いつものように厳しい監視の目もない。アリシアはのびのびと本を探す。
まあ、やはり、というべきか。ゆりかごの詳細な場所を示す物は見当たらない。「ハァ」と溜め息をつき、これからどうしたものか暫し悩む。他に心当たりがあるとすれば、無限書庫。いつもいつもユーノ司書長にご足労をかけるのも申し訳ないし、いっそのこと司書資格を取ってしまおうかと思う。
「ライゼ、行きましょうか」
隣でゴロゴロと喉を鳴らしていたライゼに呼び掛ける。教会を出て、ライゼが《ニャア!》と一鳴きすると、その場で転移術式を展開。何かを思い出し、「あっ!」という言葉を残して、虹色の光に包まれアリシアは転移した。あとに残ったのは……多数の本が散乱している書庫の姿。
***
「ユーノ司書長、こんにちは」
「こんにちは、アリシア。今日も調べ物?」
「今日はゆりかごについて、ちょっと」
今日は目の下の隈もなく、調子も良さそうなユーノが出迎えてくれた。しかし今日のユーノはいつもと違い、アリシアの目を見つめ真剣な表情。ま、まさかユーノ司書長って私に気があるんじゃ‥‥‥いやそれだとロリ○ンって事に‥‥‥などと顔を少し赤くして考えていると、ユーノは不意にアリシアの顔に手を伸ばし‥‥‥‥‥‥
「やっぱりね。はやてが何か隠してると思ったら、そういう事か。アリシア、ヴィヴィオとはどういう関係?」
ユーノは眼鏡型デバイスを手に取り、アリシアの両目をまじまじと見ている。紅と翠の、虹彩異色。
「言っても信じないと思います」
はやてのような確信犯ならともかく、前世なんて言ってもきっと信じない。
「そう思うかい?これでも奇跡と運命には人よりは遭遇してきたつもりだけどね」
ユーノはそう言って微笑む。そういえばこの人は、ジュエルシードを見つけたり、なのはの魔法の先生だったり、闇の書事件に関わったりとかなり普通でない経験の持ち主だった。まあ、この歳で無限書庫の司書長をしている時点で最早普通ではないけれど。
アリシアはユーノに一通りを話した。ジュエルシードと前世の記憶やオリヴィエの力。「そっか」とだけ言い、微笑を湛えたユーノはアリシアの頭を撫でる。
そんな時だった。司書の一人から念話を受けたユーノは一瞬にして表情を険しいものに変える。彼の判断で書庫を一時閉鎖し、施設全体の警戒レベルを引き上げた。
「何??どうしたんですか、ユーノ司書長?」
何が起こったのかいまいち理解出来ていないアリシアに、険しい表情のままユーノは話す。
「管理局地上本部と六課が襲撃されてるみたいだよ……なのはやはやてとも通信が繋がらない。いいかい、アリシア。僕が許可するまでここから動いちゃ駄目だ!」
事態が動いた。本部はともかく、六課が襲撃されたとなると狙いはやはりヴィヴィオか。‥‥‥いや、今は不味い。六課に戦力が足りない。シャマルやザフィーラがいるとはいえ、仮に襲撃部隊にゼストやルーテシアが居るとしたら分が悪い。未知数の戦力がいる可能性もある。
(行かなくては‥‥‥)
「ユーノ司書長!私、六課に行‥‥‥」
「駄目だよ。アリシアは事態が落ち着くまでここに居ないと。君が聖王オリヴィエなら、余計に行かせる訳には行かないよ。はやてから聞いてる話が真実なら、君にとっても危険だ」
ユーノはアリシアの言葉を遮る。「ごめんよ、アリシア」という言葉を残し、アリシアを一時閉鎖した筈の書庫内へ強制転移させて外部との接続を切る。
やられた、とアリシアは思った。ユーノも伊達に修羅場を潜ってきた訳ではないようだ。書庫内に閉じ込められるとは。
頭では分かっている。敵戦力が掴めていない現状で戦闘中の六課隊舎に飛び込んでいって、仮にスカリエッティ側にアリシアが捕まりでもしたら今までの苦労がパアだ。アリシアとヴィヴィオの2人を同時に守るよりはヴィヴィオ1人を守るほうが防御だって集中しやすい。ヴォルケンリッターの2人だって信頼はしている。だけど。
やがてアリシアは書庫の奥へと進む。いくらここでどうこう考えても、恐らくユーノは出してはくれない。ヴィヴィオの事は心配だが、事態が鎮静化するまではここで時間を潰すしかない。
頭を切り替え進み、古代ベルカのブロックまで来たアリシア。本当は勝手に調べ回るのは駄目なのだろうが、他に出来ることもないし、ここに閉じ込めたユーノが悪い。そう考えそこに並ぶ本を見ていくと、あるものを見つけた。
(クラウスの‥‥‥自伝?)
どうせ時間はあるし、とそれを手に取り読み始めるアリシア。
その本に書かれていたのは、クラウスの回想。しかも、途中まではオリヴィエとの楽しかった日々の事ばかり。アリシアの脳裏に焼き付いているクラウスと過ごした幸せだった日々の記憶が幾つも甦る。それに、彼が覇王と言われた所以、つまり強くなろうとした理由も分かった。
(クラウスの、バカ)
我慢できずにボロボロと大粒の涙を流すアリシア。やっぱりあの時、振り返ってクラウスの元へ駆け寄れば良かった。ゆりかごへと向かわす、2人でどこか知らない土地にでも逃げれば良かった。もしそうしていたら‥‥‥
せめて、もう一度だけクラウスに会いたい。今更どうにも出来ない過去を思い、アリシアは涙する。
やがて、事態が鎮静したのか、その場で浮遊したまま泣いているアリシアのところへ、ユーノが寄ってきた。
「探したよ、アリシア。はやてが迎えに来てるよ。って、泣いてる?大丈夫?」
「大丈夫、です」
その日はやてに連れられてアリシアが見たのは、爆撃でも受けたかのような壊滅した六課隊舎と、アリシアを見るなり心配して抱きついてきたフェイトと、ボロボロの兎のぬいぐるみを見つけ涙しているなのはの姿だった。
テロ事件発生回。本部襲撃については詳しくは原作を見てくださいm(__)m
核心に迫るアインハルトと迷惑をかけたくないアリシアの絡みでした。
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セイン「セインと!」
ウェンディ「ウェンディの!」
セイン・ウェンディ「「突撃インタビュー!!」」
セ「遂にアタシらにも光が当たる時が来た!」
ウェ「いやー、長かったッスね。もはや半分空気みたいだったし。それじゃ、お仕事するっスよ!」
セ「第1回ゲストはこの人!Vivid編では出番ないであろうアルフさんです!!」
アルフ「どうも~って、おい!アタシをアンタらと一緒にするな!」
ウェ「いやぁ、仲間じゃないっスか!同じ…出番ない同士」シクシク
セ(これって傷舐め合うコーナーだっけ?)
ア「アタシは出てるじゃんか!Vivid編は無理っぽいけど。」ズーン
アルフ・ウェンディ「」ズーン
セ(アレ?なんだコレ……)