死人子育て記   作:Shushuri

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全体的に短めの話になります。現在掲載中の作品の改変に手こずっている時に思いつきで書いた作品ですので、全体的に設定も甘いかもしれませんが、ご了承下さい。


発覚

 「忍」。

 チャクラというエネルギーを扱い、超人的な肉体と、不可思議な術を用いて戦う者達である。幾つかの国は忍の為の里を持ち、戦争すら忍が主役であった。

 特に五大国と呼ばれる国の里長は「影」の称号を持ち、忍としては領域は最も高いとされている。

 火の国。木ノ葉隠れの里、火影。

 水の国。霧隠れの里、水影。

 雷の国。雲隠れの里、雷影。

 土の国。岩隠れの里、土影。

 風の国。砂隠れの里、風影。

 

 岩山を掘って造られた人工的な洞穴。幾分かの穴が小さな光と空気の流れの出入りを許すのみという場所に、一人の少女が質素な着物姿で居る。年の頃は十二か更に下。目に包帯を巻きつけた、病的な白さを持つ人形のような彼女が、急に動き出して手を組む。――「印」と呼ばれる、忍者が術を使う為の動作の一種――

 瞬間に土壁の一箇所が内側に向かって崩れると同時に、風が巻き上がって瓦礫が少女や、その後ろにある家具に当たることを防いだ。

 

「素晴らしいわね」

 

 出てきたのは、一人の男。のっぺりとした顔立ちに、長い髪の男だ。

 

「『口寄せ・穢土転生』。二代目火影が考案した禁呪だけれど、中々、此処の持ち主はいいアレンジを考えたのね」

 

 穢土転生。既に死亡した人間を、生贄を用いて世に戻す禁術である。

 

「……何方か、お訊きしてもよろしいですか」

「大蛇丸よ。木ノ葉の忍で、三忍なんて呼ばれているわねぇ。

 貴女が冬木ナツエね。貴女のお父さん、冬木ドウシンの研究成果が欲しいの。譲ってくれるかしら? 何なら、貴女自身でも構わないわよ」

 

 冬木ナツエは木ノ葉の三忍というものを知らないが、相対する男の強さが理解できる。

 

「父の研究は、木ノ葉では禁術ですが」

「これでも火影候補なのよ。私も穢土転生なら使えるけれど、あれだけじゃ足りないのよねぇ。

 それに、あの里の裏切り者、冬木ドウシンの研究成果を発見したというのも功績の一つだと思うけれど」

「父の目的は私です。父の成果が私です。父の死は私の為です。故に、それが火影であろうが、他里の忍であろうが、渡すつもりは毛頭ありません」

 

 大蛇丸は、口角を上げ、瞳孔を狭める。

 大蛇丸の袖口から多くの蛇が出てくる。忍法「潜影多蛇手」。その蛇が一時的に止まる。

 

「『金縛り』を私の蛇相手に成功させるなんて、凄い練度じゃない」

「風遁・酸化の術」

 

 「金縛り」は 忍者見習いの生徒が習う初級忍術だが、それだけに上級の忍者が行った場合の効果が強く、アレンジもしやすい。代償に防ぐ手立ては広く研究されており、大蛇丸本人は対策をしているが、口寄せによって呼ばれる蛇には対策されていなかった。そして、ナツエが印を組んだ瞬間に、大蛇丸が爆発する。

 「風遁・酸化の術」。周囲の酸素濃度を急上昇させる術である。酸素は毒性があり、濃度が高ければ人間を死に至らしめる。更に、術名に相応しく酸化現象を引き起こし、相手の忍具や防具等を劣化させる目的を持つ術。よって炎が上がりやすいのだが、炎は大蛇丸が態と引き起こしたもの。酸素中毒よりも燃焼による熱の方が無難であるという判断である。

 炎により防がれたと判断したナツエは、土遁を利用して場の放棄と共に大蛇丸の生き埋めを考慮するが、彼の風遁によって瞬く間に吹き飛ばされた。

 体躯が子供のナツエは体術も訓練しているが、術の方が得意となる。

 

「毒霧隠れの術」

 

 「霧隠れの術」という、霧で周囲を覆い、敵味方問わず視界を塞ぐという術がある。名の通り霧隠れの忍がよく使い、自身がきりの中で相手を補足する手段があり、相手にない場合に有効な技。

 「毒霧隠れの術」は発生させる霧隠れに毒性を持たせる。自身が索敵機能と同時に、対毒性がある場合に使うもの。

 大蛇丸は体を低くし、風遁の風で自身を覆って毒対策をする。

 

(周囲の草木に影響が見られない。……神経、経絡系に作用する毒かしらね)

 

 蛇はピット器官と呼ばれる、熱探知による獲物の捕捉が可能だ。大蛇丸は、自身がその機能を持つように自身の体を改造しているが、熱源は探知できない。

 

(相手は、穢土転生のアレンジでこの世に存在し続ける死者。運動してもあまり熱量が発生しないし、参ったわ。それに一つ一つの術の練度も高い。独学だと考えれば、私並みに才はあった。もし生きていれば、猿飛先生の次に火影になれる実力があったかも)

 

 冬木ドウシン。火影の里設立後、初代及び二代目火影の下で術の開発に携わっていた人物。その地位、信頼も高かったが、同胞殺し、木ノ葉の人間を殺害したことで投獄。そのまま獄中で自害した。

 大蛇丸は冬木ドウシンを知っている。その男が変質したのは恐らく、妻と娘が死亡した事故。木ノ葉に入り込んだ他里の忍が暗部に発見され、ドウシンの家族を人質に取り、暗部が人質ごと殺害したという、忍の世界では時折起こることだ。戦の最中の事柄もあって、事故として、考え方によっては人質に取った忍こそが犯人という扱いだ。

 その殺された娘の名前が冬木ナツエ。死亡当時は忍養成施設(現忍者学校)の生徒であり、大蛇丸の先輩とも言える。

 大蛇丸がその存在を発見できたのは奇跡的な巡り合わせによるもの。考察の結果だが、ドウシンは娘の蘇生を願って禁術を研究した。そして、捕まった後に穢土転生によってこの世に現われた娘の存在を秘匿するために命を断った。

 そこに動く気配を感じる。視界のない場所で相手に居場所を悟らせない為の無音戦闘技術をナツエが保持しないと大蛇丸は判断した。

 毒を吸い込まないよう、息を吸い、大蛇丸は気配の方向へ「風遁・大突破」を用いる。しかし、その手応えから変わり身を用いて回避したと判断したが、毒霧に大穴が空いたことを切掛に晴れた。周囲には誰もいなかった。

 

「基礎忍術の練度が高いけれど、逃げるにしても早すぎる。彼女に使われた穢土転生、もしかすれば目的の為にメリットを潰した部分もあるのかも」

 

 だとすれば、自爆を前提とした強襲がないのも頷ける。自らに一般的な父親としての価値観など存在しないが、この世にいる娘が死んでも蘇るような怪物性を除去したかったのかもしれないと考えるが、警戒は止めないことは流石に忍として長くいるだけはある。

 

「地下に広い研究施設!? 資料の破棄と所持逃亡が狙い……。駄目ね、見た目が子供でも、あの子忍をしているわ。火影になった暁には子飼いの部下に欲しいくらい」

 

 後に地下には忍術の練習場すら兼ねた空間が発見されたが、書物、忍具に至るまで発見できないという事実から、大蛇丸の敗北は確定であった。

 更に、大蛇丸自身が望んだ火影の座は波風ミナトという若い世代の忍が就任することとなった。第三次忍界大戦による活躍、その高速戦闘の技量と髪の色から「木ノ葉の黄色い閃光」の名を頂いた男である。




最近、NARUTOの伏線が次々に明らかにされていて、ついつい書いた作品です。主人公の名前適当です。その内タイトル道理になります。

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