死人子育て記   作:Shushuri

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この小説ではナルトが悪戯小僧としてのレベルが下がります。以降の話を読む場合はその点を考慮して下さい。
'13/7/28 誤字報告より修正しました。


親心

 冬木ナツエはしっかり子育てを継続し、数年が継続したのだが、三代目火影、猿飛ヒルゼンと彼女の中は悪く、正確にはナツエが一方的に険悪的になり、三代目は申し訳なさそうにするという状態となった。

 理由として、「ナルトの正体が九尾である」という噂が一般人及び九尾事件に直接関わらなかった下忍、中忍に広まっているのだ。

 九尾を始めとする「尾獣」と呼ばれる存在を体内に封印した人間を「人柱力」と呼ぶのだが、忍の中でナルトが人柱力であると知った者には厄介者の如く見る。それは仕様がない事だ。人柱力は他里にも存在し、大戦で木ノ葉に甚大な被害を出した者もいる。暴走の危険もあり、他里でも問題点の一つである。

 しかし、噂の内容は問題なのだ。里内では「ナルトが九尾の狐を封印していることを語ることを禁じる」という触れが三代目自ら発しているのだが、一般人の認識の中に「封印された九尾が、人間の子供の姿となった」というものを信じている者さえいる。それも、明らかに人為的な意図が見え隠れしていた。

 里内の忍に噂を流した愚か者が居るのか、他里の「草」が一般人を対象とした噂を流したのかは定かではない。

 ナルトも既に年は四つ。数年前から時折里内に出歩いているというのに、人々の視線の変化を敏感に感じている。「四象封印」という強力な封印術の為に、九尾の力を知覚できていないナルトには謂れのない視線だ。

 ナツエは、嘗てナルトに封印のことを話すべきだと三代目に訴えでたことがある。三代目はそれに否を出した。子供ながらに、里の人間への罪悪感がでてくることに問題があるからというものだ。

 

「それじゃ、ナツエねーちゃん。行ってくるってばよ!」

「行ってらっしゃい」

 

 ナルトはアカデミーに行くことになり、町外れに一人暮らしをするように言われた。九尾事件の被害者でも、忍の方が理解度があるからだ。一般人の子供は親の真似事でナルトを白い目で見る。アカデミーにも一般人を親に持つ子がいるが、ナルトをいじめようとして止める教師がいてくれたのが幸いだろう。

 では何故、ナツエが一緒に暮らすことになったのか。里上層部がナルトに対する行いの牽制をする為である、という建前が三代目に用意されたが、事実は彼女が子離れできていない状態なのだ。三代目はアカデミーの校長も務めているので、ナルトをちょくちょく出会うことができるのだが、火影亭に棲む彼女は会えない、という嫉妬も含んだ瞳に三代目の顔が青くなったことも事実に含む。

 ある日のこと、ナルトがすごすごと帰ってきた。

 

「元気ないけどどーかしたの?」

「ねーちゃん。オレ、落ちこぼれだってば?

 手裏剣が的に当たんなかった。チャクラは、殆どの奴がよくわかってないみたいだったけど……」

「それじゃ、見てあげる」

「ほぇ?」

 

 ナルトは里の外壁側に近い、森の中に。ナツエは「先に行っておいで」の一言で送り出した。キョロキョロと当たりを伺って、ナツエを待つナルトに、後ろから声を掛けた。

 

「ね、ねーちゃん!? いつからいたってば!?」

「実はずっと後ろを付いて来たんだよ。忍法『隠れ蓑の術』っていうの」

 

 彼女は成長しない。外出時に見られれば流石に疑われる。時には「変化の術」で誤魔化すこともあるが、基本的には隠れ蓑の術を始めとする隠形を行うのだ。

 

「ねーちゃん、忍者じゃねぇのに忍術使えんの!」

「そうだよー。お姉ちゃん、理由があって忍者にはならなかったけど、忍術はずっと使ってるの。理由は、ナルトが大きくなったら教えてあげる。

 ほら、手裏剣術だよね。あの木の幹にむかって投げてみなさい」

 

 ナルトは手を大きく振りかぶって手裏剣を投げる。力は思いっきり入って、幹の横を通り過ぎる。

 

「真っすぐは飛んでるね」

「先生に手と腕の振り方教えてもらって、何度も練習したってば」

 

 ナルトの原因は足だった。

 アカデミーの教師も、ナルト一人に構っていられなかったから気付かなかった程度だろう。

 手裏剣は実戦では足場が悪かったり、こちらが走っている時でも投げれることが必須となってくる。その時には自身の正中線がしっかりとしていることがほぼ前提と言える。(中にはわけの分からない変態技能を発揮する輩もいないわけではない)

 ナルトは自分の体の軸が不安定なのに、足で踏み込んだり、若しくは腰がぶれていたのだ。これは一朝一夕ではなく、筋肉がある程度必要となってくる事柄でもある。

 

「あー、今の惜しかったってば」

「ナルト、今日はもう帰ろう」

 

 嫌がるナルトにナツエは自身の技能を見せることを代償に、帰ることを約束した。

 

「それじゃ、いくよ」

 

 手裏剣は持っていない。石や、折れた木の枝、木の葉を幾つか。それにチャクラを込めて硬質化させて、投げる。石は樹の幹にめり込んで、枝は突き刺さって、木の葉は枝を幾つか落とした。

 

「スゲーッ!! オレにも、オレにも教えて!!」

「今日は家に帰る。手裏剣の授業で良い点数を取ったら、コツを教えてあげる」

 

 その数日後のことである。彼女は過去とすり合わせを行ったのだのだが、アカデミーのカリキュラムが随分と平和的だと思う。平和的というより、戦争がないからゆっくりとしているということだろう。

 

「私の時代は、『木登り』程度なら養成所で教えてもらっていた記憶があるんですが」

「時代は変わったんじゃよ。火の意志を継ぐ者達を育む土壌となればよいのだ」

 

 アカデミーの校長室で三代目が煙管から口を離して煙を吐く。ナツエは目隠しをしているが、窓の外から校庭で実技の授業で体術を行うナルトを見ている。

 ナツエの言う「木登り」とは、そのままの意味ではなくチャクラの形態変化、吸着の性質を持たせることで垂直な場所に立つことができるというものである。体を水平に保つ筋力は体に纏わせるチャクラで使えるので、これを続けるだけで訓練としては十分なものだ。

 

「チャクラの授業が『変化』。卒業課題が『分身の術』ですか。そもそも、単体じゃまず役に立たない忍術ですよね」

 

 「変化の術」はチームプレイの中か、動物の生態を勉強しなければそこまで役に立たない。小物にも変形できるので、忍具に変化して味方に投げてもらい、相手に接近する。動物に関しては、四足歩行の動物だけでも歩くのが難しいのだ。違和感なく動物の姿で過ごすのは熟練の業が必要不可欠だ。人に化けるのは、下忍相手ならば通じることもあるだろうが、部隊長を任されることがある中忍以上、またはチャクラの質を見極める「感知タイプ」と分類される忍には簡単に露見するのだ。

 そして「分身の術」だが、これは説明するなら誰でも見ることが出来る幻術のようなもの。実態がないのだ。よって、触れば一般人でもわかる。下忍でも簡単に見分ける方法がある。主に幻術と併用して扱う忍術であり、実態を周囲の物質で与えることができる、「水分身」や「土分身」の練習用だ。手裏剣等の飛び道具に分身を使うことができるならば役立つが、それができるなら他の忍術を覚えた方が効率がいい。

 

「子供はああいう解りやすい忍術が好きじゃからな。まぁ、火遁に憧れる子は随分と多いが」

「『木登り』は自分の実力が分かりやすくて好きですけどね。まぁ、分身を維持できる程度のチャクラコントロールがないと難しいのは認めますけど、木登りは修行でもありますし。今度ナルトの前で天井にぶら下がって掃除してみます」

 

 「木登り」が出来れば天井にぶら下がれるので、そのまま拭き掃除ができる。身体強化ができればタンスの中身が入ったまま持ち運びできて掃除が楽。家を綺麗に出来て忍術の修行になる。一石二鳥であるが、一部のDランク任務はこのような意図も含む。ついでにナツエ本人は家具を「口寄せ」で巻物に収納して空っぽにしてから掃除する。

 

「まぁ、忍の子はそういう家もあるから好きにするといい。正直、今のナルトの年で分身ができるようになっても、卒業を見送ってもらう必要があるか」

「……只の才ある子ならば問題ありませんが、ナルトは人柱力ですから、もう少し年を重ねた方がいいでしょうからね」

 

 その意味では、ナルトはアカデミーでも平均的な十一、二歳程度で卒業してもらうことになるだろう。ある程度チャクラが操れれば、六歳だろうが卒業できるのが忍者学校なのだ。しかし、忍との戦闘が考慮されていない下忍でも、中に人柱力がいるならば、それを狙ってやってくる可能性もある。対して、血継限界は年齢が低い場合は開花していないことが多く、発揮出来れば即戦力になりやすいので狙われる心配は少ない。

 

「まぁ、お前さんとの仲が修復できる切掛が掴めて何よりじゃ」

「この見た目童子の私に向かって、ロリコンですか? 校長止めて下さい」

「ふんっ! 女はこう、体にメリハリが必要じゃよ。生徒に欲情することなど有り得んし、ロリババアもいらんわ。体を成長させて出直してこんか」

「……穢土転生は対象の遺伝子情報と贄が必要ですけど、霊体だけを浄土から口寄せするだけなら、贄とかいらないと思うんですよね。……ビワコ様の口寄せに挑戦しましょうか」

 

 猿飛ビワコ。三代目の妻であり、九尾事件の折に故人となっている。

 アカデミーの教師が校長室に入ると、少女に向かって土下座する三代目の姿を見て書類を落としてしまったのは余談である。




正直な話、穢土転生があるなら某霊能力作品の如く死者の魂を口寄せって結構出来そうですよね。人形に憑依させるとか出来そうな気がします。まぁ、それができちゃったら「〇〇に殺されて……」等でナルトの隠し要素全部無くなるオチになってしまいますけど。
ナルトは主人公が家族やってるんで悪戯小僧のコースには突入しません。座学で居眠りして頭が悪い程度です。この後の話し辺りから「原作メンバー改変」でも警告タグにつけるべきでしょうね。

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